芸術学(読了時間:4分9秒)

芸術学の概要・理念

私たち人類は、古来からさまざまな地域で芸術作品を創り、後の世代へと受け継いできました。

過去の芸術家が遺した表現に魅せられながら、現代においても芸術家やクリエーターが作品を生み出し、世に問うています。

こうした芸術作品の美的価値や、作品を創る過程における芸術活動の機能について研究するのが芸術学です。

ここで言う芸術とは、音楽や美術をはじめ、文芸や演劇、写真、放送、建築などの表現やデザインも含んでいます。

さらには、映画やアニメ、ファッション、広告といった、私たちにとって身近な表現についても、芸術表現の1つと捉えて芸術学の研究対象とすることがあります。

こうした芸術全般について、芸術学では理論や技術、背景にある歴史について学び、体系的に研究していきます。

理論の解明を試みるだけでなく、制作や演奏といった実技も研究領域に含まれており、実際に制作に取り組み作品を完成させることをもって研究結果とする場合もあります。

芸術学で学ぶこと

芸術学が研究領域とする範囲は非常に幅広いため、多くの大学では専攻をはじめに決め、専門分野の研究に特化していることがほとんどです。

音楽や美術においては、作品論や特定の地域における芸術論、音楽史や美術史といった観点から研究を行うほか、作曲や絵画制作といった実技も行います。

文芸では、小説をはじめ映画やドラマの脚本、広告のコピーなども研究対象となります。

演劇においては、演技や演出だけでなく、照明や音声に関する技術についても学びます。

建築では、建築物そのもののデザインや、景観への配慮や街作りについても考える環境デザインなどを研究します。

なお、各分野での研究には実技が含まれることも多く、実際の作品制作を通じて理論を検証したり、新たな手法を試みたりすることもめずらしくありません。

芸術学の大学での授業科目の例

映画史

映画の誕生に始まり、現在に至るまでどのように受容され、発展してきたかを学びます。

西洋音楽史

西洋において古代から現代までに至るまで、音楽に関する歴史の流れや時代背景や文化における音楽作品への影響について探究します。

映像芸術学

映像表現や演出技法について学び、優れた映像芸術を支える技術的な側面や映像芸術を制作するための技能について考えます。

音楽分析

楽曲がどのように作られているのかを分析し、明らかにするとともに、解明した手法を作曲に活かすための理論化を目指します。

キリスト教芸術

芸術作品とその歴史をキリスト教という切り口から捉え、文化においてどのような影響を与えてきたかを追究します。

芸術学のレポート・テーマの例

芸術学は対象とする分野が細分化されているため、レポートテーマについても多岐にわたっています。

作品やその作者に焦点を当てることもあれば、時代や地域といった切り口で芸術について論じることもあります。

  • ・スタンリー・キューブリック『時計じかけのオレンジ』について
  • ・ジャポニスムにみる着物と日本人
  • ・レンブラントの≪放蕩息子の帰還≫における兄の描写
  • ・日本のアニメ作品に見られる善悪の姿
  • ・日本におけるアウトサイダー・アート受容の現状

芸術学と関連する学問

音楽や美術は芸術学の一分野として研究されますが、芸術学として学ぶ場合と、音楽・美術として学ぶ場合で大きな違いはなく、研究内容に差ががないことも多々あります。

大学などで芸術学部の中に音楽科や美術科が置かれているか、音楽学部・美術学部のように学部として設置されているかの違いと考えていいでしょう。

また、芸術学においては作品が生み出された時代や社会的背景に関する基礎的な知識も重要な要素となります。

研究対象とする作品が生み出された国や地域に関する歴史学の知識は、芸術学の研究と密接な関わりがあるといえます。

芸術学を学んで就職に有利な業界・仕事

芸術学の専門知識を持つ人材として目指せる職業として、美術や音楽の学校教諭、美術館などの学芸員、歴史的な美術品の修復を担う美術修復家などが挙げられます。

学芸員の資格を持つ人が、イベントなどの運営・進行・スケジュール・予算管理・展示作品選定などを行い、主催者が求める演出を担当するアートコーディネーターとして、フリーランスで活躍している例もあります。

一般企業へ就職する場合も、美術や音楽を専門とする出版社での編集職、メーカーにおいて製品パッケージのデザインを考案するパッケージデザイナー、商品開発を担当する企画職などの仕事を目指すにあたって、芸術学で得た知見が評価されることも考えられます。

なお、画家イラストレーターとして独立する人もいますが、芸術分野一本で生計を立てていくには人脈づくりや営業といった芸術分野以外の能力を発揮する必要があります。

そのため、成功している人はひと握りであり、大半の人は一般企業への就職などの道を選んでいます。

芸術学の知識は人生でどう役立つ?

近年、STEM(科学・テクノロジー・エンジニアリング・数学)教育の重要性が注目されつつあります。

これらは主に理系の学問分野にあたりますが、さらに「芸術」を加えたSTEAM教育を行うべきと考えている人もいます。

デザイン思考など、ビジネスにおいてもデザインに必要とされる考え方や手法を取り入れる動きがあります。

このように、科学技術が発達し、高度情報化社会に突入していく時代だからこそ、芸術分野において古くから探究されてきた本質的な思考や、創造的に問題を解決するための発想が活きてくる可能性があるのです。

芸術学で学んだ知識や技能、思考方法は、これからの時代においてますます注目され、重要度が高まっていくことでしょう。

職業カテゴリー