防衛大学校とは

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防衛大学校とは

防衛大学校とは、陸上・海上・航空自衛隊の幹部自衛官の教育訓練を目的とした教育機関で、神奈川県横須賀市にあります。

文部科学省所管ではなく防衛省所管の学校のため、大学ではなく「大学校」と呼ばれています。

教育課程は文部科学省による大学設置基準に準拠しており、卒業生には学士の学位が授与されます。

一般的な大学の設置基準は卒業に必要な修得単位を124単位以上と定めていますが、防衛大学校では防衛学を含む151単位以上の修得が必要です。

他の大学と同様、授業では一般教養や基礎科目を1〜2年次、2〜4年次に専門科目を習い、卒業研究を4年次に行います。

ただし、将来的の自衛隊幹部を育成することを目的としているため、体力面での目標値が各学年で設けられており、目標に到達しない場合は体力向上のためのプログラムを受講します。

防衛大学校の学部・学科

防衛大学の学部は、文系の研究を中心とした人文・社会科学専攻と、理系の研究を中心とした理工学専攻の2系統に分かれています。

人文・社会科学専攻

人間文化学

哲学心理学・世界史・日本史・地理学文化人類学・言語文化といった人文科学分野の学問を幅広く学び、日本をはじめ世界各国の文化、歴史、宗教に関する理解を深めます。

公共政策学科

政治学経済学法学をはじめ、組織論・社会学・安全保障論・危機管理といった政策に関する形成過程や方法論について学びます。

国際関係学

国際政治学、比較政治、国際政治史、外交史、国際システム、軍備管理、危機管理などの分野に関する知識を修得し、国際社会における日本の立場について研究します。

理工学専攻

応用物理学

人間情報工学・電子回路・高速弾道学・コンピュータシミュレーション科学・放射線科学、物性物理学、素粒子物理学といった分野の専門研究を行い、応用物理学全般への理解を深めます。

応用化学

無機化学・有機化学・物理化学・分析化学をはじめ、高分子化学・反応化学・燃焼化学・火薬学といった応用分野の研究を行います。

地球海洋学科

大気科学・航空気象学・固体地球科学・宇宙惑星リモートセンシング・海洋音響学・海洋探知情報・海洋探知システムについての研究を行い、惑星としての地球への理解を深めます。

電気電子工学

電磁気学・電気回路・電気数学・電子物性といった基礎から、電子デバイスやシステム工学といった応用科目までを学び、エレクトロニクスのスペシャリストを目指します。

通信工学

通信材料・電波工学・レーダ工学・電気通信数学といった分野を学び、専門的な知識を駆使して現状の分析やデータを元にした判断ができる人材を育成します。

情報工学科

計算機システム論・プログラミング言語・人工知能・情報セキュリティ論・インターネットメディアコミュニケーションなどを学び、情報資源の適切な活用を実現する方法を研究します。

機能材料工学

材料熱力学・材料力学・結晶工学・固体物質学といった分野の研究を通じて、基礎的な物質の性質の理解から先端的な材料の応用研究まで、材料に関する知識を幅広く学びます。

機能工学科

流体力学・制御工学・精密加工。メカトロニクスといった分野への理解を深め、もの創りを通じた機械の性能向上に関する総合的な研究を行います。

機械システム工学科

熱力学・流体力学・材料力学・機械力学をはじめ、制御工学や機械運動学、コンピュータによる解析と設計を学び、装備品の運用・開発に向けた知識・技術を習得します。

航空宇宙学科

空気力学・航空原動機学・航空機力学・ヘリコプタ力学・飛行制御・航空機構造力学・宇宙航行・推進工学・航空宇宙工学設計を学び、航空機や飛翔体、ロケット等を運用・設計する基礎を学びます。

建設環境工学

水理学・土質力学・コンクリート材料工学・鋼構造学・耐震工学・震災工学・海岸工学などを学び、公共施設の計画・設計・建設・管理に役立つ知識について研究します。

防衛大学校の受験・入試科目

防衛大学校の一般採用試験(入試)は1次試験・2次試験に分かれています。

1次試験は筆記試験で、理工学では英語・数学・理科(物理・科学・生物から2科目)の試験が行われます。

人文科では英語・国語・数学または社会(日本史・世界史・地理・倫理・政治経済から1科目)の試験が行われます。

試験には択一式と記述式があり、理工学では英語・理科・数学に、人文科では英語・国語・社会において記述式の問題も出題されます。

2次試験では、口述試験・身体検査・小論文試験が実施されます。

推薦の場合は1次試験のみとなり、一般の2次試験と同様に後述試験・身体検査・小論文試験が行われます。

防衛大学校の身体検査

採用試験で身体検査が行われるのは、防衛大学校の特徴の1つと言えます。

将来、幹部自衛官を目指す教育機関のため、「自衛官等の採用のための身体検査に関する訓令」に則り、自衛官採用と同等の基準が設けられています。

男子学生 女子学生
身長 155㎝以上 150㎝以上
胸囲 (身長170㎝の場合)
80.5㎝以上
(身長161㎝の場合)
76.5㎝以上
体重 (身長170㎝の場合)
52㎏以上
(身長161㎝の場合)
45㎏以上
肺活量 3,000cc以上 2,400cc以上
視力 裸眼視力0.6以上
矯正視力0.8以上
色覚 色盲または強度の色弱でないもの
聴力 (1)秒時計法で両側とも1m以上で聞きわけるもの
(2) 聴力計法で 1000 Hz、4000 Hz において、それぞれ一側が 30dB 以下、他側が50 dB 以下で聞きわけるもの
総合 隊務を支障なく遂行しうる体力を有すると認められるもの

このほか疾患についても、感染症や悪性新生物、精神・行動の障害をはじめ、隊務に支障をきたす恐れがある疾患を患っていると不合格となる場合があります。

参考:自衛官等の採用のための身体検査に関する訓令

防衛大学校の偏差値・難易度・倍率

防衛大学校の偏差値は、人文・社会科学専攻で71、理工学専攻で65となっており、定員の少ない文系の方が難易度は高くなっています。

全体の難易度としてはMARCHと同程度か、やや難しいレベルと考えていいでしょう。

参考:マナビジョン

倍率に関しては、男子・女子でそれぞれ定員が決められている関係で、定員が少ない女子のほうが倍率が高くなるのが特徴です。

《防衛大学校の2020年度採用試験倍率》

学部 試験方式 倍率 募集人数
人文・社会科学
(男子)
一般 16.4 50名
公募推薦 4.6 20名
人文・社会科学
(女子)
一般 29.9 15名
公募推薦 8.6 5名
理工学
(男子)
一般 6.2 215名
公募推薦 2.2 90名
理工学
(女子)
一般 12.2 20名
公募推薦 3.1 15名

参考:本科第68期学生採用試験合格状況

なお、2021年度採用試験より、理工学専攻の女性学生募集定員が5名ずつ増員され、一般採用試験は25名、推薦採用試験は20名となります。

防衛大学校の学費は? 給料が出る?

防衛大学校に通う学生は特別職の国家公務員です。

そのため、学費を納入する必要はありません。

また、全員が学生舎に居住するほか、被服や食事も貸与・支給されますので生活費も必要ありません。

さらに、学生手当として毎月117,000円支給されるほか、6月と12月には期末手当(ボーナス)が支給されます(年間397,800円)。

このように、防衛大学校では給料を受け取りながら学校に通うことができるのが、一般的な大学と大きく異なる点です。

防衛大学校の志望理由・面接

防衛大学校の志望動機

防衛大学校は幹部自衛官を養成するための教育機関です。

将来的に自衛隊で働くことを念頭に置いていますので、志望動機に関しても「国民の安全を守るために役立ちたい」といった思いを伝える必要があります。

単に人文科学や理工学系の学問を修めたいのであれば、あえて防衛大学校を進学先に選ぶ必要はなく、他の大学でも研究に打ち込むことができるからです。

このように、防衛大学校の志望動機には「進学先が防衛大学校でなければならない理由」が求められます。

これは将来的に幹部自衛官を目指すことと深く関わっていますので、将来なぜ自衛隊に入隊したいのか、きっかけとなったできごとや経験をエピソードとともに伝えるようにしましょう。

防衛大学校の志望動機の例文

「私は年々危機が高まっているサイバー攻撃の脅威から多くの方々の暮らしの安全を守りたく、貴校の理工学専攻情報工学科を志望いたします。

私たちの暮らしは、すでにインターネットと切り離すことのできないものになりつつあります。

高校2年のとき、両親が車の修理をしようとディーラーに相談したところ、自動者メーカーがサイバー攻撃に遭っており、部品の受発注が行えない状態になっていると聞きました。

自動車メーカーであっても、このように私たちの暮らしの身近なところに影響が出る場合があります。

まして、行政機関や教育機関など公的な機関がサイバー攻撃に遭った場合、私たちの暮らしに与える影響は計り知れません。

今後、IoTの普及に伴い、ますます私たちの暮らしはオンライン化が進んでいくと思われます。

サイバー攻撃に対する対応策を講じられるスペシャリストを目指したく、情報工学科で知識・技能を習得したいと考えております。

将来的は自衛隊でとくに技術者として活躍したく、貴校を志望いたします。」

防衛大学校の面接で聞かれること

防衛大学校では、一般採用試験・推薦採用試験ともに面接試験が実施されます。

そもそも幹部自衛官を目指すための教育機関ですので、なぜ防衛大学校を志望したのか、将来は自衛隊でどのように活躍したいのか、しっかりと答えられるようにしておく必要があります。

自衛隊についての知識や任務への理解度を聞かれることもあります。

陸海空自衛隊の正式名称や、任務の内容について答えられるようにしておきましょう。

また、防衛大学校へ入学後は全員が学生舎に居住することになり、集団で生活していくことになります。

先輩や同級生とうまくやっていくことができるかどうかは、人柄を見る上で重要な観点となると考えていいでしょう。

高校までの学校生活において、部活などチームで成果を出してきた経験があれば、エピソードとして伝えられるようにしておきましょう。

防衛大学校の就職先・卒業後の進路

防衛大学校の就職先

防衛大学校を卒業すると陸海空自衛隊の曹長に任命され、各自衛隊の幹部候補学校へ入校することになります。

《幹部候補学校での教育・訓練内容》

教育・訓練 修了後の階級
陸上 幹部候補生学校での教育訓練(約9ヶ月)
普通隊付教育(約3ヶ月)
3等陸尉
海上 幹部候補生学校での教育訓練(約1年)
国内巡航を経て遠洋演習へ
3等海尉
航空 幹部候補生学校での教育訓練(約半年)
部隊勤務等(約半年)
3等空尉

自衛隊において3尉以上は幹部ですので、幹部候補学校を卒業後は自衛隊の初級幹部として重要な任務に就くことになります。

このように、防衛大学校は卒業後、自衛隊へ入隊することが前提となっており、就職先としては自衛隊に進むのが基本です。

防衛大学校の就職以外の進路

防衛大学校を卒業後、幹部自衛官として数年間の勤務したのち、防衛大学校の「研究科」に進むことができます。

研究科は一般の大学における大学院に相当し、論文審査と試験に合格することで修士や博士の学位が授与されます。

研究科を受験するには、各部隊での勤務を経て防衛省各機関の長の推薦を受ける必要があります。

つまり、防衛大学校を卒業してそのまま研究科に進むのではなく、自衛隊で一定期間の勤務を経験することは必須となります。

防衛大学校とは別の一般の大学院などに進学する場合、国家公務員は退職しなくてはなりません。

このように防衛大学校を卒業して幹部候補学校への進学以外の道を選ぶことは、後述する「任官辞退(拒否)」にあたります。

防衛大学校の任官拒否とは

防衛大学校を卒業して自衛隊への入隊を辞退することは「任官拒否」と呼ばれる場合があります。

防衛大学校では、将来の自衛隊幹部候補を育成する目的で授業料や入学金を納入不要とし、国家公務員として給料を支給しています。

こうした背景から、「任官拒否」という言葉には、防衛大学校で学んだのちに自衛隊以外の道を選ぶことへの批判的な意味合いが込められていると指摘されることがあります。

しかし、さまざまな理由から任官を辞退し、自衛隊で働くのではなく民間企業への就職を希望する人もいるのは事実です。

卒業して任官を辞退する場合、国立大学の入学金と4年間の授業料に相当する約250万円を償還することになっています。

任官拒否した場合でも、在学中に支給された学生手当や期末手当、食事・学生舎にかかった費用は教育訓練への対価として徴収されません。

また、防衛大学校を中退した学生は任官拒否にはあたらないため、償還金の徴収は行われません。

防衛大学校の雰囲気・学生生活

自衛隊は国防に関わる重要な任務ですので、幹部自衛官を養成する防衛大学校では規律が厳しく重んじられます。

学生の1日は、朝6時に起床して乾布摩擦を行うことから始まります。

食事や清掃、入浴、勉強のための時間は厳格に決められており、消灯時刻が22時半を過ぎる場合は申請する必要があります。

毎日、所定の時刻に点呼があり、人数確認が行われます。

その際は服装点検も実施され、制服の着こなしが好ましくない学生は注意を受けることもあります。

平日は学生舎内で過ごしますが、土日祝は外出が許可されています。

ただし、1年次には外出時に制服着用が義務づけられ、外泊も禁止されています。

このように規律に厳しく体育会的な雰囲気の防衛大学校ですが、学生舎で4年間を過ごす仲間との結束は強く、個性的な学生も多いと言われています。

参考:学生の一日

防衛大学校での訓練は厳しい?

防衛大学校での訓練は、自衛隊員が日常的に実施している訓練とほぼ同等の内容です。

ただし、訓練の時間としては自衛隊員よりも少なく、短時間で凝縮して行われます。

1年次は号令や行進、自衛隊としての基礎的な知識を習得します。

2年次以降は陸海空に分かれて訓練が行われ、陸上の場合はボートを漕ぐ訓練やモールス信号を送る訓練なども行われます。

夏・冬には長期訓練が実施され、実際の自衛隊駐屯地を訪れます。

駐屯地では実物の自衛艦や飛行機に乗る機会も設けられるなど、本格的な内容の訓練となります。

このように、防衛大学校での訓練は体力が必要なだけでなく、実践的な内容のものも数多くあり、高い緊張感が求められます。

国の安全を守る仕事に就くための学校ですので、一定以上の厳しい訓練が行われることは覚悟しておく必要があります。

防衛大学校の入校式・卒業式

防衛大学校の入校式は、将来の自衛隊幹部候補として任命されることを意味しています。

入校式には防衛省や自衛隊の高級幹部、各国駐在武官が多数参加します。

こうした方々に見守られながら、防大生としての宣誓・申告を行います。

卒業式には内閣総理大臣や防衛省幹部が参加し、防衛大学校の伝統とも言われている「帽子投げ」で卒業生同士が喜びを分かち合います。

卒業式後には任官式が執り行われ、正式に自衛隊員として任官することになります。

つまり、防衛大学校の入校式と卒業式は、自衛隊への入口という意味合いが込められており、とくに卒業式は任官式を兼ねているのが大きな特徴です。

防衛大学校の開校祭・棒倒し

防衛大学校では、毎年11月に開校記念祭が開催されます。

開校祭は2日間にわたって行われ、この期間中は学校の敷地内だけでなく学生舎内も一般公開されます。

一般の大学で言うところの学園祭にあたり、模擬店が出店され、演劇、紅太鼓なども披露されます。

また、一糸乱れぬ行進を見られる観閲式や、訓練の様子を披露する訓練展示といった防衛大学校ならではの催しも行われます。

中でも特徴的なのが、旧士官学校時代から継承されてきた「棒倒し」です。

各大隊の精鋭150名が参加し、攻撃部隊・防御部隊に分かれて緻密な戦略のもと、制限時間の2分以内に相手方の棒を倒すことを目指します。

優勝した大隊には優勝カップや優勝旗が授与され、学生舎に飾られます。

棒倒しは防衛大学校を象徴する競技の1つであり、同校の伝統行事となっています。

防衛大学校の部活動・校友会とは

防衛大学校の部活動は他大学とは異なり、「サークル」とは呼ばれません。

部活動はすべて「校友会」と呼ばれるクラブ活動となっています。

運動部のイメージが強いかもしれませんが、吹奏楽部や英会話部、茶道部といった文化部や、自動車同好会、文芸同好会、タイ文化研究同好会などの各種同好会もあります。

校友会活動は教育・訓練活動や学生舎活動と並び、防衛大学校における3本柱と呼ばれる重要な活動と位置づけられています。

校友会を通じてスポーツと文化の両面で気力・体力を育み、連帯感を養成することを目指しているからです。

1年次には全員が運動部に加入することになっており、文化部に加入を希望する場合は運動部との掛け持ちとなります。