旅行業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
旅行業界とは
旅行業界には、大手から中小企業まで10,000社以上の旅行会社があります。
代表的な旅行会社は「JTB」「KNT-CT」「H.I.S」「日本旅行」「阪急交通社」などです。
旅行会社はパッケージツアーの企画、交通機関やホテルの手配を行っており、自社のインターネットや店舗、旅行代理店を通じて商品(ツアー)を販売しています。
ここでひとくちに「旅行会社」といっても、旅行会社は法律で2種類に分けられることを押さえておきましょう。
・旅行業:旅行の企画をする
・旅行業者代理業:旅行業が企画した商品(ツアー)を販売する
さらに「旅行業」は3つに分かれており、
・第1種旅行業:国内・海外旅行の企画ができる
・第2種旅行業:国内旅行のみ企画ができる
・第3種旅行業:一定の条件下の国内旅行が企画できる
となりますので、旅行会社によって扱う企画の範囲や、仕事の幅が異なることがあるのです。
近年は訪日外国人(インバウンド)が増えているため、旅行業界は成長傾向にあります。
旅行業界の役割
旅行業界の役割は、旅行者であるお客さまへ魅力的な旅行を提供することです。
旅行業界を代表する企業では、旅行の企画・手配・販売・添乗に関する事業を手がけており、世の中の流行や、お客さまの希望を調査して、どの観光地に行くのかを検討します。
その際レジャー施設や、各地域の地方自治体、特産物を扱うメーカー、飲食店などと連携してプランを作ることもあり、旅行材料を提供する各団体の連携も必要です。
このようにお客さまと各団体をつなぎ、観光業界全体を活性化することも、旅行業界の役割ともいえるでしょう。
完成した企画は商品(ツアー)として、旅行会社の店舗やインターネット上で販売され、ツアーが決まれば予約や手配を行います。
ツアーコンダクター(添乗員)が同行するツアーでは、添乗員がお客さまのお手伝いをしながら、スムーズな旅行を提供しています。
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旅行業界の企業の種類とビジネスモデル
旅行業界には、規模に合わせて企業の種類があり、ビジネスモデルも異なります。
インターネットの普及に伴う、近年のビジネスモデルの変化もつかんでいきましょう。
国内大手企業
旅行業界を代表する国内大手企業は、「JTB」「KNT-CT」「H.I.S」「日本旅行」「阪急交通社」などです。
大手旅行会社では、旅行の企画・手配・販売・添乗に関する事業を手がけており、専門のスタッフがマーケティング調査などをもとに、魅力的な旅行を提供する仕事を行っています。
大学など公的機関と連携して商品開発を行ったり、ターゲット別にリーズナブルなツアーから高級なツアーまで、幅広いプランを提供できることが魅力でしょう。
従来は店舗や自社サイト、電話販売などが主流でしたが、近年のインターネットの普及に伴い、ネット予約を意識したビジネスモデルも変化が求められています。
中小ベンチャー企業
全国に10,000社以上ある旅行業界の企業のほとんどが、中小ベンチャー企業です。
小規模の旅行会社でも旅行の企画・手配・販売・添乗までが行われていますが、大企業では各職種別に仕事が分かれているのに対し、小規模の会社では企画から添乗まで1人で担当することも少なくありません。
入社後すぐに国内・海外問わずに、企画から添乗まで担当することも多いため、幅広い知識や実力を身につけたい方には最適でしょう。
企業によってバス旅行が中心、個人旅行に特化、ある地域に特化しているなど、強い特色がみられるのも特徴です。
インターネット上だけで旅行を提供する企業
近年ではインターネット上だけで旅行を提供する「OTA(Online Travel Agent)」と呼ばれる旅行会社が増えています。
代表的な企業は「じゃらん」「楽天トラベル」「tripadviser」などで、ほとんどがシステム投資で済むことから低価格化が進み、異業種からの参入が見られるのが特徴です。
いつでもたくさんの商品を検索できることや、わざわざ店舗に行かなくても安い旅行を申し込める利便性から、多くの支持を得ています。
主な取り扱いは、ホテルや航空券などの国内・海外の手配旅行、宿泊+航空をセットにしたパック、宿泊仲介、旅行保険などです。
旅行業界の職種
旅行という商品を提供するまでには、多くの工程やたくさんの人の協力が必要です。
ここでは、旅行業界の中でも代表的な職種をご紹介します。
カウンター営業
旅行会社の店舗や事務所で、カウンター越しに個人のお客さまに向けて営業する仕事です。
行き先や日程、予算などのご希望をヒアリングし、旅行プランの提案や、販売、ホテルや航空券などの手配までを行います。
旅行プランだけでなく、旅先の情報や国内・世界情勢まで聞かれることもあるため、幅広い知識を身につける姿勢が求められるでしょう。
プランナー(企画)
プランナーはマーケティング調査などをもとに、思わず申し込みたくなるような魅力的なツアーを企画して、現地のホテルや交通機関を手配していく業務です。
プランナーは現地の知識やトラブルを想定した上で企画することが理想のため、入社後ツアーコンダクターを経験してから、ツアープランナーとなるケースが多いようです。
ツアーコンダクター(添乗員)
ツアーに同行して旅行者の案内をする仕事で、「旅行管理者」の資格が必要となります。
ツアーコンダクター(添乗員)の働き方は、旅行会社に所属している場合と、ツアーコンダクター専門の会社に登録し、ツアーの依頼ごとに働く派遣やフリーランスから選ぶことが可能です。
仕事内容は、担当ツアーの事前打ち合わせ、現地の情報収集、航空券などの準備、旅行中のお客さま管理やお手伝い、現地スタッフとの打ち合わせ、トラブル処理、ツアー後の報告書作成など多岐にわたります。
法人営業
個人ではなく、学校や企業、官公庁などを相手に営業を行う仕事です。
修学旅行や社員旅行に最適なプランを提案したり、企業の海外進出をお手伝いするため、1件の契約で大きな売り上げを達成することができるので、旅行に関する大きな仕事に取り組みたい人に最適でしょう。
旅行業界のやりがい・魅力
時代の変化とともに将来性が期待できる業界
近年はインターネットの普及により、いつでも航空券やホテルの予約ができるようになり、以前よりも気軽に旅行が楽しめるようになりました。
国内旅行の需要は減っているものの、海外旅行の需要は伸び、さらにインバウンドで訪日外国人が増えていることから、旅行業界の需要は今後も成長が期待できるでしょう。
特に海外ツアーや訪日外国人向けのビジネスが増えることにより、語学力に自信がある人は、大きなやりがいやチャンスが見込めます。
旅行業界は残業が多くハードなイメージがある人もいるかもしれませんが、大手企業を中心に、女性も子育てしながら働き続けられるようにと、ワークライフバランスを整える企業が増えているのも特徴です。
制度を利用しながら、無理なく働くことができるでしょう。
お客さまの旅行を形にできる仕事
「長期休暇のときには海外旅行に行く」「旅行のために日常をがんばる」という人がいるほど、旅行は人々の生活を彩るものです。
旅行業界で働く人は、なんといっても「旅行が好き」という人が多いので、大好きな旅行に携わることができること、さらに知識をつけてプロフェッショナルになっていると実感を持てることに、やりがいを感じている人が多いようです。
もちろん旅行には思わぬトラブルや、ハプニングがつきものですが、そのすべてが知識や知恵となり、次の仕事に役立てることができるのも魅力でしょう。
カウンター営業や添乗員は、お客さまと直接やりとりすることが多く、「ありがとう」と感謝されることもやりがいにつながるようです。
旅行業界の雰囲気
旅行業界で働く人はもちろん、「旅行が大好きな人」が多いです。
企業や職種によって異なりますが、男女比は男性60%、女性40%ほどと男性が少し多くなります。
旅行会社の目的は、快適な旅行を提供することなので、「何かやってあげたい」というホスピタリティ精神があり、明るい性格の人が多いのが特徴です。
また日本人だけでなく、訪日外国人など幅広いお客さまを相手にすることから、コミュニケーション力の高さも求められるので、明るくてよい雰囲気の中で仕事ができるでしょう。
旅行好きな人が多いため、旅行に行きやすい雰囲気も魅力です。
特に大手企業では、企画、手配、営業などさまざまな職種に携わるチャンスも得られます。
規模の大きな会社になればなるほど、1つの旅行を作るにも、社内のさまざまな部署や各団体との連携も必要になることから、多くの人と関わる機会が多くなるでしょう。
旅行業界に就職するには
就職の状況
旅行業界は、就活生にとって人気が高い業界です。
毎年多く新入社員の採用を行っていますが、募集人数を超える応募が集まり、就職するのは簡単ではありません。
正式なデータは公表されていませんが、JTBやH.I.S、KNT-CTなどのトップクラスの企業の採用倍率は30〜50倍ともいわれています。
就職する難易度の高い業界のため、単に「旅行が好き」というだけで、面接をくぐり抜け、採用してもらうのは難しいでしょう。
事前に旅行業界や応募する旅行会社のことをよく調べ、しっかりと対策を取ることをおすすめします。
就職に有利な学歴・大学学部
旅行業界に就職するには、学歴や学部は関係ないといわれていますが、大手の旅行会社の採用では、有名大学からの採用がほとんどです。
JTBは日東駒専、産近甲龍以上の難関私大からの採用は多数ありますが、それ以下の学歴になるとほとんど採用がありません。
またH.I.Sでは学力よりも人間性で採用を行っており、中堅私大や愛愛名中、福岡大学などの地方大学や有名女子大、専門学校からの採用もあります。
大手企業狙いで就職したい人は、書類選考でふるいにかけられてしまうため、それ以上のレベルの大学であることが望ましいでしょう。
また学部はほとんど関係ないともいわれていますが、理系学部よりも文学部系の方が採用人数が多く、中でも外国語系、国際系の学部が有利のようです。
就職の志望動機で多いものは
旅行業界に就職したい人は「旅行が好き」が大前提にあるので、志望動機がそれだけではもの足りません。
そのため志望動機に多いのは、旅行が好きということにプラスして
1.自分のスキルや経験
2.なぜこの企業を選んだのか
3.その企業で実現したいこと
4.旅行業界を選んだ理由
といった、自分の経験を織り交ぜた志望動機です。
経験は、応募会社の旅行ツアーで感動したことでも、自分で行った旅行で感じたことでも、アルバイトでの接客スキルでも構いません。
実際に働き出すと理想とのギャップはあるものですが、自分なりの会社でやってみたい夢やキャリアプランがある人は、入社後もブレずに活躍してくれそうだという印象を残すことができます。
会社ごとの「求める人材像」を把握し、会社ごとの志望動機を練り上げましょう。
旅行業界の転職状況
転職の状況
就職同様、旅行業界への転職は根強い人気があり、たくさんの人が転職をしています。
旅行会社の求人募集は多く行われており、転職の需要が高いものの、企業側は即戦力となる社員がほしいため、経験者が優遇される傾向が強いようです。
実は旅行業界の仕事は専門性が高いため、せっかくスキルを身につけても、ほかの業界で役立たないことが多く、業界内での転職が主流となっています。
「未経験OK」の場合は、ほとんどが派遣社員や契約社員としての募集が多いのが特徴ですが、適性があれば、正社員での転職もチャンスがあるでしょう。
転職の志望動機で多いものは
転職の志望動機で多いものは、やはり「旅行が好き」が1番ですが、旅行好きというだけでは企業が採用したいアピールにはなりません。
たとえば
「以前貴社の海外ツアーに参加し、期待以上のサービスに感動いたしました。お客さまに旅行を通じて感動をできる業界だからこそ、前職での接客スキルを活かして、貢献していきたいです。」
というように、「自分のスキルや経験」「その企業を選んだ理由」などが盛り込まれた、自分らしいアピールが加わった志望動機が多いのが特徴です。
転職で募集が多い職種
旅行業界の転職では、カウンター営業、法人営業、旅行手配、企画、添乗などが募集されています。
特に営業職が多く、小中大企業関係なく、多くの企業で募集されているのが特徴です。
中には中国語や英語が話せることが必須条件になっている企業もあるので、ご自身の得意分野が活かせる職種を探すとよいでしょう。
転勤ありの職種から、地域密着型の旅行会社まで幅広く募集されています。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
旅行業界の転職は、旅行業界からの転職も多いですが、同様に異業種からの転職も多いです。
未経験であっても、旅行業界で求められるコミュニケーション力や接客スキルをアピールできれば、転職に有利に活かすことができるでしょう。
またお客さまからの要望やトラブルにも対応できる臨機応変さや、予算と折り合いをつけながら企画を練る交渉力などもスキルに含まれます。
ミドル世代の転職では、マネジメント経験があると転職しやすくなるでしょう。
旅行業界の有名・人気企業紹介
旅行業界の有名企業の中から、3つの人気企業をご紹介します。
JTB
1912年創業のJTBは、国内シェア50%の日本最大手の旅行代理店です。
国内外の旅行業を取り扱っており、その取り扱い額は約1兆7,000億円(2017年度)と圧倒的で、なんと2位のKNT-CTの約4,900億円の3.5倍です。
観光庁 主要旅行業社の旅行取扱状況年度総計
JTBは民間だけでなく、立教大学観光学部と新商品開発や、地方都市と情報発信をするなど、公的機関と連携していることでも注目を集めています。
KNT-CT
KNT-CTは、国内2位の取り扱い額を誇る企業です。
2013年に訪日旅行や団体旅行に強い「近畿日本ツーリスト」と、ユニークが旅行で人気の「クラブツーリズム」が合併して誕生しました。
旅行業界は離職率が高いことでも知られますが、KNT-CTの平均勤続年数は21.7年と業界内でも長く、働きやすい企業であることが伺えます。
H.I.S
H.I.Sは海外旅行が強みの旅行代理店で、リーズナブルな価格帯から、シニア層へ向けた高級路線まで幅広いツアーを展開しているのが特徴です。
訪日旅行にも注力しているため、国内だけでなく、海外の拠点でも活躍のチャンスがあるでしょう。
ANAや英会話のイーオン、駒沢女子大学と連携をするなど、新しい分野でのコラボレーションも注目されています。
旅行業界の現状と課題・今後の展望
ここからは、旅行業界の直面している課題と、今後の展望についてみていきましょう。
国内旅行者は減少し、訪日外国人が増加
現在国内旅行者は、年々減少している傾向にあります。
原因は人口の原因などさまざまな要因がありますが、日帰り旅行者が増え、1回の旅行にかける平均金額が減少していることです。
一方、訪日外国人は2011年以降記録を更新し続けており、2017年約2900万人、2018年約3100万人と年々増加傾向にあり、旅行業界でも盛り上がりを見せていました。
JNTOの訪日外客統計
将来的には、旅行消費額も伸びることが予想されており、旅行業界では外国人観光客向けの商品開発を行っています。
最新のIT化の動向
近年の旅行業界を語る上で、「IT化」の動向は欠かせません。
24時間どこでも気軽に予約ができる「ネット予約」が普及することで、従来の店舗営業型のスタイルが変化してきています。
現在では、国内予約の約40%をネット予約が占めており、リアル旅行会社のサイト予約とオンライン専業旅行会社の合計取り扱い額は約3兆円です。
そのうちオンライン専業旅行会社のネット販売率は約36%と台頭してきているため、各旅行会社は時代のニーズに合わせた変化が求められています。
業界としての将来性
国内旅行は減少傾向にありますが、海外旅行の売り上げが伸び、今後も訪日外国人が増加することが予想されます。
またIT化の影響で、オンラインでの旅行申し込みが増えたことから、ITを活用できるかが旅行業界で勝ち残る鍵となるでしょう。
旅行業界は経済やトレンドに影響を受けやすい業界ではありますが、日本政府が観光立国を掲げていることからも、今後も将来を期待できる業界でしょう。
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