バイク業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
バイク業界とは
「バイク」には、原付バイク・スクーター・大型バイク・スポーツバイク・オフロードバイクなどさまざまな種類があります。
バイク業界では、それら豊富な種類のバイクの開発や生産を行っています。
日本のバイク産業は第2次世界大戦以前より存在しましたが、本格的に成長が始まったのは戦後です。
戦後の1950年代より、「ホンダ」や「スズキ」といった今では大企業となっているメーカーが、大衆向けバイクの製造へ本格的に乗り出しました。
その後、高度経済成長の波にも乗り、60年代~90年代までにバイクは急速に普及しました。
特に「ホンダ」「ヤマハ」「スズキ」「カワサキ」の国内4社は大きく飛躍し、日本のみならず世界的にも高いシェアを持つようになりました。
今現在もこの4社が全世界のバイクシェアの約4割を占有しており、日本のバイクは世界のあらゆる地域で活躍しています。
しかし近年、「若者のバイク離れ」や「バイクの排ガス規制」などの影響もあり、国内のバイクの需要は頭打ちとなっており、国内の売上も年々下降気味です。
海外への輸出は依然として好調ですが、国内市場は先行き不安となってきているのが今のバイク業界です。
バイク業界の役割
バイクというのは、私たちの生活に必要不可欠な「乗り物」です。
特に「駐車スペースが少ない都市部」、「車を買うだけの余裕がない新興国」、「郵送物の配達現場」などでは、バイクがないと死活問題になります。
同時に、バイクには「自動車より安全性が劣る」、「排気ガスを出しやすい」といった課題も残っています。
需要のある乗り物である分、より安全性で、より環境性能の優れたバイクを開発できれば、それは大きな社会貢献にも繋がります。
バイクという商品から「交通事故のない安全な社会」、「排ガスのないクリーンな社会」を目指していくことが、この業界の役割となります。
20代で正社員への就職・転職
バイク業界の企業の種類とビジネスモデル
バイク業界の一般的なビジネスモデル
バイク業界のお客さまとなるのは、私たち一般消費者(コンシューマー)です。
バイクメーカーがバイクを作り、バイク販売会社がバイクを一般消費者に向けて売ります。
最終的な収益源となるのは、私たち一般消費者がバイク購入時に支払うお金です。
一般消費者がいないと成り立たない業界であるため、つねに消費者の要望を意識し、お客さま目線での商品作りをする必要があります。
バイクメーカーのビジネスモデル
「バイクメーカー」とは、バイクそのものを作っている会社です。
バイクをゼロから設計開発し、自社の工場で生産し、でき上がったバイクを販売会社に卸しています。
国内のバイクメーカーは「ホンダ」「ヤマハ」「スズキ」「カワサキ」が代表的であり、この4社が国内市場のほとんどを占有しています。
なおこの4社は、それぞれで事業タイプが異なります。
・「ホンダ」「スズキ」は、バイクメーカー+4輪自動車のメーカー
・「ヤマハ」は総合機械メーカーであり、バイクの他にも発電機・産業用ロボットなどを手掛ける
・「カワサキ」は総合重工メーカーであり、バイクの他にもプラント・鉄道・造船・宇宙開発など幅広い重工業を手掛ける
この4社いずれにおいてもいえるのは、バイク事業のみ行っているわけではないということです。
あくまでバイク事業は複数ある事業の中の一つであり、バイク作りだけを専業で行っている会社というのは国内外問わず少ないです。
バイク販売会社のビジネスモデル
バイクメーカーとはまた別に、「バイク販売会社」と呼ばれる会社があります。
バイク販売会社はバイクを作っているわけではなく、販売することに特化した会社です。
バイクメーカーからバイクを仕入れ、店舗でお客さまに販売することで「中間利益」を得ます。
バイク販売会社としては次のような会社があります。
・「ホンダモーターサイクルジャパン」、「スズキ二輪」などは、バイクメーカー直列の販売会社であり、親メーカーのバイクを中心に販売する
・「バイク王」、「レッドバロン」などは、独立系の販売会社であり、メーカー問わず幅広いバイク車種を販売する
海外勢力について
海外のバイクメーカーとしては、「ハーレーダビッドソン(アメリカ)」「BMW(ドイツ)」「ドゥカティ(イタリア)」などが挙げられます。
これらのバイクメーカーは、大型バイクや高級バイクを中心にラインアップしており、世界中に一定数のコアなファンがいるため、独自路線を進んでいます。
大衆向けバイクとしては、近年「ヒーロー・モトコープ(インド)」、「江門市大長江集団有限公司(中国)」など、インドや中国の新勢力がシェアを伸ばしており、国内4社を脅かしつつあります。
バイク業界の職種
一つのバイクを作り上げるにもたくさんの人の力が必要になり、職種もさまざまなものが用意されています。
ここでは、バイク業界の特有の職種のうち代表的なものを紹介します。
技術職系
バイクメーカーでは技術職が花形職種であり、さまざまな技術系の仕事が用意されています。一例を紹介します。
<設計開発>
新規で作るバイクのコンセプトを決め、エンジン・ボディ・ブレ―キなど、各部の細かな仕様を設計していく職種です。
ゼロからバイクを考案していくため、専門的な技術知識が必要となります。
機械系、電気電子系など、理系学部出身の人が活躍しやすい職種です。
<バイクデザイン>
グラフィックソフトなどを利用し、バイクの外観や各種パーツの「デザイン」を考えていく職種です。
狭き門となり、主に美大や芸術系の学部出身で、プロダクトデザインやバイクデザインなどを学んだ人が活躍しています。
<車両テスト>
新たに開発したバイクの性能をテストする職種です。
衝突テストや耐久テストを何度も重ね、品質を上げていきます。
「テストライダー」とよばれる、テスト走行専属のドライバー職もあります。
営業
「営業」は、国内外のバイク販売会社や代理店と交渉し、自社のバイクを売る販路を開拓していく職種です。
日本のバイクは全世界がターゲットとなりますので、海外に向けて営業を行う機会も多いです。
したがって、バイクメーカーの営業では語学力も求められてきます。
販売
「販売」は、バイク販売店の店頭にて、バイクを購入したいお客さまに向けてセールスを行う職種です。
店頭で多くのお客さまと触れ合い、バイクの魅力を伝える職種となりますので、人柄的も重要になってきます。
※なお販売の仕事がしたい場合、就職先はバイクメーカーではなくバイク販売会社となってきます。
バイク業界のやりがい・魅力
バイクに仕事として関われる
バイク業界に就職すると、常日頃からバイクについて考えることが仕事となります。
設計開発であれば、どんなバイクが求められ、どんなバイクを作り上げるべきかを日々考えます。
販売であれば、どのようにすればバイクの魅力をお客さまに伝えられるかを日々考えることになります。
そのようにバイクが生活の一部になってくるのがバイク業界であり、バイクそのものが好きな人にとっては、この上ない業界といえるでしょう。
優秀な人材や技術の集まる環境である
バイクメーカーには、バイクという高度な機械を作りあげるべく、世界中から優秀な人材が集まっています。
またたとえば「ホンダ」では、バイクだけでなく4輪自動車の開発部門も社内にあり、お互いの部門で技術交換などが行われることもあります。
バイクメーカーに採用されると、そのような優秀な人材や技術の集まる環境で働けますので、特に技術者志望の人にとっては大きな刺激となってくるでしょう。
安定した業界である
自動車と同じく、バイクも日本を代表する基幹産業です。
バイクメーカー主要4社は、いずれも歴史ある大企業であり、収入、福利厚生ともに申し分ない待遇です。
業界全体の平均年齢も約40歳と高く、転職や離職も少ない業界のため、定年まで安定して働ける環境があります。
ただし昨今は「若者のバイク離れ」などが影響し、国内市場の先行きが不安になってきていますので、その点は頭に入れて置く必要があります。
バイク業界の雰囲気
バイク業界にはさまざまなタイプの人がいますが、皆に共通するのは「バイク好き」であることです。
何かしらバイクに魅せられた人たちが集まってきている業界ですので、年齢や性別が異なっても、社員同士バイクを通じて繋がれる環境があります。
バイクを好むだけあってアウドドアな社員も多く、休日は同僚同士でツーリングやキャンプにいく社員も多いようです。
バイク好きな人であれば比較的働きやすい業界といえるでしょう。
一方で、バイクメーカーはどの会社も老舗企業ですので、古くからの年功序列の風潮も残ってもいる側面もあります。
バイク業界に就職するには
就職の状況
バイク業界の多くの会社は、新卒者を対象とした定期採用を行っています。
大手バイクメーカーであれば、毎年150人〜200人程度の新卒社員を採用しています。
新卒採用では、以下大きく3つのコースに分けられ募集されることが多いです。
<技術職コース>
技術職コースは、設計開発・車両テスト・生産技術・デザイン・品質管理など、技術的な仕事を将来行いたい人向けのコースです。
さらにホンダでは「職種別採用コース」という、応募時に職種・配属先を具体的に指定できる採用方式も用意しています。
<事務職(総合職)コース>
事務職コースは、営業・経理・財務・法務・人事・生産管理・購買などの仕事を将来行いたい人向けのコースです。
<一般職コース>
一般職コースは、営業事務・生産管理事務・その他さまざまな部門での事務的なサポート業務を将来行いたい人向けのコースです。
応募の傾向としては、「ホンダ」「ヤマハ」「スズキ」「カワサキ」の主要4社は、知名度的にも抜群の大手メーカーであるため、毎年多数の応募があります。
またこの4社はバイク事業以外にも幅広い事業を手掛けているため、たとえば「バイクではなく自動車が作りたくてホンダを志望した」という学生とも競合する形となります。
したがって、バイクメーカーへの就職は狭き門となり、内定を勝ち取るには相応の努力が必要になってくるでしょう。
就職に有利な学歴・大学学部
有利な学歴や学部は、募集コースによって異なってきます。
<技術職コースで有利な学歴・学部>
技術職コースでは、高専卒・4年制大学卒以上の学歴を対象としている企業が多いです。
有利になる学部は、機械・電気・電子・情報・材料・化学など理工系学部です。
<事務職コースの有利な学歴・学部>
事務職コースは、4年制大学以上の学歴を対象としている企業が多いです。
事務職コースでは、学部で有利不利が生じることは基本的にありません。
<一般職コースの有利な学歴・学部>
一般職コースも、4年制大学以上の学歴を対象としている企業が多いです。
ただし「ヤマハ」などは、短大、専門学校も募集に含めています。
一般職コースでも、学部で有利不利が生じることは基本的にありません。
この3つの中で最も制限が厳しいのは技術職コースです。
また技術職コースでは「学校推薦制度」を導入しているケースも多く、学校からの推薦があればさらに採用で有利になることがあります。
就職の志望動機で多いものは
バイク業界への就職を目指す学生には、「バイクが好き」という人が多いです。
たとえば「バイクいじりやツーリングが大好きで、それを仕事にしたかった」、「機械としてバイクに関心があり、大学でもそのような分野を学んでいた」などがあげられます。
中にはモトクロスなどで学生レーサーとして活躍し将来的にはバイク作りに携わりたいという、バイクが人生そのものになっている学生も志望してきます。
程度に差はあるものの、やはりバイクに何かしらの興味を持った学生が応募してくるのがバイク業界です。
ただし、バイクが好きというのも立派な志望動機であり、決して悪いわけではありませんが、それだけでは弱い部分もあります。
「その会社で仕事として何がしたいか」、「将来どのようになりたいか」、「どのように会社に貢献したいか」の部分まで掘り下げた上で伝えるのがよいでしょう。
バイク業界の転職状況
転職の状況
バイク業界では、新卒者を対象とした定期採用のほか、既卒者を対象とした「中途採用」も行われています。
「ホンダ」「ヤマハ」「スズキ」「カワサキ」のバイクメーカー主要4社は、アベノミクスによる円安政策なども後押しとなり会社業績は好調で、中途採用も積極的に行っています。
中途採用者向けの説明会やセミナーも積極的に行っており、求人も通年に渡って出されております。
ただしこの主要4社は知名度の高さから中途採用でも大人気であり、応募が殺到します。
大手企業出身で優秀なキャリアをもつ転職者も多々応募してきますので、簡単に転職が決まるとはいい難い業界です。
転職の志望動機で多いものは
バイク業界へ転職を目指す人には、新卒学生と同様に「バイクが好き」、「バイクをつくりたい」という人が多いです。
ただし「他社でのバイク開発経験を活かし、御社で〇〇なバイクを作りたい」、「これまで4輪自動車の開発を行ってきたが、個人的に好きな2輪に挑戦したかった」など、より具体的な経緯を持って志望する人が多いです。
転職者の場合もバイクが好きであることに越したことはありませんが、単に好きなだけでは新卒以上に通用しにくいです。
バイクが好きであることを、これまでの職務や経歴を交えて伝えることが重要となってくるでしょう。
転職で募集が多い職種
バイク業界の転職で募集が多い職種は、設計開発、デザイン、生産技術といった技術職です。
また、数は減るものの営業・マーケティング、宣伝広報など事務職も積極的に募集されており、新卒時よりかは技術職:事務職の割合比率のバランスが取れています。
いずれの職種も、他社である程度の経験を積んだ20代後半以上の人をターゲットとし、募集されているケースが多めです。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
バイクメーカーの中途採用では、優秀なキャリアをもつ転職者も多数応募してきます。
したがって、単に同業種での経験があるだけでなく、「〇〇分野において濃い経験がある」、「その会社にはない技術知識を持っている」など、ライバルと差別化できる経歴やスキルが必要になってくるでしょう。
一方、バイク販売会社での「販売職」においては、人手不足が進んでいることもあり、経験はさほど重視されないことが多いです。
販売職であれば未経験であっても、熱意や情熱があれば採用されることもあります。
バイク業界の有名・人気企業紹介
ホンダ(本田技研工業)
1948年創業。連結売上高15兆8,886億円、連結従業員数219,722名(2019年3月期末)、国内最大手のバイクメーカーです。
バイクのシェア、販売台数ともに、国内トップ&世界トップの座に君臨します。
4輪自動車メーカーや航空機メーカーとしても有名であり、事業自体も多岐に渡ります。
ヤマハ(ヤマハ発動機)
1955年創業。連結売上高1兆6,731億円、連結従業員数53,977名(2018年12月期末)、国内準大手のバイクメーカーです。
ホンダに次ぐ世界シェア2位となり、海外の売上が9割近くを占めています。
バイクの他にも、自動車エンジン・発電機・産業用ロボットなどさまざまな機械製品を手掛けています。
スズキ
1920年創業。連結売上高3兆8,714億円、連結従業員数67,721名(2019年3月期末)、国内準大手のバイクメーカーです。
バイクのシェアは国内3位、世界8位となります。
今現在はバイクよりも4輪自動車の方が主力事業となっており、コンパクトカーや軽自動車において国内で高いシェアを持ちます。
カワサキ(川崎重工業)
1896年創業。連結売上高1兆5,947億円、連結従業員数35,691名(2019年3月期末)、国内準大手のバイクメーカーです。
バイクのシェアは国内4位となり、前述した3社よりかは劣りますが、小型中型のスポーツバイクに強みを持ち、世界中に一定数のファンを持ちます。
また、造船・鉄道・環境プラント・宇宙開発と幅広い重工業を手掛けています。
バイク業界の現状と課題・今後の展望
トップは死守しているが新勢力に脅かされつつもある
日本のバイクは世界的に高い評価を得ており、実際にホンダが世界シェアトップの座に君臨しています。
しかし昨今、インドのバイクメーカー「ヒーロー・モトコープ」が急速にシェアを伸ばしています。
ヒーロー・モトコープ社はもともとホンダとの合併会社でしたが、2011年に合併を解消して以来独自路線を進み始め、ここ数年でホンダを脅かすほどに成長しつつあります。
そして、ヒーロー・モトコープ社の本拠地ともなるインドは、膨大なバイク需要のある国です。
ヒーロー・モトコープ社という新たな強豪相手に、インド市場での競争をどう勝ち抜いていくかが今後の焦点ともなってくるでしょう。
排ガス規制に合せた技術開発が必要となる
バイクの「排ガス規制」は、2000年以降度々行われてきました。
今後2020年には更に厳しい排ガス規制が予定されており、欧州の「EURO5」と同等の規制値になる見通しです。
こうした規制が進む中、排ガスを効率よく減らすための新技術がバイクメーカーに求められています。
しかしバイクは価格の安さもウリですので、排ガス装置を付ける分、車両価格が高くなってしまっては意味がありません。
「価格を抑えつつ排ガスを減らす」、これが今後のバイクメーカーの課題となってきます。
業界としての将来性
海外市場でのバイク売上は好調ですが、今問題となっているのは国内市場です。
ここ数年で「若者のバイク離れ」が進んでおり、バイクユーザーの高齢化が進んでいます。
特に50㏄の原付バイクを利用する若者が激減しており、国内での原付バイクの売上も急速に落ちています。
こうしたバイク離れは、単に目先の売上を脅かすだけではありません。
将来的にバイク業界を目指す若者が減り、バイク業界や産業そのものが衰退する原因ともなりえます。
これからの社会を担う若者たちに、いかにバイクの魅力を伝え、いかにバイクに興味を持って貰えるかが、この業界の将来を左右するでしょう。
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