試用期間とは

就職・転職活動時、採用先から「〇か月間の試用期間を設ける」というような条件を出されるところもあるでしょう。

求人票でもよく見かけるこの「試用期間」、一体どんな期間なのでしょうか。

試用期間中の給与や社会保険、そして試用期間中の退職などにまつわる問題についてご紹介します。





試用期間は何のためにある?

就職・転職活動をしている方の中には、求人票に「試用期間」の文字を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

現在多くの企業がこの「試用期間」を設定しているようです。

企業が試用期間を設けているのには、理由があります。

本採用を前に、社員の仕事の能力などの適性を見極め、本採用までに足りない部分を指導するための期間が、試用期間なのです。

そのため、試用期間には本採用後に任せたいと企業が考えている部署で研修を受けたり、どんな部署に配属してもよいように試用期間を比較的長期にして、複数の部署の仕事を経験させる企業もあります。

試用期間は本採用を想定して設定される期間ですから、試用期間の終了とともに解雇されることはありません。

ただし、解雇されるような正当な理由があれば、話は別になります。

試用期間の解雇・クビはある? 解雇の理由で多いのは?

試用期間に解雇される可能性は皆無ではありません。

試用期間は、法的にみると、「”社員を解雇する権利”を留保した雇用期間」ということになります。

しかしながら、試用期間であっても、社員は社員ですから、たとえば以下の理由で解雇になることはありません。

・上司が試用社員のことを「生理的に受け付けない」から。
・試用社員の話し方が気に入らないから。
・時間外で行われている社内の一部の飲み会(任意)にまったく出席しないから。

では、解雇される理由としては、どんな理由が多いのでしょうか。

・新人研修後も同じ失敗を繰り返し、企業の業績を悪化させた。
・外部対応ができず、成立するはずだった商談を破談にさせ、結果業績にマイナスの影響を及ぼした。
・無断欠勤を繰り返した。

以上のような理由の場合、解雇する「正当な」理由となり得るため、該当するようなことがあれば、解雇される可能性はあるでしょう。

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試用期間の給料、ボーナスは?

では、社員としての資質・適性が試されているこの試用期間に、一体どれくらいの給料、ボーナスが支給されるのでしょうか。

実は、試用期間中の待遇面については、企業によってかなりの差があります。

試用期間の月給

正社員と変わらない額を支給するところもある一方で、正社員の6~8割程度におさえている企業が多いようです。

中にはアルバイトと変わらないような額の企業もあるようなので、求人票の給与の欄はよくチェックしておきましょう。

試用期間のボーナス

試用期間は、ボーナスが満額支給される企業は少ないようです。

まったく支給されない企業もあれば、「寸志」などと称して正社員の20%程度のボーナスを支給する企業もあります。

このように、試用期間中の給与やボーナスは、比較的少額なのですが、これには理由があります。

試用期間の社員は、正社員に比べて一人で企業が要求するレベルの仕事をこなせる人は少ない…と見立てている企業が多いからです。

よって、試用社員に対して一人分の人件費を満額支給する企業は少ないのです。

試用期間の残業代は?

試用期間の給与やボーナスについては、正社員に比べて少額であるケースが多いことがわかりました。

では、試用期間に残業した場合、残業代は支給されるのでしょうか。

試用期間といえど、仕事の適性等を見極めるための期間ですから、仕事量が正社員よりも少ないというわけではありません。

また、試用期間と言っても、社員は社員ですから、残業代も支給されます。

なぜなら、残業をするからには、企業にはたとえ試用期間であっても残業代を支払う義務があるからです。

具体的に、労働基準法により原則として、

・1日8時間を超過した場合
・会社の定める休日に勤務した場合
・22時~翌朝5時という時間帯に勤務した場合

上記のような場合は、法に定める「割増賃金=残業代、休日出勤代、夜間勤務代」を支払わなければなりません。

8時間を超過した時点で、残業代が発生するということですが、この条件は試用期間でもかわりありません。

ただ、現実的には試用期間に何らかの事情によって残業代が支給されなくとも、自ら申請する社員は少ないでしょう。

本採用後の立場を考えると、申請しにくい方が多いと考えられます。

しかしながら、法的にはご紹介したように残業代は支払われてよいはずです。

自信をもって残業代を請求するためにも、試用期間だからこそ正社員の方に負けないような勤務態度が必要になるでしょう。

試用期間は何か月が多い?

このように、正社員に比べて待遇面に不安が残る試用期間ですが、だいたい何か月程度継続されるものなのでしょうか?

試用期間の平均期間は、3か月程度となっています。

多くの起業では、3か月前後で試用期間を終え、何事もなければそのまま本採用という運びになります。

試用期間を設けず、いきなり本採用という企業もあります。

業種・職種によっては、特定の資格所有者のみを採用する企業もあります。

そのような場合、「この資格を持っている」ということで、ある程度の知識力、経験力があることがわかるため、あまり長い試用期間を設ける必要はない、と企業が判断します。

すると、試用期間は1か月などの短期間で済むということになります。

一方、長期間現場で勤務してみないと社員の適性を判断できないような業種・職種の場合は、6か月から1年程度の長い試用期間を要することもあります。

このような理由から、短くて1か月、長くて1年未満の試用期間の幅が生じます。

しかし、このような例は特殊であり、多くの企業は上述したように3か月程度の期間を設定しています。

法的に、試用期間の上限に関する定めはありません。

しかし、待遇面・社会的立場が不安定な試用期間ですから、あまりにも長いと不安になるでしょう。

できれば、求人情報を確認する段階で、試用期間の長さを確認したいものです。

試用期間の社会保険は?

社会保険は、「医療保険」、「年金保険」、「介護保険」の3つの保険を含んでいます。

これらは、老後、病気・ケガをしたときなどのために、支払の義務があるもの(一部年齢制限あり)です。

このような大切な社会保険に、試用期間だからという理由で加入しないと言うことはあり得るのでしょうか?

基本的に、試用期間といっても社員は社員ですから、企業には試用期間であっても社会保険に加入する義務があります。

ただし、以下のような「例外」も存在します。

・勤務時間が正社員よりも短い

このような場合、社会保険の加入者条件を満たしていないことから、社会保険への加入が困難になる場合もあります。

ただ、正社員と同じ勤務時間の場合は、社会保険に加入する義務が企業にはあるのです。

それなのに「試用期間につき、社会保険は未加入」という条件を企業が提示し続ける場合、以下のような対処法が考えられます。

・社内の社会保険取扱部署に相談
・最寄の年金事務所に相談

まずは社内で解決する努力が必要です。

社会保険取扱部署は、企業によって名称が異なりますので、勤務先の部署を確認しましょう。

社内部署に相談しても、社会保険未加入を貫く場合は、最寄の年金事務所へ相談しましょう。

年金事務所から社内へ、社会保険の加入条件についての確認をしてくれるはずです。

年金事務所から連絡が行けば、あなたが直接交渉するよりも社会保険加入について企業も前向きに検討してくれるでしょう。

試用期間の延長はある?

給与、ボーナスは正社員に比べて少額であることが多く、社会的立場とともに収入面でも不安定な試用期間ですが、この期間が延長されることはあるのでしょうか?

たとえば、求人票では「3か月の試用期間」と表記されていたにもかかわらず、上司等の意向によって延長されることは、基本的にあってはならないことです。

それは、試用期間が延長される場合、「就業規則にあらかじめ延長の可能性が記されている」ことが条件となるからです。

就業規則には雇用期間3か月とあるのに、上司の「もう少し様子をみたい」というような個人的判断によって雇用期間を延長することはできません。

ただし、以下のような「合理的な理由」がある場合に限って、雇用期間は延長されることもあります。

・試用期間中に病欠などの理由で長期欠席をしたため、十分に試用社員の仕事の能力等を把握できていない
・試用期間だけでは、企業が設定している判断基準を査定することができなかった

このような場合は、企業が雇用期間の延長することができます。

試用期間に退職したらどうなる?

雇用期間中には、就職・転職活動時には見ることができなかった企業の内情を知ることができるでしょう。

また、実際に勤務してみて、業務内容や人間関係について、耐え難い苦痛、ストレス、求人票との食い違いなどがあったら、試用期間であっても退職したいと思うかもしれません。

でも、本採用前の試用期間に退職したらどうなるのでしょうか。そもそも、試用期間に退職することは可能なのでしょうか。

実は、試用期間であっても退職することは可能です。

ただし、試用期間と言っても社員に変わりはないのですから、就業規則に沿った行動をする必要があります。

たとえば就業規則に「退職する場合、退職日の3か月前までに申し出ること」とあれば、その規則を守る必要があります。

つまり、「明日から来ません」は通用しないのです。

一方で、民法627条には、「退職を申し出てから 2 週間で雇用は終了する」という記述があります。

つまり、就業規則では2か月前とあっても、法的にはあなたを企業に拘束する力は退職の申し出から2週間しかないということです。

あなたは退職の意を上司に表明してから、2週間後には退職できる権利があるということになります。

退職後は、また新たに職を探す自由がありますが、退職の前に以下のことは最低限済ませておきましょう。

・お世話になった教育係へのお礼(言葉でも、ちょっとしたお菓子・文具でもよい)
・自分が現在抱えている仕事を最後までやり遂げる
・引継が必要な場合は、マニュアルを作成するなど、落ち度のない引継を行う

このような心配りによって、比較的円満退職に近い形で退職できるかもしれません。

試用期間に辞めたくなったときの退職理由は?

試用期間でも、就業規則に則って退職することができます。しかし、企業には何と言って退職すればよいのでしょうか?

退職理由として不適切なのは、以下のような理由です。

・上司との相性が合わなかった
・教育係から意地悪をされた
・イメージしていた仕事内容と違った
・残業が多すぎて身体が不調をきたしている

このような理由に共通するのは、「悪いのは私ではなく、企業だ」と位置付けている点です。

企業側は、責められたと感じ、あなたへの評価も悪化するでしょう。

退職するから、好きなことを言ってよいわけではありません。

同業種で転職する場合には、退職時の評判が転職先に伝わらないとは限りません。

退職時にもできるだけ波風を立てないよう、以下のような退職理由が望ましいでしょう。

・今の仕事以外に、やりたいことを見つけたので、退職を希望します。

このような理由は、誰も傷つけず、前向きな理由のため、上司にも伝えやすいでしょう。

間違っても企業や社員を非難するような表現は避けましょう。

試用期間で退職するときの手続き、退職届の書き方

試用期間に退職する時、正社員が退職する時とは違いがあるのでしょうか。

実は、試用期間であっても、退職時の手続きに違いはありません。

直属の上司にアポイントをとる

退職を最初に表明すべき人物は、企業の代表者や先輩、同僚ではありません。

あなたの直属の上司に表明しましょう。

ただし、大きな企業だと、毎日上司と顔を合わせられるとは限りません。

「仕事のことでご相談がありまして…」と、「退職」を匂わせないような理由でアポイントをとりましょう。

直属の上司に退職の意を表明する

まずは書面ではなく、アポイントをとった日時に直接上司に会って、口頭で辞意を表明しましょう。

このとき、前述したように、「今の仕事の他に、やりたい仕事がありまして…」などの理由を述べましょう。

この時点で引きとめられないように、企業に対する不満を正直に話すことは避けたほうがよいでしょう。

【例文あり】退職届を書いて提出する

退職届には、上司に口頭で説明したような退職理由を書く必要はありません。

下記内容を縦書きで記載します。

                  退職届
                                   私事

 この度、一身上の都合により、来たる平成29年度〇月×日をもって退職致します。

平成29年度〇月△日
        営業部営業一課
                             田中 花子(印鑑)

株式会社×××
    代表取締役社長   鈴木 太郎様

このように、必要最低限の事項のみを記述しましょう。

この記事のまとめ

試用期間は、企業があなたの仕事に対する姿勢や、実際の能力を確認するための期間です。

そのため、本来はこの期間で企業に慣れ、戦力となれるような努力が必要です。

しかし、万が一試用期間に退職したくなったなら、ご紹介したような手続きが必要となります。

試用期間を経て、無事に本採用を迎えるためにも、試用期間について事前によく調べておくことで、試用期間のトラブルを予防できるでしょう。

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