大卒のホテル業界希望者はどんなキャリアパスが考えられるのか?
ホテリエ貞吉です。現在、40代後半でサラリーマンをしております。
2021年も残すところ40日を切りました。
2022年を迎えたら就職活動を迎える大学3年生もいらっしゃるでしょう。
進みたい業界を絞れず、様々な業界を検討されている方、一度ご自身がアルバイトをされている業界やこれまで培ってきた経験に目を向けてみてはいかがでしょうか?
飲食店ならば、そのまま飲食業界と言いたいところですが、そこから発展するとご自身では想像できない様々な展開があります。
今回は、私が20年ほど携わってきたホテル業界でのキャリアアップを紹介しながら、様々な可能性があることをお伝えしたいと思います。
ホテル=接客だと思っていた学生時代
私がホテル業界に興味を持つようになったのは大学3年生です。
当時の就職活動本でこれまで自分が学んだこと、経験をしたことを自己分析していました。
旅行に行ったこと、部活(私は大学時代体育会のアーチェリー部におりました)など様々な経験をしたのですが、他の人にはないユニークな経験だと思ったのが「ホテルに泊まること」だったのです。
というのも、私の祖父がホテルが大好きで、孫である私が遊びに行くと必ずホテルのレストランに連れて行ってくれました。
ホテルの優雅な空間、ホテルで働く方の洗練さに幼心ながら憧れをいただいていました。
そして、その祖父の子である私の母も影響を受け、結婚するまではホテルの婚礼受付(今でいうウェディングプランナー)の仕事をしていたため、自然とホテルの仕事を聴く機会が他の方よりも多かったように思います。
過去を振り返ると「ホテルに接する時間が人よりも多いかもしれない」という思いから、ホテル業界を目指すことにしました。
次に就職試験での面接対策として、「ホテルに入ったら何をしたいのか?」を考えるのですが、それがどう考えても浮かばない笑。
浮かばないというのは「やりたいことがない」のではなく、「ホテルにどんな仕事があるのか分からない」そんな状態でした。
それは無理もなく、私がこれまで接していたホテルの方はフロント、レストランや宴会場のウェイターなど接客するスタッフの方ばかり。
ホテルの中の組織、仕事の役割を知るのは就職後になります。
入社して知ることになるホテルの組織
就職時に面接で「ホテルでやりたいことは何か?」という質問が出ましたが、「ウェディングプランナーや企業のパーティーをコーディネートする仕事をしたい」と答え、見事入社することが出来ました。
しかし入社後に、ホテルの仕事の深さを知ることとなります。
メーカーや金融などと同様、総務、人事、経理などの一般管理部門と呼ばれる部署、営業や広報など営業に関わる仕事もありますが、さらに驚いたのが奥行きの深さ。
レストラン一つとっても、バスボーイ(食器類の後片付けやテーブルセッティングなど補助的業務をする担当)、ウェイター、ヘッドウェイター、レストランマネージャーと段階的に役割が用意されています。
客室もハウスキーピング(客室清掃)、ドアマンやベルマン、フロント、コンシェルジュなどがあります。
客室部門も部署ごとになっている点はレストランと異なりますが、段階的な役割が用意されている点では同じです。
また、部署のみならず職位も様々。
入社した後はチーフ(主任)、マネージャー(係長)、支配人(課長)、総支配人(部長以上)が段階的に用意されています。
ソムリエやコンシェルジュなど一つの職務を全うしたいという方には専門的な職位を用意されるし、20代では接客を経験した後にホテル経営の中枢に携わりたい方は総支配人までステップアップすることが可能です。
20代~30代で起業したり、役員として仕事をされるケースも!
私が新入社員だった20年前まではホテルに入社したら、国賓級のゲストをおもてなしするために専門的な職務を極める方、逆にホテル内でステップアップして総支配人を目指す方の2つのパターンがほとんどでした。
しかしこの数年、SNSで個人が容易に情報発信ができるようになったこともあり、学生時代からホテルを起業するケースも出てきました。
その最たる例が龍崎翔子さん。株式会社L&Gグローバルビジネスの代表取締役をされていますが、フジテレビ「7ルール」でも取り上げられていたのでご存知の方も多いと思います。
彼女は小学生の頃、家族旅行で訪れたアメリカで単一的なホテルに飽きがさして「もっと気分の上がるホテルを作りたい」と思い、大学進学後に北海道・富良野でホテルを開業しました。
現在では全国数か所展開をしていますが、20代でホテルを起業したケースになります。
その他にも、私の友人、知人では大学卒業後にホテルに入社。
現場経験を重ねたのちにアメリカのホテル経営学部で学位を取得し帰国。
ホテルを専門とする不動産投資会社で活躍をされています。
このように、単に一つの会社に入ってキャリアアップするだけではなく、ホテル不動産を専門とすることでキャリアアップすることも起業することも可能なのです。
最後に、「ホテル業界で就職したいけれど、キャリアアップの道筋を知りたい」という方にオススメの一冊を紹介します。
2021年10月にオータパブリケーションズから出版された『惚れるホテルを創る愛されるホテリエたち』(近藤寛和著)という一冊です。
20代~40代前半のホテリエ5名の取材により彼らのキャリア、信条などが語られている一冊です。
取り上げられている方々はいずれも起業や管理職の立場をされている方ばかりなので、5年後、10年後の自分を重ね合わせる意味でも一読をお勧めいたします。
ホテルなどのサービス業への就職を考えている方は「お給料はどうなんだろう…」「拘束時間が長いのでは」とネガティブ要素を考えがちですが、入った後でも様々なキャリアを築くことができる業界です。
ぜひこれからの日本の観光業を担う方が増えることを願っております。