法務教官になるには
法務教官になるまでの道のり
採用試験を突破する
法務教官になるには、法務省専門職員(人間科学)採用試験の法務教官区分を受験し、合格する必要があります。
この採用試験は、受験する年の4月1日に21歳以上30歳未満の人なら誰でも受験できます。
また21歳未満であっても、大学・短期大学・高等専門学校の卒業者や卒業見込み者は受験が可能です。
採用試験は1次試験と2次試験があり、1次試験は基礎能力試験と専門試験、2次試験では人物試験(個別面接)・身体検査・身体測定を行います。
希望管区に面接を申し込み、内定を獲得する
2次試験も突破し最終合格となると、法務教官の採用候補者名簿に載ります。
採用候補者名簿は得点の高い人順に並んでおり、有効期限は1年間です。
なお採用候補者名簿に載ったすべての人が即時に採用されるわけではなく、その後は自分の希望管区に面接を申し込み、そこで内定を獲得してはじめて配属となります。
希望管区の面接の前には施設見学を申し込み、実際に自分が勤務するイメージを膨らませてから面接に臨むのもよいでしょう。
希望管区がとくにない場合は、全国の管区へ面接を申し込むこともできます。
ただし数年ごとに訪れる異動の際は、最初に採用された管区内での異動が原則です。
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法務教官の資格・難易度
法務教官の採用試験を受けるために、特定の資格は必要ありません。
しかし法務教官として働くうえで、持っていると役立つ資格がいくつかあります。
ここでは、法務教官の仕事に役立つ資格を3つ紹介します。
外国語関連の資格
まずは、英語やポルトガル語などの外国語関連の資格が法務教官の仕事に役立つ可能性があります。
なぜなら、法務教官は日本人だけではなく外国人の非行少年を担当するケースもあり、そのなかには日本語での日常会話もままならない少年もいるからです。
とくにブラジル出身の少年は、公用語のポルトガル語しか満足に話せない場合もあり、こういった少年の支援を支援するうえでポルトガル語が話せる法務教官はとても重宝されます。
英語力をあらわす「TOEIC」や、ポルトガル語の能力を測定する「Celpe-Bras(セルピブラス)」などを受験しておくのもよいでしょう。
公認心理士
公認心理士とは、臨床心理学の知識や技術を用いて心理的な問題を解決する専門家です。
法務教官が少年犯罪の原因を見極めて適切な指導を行ううえで、公認心理士の知識を生かせる場面は多いでしょう。
実際に少年の心理判定を行うのは法務技官ですが、法務教官は法務技官とのカンファレンス(会議)を通じて指導計画を立てる役割もにないます。
その際に少年心理に精通していることは大いに役立つため、持っていれば強みとなります。
自動車運転免許
法務教官は車で外部へおもむくことはほとんどなく、また居住地も少年院に隣接している宿舎に住む場合が多いため、仕事上車を使う機会はあまり多くありません。
しかし少年院での勤務の場合、少年に職業訓練の一環で指導する場合がありますので、法務教官自身も自動車運転免許は取得しておいたほうが望ましいでしょう。
法務教官になるための学校の種類
法務教官は年齢条件さえ満たしていれば学歴に関係なく受験が可能です。
しかし試験のレベルは「大学卒業程度」となっているため、一般的には大学卒業後に受験する人が多いでしょう。
大学の学部・学科に関しては「この学部でなければ合格は難しい」といったものはなく、さまざまな学部・学科の出身者が法務教官として活躍しています。
とはいえ、実際に法務教官として働くうえで持っておくと役立つ知識があるのも事実です。
たとえば、心理系の学部で人間心理について学ぶのも有効でしょう。
法務教官は非行少年の心と向き合い、その原因や背景を探っていくのも役割の一つであるため、少年心理や犯罪心理について理解していることは大きな強みとなります。
また法務教官は、矯正指導や資格取得のための指導といった教員のような業務も行いますので、教育系の学部で「教育」について学ぶのもよいでしょう。
ただし法務教官として必要な知識は、採用後の研修や実際の現場で身につけるものであり、いずれの進路を選んだとしても不利になることはありません。
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法務教官に向いている人
法務教官の使命は、罪を犯した少年を社会復帰へ導くことです。
その使命を果たすためには個々の少年とじっくり向き合い、なぜ罪を犯してしまったのか、今はどんな悩みを抱えているのかなどを一つひとつ紐解いていかなければなりません。
そのため、「相手の立場で物事を考えられる人」や「コミュニケーション能力の高い人」が法務教官には向いています。
また更生プログラムを継続的に実施しても、少年たちの意識や考え方がすぐに変わるとは限りません。
長い期間をかけて少年たちと対話していくことが大切であり、「忍耐力のある人」でなければ務まらない仕事です。
法務教官のキャリアプラン・キャリアパス
法務教官採用試験に合格し採用となったあとは、新規採用職員を対象とした「基礎科研修」を矯正研修所支所で受講します。
5年目には専門性を向上させるための「応用科研修」を受講し、採用後5〜6年を目安に専門官へと昇任します。
昇任については「能力主義」の人事管理が行われており、実力のある人は統括専門官(課長相当)や首席専門官、施設長などへのキャリアアップの道も開かれています。
法務教官を目指せる年齢は?
法務教官採用試験の年齢制限は21歳以上30歳未満となっていますが、30歳以上の人でも40歳未満であれば、社会人枠での採用もあります。
試験内容は30歳未満と同じで、1次試験は基礎能力試験と専門試験、2次試験では人物試験(個別面接)・身体検査・身体測定が実施されます。
法務教官を目指せる年齢は「39歳まで」と覚えておきましょう。
法務教官は高卒から目指せる?
法務教官採用試験は年齢以外に受験者の制限がないため、学歴に関係なく受験できます。
そのため最終学歴が高卒や中卒で採用試験を受験し、法務教官として働いている人も実際にいます。
ただし採用試験のレベルは大卒程度となっていますので、高卒時点で足りていない知識は自分自身で補う努力をしなければなりません。
法務教官は女性でもなれる?
法務教官は女性も目指せる職業です。
法務教官採用試験はさらに「法務教官A」と「法務教官B」に分かれており、法務教官Aは男性、法務教官Bは女性が受験できる区分となっています。
採用試験の実施状況は人事院の採用試験ページで公表されていて、2020年度の法務教官B(女性)の申込者数は400名、最終合格者は95名、倍率は約4.2倍です。
同年の法務教官A(男性)の倍率は約4.4倍となっており、年度によって差はあるものの、「女性のほうが合格は難しいのでは…」といった心配は不要でしょう。