タイヤ・ゴム業界(読了時間:13分37秒)

タイヤ・ゴム業界とは

ゴム製品には、たとえば輪ゴム・パッキン・ゴム手袋といった日用的なゴム製品、建築物の基礎に用いられる「免震ゴム」、工場の生産ラインで用いられる「ベルトコンベア」など、さまざまな種類があります。

そのようなゴム製品の開発や生産を日々行っているのが、タイヤ・ゴム業界です。

加えてもう一つ忘れてはならないゴム製品が、自動車の「タイヤ」です。

自動車のタイヤは、ゴム製品の中では最も需要が高く、最も大きな市場を持ちます。

ゴム業界=タイヤ業界といわれるほどです。

実際に、タイヤ・ゴム業界の売上ランキング上位に位置する企業は、そのほとんどが「タイヤメーカー」となっています。

そのように、ゴム、タイヤ、自動車の3つは密接な関係にあり、戦後のモータリゼーションとともにタイヤ・ゴム業界も成長を続けてきました。

今現在は、タイヤ・ゴム業界の市場規模は6兆円を越えており、自動車業界と同じく国内の基幹産業として栄えています。

タイヤ・ゴム業界の役割

たとえば自動車のタイヤの品質が悪いと、単に乗り心地が悪くなるだけはありません。

クルマを止める・曲げる・加速するが正しく行えなくなり、時に大事故に繋がる恐れがあります。

住宅に用いられる免震ゴムにおいても、品質が悪いと、大地震が来た際に正しく揺れを抑えられず、時に人の命を奪う恐れもあります。

そのようにゴム製品は命にもかかわる重要な箇所に用いられていることもあります。

ゴム製品の品質を上げ、より安全で快適な社会生活を提供することが、タイヤ・ゴム業界の役割でもあります。

また、ゴム製品の生成には「天然ゴム」などの天然資源も用いますが、天然資源に頼り過ぎると、いずれ資源枯渇の原因となります。

限りある資源の消費を最小限に抑え、その上で高品質なゴム製品を作ることも、この業界のミッションとなります。

タイヤ・ゴム業界の企業の種類とビジネスモデル

タイヤ・ゴム業界の一般的なビジネスモデル

タイヤ・ゴム業界のお客さまとなるのは、ゴム製品を扱う法人や、私たち一般消費者です。

たとえばタイヤメーカーであれば、ビジネスモデルは次のようになります。

・自動車メーカーに新車用のタイヤを卸し、利益を得る
・タイヤ販売店やカー用品店にタイヤを卸し、利益を得る
・メーカー直営の販売店で、タイヤをそのまま消費者に売る
・その他、工業用タイヤを建築現場に卸すなどして利益を得る など

ゴム製品を作り、それを必要としている人へ提供することで利益を得ています。

タイヤメーカー系の企業

タイヤメーカーの例としては、「ブリヂストン」「住友ゴム工業(ダンロップ)」「横浜ゴム(ヨコハマタイヤ)」「TOYO TIRE」などが挙げられます。

これらの企業はタイヤ作りを主力事業としており、タイヤの開発~生産~販売などを幅広く手掛けています。

たとえば最大手の「ブリヂストン」は、副事業としてベルトコンベアやホースといったタイヤ以外のゴム製品も作っていますが、あくまで主力事業はタイヤです。売上の大部分はタイヤ事業が占めています。

ゴムメーカー系の企業

ゴムメーカーの例としては、「オカモト」、「西川ゴム工業」、「鬼怒川ゴム工業」などが挙げられます。

これらの企業は、日用的なゴム製品、住宅用ゴム製品、自動車用のゴム製品など、タイヤ以外のゴム製品を中心に作っているメーカーです。

総合化学メーカー系の企業

総合化学メーカーの例としては、「JSR」「東ソー」「宇部興産」などが挙げられます。

これらの企業は、科学的に生成する「合成ゴム」の研究や生産などを行っています。

ただし、合成ゴム以外にもさまざまな化学素材を扱っており、ゴム事業だけに特化した企業ではありません。

海外勢力について

海外の勢力としては、「ミシュラン(フランス)」「グットイヤー(アメリカ)」などが挙げられます。

これらは歴史ある海外タイヤメーカーであり、世界的に高いシェアを持ちます。

現在、世界のタイヤシェアは、1位ブリヂストン、2位ミシュラン、3位グットイヤーとなり、この3社は長きに渡りトップ争いを繰り広げてきました。

加えて昨今は、「ハンコックタイヤ(韓国)」「中策ゴム(中国)」など中韓のタイヤメーカーが「安さ」を武器に勢力を伸ばしてきており、シェア争いに拍車をかけています。

タイヤ・ゴム業界の職種

タイヤやゴム製品を作り上げるには、たくさんの人の力が必要になり、職種もさまざまなものが用意されています。

ここでは、タイヤ・ゴム業界の特有の職種のうち代表的なものを紹介します。

研究開発

「研究開発」は、今後自社製品として扱う新たなゴム製品・ゴム素材の研究開発を行う職種です。

何度もシミュレーションやテストを重ね、より高品質で実用性の高いゴム製品を作り上げることとなります。

ゴム製品の開発には化学系の専門知識も必要になるため、物理・化学・金属・材料系など理系学部出身の人が活躍しやすい環境です。

マーケティング

「マーケティング」は、市場調査や需要予測を行い、ゴム製品のニーズを明らかにする職種です。

市場のニーズを分析し、「どのようなゴム製品を作っていくべきか」のビジネス的な戦略も練り上げます。

タイヤメーカーの場合は世界全体がターゲットとなるため、各国の自動車産業の現状やタイヤ需要を分析する必要もあります。

営業

「営業」は、将来お客さまとなりえる法人にBtoBの営業を行い、販路を広げていく職種です。

タイヤメーカーの場合、世界各国に営業拠点を設けており、海外の自動車メーカーやカー用品販売会社に営業を行うこともあります。

また、鉱山、建設現場、港などでもタイヤは用いられているため、営業先は想像以上に豊富です。

テストドライバー

タイヤ・ゴム業界特有の職種として「テストドライバー」があります。

新たに開発したタイヤを履いた車でテスト走行をし、タイヤの操作性や耐久性のデータを集める仕事です。

普通に車を走らせるだけでなく、過酷な環境を想定してのテスト走行なども行うため、高度な運転技術が求められます。

タイヤ・ゴム業界のやりがい・魅力

グローバルに活躍できる

タイヤ・ゴム業界は世界各国に複数の拠点を持っています。

たとえば最大手の「ブリヂストン」は、世界26カ国に約180の生産・開発拠点を持っており、グローバルな事業展開を行っています。

さらに若手社員を海外拠点に一定期間派遣し、海外でのビジネスを体験してもらう研修制度を設けている会社もあります。

「海外で働きたい」、「グローバルに活躍できる人材になりたい」といった人には魅力的な業界といえるでしょう。

一定の需要がある安定産業

タイヤやゴム製品というのは私たちの生活において必要不可欠なものであり、かつ買い替えが必要な「消耗品」ですので、一定の需要が継続してあります。

特にタイヤにおいては、バックに巨大な自動車産業がありますので、強靭な需要があります。

よってタイヤ・ゴム業界の企業の業績は安定しており、収入や福利厚生の待遇も良いです。

リストラなどが行われることも少なく、安定した環境で定年まで勤めたい人にとっては、魅力的な業界といえるでしょう。

ただし昨今は、世界的に自動車の需要が頭打ちになってきており、特に国内では「車離れ」が急速に進んでいるため、今後は少々不安定になっていく恐れもあります。

命を守る製品である

自動車のタイヤや住宅の免震ゴムは、人の命を守る製品です。

特にタイヤにおいては、クルマと路面を繋いでいる唯一の製品であり、高い信頼性が求められます。

陰ながら人の命を守ることに加担していることも、この業界ならではのやりがいとなります。

タイヤ・ゴム業界の雰囲気

タイヤ・ゴム業界では社員を大切にしている企業が多いです。

平均勤続年数も約16年と長く、社員の定着率も高いです。

以前は男性の多い業界でありましたが、昨今は女性社員、外国人、留学生などの採用も積極的に行っている企業が多く、さまざまな性別や国籍の社員が勤めるバラエティ溢れる業界になりつつあります。

またタイヤメーカーでは、やはりクルマ好きの社員が多いです。

女性社員でも「ドライブが趣味」、「学生時代はガソリンスタンドでアルバイトしていた」といった社員もおり、クルマ好きであれば男女問わず働きやすい業界といえるでしょう。

タイヤ・ゴム業界に就職するには

就職の状況

タイヤ・ゴム業界の多くの会社は、新卒者を対象とした定期採用を行っています。

大手であれば、毎年80人〜100人程度の新卒社員を採用しています。

新卒採用では、以下大きく2つのコースに分けられ、募集されることが多いです。

<技術職コース>
研究開発、製品開発、生産技術、品質管理など、技術的な職種を目指すコース

<事務職(総合職)コース>
国内営業、海外営業、マーケティング企画、物流、広報、総務、人事、法務など、事務的な職種を目指すコース

なおタイヤ・ゴム業界は、特に次のような学生に人気があります。
・大学で化学、物理学、材料工学などを専攻していた学生
・理系大学出身、理系学部出身の学生
・メーカー志望の学生
・自動車やタイヤに関心のある学生

タイヤやゴムに関心のある理系学生だけでなく、メーカー志望の学生も応募してきますので、内定倍率は高めです。

また大手ですと「インターンシップ」「職業体験」「工場見学」などを実施している企業も多いですので、確実に採用されるためには、これらの催しにも参加しておきたいところです。

就職に有利な学歴・大学学部

大手のタイヤ・ゴム企業の新卒採用では、技術職・事務職問わず、高専卒・4年制大学卒以上の学歴を対象としている企業が多いです。

技術職コースの場合は、理系学部出身の人が選考で有利になりやすいです。

特に、物理・化学(各種)・材料・金属・電子・電気・電子・情報などの学部出身者は歓迎されることが多いでしょう。

また技術職では「学校推薦制度」を導入しているケースも多く、学校からの推薦があればさらに採用で有利になることがあります。

事務職の場合は、全学部・全学科を対象としており、学部によって有利・不利が生じることは基本的にありません。

なおタイヤ・ゴム企業では、海外で働く機会も多いため、海外文化の理解・英会話力・留学経験・TOEICの点数なども評価の対象となりやすいです。

語学力などが買われ、海外からの留学生が大手企業に採用されるケースも増えてきています。

就職の志望動機で多いものは

タイヤ・ゴム業界への就職を目指す学生には、「タイヤに興味がある」という人が多いです。

たとえば「車好きが高じて、タイヤの特性に興味をもった」、「大学で化学系の知識を学び、素材としてタイヤに関心を持った」、「タイヤ開発を通じて、世の中の人の命を守りたい」などがあげられます。

文系の学生の場合は「グローバルに活躍したい」、「必要不可欠なゴム製品を広めることで社会貢献したい」などを志望理由にする人も多いです。

それらも立派な志望動機であり、決して悪いわけではありませんが、それだけでは弱い部分もあります。

「その会社で仕事として何がしたいか」、「将来どのようになりたいか」、「どのように会社に貢献したいか」の部分まで掘り下げた上で伝えるのがよいでしょう。

タイヤ・ゴム業界の転職状況

転職の状況

タイヤ・ゴム業界では、新卒者を対象とした定期採用のほか、既卒者を対象とした「中途採用」も行われています。

ただしタイヤ・ゴム業界は定着率が高く、離職者が少ないため、なかなか人員の空きがでません。

業績好調な大手タイヤメーカーであっても、中途採用の求人を稀にしか出さないことが多く、積極的に中途採用を募集している企業というのは少ないです。

また、自身の職務経歴やスキルを登録し、マッチする職種に空きが出た場合に企業側から紹介して貰える「キャリア登録制度」を実施している企業も多いです。

一方、次のような職種においては、慢性的な人手不足が進んでいますので、求人は常に出されている傾向があります。

・タイヤ販売会社での店頭販売員
・タイヤ製造工場での工場作業員 など

転職の志望動機で多いものは

タイヤ・ゴム業界へ転職を目指す人には、「企業の強み、企業風土」を志望動機にする人が多いです。

たとえば「〇〇なゴム製品を作りたい、御社にはその研究設備や技術力がある」、「中東や新興国に向けた営業活動を行いたい、御社にはその営業地盤がある」などです。

やりたい仕事や実現したいキャリアが明確にあり、その近道となる要素が今の会社よりも転職先の会社にあることを、志望動機としてアピールする人が多いです。

割合的にも同業他社から志望する人が過半数を占め、同業種転職ならではの具体的なビジョンを持って志望してくる人が多めです。

転職で募集が多い職種

タイヤ・ゴム業界の転職では、研究開発・製品開発・生産技術といった技術職の求人募集が多めです。

ただし前述もしました通り、タイヤ・ゴム業界では「キャリア登録制度」を実施している企業が多いため、一概にはいえません。

たとえ一般募集されてない職種であっても、自社にマッチする優秀な人材がキャリア登録をすると、個別に選考へのお呼びが掛かることもあります。

したがって、気になる転職先の企業がキャリア登録制度を用意している場合は、チャンスを逃さないためにも、キャリア登録しておくのが望ましいです。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

タイヤ・ゴム業界へ転職する場合、即戦力となる実務経験やスキルがあるとやはり有利になります。

「別のタイヤメーカーでタイヤの開発を行っていた」、「総合化学メーカーでゴム製品の開発を行っていた」、「自動車業界でタイヤやブレーキ周りの開発に携わっていた」など、経験が近いほど有利になるでしょう。

一方で、前職の経験に捉われることなく、新しい風を取り入れようとする企業もあります。

たとえばタイヤメーカー最大手の「ブリヂストン」では、さまざまな価値観を持った転職者を積極的に採用しています。

さらにブリヂストンでは、中途の転職者にも「ジョブローテーション制度」を用意するなど、新卒採用者と同様の扱いで成長をサポートしていく方針を打ち立てています。

タイヤ・ゴム業界の有名・人気企業紹介

ブリヂストン

1931年創業。連結売上高3兆6,501億円、連結従業員数14,705名(2018年12月期末)、国内最大手のタイヤメーカーです。

タイヤ分野で国内シェア1位、世界シェアもミシュランを抑え1位となり、世界26カ国に約180の生産・開発拠点を持ちます。

乗用車用タイヤから、バスやトラック用の大型タイヤ、建築現場や産業用のタイヤまで、あらゆる種類のタイヤを手掛けます。

そのほか、ベルトコンベアやホースなどのゴム製品も生産しています。

ブリヂストン ホームページ

住友ゴム工業

1917年創業。連結売上高8,942億円、連結従業員数7,175名(2018年12月期末)、国内準大手のタイヤメーカーです。

タイヤ分野で国内シェア2位、世界シェア5位にランクインしています。

「ダンロップ(DUNLOP)」や「ファルケンFALKEN」といったブランド名で、乗用車用のタイヤからレース用のスポーツタイヤまで、幅広いタイヤを生産しています。

その他、スポーツ事業も手掛けており、「ゼクシオ(XIXIO)」や「スリクソン(SRIXON)」といったブランド名で、ゴルフ用品やテニス用品を生産しています。

住友ゴム工業 ホームページ

JSR

1957年創業。連結売上高4,967億円、連結従業員数8,748名(2019年3月期末)、国内大手の総合化学メーカーです。

タイヤや工業製品に用いる「合成ゴム」に強みをもち、合成ゴム分野では世界5位のシェアを持ちます。

その他、エマルジョン・合成樹脂・半導体材料・ディスプレイ材料・バイオ医薬品など、さまざまな化学素材の研究や製造を行っています。

JSR ホームページ

タイヤ・ゴム業界の現状と課題・今後の展望

新興国のシェア争いが過熱している

日本国内では、自動車保有率も頭打ちになり、少子高齢化とともに人口自体もゆるやかに減少傾向にあります。

したがって、日本市場でのタイヤやゴム製品の需要増加はあまり期待できません。

今後市場として注目されているのが、東南アジアや中東の新興国であり、世界各国のタイヤメーカーが新興国の市場開拓に乗り出しています。

昨今勢いを伸ばしているのが、「ハンコックタイヤ(韓国)」、「中策ゴム(中国)」といった中韓系のタイヤメーカーであり、安価な価格を武器に急速にシェアを拡大しています。

新興国の市場では、質よりも価格の安さが有利になってくるため、安さを武器とする中韓メーカーとの競争をどう勝ち抜くかが今後の課題となってきます。

自動車の進化とともに変わるタイヤ・ゴム業界

今後、「CASE」と呼ばれる自動車の大変革が始まっていく流れです。

CASEとは、コネクテッド、自動運転、シェアリング、電気自動車の頭文字をとった造語であり、これから先は自動車の在り方や機能が大きく変わっていくといわれています。

タイヤ・ゴム業界は、自動車業界に依存している部分も大きいため、CASEの浸透とともに業界の変革が求められてきます。

わかりやすい例でいえば「電気自動車」です。

電気自動車では、ガソリン車では用いられていた「燃料系ホース」などのゴム製品が不要となります。

今後、電気自動車がさらに普及すれば、それらを作っていた企業は打撃を受けます。

一方で「カーシェアリング」が普及すれば、空気充填などが不要なエアレスタイヤの需要が高まると考えられています。

CASEの時代に入ると、消えるものと新たに生まれるものの両方が出てくるため、それに合わせた対応も必要になってきます。

業界としての将来性

タイヤやゴム製品は、消耗品であり一定の需要があります。

かつ、今後は新興国での需要がさらに伸びると推測されており、海外輸出においてはこれまで以上のビジネスチャンスが期待されています。

一方で、次のような懸念材料もあります。

・中韓メーカーのシェア拡大
・天然ゴムなど原材料の高騰
・国内市場の低迷
・少子高齢化による労働人口の減少(特に工場作業員など)
・CASEなど次世代への対応 など

国内市場の低迷、労働人口そのものの減少、前述したCASEへの対応など、これまでにない状況に見舞われてきています。

今まで通りでは通用しにくい時代に入ってきたため、これまでにない大胆な戦略も必要になってくるでしょう。

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