出版業界(読了時間:12分39秒)

出版業界とは

出版業界とは、書籍を作り、流通させ、販売する一連の流れに関わる業界のことです。

多くの方は、出版業界と聞くと、出版社を想像すると思います。それも間違いではありません。

出版社は、最初の説明の中では、書籍を作る、というステップを担う企業です。

書籍を作る企業には、その他に編集プロダクションなどが存在しています。

出版業界には他に、書籍の流通と販売を担う企業が存在しています。

書籍の流通を担う企業は取次、販売を担う企業は書店などがあります。

その他、書籍の内容を執筆する作家やライターなども出版業界の職種のひとつです。

出版業界は広く書籍に関わる業界であるため、多くの職種が関わっています。

また、そこで働く人の多くは書籍が好きな人な人が多く見られます。

しかし、近年インターネットの普及や娯楽の多様化に伴い、書籍の売り上げが減少傾向にあります。

そのため、出版業界全体としても厳しい現状があります。

しかし、電子書籍やメディアミックスなど、新しいビジネスモデルにいち早く参入し、新規市場でシェアを広げている企業もあります。

出版業界における将来性は、新しいメディアやビジネスモデルへの対応にかかっていると言えます。

出版業界の役割

日本社会において、出版業界はいまところ、なくてはならない業界です。

趣味で読む娯楽書籍や雑誌はもちろん、教科書や専門書・ビジネス書など、学習や仕事にも書籍は広く使われています。

読者が必要な情報や知識を提供すること、信頼のおける情報を提供し続けることが、出版業界の役割であり、必要とされ続ける理由のひとつです。

最近では、インターネット経由で様々な情報や娯楽が手に入るようになりました。

それに押されて、書籍の販売数が低下しているのも事実です。

しかし、そこに書かれている情報の信頼度においては、インターネット上の情報はまだ書籍にかないません。

正確性とクオリティを担保し、読者にとって本当に価値のある情報や作品を提供することが、出版業界のミッションということができます。

出版業界の企業の種類とビジネスモデル

出版業界には、大きく分けて出版社・取次・販売者の3種類の企業があります。

それぞれに業務内容は異なりますが、そのすべてが関係して、出版物が読者の元に届けられるのです。

出版社

出版業界と言われて最初に思いつくのは、多くの場合出版社でしょう。

集英社や小学館、角川書店など、聞いたことのある大企業が多いのも特徴です。

もちろん、このような有名企業の他にも出版社はたくさん存在しています。

多くの場合、出版社はそれぞれ自社の強みや特徴を持っています。

例えば、特定の分野の専門書にかけてはその信頼性・網羅性が抜きんでている社。

あるいは、主婦をターゲットにした雑誌に関しては右に出る者のいない社などです。

取次

出版社から販売店に書籍が渡るまでの流通の役割を担っているのが、取次です。

出版社や書店に比べると馴染みが薄いかもしれませんが。

代表企業としては、業界最大手である日本出版販売株式会社や株式会社トーハンなどがあります。

取次は、出版社が作った書籍を無事に販売店に届ける他、販売店毎の特徴を把握して、より店舗にあった書籍を提案したり、店舗の戦略を立てたりといった業務もあります。

店舗にとってはコンサルタントのような側面もあります。

しかし、近年ECサイトの台頭や出版社直営の販売サイトの出現などにより、取次の存在意義が問われるような事態となっています。

販売者

販売者は、わかりやすく言えば書店=本屋さんのことです。紀伊国屋書店やジュンク堂などが有名です。

出版社が作り、取次が運んできてくれた本を、実際に読者に対して販売するのが主な業務といえます。

この販売者には、アマゾンや楽天といったECサイトも含まれます。

また、最近では電子書籍の配信サイトなども出現しています。

出版業界全体として転換期にあると言えますが、時代と共にスタイルの変化が特に大きく見られているのが、この販売者なのです。

出版業界の職種

ひとつの本が作られ、販売されて実際に読者の手元に届くまでには、とても多くの職種の手を介しています。

ここでは、代表的な職種をいくつか紹介します。

編集者

言わずと知れた、出版社のメインとなる職種のひとつです。

作家やライターと書籍の内容についてフィードバックやアイデア出しをして作品作りに関わることのできる、憧れの仕事の一つです。

出版業界の中でも、最も志願者の多い職種のひとつです。

営業

編集者や作家が作った書籍を、実際に販売するための施策を考えるのが営業の仕事です。

直接販売店に出向いて書籍の説明をしたり、販促プランを提案したりして、自社の書籍をできるだけ多く取り扱ってもらうことが営業の目指すゴールです。

編集者や作家に比べるとイメージが薄いかもしれませんが、実際に書籍が販売店で販売されて、読者の手元に届くまでを考えると、なくてはならない重要な職種です。

販売者

書店などで実際に販売に当たるスタッフも、出版業界を担う職種のひとつです。

優れが書籍が作られても、実際に読者が手に取ることができなければ意味がありません。

販売者は、できるだけ多くの読者がより多くの魅力的な書籍に出会うために尽力してくれています。

最近では、ECサイトや電子書籍の配信業者についても、この販売者に含まれるとする考え方が主流になっているようです。

作家・ライター

もちろん、作品の作り手である作家やライターも、出版業界の職種のひとつです。

彼らが作り出した内容が書籍の内容となるのですから、とても重要な職種です。

多くの場合、常に新しい内容が紹介されている必要があり、学び続けなければいけないという点でとても大変な職種と言えます。

ですが同時に、書籍を読む読者にとって最も大切なコンテンツ作りを担っている、出版業界ではなくてはならない職種なのです。

出版業界のやりがい・魅力

出版業界は、本や雑誌が好きな人にとってはとてもやりがいのある業界といえます。

出版社であれば、実際に自分が関わった書籍が販売されたり、読者に読まれるということは、大きな満足感につながります。

取次の場合は、販売店の特徴をうまくとらえ、読者のニーズに合った提案を行うことができたときや、実際にそれが結果につながったときの達成感は大きいです。

販売店で働く人にとってのやりがいは、なんと言っても、お客さんの顔が見える仕事という点にあるでしょう。

実際に書籍を購買して読む人のリアクションを見ながら仕事ができる点は、その他の業種にはない魅力です。

また、POPやキャンペーンなど、施策を行うことで売り上げ向上など、わかりやすい目標に向けて努力することができるという点もやりがいにつながります。

ここしばらく、紙の書籍の売り上げは減少傾向にあります。

そのため、出版業界全体として、上向きとは言えない状況が続いています。

しかし、それに代わるように電子書籍など新しい出版の形が出現してきています。

また、メディアの多様化に伴い、書籍だけでなく、書籍から派生したスピンオフやメディアミックスなど、出版物を起点としたビジネスの広がりが拡大しています。

これまでと全く同じやり方を続けていくことは難しい業界ではありますが、逆に言えば、全く新しいビジネスモデルや商品の開発の可能性がとても広い業界ということができます。

出版業界の雰囲気

出版業界は他の業界に比べ、その業界を志望して就職している人が多いのも特徴のひとつです。

そのため、書籍に関する仕事に対して、誇りとプライドを持って働いている人が多く見られます。

特に、週刊誌など出版スケジュールがタイトな業界においては、その業務も激務になることが多く、好きでなければ務まらない、という面もあるようです。

出版業界に就職した後は、自身で体調や業務量を管理したり、ストレスマネジメントをしっかりと行う必要があります。

また、一度出版業界に就職すると、その後転職の機会があった場合も、業界内で転職することが多いのも、他の業界に比べ出版業界で特徴的な点です。

同様の業界、業種での転職が多いため、その道を極めた、プロフェッショナルのような働き方をしている人が多くなります。

つまり、一度出版業界で何かしらのスキルを身につけることができれば、業界内では重宝され、より有利な条件での転職も可能となるのです。

逆にいうと、一度業界内に就職すると、別の業界に転身する人が少ない業界であるともいえます。

転職してくる人材も業界内からの転職がほとんどですから、他業種を経験した人材と巡り合う可能性も低めです。

そのため、様々な価値観や視野を持った人材と交流しながら仕事をする、という側面はあまり期待できないでしょう。

ただし、前述したとおり、出版業界はこれから転換期に向かっていきます。

別業種、特にweb系やメディア系を経験した人材を積極的に登用していく企業も現れてくると考えられます。

そのため、業界内の雰囲気や人材についても、今後変化が見られていくと考えられます。

出版業界に就職するには

それでは、出版業界における就職の状況はどのようなのでしょうか。

今後の予測も含めて紹介します。

就職の状況

出版業界、特に出版社の就職は狭き門と言われています。

特に、大手出版社の倍率は数百倍になる年もあります。

これは、出版社への就職を希望する学生が毎年かなりの数いることに加え、大手出版社でもあまり多くの新卒社員を採用しない企業があるためです。

対して、取次や販売店の就職倍率は、出版社に比べると大きく下がります。

特に、販売店では販売業務にアルバイトを採用している企業が多いですが、アルバイト経験者をそのまま社員として入社させるなど、柔軟な採用活動を行っています。

何かしらの形で出版業界に就職したいのであれば、一般の求職者が一番に思い浮かべる出版社だけでなく、業界内で広く応募することがおすすめです。

就職に有利な学歴・大学学部

出版業界に就職するために、特に有利な学部というのはありません。

自分の専門についてしっかり学んでいることと、書籍に対しての知識・関心が高いことが最も重要と言えます。

文系の学生が多く就職しているイメージがあるかもしれません。

これは出版社が特に文系の学生を好むというよりは、書籍に関わる業界へ就職を希望する学生は、学部選びの段階で文系を志望していることが多いことによるでしょう。

ちなみに、出版社は高学歴者を採用しているイメージがあるかもしれません。

ですが、実は必ずしもその限りではないのです。

一般的に、出版社は就職試験の段階で自社独自のテストや書類審査課題を行っています。

このテストである程度学生をふるいにかけるため、結果的に学力が高い学生が残る、ということであると考えられます。

逆に言えば、それまでの学歴がなかったとしても、しっかり対策してテストで好成績を取ることができれば良いのです。

就職の志望動機で多いものは

出版業界を希望する学生の志望動機で多いものは、本が好き、ということでしょう。

これはどの業種においても共通する大きな志望動機といえます。

その中で、書籍を作りたい人は出版社へ、書籍の流通や戦略作りに関心がある人は取次へ、実際の販売・読者に向けたサービスに魅力を感じる人は販売店への就職を希望するということです。

前述したとおり、出版業界は狭き門です。

本が好きという志望動機は、多くの就職希望者が述べる志望動機です。

きっかけとしてそれはとても大切なのですが、実際の就職面接で述べるためには、更に肉付けした、具体的な理由が必要です。

なぜ本が好きなのか、本を通して何を実現したいのか、そして、出版業界の中でもなぜその業種を選んだのか、自分の言葉でしっかり伝えられるように準備しておきましょう。

出版業界の転職状況

次に、出版業界における転職者の状況について紹介します。

転職の状況

前にも書いたとおり、出版業界における転職は、多くの場合業界内で行われます。

つまり、別の出版社で編集職にあった人が、その経験を活かして別の出版社で編集職に就く、などの場合です。

これまでのスキルを活かして転職することでスキルアップが可能ですし、企業側も、中途採用者には即戦力として期待できる人材を求めています。

全く異なる業界からの転職は、少ないのが現状です。

しかし、今後そのニーズが高まる可能性もあります。それについては後述します。

転職の志望動機で多いものは

転職の場合でも、出版業界への志望動機は、やはり本が好き、というポイントは共通しています。

他には、取次で仕事をしていた人が、実際の本づくりに関わってみたいということで出版社を志望したり、逆に、読者の顔が見える仕事をしたいということで、出版社の人材が販売店を志望したり、ということが考えられます。

いずれにしても、それまでの自分の経験をベースに、どのようにステップアップ/キャリアチェンジしたいのかが、転職の場合の志望動機のポイントとなります。

転職で募集が多い職種

出版業界では、様々な求人募集がされています。

編集者や営業など、採算部門の求人も多く見られます。

これは、管理部門は比較的定着率が高いことに比べ、採算部門はスキルを身につけてスキルアップしたいと考えたり、スキルチェンジを考える人が多いということでしょう。

しかし、出版業界内のこういった求人は、ほとんどの場合は経験者限定の募集です。

出版社の採算部門に関しては未経験での転職は難しいでしょう。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

出版社の採算部門については、未経験での転職が難しいと書きました。

ですが、例外もあります。

出版業界は現在ビジネスモデルの転換期にあります。

今後、電子書籍やwebマーケティングの重要度は増してくると考えられますし、メディアミックスも更に活気が出てくると考えられます。

そのため、今後、IT系・Web系の技術やノウハウを持った人材が求められていくと考えられます。

例えば、Webコンテンツの企画・開発経験のある人や、webマーケティングの経験がある人は、出版業界においても必要とされていくと考えられます。

出版業界の有名・人気企業紹介

出版業界における人気企業を、業種別に紹介します。

講談社

日本では誰でも知っている出版社のひとつである、講談社。

人気の作品も多く、出版社としては最も売り上げを誇る出版社のひとつです。

新しい作品も次々生まれていますし、効果的なメディアミックスを行っている企業のひとつでもあります。

講談社

日本出版販売

取次を扱う企業の中では、売上が最も多い企業です。

書籍の取次業として老舗でありつつ、流通のシステム化を図り、常に業務を最適化しています。

また、”everything around BOOKS”をスローガンに、書籍の他、文具やデジタルコンテンツ、検定事業なども取り扱っています。

日本出版販売

紀伊国屋書店

日本の書店の中では、最大手と言われる書店のひとつです。

首都圏を中心に巨大な店舗を誇る他、独自のwebストアを運営し、書籍の販売のオールラウンダーとして存在感を示しています。

販売店としてだけではなく、独自の出版部門を持ち、書籍の製作も行っています。

紀伊国屋書店

出版業界の現状と課題・今後の展望

競争環境(国内・国外)

日本の出版業界には、大手と言われる大企業が何社かあります。

その他、すべての業種において、専門性に特化した企業が多数存在しています。

例えば、法律関係の書籍しか出版しない出版社や、医療系の書籍に特化した書店などです。

それぞれが住み分けをしながら共存しているわけです。

しかし、娯楽の多様化が進む昨今では、出版業界の競合は業界内だけとは言えません。

映像事業者やWebサービスなど、幅広いメディアが競合となります。

書籍業界の競合は年々多様化し増えていると言えますし、今後書籍の独自性・書籍でなければいけない価値を創出していくことが、生き残っていく鍵となるでしょう。

最新の動向

そのような流れを汲み、出版業界内でも、最新のメディアとのメディアミックスや、システムの導入など、最新技術への注目が集まっています。

大手出版社の多くは自社作品を電子書籍化したり、最初から電子書籍として出版したりしています。

取次でも、流通の効率化や戦略のため、最新のシステムが生かされています。

書籍の魅力を残しつつ、最新の技術やメディアを取り入れつつ、全く新しい形の模索もされています。

出版業界は今まさに過渡期にあるということができるでしょう。

業界としての将来性

紙媒体の出版物の売り上げは減少傾向にあります。

しかし、紙の書籍のファンは一定数いることも事実です。

紙での出版物がなくなることはないでしょう。

それと同時に、電子書籍やメディアミックスをはじめとした、新しい魅力の創造へ向かう取り組みも行われています。

今後、更にこれまでになかった全く新しい形の書籍やメディアが出版業界から生み出される可能性もあります。

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