損害保険業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





損害保険業界とは

損害保険業界に属する企業では、主に「自動車保険」「火災保険」「旅行保険」などの「モノを守るための保険」を取り扱っています。

日本の損害保険業界には、大手から中小企業までさまざまな損害保険会社が存在していますが、その中でも代表的な企業が「東京海上ホールディングス」「MS&ADインシュアランスグループホールディングス」「SOMPOホールディングス」の3社です。

この大手3社は「3メガ損保」とも呼ばれており、損害保険の業界シェアはこの3メガ損保によってほとんどが占められていることが大きな特徴となっています。

損害保険の市場自体は拡大を続けているものの、近年では「人口減少」「若者の自動車離れ」などの要因によって、損害保険会社にとってメインの収益源である「自動車保険」の売り上げ減少が懸念されています。

一方、「介護保険」や「地震保険」など新たにニーズが高まっている分野もあり、これらの事業への進出を目指す動きが損害保険各社に見られる状況です。

損害保険業界の役割

損害保険業界で取り扱われている「損害保険」とは、病気やケガで万が一のことが起こったときに保険料が支払われる「生命保険」とは違い、「モノや財産」を守るための保険です。

例えば損害保険で代表的な「火災保険」であれば、事故や災害などによって建物や家具に損害が出てしまった時に、その経済的な損失をサポートしてくれる保険となっています。

市場の大きなものとしては「自動車保険」や「火災保険」などが挙げられますが、それ以外にも「地震保険」「傷害保険」「個人賠償責任保険」など、数多くの損害保険商品が存在しています。

また、損害保険会社は個人向け以外にも、法人向けに経済的損失をサポートする商品も数多く取り扱っていることも特徴です。

このように、損害保険は人の生死以外のさまざまな領域におけるリスクをカバーしてくれる役割を担っており、人々が安心して生活する上で欠かせない存在であるといえるでしょう。

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損害保険業界の企業の種類とビジネスモデル

国内大手企業

損害保険業界の代表的な存在が、「東京海上ホールディングス」「MS&ADインシュアランスグループホールディングス」「SOMPOホールディングス」の「3メガ損保」です。

実際に、損害保険の業界シェアの多くはこの3メガ損保によって占められており、販売額などは4位以下の企業を大きく突き放しています。

これら3メガ損保の事業範囲は今なお拡大を続けており、売り上げの構成比率については海外事業の割合が高くなっている点も特徴です。

ダイレクト販売型の企業

損害保険会社は大きく「代理店型」と「ダイレクト販売型」の2つの営業スタイルが分かれており、上で説明した3メガ損保などは「代理店型」の企業となります。

一方、代理店を通さず、インターネット上で商品を販売している企業が「ダイレクト販売型」であり、とくに「ソニー損保」が知名度の高いダイレクト型企業として有名です。

ダイレクト販売型は代理店を通さない分、営業にかかるコストが少なく済むため、全体的に保険料が割安である点が人気を集めています。

外資系企業

1995年に「保険業法」が改正されて以降、日本の損害保険業界には外資系企業も続々と参入しています。

具体的には、「AIG損害保険」「アメリカンホーム保険」「Chubb損害保険」などが代表的な企業として挙げられます。

国内の損害保険会社と比べて、万が一の時の対応に不安を持つ利用者もいるかもしれませんが、この部分については国内の企業と大きな違いはありません。

また、外資であっても基本的には国内の営業が中心となるため、採用に関しては英語力を必須としていない企業も多く見られます。

損害保険業界の職種

損害保険を利用する人にとっては、販売時に対応してくれるスタッフしか普段は目にすることはありませんが、実際には多くの職種によって損害保険業界は成り立っています。

ここでは、損害保険業界特有の職種を3つ紹介していきます。

営業

損害保険会社で取り扱う自動車保険や火災保険などの保険商品について、販売・提案を行うのが営業の仕事です。

営業は個人のお客さまに対して損害保険商品を販売する「リテール営業」と、企業に対して損害保険商品の販売や各種サポートを行う「法人営業」に分かれます。

また、実際には損害保険商品のほとんどが「保険代理店」で販売されていることから、代理店への指導やアドバイスを行うことも営業の仕事に含まれます。

商品企画

世の中で話題となっている新たなリスクやニーズを洗い出し、それに対応できる新しい保険商品を作ることが商品企画の仕事です。

例えば、ここ近年で急速にIT技術の活用が進んでいますが、それに比例して「サイバー攻撃」や「個人情報の漏洩」などのトラブルも増えており、そういったリスクに対応できるような保険商品も開発されています。

このような世の中のニーズを捉えた新商品の開発に加えて、「損害保険」という一般的に難しいイメージのある商品の内容を、できるだけわかりやすい形でPRしてくことも商品企画の重要な役割です。

アクチュアリー

アクチュアリーとは、確率論や統計学などの数学的知識を用いて、損害保険商品のリスク管理などを行う保険業界特有の職種です。

損害保険会社も株式会社である以上、安定的に利益を出し続ける必要があり、そのためには「どのくらいの頻度で事故が発生するのか」「事故が発生した場合の支払額はいくらになるのか」といった点を十分に検討しなければいけません。

外からはあまり目にすることのない職種ですが、損害保険会社を裏から支えている重要な仕事です。

損害保険業界のやりがい・魅力

経済的リスクに加え、精神的なカバーも可能な仕事

人や企業が「偶発的な事故」や「災害」に見舞われたとき、本来であれば絶望的な状況に陥ってしまうような場合においても、損害保険の存在によってそれを救うことができます。

損害保険会社は経済的な損失をカバーするだけではなく、精神的にも大きな安心感を与えることが可能な仕事であり、その部分にやりがいを感じながら働いている人も多いようです。

また、仕事の特性上お客さまから直接感謝の言葉をかけられることも多く、その点も損害保険業界で働く上での強いモチベーションとなるでしょう。

保険商品を取り扱う上で取引先と長い付き合いになることも少なくないため、「お客さまと信頼関係を構築しながら仕事をしたい」という人にはとくにおすすめの仕事です。

女性が働きやすい環境

損害保険業界では営業職においても多くの女性が活躍しており、それに伴って「女性が働きやすい環境づくり」にも力を入れている企業が多いです。

「SOMPOホールディングス」の子会社である「損保ジャパン日本興亜」では、家庭の事情などを考慮した上で朝型・夜型で勤務時間を選択できる制度を導入しています。

また、「東京海上ホールディングス」子会社の「東京海上日動火災保険」では、小さい子どもを持つ女性向けに在宅勤務の試行が進められています。

このように、子育て中のママさんでも働きやすい環境を整える動きが大手企業を中心に見られており、今後ますます女性の活躍が見込める業界といえるでしょう。

損害保険業界の雰囲気

前述のとおり、損害保険業界は多くの女性が活躍している業界であり、制度面が充実している企業が多い点でも女性が働きやすい環境となっています。

また、損害保険の営業は「保険代理店」に対するサポートや提案といった仕事も多く、長期に渡って保険代理店と良好な関係を築ける人が求められている点も特徴です。

代理店に対して、売り上げを伸ばしたいからといって取り扱う商品や販売方法などを頭ごなしに指示しても、保険代理店と望ましいビジネス関係を作っていくことはできません。

代理店の抱える悩みを上手に聞き出し、それに対して適切な提案・アドバイスができる高いコミュニケーション能力を持った人が、損害保険業界で成果をあげている人の特徴の一つといえるでしょう。

損害保険業界に就職するには

就職の状況

損害保険業界は「安定している」というイメージから、学生の就職先としても人気の高い業界となっています。

その中でも「3メガ損保」はとくに人気が高く、大学生の就職ランキングなどにおいても毎年上位にランクインしています。

3メガ損保以外の企業でも、中堅規模以上の損害保険会社であれば多くの企業で新卒採用を毎年実施している状況です。

新卒採用で募集の多い職種としては「総合職」「一般職」「アクチュアリー」「システムエンジニア」などが挙げられ、会社によっては「全国転勤あり・なし」で採用区分を分けている場合もあります。

いずれの職種においても、「大卒以上」の学歴を応募条件として求めているケースがほとんどです。

就職に有利な学歴・大学学部

損害保険業界へ就職し、大手の損害保険会社へ総合職として入社を希望する場合は、「大卒」の学歴は必須条件といえるでしょう。

一般職や契約社員などについては高卒・短大卒の募集もありますが、損害保険業界への就職を目指す場合には、基本的には大学を卒業しておく方がスムーズに選考に参加できます。

また、損害保険業界への就職で有利な学部・学科については、どの職種で働きたいのかによって変わってくる部分です。

総合職や営業職、一般職であれば「学部・学科不問」で募集を行なっている企業がほとんどですが、リスク分析を行う「アクチュアリー」などの職種については「金融工学」「数理科学」「確率統計」などの専攻者が採用の対象となります。

このような専門的な職種に進みたい場合は、自分が将来就きたい仕事をよく考えた上で大学の学部学科を選択すると良いでしょう。

就職の志望動機で多いものは

損害保険業界を受ける上での志望動機としては、「困っている人の力になりたい」「世の中に安心・安全を提供していきたい」という内容が多く見られます。

損害保険は人々の「もしもの時」をサポートしてくれる社会的意義の高い存在であり、そこに携わりたいと考え志望する人が多いです。

ただし、世の中に安心・安全を提供するのは「損害保険商品」そのものが持つ魅力の話しであるため、「なぜ困っている人の力になりたいのか」「なぜ安心・安全を提供していきたいのか」という自分自身の気持ちの部分が志望動機では大切になります。

この点を上手く伝えるポイントとして、例えば「困っている人をサポートした経験」などを志望動機に盛り込むことで、より深い内容の志望動機にすることができるでしょう。

損害保険業界の転職状況

転職の状況

損害保険業界では、新卒者を対象とした採用活動に加えて、多くの企業で中途採用の募集も行なっています。

とくに大手企業は従業員数も多く、毎年一定数の定年退職者も出るため安定的に求人が出ている状況です。

中途募集についても、新卒採用と同様に「全国転勤」「エリア限定」の2つのパターンで募集を行なっている企業が多く見られます。

全国各地に店舗を構えている企業であれば、自分の希望する地域で働けるチャンスも十分にあるといえるでしょう。

転職の志望動機で多いものは

新卒の志望動機と同様に、こちらも「困っている人の助けになりたい」といった内容がよく見られます。

また、損害保険会社の中途採用に関しては「営業職」の募集が多いため、営業経験者の場合は「これまでの営業経験を活かして働いていきたい」という内容で志望動機を伝える人が多いようです。

だたし、損害保険業界の営業が取り扱うものは「保険商品」であるため、お客さまに対して「商品内容をわかりやすく説明する能力」も求められます。

その点を踏まえ、営業で培ったコミュニケーション能力も上手にアピールしていくことが大切です。

転職で募集が多い職種

損害保険業界では総合職、営業職、事務系など、幅広い職種において中途採用が実施されていますが、その中でも「総合職」や「営業職」が最も中途募集の多い職種となります。

とくに大手損害保険会社の事業範囲は国内・海外問わず広範囲で、それだけ営業活動に多くの人員が必要な状況です。

ただし、新卒募集の枠に比べれば中途の採用数は多くないため、3メガ損保などの人気の高い企業であれば相当な高倍率になることが予想されます。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

損害保険業界の企業では、募集の多い営業系の仕事については「経験不問」で求人を出している場合がほとんどです。

しかしながら、中途採用では「即戦力」が求められる傾向が強いため、同業界での業務経験や、別業界でも営業経験のある人の方がプラスの評価に繋がりやすいでしょう。

一方、「アクチュアリー」での採用については、生命保険会社または損害保険会社での「数理関連の実務経験」を応募条件としている企業が多く見られます。

いずれの募集においても、基本的には新卒と同様「大卒以上」の学歴が求められると考えてよいでしょう。

損害保険業界の有名・人気企業紹介

東京海上ホールディングス

2002年設立、連結売上高54,767億円、従業員数40,848名(2019年3月期)

「東京海上日動火災保険」「東京海上日動あんしん生命」「日新火災海上」などを傘下に持っています。

既存の損害保険商品に加えて、「シェアリングエコノミーに対応した自動車保険」の販売など、時代のニーズを捉えた新たな分野にも事業を展開しています。

東京海上ホールディングス ホームページ

MS&ADインシュアランスグループホールディングス

2008年設立、連結売上高55,004億円、従業員数41,467名(2019年3月期)

「三井住友海上火災保険」「あいおいニッセイ同和損害保険」「三井ダイレクト損害保険」などを傘下に持っています。

海外事業にも積極的に進出しており、とくにアジア地域での損害保険事業を中心に営業活動を展開しています。

MS&ADインシュアランスグループホールディングス ホームページ

SOMPOホールディングス

2001年設立、連結売上高36,430億円、従業員数49,387名(2019年3月期)

「損害保険ジャパン日本興亜」「損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険」「SOMPOケア」などを傘下に持っています。

他の損害保険企業が海外進出に力を入れる中、「国内ヘルスケア事業」に焦点を当てるなどして国内事業で基盤を固めています。

SOMPOホールディングス ホームページ

損害保険業界の現状と課題・今後の展望

競争環境(国内・国外)

損害保険業界の国内市場については、依然として「東京海上ホールディングス」「MS&ADインシュアランスグループホールディングス」「SOMPOホールディングス」の3メガ損保が圧倒的なシェア率を誇っています。

これら3メガ損保グループは、損害保険会社同士の合併や買収が繰り返されて誕生した経緯もあるため、さらなるシェア拡大に向けて、今後も他の企業との合併が起こる可能性も考えられるでしょう。

また、国内市場が縮小傾向にあることから、海外展開を重点的に行なう動きも業界全体のトレンドとなっています。

これ以外のトピックでは、保険料に割安感のある「ダイレクト販売型」の損害保険が注目を集めつつあります。

この分野では「ソニー損保」が長年業界を牽引してきましたが、近年では「SBI損害保険」が保険料を抑えたダイレクト型自動車保険の販売に乗り出し、シェアを伸ばしています。

業界としての将来性

日本においては少子高齢化がますます加速していることから、損害保険業界にとっても人口減少による市場規模の縮小は避けられない状況です。

人口が減ることで今後は住宅着工数も減少していくことが予想され、さらには「若者の車離れ」など、損害保険会社の主力事業に大きく影響するような社会の変化が現れはじめています。

このように、損害保険業界にとってネガティブな要素も考えられますが、一方で社会環境に変化によって「新たなニーズ」も生まれてきており、そこをビジネスチャンスと捉える企業の動きも活発化しています。

現代は「AI(人口知能)の活用」や、さまざまな分野で「シェアリングサービスの普及」が広がっていることなど、以前にも増して時代の流れは速く、今までは思いもよらなかった「新たなリスク」が次々と表面化している状況です。

このような社会ニーズにフィットした商品をいち早く開発し、新たな収益源を確立していくことが損害保険業界の各企業に求められています。

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