信用金庫業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





信用金庫業界とは

信用金庫は、主にお金に関する「預金業務」や「貸付業務」を行なっています。

信用金庫は「株式会社」とは異なり、会員である企業や個人の出資によって成り立っている「非営利法人」です。

そのため、会員同士の「助け合い」を目的に金融サービスを提供する団体であるため、お金の貸付を行う相手も、基本的には会員の企業・個人に限られています。

日本の様々な地域に信用金庫は存在しており、全国で250以上の信用金庫があります。

預金量の多い代表的な信用金庫としては、「城南信用金庫(東京都)」「岡崎信用金庫(愛知県)」「埼玉縣信用金庫(埼玉県)」などが挙げられ、それらの頂点に位置するのが「京都中央信用金庫(京都府)」です。

このように、信用金庫は各地域を営業基盤として地域密着の活動を行なっていますが、日本全体の人口減少や「若者の信用金庫離れ」などの問題もあり、業績が落ちている信用金庫も少なくありません。

このような状況の中、「都市銀行」や「地方銀行」との差別化を図り、信用金庫ならではの強みを活かして顧客の獲得を維持していくことが業界全体として求められています。

信用金庫業界の役割

信用金庫は「銀行」と非常によく似た機能を持っていますが、組織の成り立ちや目的の部分に大きな違いがあります。

銀行はあくまで「株式会社」であるため、基本的には利益を追求する組織です。

一方、信用金庫はその地域の企業や個人が会員となって、お互いに助け合う「相互扶助」を目的としています。

このように、一般的な企業とは組織の成り立ちや目的の違いがあることから、信用金庫は自分たちの利益ではなく、会員や地域社会の利益を最優先に活動が行なわれている特徴があります。

そのため、信用金庫のメインのお客さまとしては地域の中小企業などがあげられますが、こういった企業の経営が苦しい時こそ支えていくのが信用金庫の役割でもあります。

各地域で経済が発展していくためには、地域に根ざして貢献する信用金庫の存在はなくてはならないものだといえるでしょう。

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信用金庫業界の企業の種類とビジネスモデル

業界トップの信用金庫

信用金庫業界のトップは「京都中央信用金庫」です。

2010年には、信用金庫業界で初めて預金残高が4兆円を突破し、それ以降も業界のトップとして信用金庫全体を牽引する存在です。

京都市を中心に盤石な経営基盤を築いており、利益の追求が第一優先ではない信用金庫という組織形態でありながら、毎年の利益額はおよそ100億円にものぼります。

大手信用金庫

業界No.1は上で挙げた「京都中央信用金庫」ですが、それ以外の代表的な存在としては「城南信用金庫」「岡崎信用金庫」「埼玉縣信用金庫」などが挙げられます。

「城南信用金庫」は東京都品川区、「岡崎信用金庫」は愛知県岡崎市、「埼玉縣信用金庫」は埼玉県熊谷市に本店を構え、それぞれ地域密着で営業を行なっています。

これらの大手信用金庫は店舗数も多く、本店のある県に加えて、隣の県などにも事業範囲を広げているケースが多く見られます。

中堅規模の信用金庫

業界内の中堅規模の信用金庫としては、「新潟信用金庫」「中南信用金庫」「観音寺信用金庫」などが挙げられます。

「新潟信用金庫」は新潟県新潟市、「中南信用金庫」は神奈川県中郡大磯町、「観音寺信用金庫」は香川県観音寺市に本店を構える信用金庫です。

これら中堅規模の信用金庫は基本的に県内のみを営業範囲としており、その地域に長年貢献してきた存在として、地元企業と深い繋がりを持っている信用金庫が多いです。

信用金庫業界の職種

地域に根付いた金融サービスを提供するために、信用金庫ではさまざまな職種が必要とされています。

ここでは、信用金庫の代表的な3つの職種について紹介していきます。

営業

個人や企業などに対して、預金や集金、各種金融商品のセールスを行うのが営業の仕事です。

信用金庫業界では、営業職は「渉外係」とも呼ばれていて、求人票でも「渉外係」として募集している信用金庫が多く見られます。

他業種の営業職と異なる部分として、営業地域が限られており、基本的にはその地域内の個人・企業に対してセールスを行う点が挙げられます。

融資

個人や企業が信用金庫から資金を調達する際に、実際にどれくらいの金額を貸すのかを決定するのが融資の仕事です。

営業の人が出先で受けてきた案件や店舗で直接受けた相談に対して、融資を希望するお客さまの状況調査や融資判断を行います。

融資担当が渉外係の外回りに同行し、渉外係と一緒に営業活動を行うこともあります。

一般職(事務)

信用金庫の一般職は、大きく「窓口事務」と「後方事務」の2つに分かれます。

窓口事務は「テラー」とも呼ばれ、各店舗において預金や為替などの窓口対応を担当します。

一方、後方事務は窓口には立たず、各種書類のチェックなど、テラーのサポートを行うのがメインの仕事です。

一般職に関しては、女性が採用されて担当しているケースがほとんどです。

信用金庫業界のやりがい・魅力

地域の活性化に貢献できる仕事

信用金庫の主なお客さまは地域の住民と地元企業であり、仕事を通して「地域の活性化に貢献できる」という部分をやりがいに働いている人は多いです。

とくに対法人の仕事に関しては、大企業よりも「中小企業」のサポートがメインであることも信用金庫の特徴です。

このように、日本の会社全体の9割以上を占める中小企業の資金面をサポートしている点から、日本の経済を発展させていく上でも信用金庫の果たすべき役割は非常に大きいことがわかります。

また、信用金庫で働いている職員は、その信用金庫が属する地域の出身者であるケースが少なくありません。

そのため、自分の生まれ育った地域の活性化にダイレクトに関われるという点も、信用金庫で働く魅力の一つといえるでしょう。

地域住民の人生に密接に関わる仕事

地域企業の支援だけでなく、地域住民に対する金融面でのサポートも信用金庫が果たすべき役割の一つです。

個人の預金サービスに加えて、お客さまそれぞれのライフイベントに合わせた保険の案内や、投資などの資産運用についての専門的なアドバイスも求められています。

また、「マイホームを持ちたい」「子どもを留学に行かせたい」というような多額のお金が必要になる場面では、各種ローンの提案を行い地域住民の生活を支えることも信用金庫の大切な仕事です。

このように、仕事を通して地域住民それぞれの人生に密接に関わることができる点も、信用金庫ではたらくやりがいの一つとなっています。

信用金庫業界の雰囲気

信用金庫は基本的にはお金を取り扱う仕事であるため、「誠実な人」「まじめな人」が求められている業界です。

取引相手が個人・企業を問わず、「適当であやふやな説明をしない」「期日を必ず守る」といった基本的な部分がしっかりできていなければ、その職員だけではなく信用金庫全体のイメージを下げることにつながってしまいます。

このような誠実さに加えて、「お客さまに寄り添った支援ができる」という点が信用金庫で活躍できる人の特徴です。

お客さまとの商談においても、ただ金融商品の販売活動を行うだけでは相手の悩みやニーズを引き出すことはできません。

お金に関することや、それとは関係ない内容の会話も真摯に受け止め、最適な提案を行うことでお客さまからの信頼を集めていくことにつながります。

信用金庫の職員にはこのような要素が求められていることから、信用金庫業界は「アットホームな雰囲気」「柔らかい雰囲気」と表現されることが多い業界です。

信用金庫業界に就職するには

就職の状況

信用金庫業界は「地元で働くことができる」「安定している」といった理由から、学生の就職先としても人気の高い業界です。

大手の信用金庫の場合、新卒採用については毎年実施しているところがほとんどで、新卒で募集の多い職種としては「総合職」「営業職」「一般職」の採用です。

ただし、「総合職」と「営業職」に関しては、単に信用金庫ごとの呼び方の違いである場合も多く、実際にはどちらの職種も営業からスタートする信用金庫がほとんどとなっています。

また、営業職については「渉外係」といった名前で募集をかけている信用金庫もあり、こちらも仕事内容は営業と同一になりますので注意しましょう。

就職に有利な学歴・大学学部

大手信用金庫の総合職として幅広い業務に携わっていくことを希望する場合、「大卒」の学歴は必須といえます。

中小規模の信用金庫であれば高卒で採用している信用金庫も中にはありますが、基本的には大卒のほうが就職活動をスムーズに進めていくことができます。

また、大学の出身学部については、ほとんどの信用金庫で「学部・学科不問」で採用を行なっています。

信用金庫に入職後、まずは仕事で必要になる「資格の取得」を命じられることが多くそこでしっかり勉強するため、「どの学科を出身しているか」という部分は選考にそこまで影響を及ぼしません。

どちらかというと、「出身学部がどこか」という点よりも「どの地域の出身者か」を見られているケースが多いことから、まずは自分の出身地域にある信用金庫をチェックすることをおすすめします。

もちろん、「出身者でなければ絶対に採用されない」といったことはありませんので、隣県やそれ以外の信用金庫も幅広く視野に入れて検討していきましょう。

就職の志望動機で多いものは

信用金庫業界を受けるときの志望動機としては、「地域密着で仕事をしたい」「お客さまに寄り添ったサービスを提供する点に惹かれた」という内容がよく見られます。

とくに信用金庫は地域に根ざした営業活動を行なっている点が大きな特徴であり、「自分の出身地域の活性化に貢献したい」という理由で入職を希望する人が非常に多いです。

しかし、他の応募者も同じ地域の出身者であることが多い点を踏まえて志望動機を考えなければ、他の応募者との差別化が図れず埋もれてしまう可能性が高いといえます。

信用金庫業界を受ける上では「地域に貢献したい」という理由は大前提として、その上で自分自身が地域にどういった働きかけをしていけるのかをよく考えて志望動機を作りましょう。

信用金庫業界の転職状況

転職の状況

信用金庫業界では、新卒者を対象とした定期採用のほか、多くの信用金庫で中途採用の募集も行なっています。

総合職や営業職、事務職などの募集に加えて、信用金庫によっては社内の情報システムを担当する「システムエンジニア」の中途採用も行われています。

ただし、いずれの職種も新卒の採用枠と比べると少ない人数での募集となるため、正社員での入職を希望する場合、大手の信用金庫では高倍率になることも多々あります。

転職の志望動機で多いものは

新卒の志望動機と同様に、「地域経済の活性化に貢献したい」という志望理由で信用金庫を受ける人は多いです。

信用金庫の場合は営業エリアが限られている分、引越しを伴う転勤もほとんどなく、地元に腰を据えて働けることに魅力を感じて転職する人も多く見られます。

ただし、中途採用に関しても「地域に貢献したい」という想いだけでは志望動機としては不十分であるため、「これまでの業務経験をどう仕事に活かしていくのか」という部分まで掘り下げて内容を考える必要があります。

転職で募集が多い職種

中途採用の場合は「営業職」「一般職」での募集が多く、中堅規模以上の信用金庫においてはこれらの募集求人が年間を通じて出されています。

信用金庫は「お客さまとの密接な関係」を築いていく部分に重きを置いていることから、実際に顧客と直接関わる職種である「渉外」や「窓口業務」に多くの人材を必要としています。

これらの職種は「コミュニケーション能力」がとくに求められる仕事内容であるため、面接時はその部分を重点的にチェックされると考えておきましょう。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

信用金庫業界へ転職する場合、必ずしも同じ金融業界での職務経験は求められていません。

しかし、中途採用においては「即戦力」となる人材が基本的には求められているため、営業職を受ける場合は営業や販売の経験、事務職を受ける場合は事務や窓口業務に関する職務経験がある人のほうが有利になる傾向があります。

学歴については、「一般職」の場合は高卒や短大卒以上、「営業職」の場合は大卒以上の学歴が求められるケースが多いです。

信用金庫業界の有名・人気企業紹介

京都中央信用金庫

1940年設立、預金量46,581億円、従業員数2,603名(2018年9月期)

京都府京都市に本店をおく、預金量・貸出金量ともに業界トップの信用金庫です。

京都以外にも滋賀、大阪、奈良に合計100を超える店舗を構え、盤石の経営基盤を固めています。

京都中央信用金庫 ホームページ

城北信用金庫

1945年設立、預金量36,325億円、従業員数2,108名(2018年3月期)

東京都品川区に本店を構える、業界内でもトップクラスの預金量を持つ大手信用金庫です。

みずほ銀行と提携関係にあり、コンサルタント業務やイベント企画・制作など、幅広く事業を展開しています。

城北信用金庫 ホームページ

巣鴨信用金庫

1922年設立、預金量17,783億円、従業員数1,099名(2018年3月期)

東京都豊島区に本店をおく、ホスピタリティある接客を強みとした信用金庫です。

1922年の創業以来、一度も合併や統合をすることなく安定的な成長を遂げています。

巣鴨信用金庫 ホームページ

信用金庫業界の現状と課題・今後の展望

競争環境

信用金庫業界では、信用金庫同士が合併することで経営の安定化を図る動きが活発化しています。

具体例としては、2018年には北海道で「小樽信用金庫」と「北海信用金庫」が合併し、「北海道信用金庫」が誕生しました。

また、2019年にも静岡県で「浜松信用金庫」と「磐田信用金庫」が合併し、「浜松磐田信用金庫」が発足しています。

これ以外にも信用金庫同士の合併は度々行われており、その背景には人口減少などを原因とした収益性の低下だけでなく、「職員の高齢化」や採用難による「人手不足」といった課題を各信用金庫が抱えていることも挙げられます。

今後も安定的な金融サービスの提供を目的として、信用金庫業界の再編は進んでいくことが予想されています。

業界としての将来性

信用金庫は各地域に密着して事業を行っている点が特徴といえますが、各地域の「地方銀行」と競合するケースも少なくありません。

地方銀行は信用金庫と比べて幅広くサービスを展開していることから、競争力の面では信用金庫の方が不利な状況にある地域が多く見られます。

また、少子高齢化による日本の人口減少も、地域密着のスタイルをとる信用金庫業界にとっては見逃せない問題です。

とくに地方の人口については顕著に減少が見られるため、そこを基盤とする信用金庫も当然厳しい状況だといえるでしょう。

このような課題を抱える中、信用金庫は最大の特徴である「公共性」をどのように活かしていくかが、業界の将来性を見極める上で重要なポイントとなります。

利益追求の側面を持つ銀行が手を出しづらい分野において、公共性の高い信用金庫だからこそできる事業を展開することで他の金融機関との差別化を図り、地域経済の活性化につなげていくことが各信用金庫に求められています。

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