遊ぶ側から、作り手へ。「もっと面白いゲーム」を追い求めて。
ゲームクリエイター田部井 弘貴さん
1992年2月5日、栃木県生まれ、神奈川県育ち。中学2年生でゲーム業界へ進むことを決め、高校卒業後、HAL東京 ゲーム4年制学科 ゲーム制作コースへ進学。2014年4月、株式会社スクウェア・エニックス入社。第1ビジネス・ディビジョン所属(2018年7月現在)。
田部井さんが、ゲーム業界を目指したきっかけを教えてください。
ゲーム業界に進もうと決めた時期は中学2年生です。
進学先を決めるにあたって、「自分が将来なりたいものは何だろう? 飽きずに働き続けられる仕事は何だろう?」と考えたら、大好きなゲームの仕事だな、と。
ちょうどその当時、以前から遊んでいた大好きなゲームの新作が面白く感じられないという出来事があったんです。
すごく残念だったと同時に、「それなら自分で面白いゲームを作ってみたい!」と思ったのが、ゲーム業界を意識したきっかけでした。
でも、そのときは決して格好いいことを考えていたわけでなくて、自分が遊びたいと思えるゲームがなくなってしまったら困ると思っていました(笑)
そこから、どのようにゲーム業界を目指していったのですか?
高校は普通科に進学しましたが、入学直後からその先のことを考えて、ゲームの専門学校を探していました。
当時は高校の勉強よりも、早くゲームに関する勉強がしたくてたまらなかったです。
専門学校について調べているうちに、HAL東京のことをCMで知って。
まだゲーム作りについて何もわからない状態だったので、基礎からみっちりと学べそうな学校だと思って、進学を決めました。
専門学校では、どのような勉強をしていましたか?
プランナーを目指してはいたのですが、HALではゲームプログラミングを中心に学びました。
プログラミング言語の基礎の基礎から、とにかく「ゲームを作る」ということを徹底的に勉強していきました。
授業時間外にも学校の友達と集まりながら、ゲームを作る練習をしていました。
また、学生団体に入ってリーダー役を務めたり、アルバイトもやっていたりしました。
時間に追われてはいましたが、友人もたくさんできて充実した4年間でした。
ゲームを作る仕事のなかでも、ゲームプランナーになりたいと考えたのはなぜですか?
最初にお話した通り、僕がゲームの仕事をしたいと思ったきっかけは「面白いゲームを作りたい」という気持ちでした。
プランナーは「こういうゲームにしたい」という提案ができる仕事なので、最初からプランナー志望だったんです。
ただ、ゲーム業界のなかでもプランナーとしての就職はとくに狭き門。
万が一、就職活動がうまくいかず、ゲームを作る仕事に就けないことだけは絶対に避けたかったので、まずはプログラミングをしっかりと勉強して、自分の強みを持っておこうと考えていました。
ちなみに、弊社以外の採用試験はプログラマー職の枠で受験して、いくつか内定をもらいましたが、第一志望だった弊社にプランナーとして入社することができました。
就職活動が成功した理由はどこにあると思いますか?
プランナーは、プログラマーやデザイナーに対して「こういうことを実現させたい」とお願いする役割をもっています。
そこでは専門知識が必要な場面も多々あるのですが、僕は自分がプログラムをやっていた分、プログラマーに対して話がしやすいという強みがありました。
もちろん、「プログラムの知識」といっても幅広いので、上を見ていけばきりがありませんが、僕は就職活動の時点で単純なゲームを作れるくらいのスキルを身につけていたので、そこが評価されたのではないかと思っています。
専門学校に入学したときからスクウェア・エニックスに入ることを目標にしていたので、内定をもらえた瞬間は本当にうれしかったです。
入社後は、どのようなお仕事をされているのですか?
入社直後は『ドラゴンクエストX』のメニュープランナーとして働いていました。
現在はPS4で発売予定の『ファイナルファンタジーVII リメイク』という作品にバトルプランナーとして携わっています。
バトルプランナーの仕事といっても、多岐にわたりまして担当が分かれています。
自分の場合は、敵がどのくらいの強さで、どういう技を使ってくるのかといった敵とのバトルの企画をして、実装していくことです。
実装するといっても一人で行うわけではなく、たとえば「敵が技を出すときにものすごいオーラを出す」という内容にしたい場合には、社内で承認を得てからプログラマーとデザイナーに対して発注をかけ、協力しながらやりたいことを形にしていきます。
お仕事のある日の1日の流れを教えてください。
裁量労働制なので勤務時間に関する自由度は高いです。
朝はだいたい10時~11時に出勤しています。
ミーティングや会議が入ることもありますが、社内にいる多くの時間は、自分が担当しているバトルを企画して、敵を次から次へと作っていきます。
ゲーム開発は事前に立てられたスケジュールに沿って進められていくので、納期間際になると退社が遅くなることも。
ですが、平常時は19時や20時頃には退社しています。
ゲーム業界は激務というイメージがありますが、実際はどうですか?
毎日タクシー帰りだとか、徹夜も当たり前だとか、きっとそう思っている学生さんは多いですよね。
僕も学生時代はそういうイメージがありました。
ですが、実際に激務といえるくらい忙しいのは納期間際、かつ自分の担当箇所で不具合が起こっているときくらいです。
僕はこれまでの4年間で、終電を逃したのは1回か2回ですよ。
ただ、正直にいうと勤務先にもよるのではないかと思います。
弊社は自社で企画・開発・販売を行うパブリッシャーですが、開発会社の場合はクライアントから案件を請け負って開発するので、もっとスケジュールに追われやすいと一般的にはいわれています。
休日やオフの時間はどんなことをして過ごしていますか?
休日は土日祝日です。友達とゲームをしたり、一緒にワイワイ騒ぐことが多いです。
いまだに専門学校時代の友人とのつながりも強いです。
仕事を始めてからは、世の中で売れているゲームを研究のために買って遊ぶことも増えました。
でも、自分が本当に好きなゲームは単純にユーザーとして楽しんでいます。そういうときは、意識的に仕事のスイッチを切っています。
お仕事のやりがいを教えてください。
自分が作ったものに対してお客様の声が返ってくることです。「面白い!」と言われたら、やはりものすごくうれしいです。
以前手掛けていた『ドラゴンクエストⅩ』はオンラインゲームで、リリース後のアップデートのたびに、お客様からいろいろな声をいただいていました。
もちろん良い声ばかりではないのですが、作り手としては遊んでもらえない、触ってもらえないまま終わるのが何よりも悲しいので、どんな声であっても意見をたくさんもらえるのはありがたいです。
仕事はとても楽しいです。
最近、母校の中学校で講演をする機会があったのですが、僕は自分が中学生の頃、周りに楽しく働いている大人がいないと思っていたんです。
だから僕は今、若い人たちに、楽しく働いている様子をどんどん見せてあげようと心がけています。
では、仕事をしていてつらい、大変だと思うことはありますか?
この仕事では「面白いゲームって何?」を突き詰めなくてはならない難しさがあります。
ゲーム開発には必ず期限があって、限られた時間で最高の面白さを追求し続けなくてはなりません。
それとゲーム開発はビジネスです。良いアイデアがあってもコストの関係でできないこともあるので、どこかで諦めなくてはならないタイミングが出てきます。
ゲームを好きがゆえに、そういう瞬間にもどかしさを感じることはあります。好きだと「仕事は仕事」と簡単には割り切れませんから。
ゲームの「面白さ」はどのように追求するのですか?
クリエイターたちは日々考えに考え抜いて、自分が面白いと思うものを納得して形にしていきます。
でも、それが絶対にヒットするわけではありません。「面白い」といわれても思うほど売れないこともありますし、自分は「あまり面白くない」と思った作品でも、売れているものもあります。
人によって何を面白いと感じるかは異なりますが、どういうゲームを作るか決めたら、「こうすれば面白くなるんじゃないか」ということを開発スタッフ全員でひたすら悩み続けて答えを出していくしかありません。
ちょっと話が飛ぶのですが、入社時の研修で、ある開発者の方から「ゲーム開発は暗闇に飛び込むようなもの」という話を聞きました。
今は、それだけゲーム作りは難しいことだと実感します。
それでも、「面白い」とは何かを考え続けて、精度を高めることが出来るように、日々研鑽していくしかないと思っています。
田部井さんがお仕事をするうえでのこだわりはありますか?
自分で「面白い」と思ったことは口にするようにしています。
経験を積んでいくと、何かアイデアが思い浮かんでも、これを実装するのはこういう苦労があるだとか、コストの面で難しいだろうな…など、先に気になってしまうことがしばしばあるのですが、そこでリミットをかけないようにしています。
ぶっ飛んだことを言って「そんなのできるわけないでしょ!」と上司に怒られたこともありました。
それでも、面白いアイデアだからやってみようとなったこともあります。面白いものを生み出すために、アイデアはどんどん出していくことが大事だと思っています。
ゲームプランナーになるにあたって向き・不向きはあると思いますか?
本気で頑張れば誰でもなれると言いたいですが、「ゲームを作る側」であることを楽しめないと、続けるうえでつらくなってしまうとは思います。
なので、ゲームを作るとはどういうことかを、早く感じてもらいたいです。
個人利用であれば無料で使えるゲーム制作ツールもあるので、そういうものに触ってみてください。
プランナー志望であれば、プログラムが好きな友達をつかまえて一緒にゲームを作るのもいいと思います。
最初は単純なゲームを完成させるだけでもすごく苦労すると思いますが、そういう経験は絶対に無駄にならないです。
プランナーという職種は、プログラミングをするプログラマーや、絵を作るデザイナーに比べると、何となくふわっととらえられがちなのですが、消去法で「プランナーならやれるかも」くらいの気持ちでなるのは難しいと思います。
開発現場では、プログラマーやデザイナーの間に入るのがプランナーなので、かなり幅広い専門知識が求められてきます。
もしプランナー志望であれば、どうやってゲームが作られていくのかをしっかりと勉強する必要があると思っています。
高校時代までに勉強することで、力を入れておいたほうがいいことはありますか?
ゲームプログラミングに触れるのであれば、高校の数学はきちんとやっておいたほうがいいと思います。
三角関数や微分積分の知識が必要になってくるので、僕は専門学校に入ってから必死で勉強し直しました。
あと、プランナー志望なら、自分の好きなゲームで良いので、なぜそのゲームが面白いのかを、論理的に説明できるようになれると良いかと思います。
田部井さんの夢・目標を教えてください。
社内でのキャリアアップという点では、ディレクターを目指していこうと考えています。
ディレクターは作品の「キモ」になる部分や、全体の方針を決める人。プランナーよりも、さらに上の視点からゲームの企画に取り組んでいくことができます。
もっと大きな話になると、業界用語で「IP」といわれるのですが、新しいブランドを作りたいと思っています。
たとえば弊社だったら『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』のような、たくさんの人に親しまれているブランド。そういうものを作りたいです。
最近は『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』ほどの影響力のあるブランドが生まれていない気がするので、僕ら若いクリエイターたちがもっと頑張っていかなくてはと思っています。
最近のゲーム業界の変化をどう感じていますか?
現代は子どもたちもスマートフォンを買い与えられて、無料で手軽にいろいろなアプリゲームに触れられる機会が増えている一方、技術の発展によって複雑なゲームも増えていますよね。
AR、VRなどが分りやすい例ですが、新しい技術が次々と出てきていますし、今後もハードの発展によってゲーム制作のあり方も変わってくるでしょう。
僕自身、新しい技術に興味はあるのですが、やはり普及していかなければ売れないので、まだゲームには使えない技術もたくさんあると思います。
いつゲーム制作の変化が来るか分らないので、新しい技術については勉強するようにしています。
最後に、ゲームプランナーを目指す人に向けてメッセージをお願いします。
僕自身、高校生のときはゲーム業界のことを何もわかっていませんでしたが、それでもその先にしっかりと勉強した結果、こうして働けています。
なので、今この記事を高校生くらいの皆さんが読んでくれているとしたら、将来ゲーム業界で働ける可能性は十分にあると思います。
本当にゲームの仕事がしたければ、ゲーム関係のイベントなど知らない場所にもどんどん突撃してください。そこで実際にゲームを作っている人に話を聞いたり、同じ目標をもつ友人を増やしたりしてください。
そして、自分がやりたい仕事が何なのかを明確にして、がむしゃらに勉強すれば、きっとその目標を達成できると思います。
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