航空業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
航空業界とは
航空業界に属する企業では、おもに航空機を用いた旅客や貨物の輸送を行なっています。
日本の航空業界は大きく「メガ・キャリア」と「LCC」の2つに大別できます。
「メガ・キャリア」とは大規模航空事業者のことで、国内の代表的な航空企業である「全日本空輸(ANA)」と「日本航空(JAL)」がメガ・キャリアとして挙げられます。
一方、「LCC」とは格安航空会社を意味しており、「バニラエア」「スカイマーク」「ジェットスター・ジャパン」などがLCCの代表的な企業です。
また、それ以外に特定の地域で近距離輸送を行う「地域航空会社」も存在していて、「北海道エアシステム(北海道)」「日本エアコミューター(鹿児島)」「ソラシドエア(宮崎)」などの企業がこれにあてはまります。
航空業界は訪日外国人の増加やアジア経済の成長などを背景に、堅調に需要が伸びている業界です。
今後もグローバル化が加速していくことで、旅行やビジネスで日本に訪れる外国人は増えていくことが予想されており、航空業界にとって追い風といえる状況となっています。
それにともない、羽田・成田空港の発着枠拡大など、今後は各空港での受け入れ態勢の強化も必須になるといえるでしょう。
航空業界の役割
島国である日本に住んでいるわたしたちが海外に出かける場合、基本的な移動手段としては「航空機」か「船」かのどちらかしかありません。
移動にかかる時間など効率性を考えれば、多くの人は航空機で海外に行くことを選択するはずです。
つまり、日本に住むわたしたちが世界中の国へ自由に行き来する上で、また、海外に住む人が日本に訪れる移動手段として、航空機は欠かせない存在となっているのです。
今後も世界規模でグローバル化が進んでいくことを考えれば、航空業界の役割は一層重みを増していくといえるでしょう。
また、航空機の移動に関する利用者のニーズも多様化を見せています。
「とにかく安く飛行機に乗りたい」「多少高くても快適に移動したい」といったような利用者それぞれの要望と、自社サービスの特徴や強みをどこまでマッチングさせていくのかという部分については、航空業界各社にとって重要な検討課題といえそうです。
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航空業界の企業の種類とビジネスモデル
メガ・キャリア
「メガ・キャリア」は大規模航空事業者を意味しており、日本の企業としては「全日本空輸(ANA)」と「日本航空(JAL)」がこれにあてはまります。
また、アメリカの「デルタ航空」やシンガポールの「シンガポール航空」などもメガ・キャリアとして数えられており、いずれも世界を代表する航空会社です。
国内の航空業界における市場はANAとJALが圧倒的なシェア率を誇り、この2社による寡占状態となっています。
LCC
「LCC」は格安航空会社を意味する言葉で、代表的な企業としては「バニラエア」「スカイマーク」「ジェットスター・ジャパン」などが挙げられます。
LCCは徹底的な効率化により、従来までの運賃と比べて低価格な運航サービスを提供していることが特徴です。
LCCの代表的な企業として挙げた「バニラエア」はANA傘下、「スカイマーク」はANAから出資を受けており、「ジェットスター・ジャパン」はJALの出資を受けています。
このように、格安航空の領域についてもメガ・キャリアの影響力が見て取れる状況となっています。
地域航空会社
「地域航空会社」は特定の地域で近距離輸送を行う航空会社のことです。
企業の例としては、「北海道エアシステム(北海道)」「日本エアコミューター(鹿児島)」「ソラシドエア(宮崎)」などが挙げられます。
航空機の整備や空港業務には大きな費用がかかることから、地域航空会社同士で連携を行い、コスト削減を図る動きも見られています。
また、連携強化によって路線の拡充にもつながり、離島に住んでいる人の行き来がしやすくなるといったメリットもあります。
航空業界の職種
航空機の運航には、パイロットや客室乗務員のほかにもさまざまな職種の人たちが関わっています。
ここでは、航空業界の代表的な職種を紹介します。
パイロット
実際に航空機を操縦し、目的地まで安全に旅客や貨物を運ぶのが仕事です。
おもに「機長」が操縦を行い、「副操縦士」が管制塔との連絡や機長のサポートを行います。
航空機の操縦だけでなく、燃料の確認や飛行データの入力、キャビンアテンダントとのミーティングなど、フライト前の入念なチェックもパイロットの重要な仕事です。
客室乗務員(CA)
客室乗務員は「CA」や「キャビンアテンダント」と呼ばれることが一般的で、言葉の意味はどれも同じです。
航空機の中でお客さまの接客を行うことが、客室乗務員のおもな仕事となります。
機内食やドリンクサービスの提供などが利用者の目に最も触れる部分ですが、「保安要員」としても大切な役割を担っています。
グランドスタッフ
グランドスタッフは、空港内で航空機の利用者に対してさまざまなサービスを提供している職種です。
具体的には、チェックイン手続き・パスポートチェックなどのカウンター業務や、空港内でのチケット販売、乗り換え便のアナウンスなど、多岐にわたる業務を行なっています。
利用者に対してきめ細やかにサービスを提供し、年齢・国籍を問わずに臨機応変に対応することが求められる仕事です。
航空整備士
航空機の点検・保守を行い、機体が正常に機能しているかどうかをチェックするのが航空整備士の仕事です。
航空機は膨大な数の精密機器によって成り立っており、それらの部品を一つ一つ、細心の注意を払って点検作業を行う必要があります。
航空機に関する深い知識や、強い責任感が求められる職種といえるでしょう。
グランドハンドリング
グランドハンドリングの仕事は「航空機の誘導」と「カーゴ業務」の2つに分かれます。
「航空機の誘導」は、滑走路の敷地内で航空機の発着陸をサポートするのがおもな仕事です。
「カーゴ業務」は、乗客の荷物など航空貨物の搬入作業を行っています。
パイロットやCAと比べると目立つ職種ではありませんが、空港業務の「縁の下の力持ち」として欠かせない存在です。
航空業界のやりがい・魅力
航空輸送という社会インフラを担う仕事
航空業界は鉄道業界や電力業界、ガス業界などと同様に、社会の基盤となるような仕組みを提供している「インフラ産業」の一つです。
航空業界で働くということは重要な交通インフラの一つを担うことであり、そこに強いやりがいを感じる人が多いようです。
また、飛行機の運航を正確・安全に行なっていくためには、さまざまな部署が連携しチームワークを意識しながら業務にあたっていく必要があります。
その分大変なことも多いですが、色々な人と関わり合いながら航空機の安定運航に努めることは、大きな充足感を感じることにつながるでしょう。
航空券の社員割引制度がある
航空会社で働く魅力の一つに、「航空券の割引制度」が挙げられます。
すべての企業で必ず割引制度があるわけではありませんが、航空会社によって「90%割引航空券」や「半額割引航空券」などの社員専用の割引券を利用することが可能となっています。
もともと航空業界で働いている人は旅行が好きな人も多く、飛行機をよく使う人にとってはとても嬉しい特典だといえます。
ただし、航空機の利用はあくまでお客さまが最優先となっているため、事前の予約に関しては制限をかけている場合も少なくありません。
また、単なる社員の特典として利用するだけではなく、自社の航空機を顧客目線で利用することで改善点などを見つけるといった狙いもあり、気づいた点について実際にフィードバックを行う場合もあるようです。
航空業界の雰囲気
航空業界は他の業界に比べて、女性が多い職場であることが大きな特徴となっています。
そのため、必然的に企業側は女性の働きやすさを十分に考慮する必要があり、航空会社大手のANA、JALを中心に充実した子育てのサポート制度が準備されています。
結婚や出産後も長く働き続けたいと考える人にとって魅力的な環境だといえるでしょう。
一方で航空会社で働く多くの人が、「上下関係」を常に意識しながら仕事にあたっていることも、航空業界特有の雰囲気といえます。
航空業界では入社時、入社年や月などが組み合わさった番号を一人ひとりに与えられ、その番号は「セニョリティ」と表現されています。
入社順を表すこのセニョリティは、仕事の中のさまざまな場面で使われることも多い番号であり、このように上下関係がはっきりとしている企業文化は航空業界ならではの特徴です。
航空業界に就職するには
就職の状況
航空業界は学生の就職先としても非常に人気の高い業界です。
就職情報サイトなどで発表される就職人気ランキングにおいても、航空業界は毎年上位にランクインしています。
求人状況については、ANAやJALを中心に多くの航空会社で新卒の採用活動を毎年実施しています。
募集職種はCA、グランドスタッフ、グランドハンドリングなど企業によってさまざまですが、応募については「専門卒以上」または「短大卒以上」を学歴要件としている企業が多く見らます。
とくにCAに関しては女子学生にとって憧れの職業の一つであり、どの航空会社においても高倍率になることが予想されるでしょう。
そのため、ただの憧れだけで就職することは難しく、「CAとして何をしていきたいのか」「CAになるためにこれまでどんな努力をしてきたのか」といった部分にしっかり答えられるように準備を進めていくことが大切です。
就職に有利な学歴・大学学部
学歴に関しては、CAやグランドスタッフといった職種の場合は「専門卒・短大卒以上」を応募条件としている企業が多いです。
高卒の受け入れを行なっている企業もなかにはありますが、短大卒などと比べると選べる選択肢は少なくなってしまうといえるでしょう。
また、いずれの職種においても大学の学部については問われないケースがほとんどです。
その代わりに、業務上必要になる「英語力」を応募段階で求める企業も多く、CAやグランドスタッフを目指す場合には在学中にTOEICのスコアを伸ばしておくとよいでしょう。
早い段階から航空会社で働くことを目指す学生の中には、CAやグランドスタッフを養成する「エアラインスクール」に通い、準備を進める学生もいます。
就職の志望動機で多いものは
航空業界を受けるときの志望動機としては、「海外に出かける人や日本に訪れる人に快適な時間を過ごしてもらいたい」「お客さまに対して質の高いサービスを提供したい」という内容がよく見られます。
また、もともと「海外旅行が好き」「空港で働くことに憧れていた」といった理由で航空業界を受ける人も少なくありません。
いずれの理由においても、志望動機を考える上では「入社後」の部分が大切であることを意識しましょう。
自分が希望する職種の仕事内容に沿って、「自分が入社することでどんな貢献ができるのか」について説得力をもたせながら伝える必要があります。
それと同時に、各航空会社の特徴や強みの分析・比較を行い、「なぜこの航空会社を選んだのか」という質問にも答えられるように準備をしておくとよいでしょう。
航空業界の転職状況
転職の状況
航空業界では、新卒者を対象とした採用のほか、多くの航空会社で中途採用の募集も行なっています。
とくにANAやJALといった大手の航空会社の場合は従業員も多いため、毎年一定数の定年退職者も出ることから安定的に求人が出ている状況です。
募集される職種は事務系や技術系などさまざまですが、転職市場においても航空業界の人気は高く、いずれの職種も高倍率となる傾向があるでしょう。
そのため、企業側が求める人物像と自分の知識・スキルを照らし合わせ、効果的に自分をアピールできなければ内定をもらうことは難しいといえます。
転職の志望動機で多いものは
航空業界に転職する人の志望動機としては、「これまでの経験を活かして飛行機を利用するお客さまに高品質なサービスを提供したい」という内容が多く見られます。
職種にもよりますが、各航空会社は「質の高いサービス」を重視している傾向があるため、実際の現場で求められるサービスの基準は他業界と比べても高いといえます。
これまでの自分の経験の中で「どんなサービスをお客さまに提供してきたのか」という部分を盛り込むことも、志望動機の説得力を持たせるためには重要なポイントの一つです。
転職で募集が多い職種
航空業界では中途採用でもさまざまな職種で募集を行なっています。
具体的には、「地上職(事務系)」「地上職(技術系)」「CA」といった区分で募集をかけている企業が多いようです。
「地上職(事務系)」は、営業企画、運航管理、経理・財務などの職種がこれに該当します。
「地上職(技術系)」については、整備技術、品質保証、生産管理などの職種があてはまります。
それぞれの職種によって求められる知識や要件は異なりますので、各企業の採用ページでよく確認しておきましょう。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
航空業界へ転職する場合、営業や事務系、CAなどの職種に関しては、ほとんどの企業で同業界での業務経験の有無は問われません。
しかしながら、即戦力が求められる中途採用については、その職種につながる職務経験をもっている人の方が有利に働きやすいといえるでしょう。
一方、航空整備や品質保証などの技術職については、専門的な知識やスキルがあることが前提での募集となっています。
学歴については企業や募集職種によっても異なりますが、「専門・短大卒以上」を応募条件としている企業が多く見られます。
航空業界の有名・人気企業紹介
日本航空(JAL)
1951年設立、連結売上高1兆3,832億円、従業員数12,127名(2018年3月)
国内線・国際線において日本で最も長い歴史を持ち、ANAと共にメガ・キャリアの一角を担う大手航空会社です。
2010年に経営破綻した過去がありますが、その後V字回復を遂げ、現在は堅実な経営が進められています。
全日本空輸(ANA)
1952年設立、連結売上高19,717億円、従業員数13,928名(2017年度)
国内では国際線・国内線ともに業界最大規模を誇る、メガ・キャリアの一つです。
イギリスの「スカイトラックス」による航空会社の格付けでは、日本の航空会社として初めて「ザ・ワールド・ファイブ・スター・エアラインズ」の認定を受けています。
バニラエア
2011年設立、売上高329億円(2018年3月期)、従業員数759名(2018年8月時点)
ANA傘下の、日本の大手LCCの一つです。
同じくANA傘下の「ピーチ・アビエーション」との統合が決まっており、統合後はLCC国内最大手となる見通しです。
航空業界の現状と課題・今後の展望
競争環境
日本の航空業界ではLCCを中心に競争が激化しています。
2019年度末をめどに、ANA傘下のLCC大手「ピーチ・アビエーション」と「バニラ・エア」が経営統合することが発表されています。
また、JALも2018年にLCCの準備会社である「ティー・ビー・エル」を設立するなど、航空業界大手2社がLCC領域の強化を進める動きを見せています。
「手軽な価格で飛行機を利用したい」という利用者のニーズは強く、今後もLCCの分野は各社で力を入れていくことが予想されています。
また、海外に目を向けると、日本の空港機能は遅れをとっている状況です。
滑走路の不足などを原因に航空機の発着本数に余裕がない状態が続いており、羽田・成田空港を中心に空港機能をどれだけ強化していけるかという点が、航空業界各社の競争力を高める上でも重要なポイントになるでしょう。
業界としての将来性
航空業界全体をみると、ANAやJALに続き多くの企業で業績を伸ばしています。
今後も訪日外国人の増加などを理由に、しばらくは航空需要の高まりが続いていくことが予想されており、航空業界にとっては追い風です。
しかしながら、日本の人口自体は減少していくことを踏まえると、国内線で売り上げを伸ばしていくことは困難になっていくことが考えられます。
そのため、国際線を中心に「インバウンド需要」をいかに確保できるかが、航空各社の直近の課題といえるでしょう。
各社でLCCの強化を進める動きも見られることから、航空会社間の競争は今後も激化していくことが予想されています。
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