人材業界(読了時間:12分14秒)

人材業界とは

人材業界とは、会社に必要な労働力となる人材を紹介するビジネスを主に行う業界です。
正社員から派遣・アルバイトまで、さまざまな契約形態の人材を企業に紹介し、労働力の確保と雇用の安定に貢献しています。

人材業界の大手企業を中心に多くの企業が加盟する「人材サービス産業の近未来を考える会」の「2020年の労働市場と人材サービス産業の役割」によれば、人材サービス業界の市場規模は9兆539億円となっており、日本の一大産業である電子部品・デバイスよりも大きな市場です。

人材業界では、転職支援サービスや人材派遣、人材広告、人材コンサルティングなどの仕事があり、人材エージェントやキャリアコンサルタントなどさまざまな職種の人が活躍しています。

人材業界は、大手から中小企業、個人事業までさまざまな規模で行われており、労働力の不足や労働形態の多様化などに対応するべく、今後も安定した需要が見込まれます。

人材業界の役割

人材業界は、労働力を必要とする企業と、働きたい個人をマッチングさせることが主な仕事です。

日本では少子高齢化によって労働力人口が少なくなりつつありますが、その中で優秀な人材を採用できるかどうかは、企業の将来性を左右する大きな問題です。

人材業界は、企業が求める人材像を正確に把握するだけでなく、人材側が求める給与や勤務地などのさまざまな条件を把握し、両者の希望が一致するように仲介する役割を果たしています。

また、新たな働き方を志向する人が増えつつある状況の中で、よりよい働き方や採用のあり方を研究し、提案していくことも人材業界の役割です。

企業や個人のニーズに沿った企画や情報を随時提供し、企業と個人を結びつけ、社会を活性化させていくことが人材業界のミッションといえるでしょう。

人材業界の企業の種類とビジネスモデル

国内大手企業

大手企業であるほど、サービスの提供範囲が広いエリアにわたり、全業種にわたって人材の登録を行っており、ニーズのある企業とのマッチングを行っています。

働きがいのある魅力的な企業としてPRするための人材企画や、求人を広く知らせるための広告、そして登録された人材とのマッチングまで行っている企業が多いです。

また、常に業界をリードして新しい働き方や人材市場の状況を研究・アナウンスしていくこともその特徴です。

国内の大手企業にはリクルートホールディングスやパーソルホールディングス、テンプグループがあります。

国内中小企業

中小企業は大企業のようにエリアを広げたり、全ての業種を扱わず、地域や特定の業界に特化した事業活動を展開しています。

エージェントの人脈や得意な業界を活かした顧客開拓やスカウト活動、エリアに特化した人材広告や広告媒体の作成、就職支援のためのコーチングなどを行う企業が多く見られます。

人材市場を全体的に見た場合、中小企業は規模では大企業には及ばないものの、数が多くその活動は細やかであるため、大企業と互いに補完しあう関係になっています。

中小企業の例としては、IT専門のGreenや営業職に強いキャリアマート、医師・看護師に特化した日本メディスタッフなどがあります。

人材業界のビジネスモデル

人材業界のビジネスモデルは、大きく「人材紹介」「人材派遣」「人材広告」「人材コンサルティング」の4つに分けることができます。

人材紹介は、いわゆる転職支援サービスのビジネスで、求職者と労働力を求める企業を仲介し、採用が決定した際に企業から報酬を得ています。

リクルートキャリアや外資のアデコ、IT系に強いレバテックキャリアなどが有名です。

人材派遣とは、派遣会社に登録されたスタッフをクライアント企業に派遣することで報酬を得るビジネスで、人材の管理や派遣だけでなく、クライアント企業において労働者が不当な労働を強いられないようサポートも行っています。

テンプスタッフやスタッフサービスが有名です。

人材広告は、求人広告を取り扱っている企業で、インターネットや雑誌など、求人媒体の特性を活かして求職者と企業のマッチングをサポートし、掲載企業から広告料収入を得ています。

新卒採用向けのリクナビやマイナビ、アルバイト広告のIndeed Japanやエン・ジャパンなどがあります。

人材コンサルティングは、企業が抱える採用や定着、リストラ策など人事面での相談やサポートを行って報酬をもらうプロフェッショナルビジネスです。

リンクアンドモチベーションやディスコ、マネジメントソリューションズなどがあります。

また、それぞれのビジネスモデルで地域や、「医療業界専門」「IT業界専門」などの業界、あるいは「外資専門」「管理職専門」など扱う人材による細分化が行われています。

人材業界の職種

人材業界では、一人の人材と企業が雇用契約にいたるまで、多くの人がサポートしています。

人材業界の多くの職種の中から代表的なものを紹介します。

キャリアアドバイザー

人材の希望する働き方や能力・スキルを把握し、条件の合いそうな企業に紹介する職種です。

キャリアアドバイザーの能力によって成約数が変わる重要な職種で、キャリアアドバイザーによってIT業界の人材紹介が得意、食品業界に強いなど、その特徴もさまざまです。

マッチングに関わる業務の他にも、人材の面接訓練やキャリア相談、人材にとってスキルアップや就職に有益な情報の提供なども行います。

キャリアコンサルタント

個人の求める働き方を明確にしたり、目標を実現するためのスキルアップや会社選びについて相談を受けたりと、キャリア形成に関する支援を主な業種とする職種です。

経験を積んだキャリアアドバイザーがキャリアコンサルタントになることが多く、人材市場の実務経験だけでなく、コーチングやカウンセラーの資格保有者もいます。

キャリアアドバイザーの中には、人事コンサルタントとして企業の人事の問題解決にも携わる人もいるなどその働き方はさまざまです。

営業

人材業界における営業職は、求人企業の獲得が主な仕事です。

人材紹介や人材広告など、自社で提供するサービスを企業に説明して回り、興味をもってくれた企業と契約を結んでキャリアアドバイザーや広告企画の担当者につなぎます。

規模の小さい企業では、営業職がキャリアアドバイザーや広告企画までを担当している場合もあり、その業務範囲は企業や個人によって大きく異なっています。

広告企画

人材広告を扱う企業において、クライアント企業と広告内容について相談する仕事で「プランナー」と呼ばれることもあります。

企業が欲しい人材像を明確な言葉で表現したり、効果的な広告にするための媒体選びやアピール方法などを相談して、広告企画に落とし込みます。

案件によっては、広告掲載用のキャッチコピーの作成や写真撮影、インタビュー記事の作成などをライターやデザイナー、カメラマンなどのチームで行うこともあります。

人材業界のやりがい・魅力

働き方の変化が人材業界にとって大きな機会に

国内における少子高齢化が進んだ結果、労働力人口がどんどん少なくなっています。

人材獲得は企業の重要な課題となり、広告を掲載し待っているだけではなかなか求める人材を獲得することができなくなってきました。

こうした背景もあり、人材業界の市場規模はどんどん大きくなっています。

加えて、働き方改革や外国人労働者の積極採用などの動きが始まっており、人材業界にとっては大きな機会となっています。

新しい労働形態や外国人採用に関するノウハウを持っている企業は中小企業を中心にまだまだ少なく、人材と企業を仲介するプロである人材会社の持つノウハウが注目されています。

こうした社会の変化を最前線で実感できることや、仲介した人材が企業に定着し、企業の成長に貢献する様子を見ることで、人材業界における社会貢献ややりがいを実感できるでしょう。

女性も活躍しやすい

近年、女性の社会参加や就業の意識が高く、就職・転職を希望する女性も増えているため、女性をターゲットにした人材ビジネスを行う企業も多くなってきました。

女性の人材の場合、対応するスタッフが女性である方が安心して相談でき、信頼関係を作りやすいため、キャリアアドバイザーなどの職種では女性の割合も多いです。

こうした背景から人材業界でも、女性ならではの視点や感性を重要視して女性の採用を積極的に行う傾向が見られます。

人材会社では、女性社員が活躍しやすいよう福利厚生や待遇面の改善に力を入れており、有給消化率の向上や、産休や育休を取得しやすい雰囲気作りに取り組んでいる企業も増えています。

人材業界の雰囲気

人材業界では、他業界と比較すると女性の比率が多いことが特徴です。

企業によっては過半数が女性で構成されており、仕事の性質上、コミュニケーション力の高い人も多いこともあって、活気ある職場が多く見られます。

個人や企業の大事な情報を取り扱う人材業界では、セキュリティ意識の高さや守秘義務をしっかり守るモラルが求められるため、誠実な人が多いのも特徴です。

企業や職種によっては、フレックス制や裁量労働制などの雇用形態が採用されており、遅い時間でもオフィスに人が残っていたり、午前中はオフィスが閑散としていることも少なくありません。

最近は外国人の求人や採用のために外国語に力を入れている企業や、外国人スタッフの採用を行っている企業も増え、オフィス内でもグローバル化が進んでいることが感じることができます。

人材業界に就職するには

就職の状況

人材業界への新卒就職では、営業や企画、キャリアアドバイザーなどの職種を担当できる人材を育てるために総合職採用が定期的に行われており、大卒の学歴が求められるのが一般的です。

事務や受付などの業務では一般職の求人募集もあり、学歴を問わない場合もありますが、募集数そのものが少なく、中途採用で即戦力人材を求める傾向が見られます。

人材業界は成長傾向にあるため、採用枠が大きく減ることは考えにくいですが、中小企業においては経営体力の不足から採用が少なくなる可能性があります。

人材業界は学生にとって比較的なじみのある業界であるため、就職活動では人気の高い業界で、大手企業では求人数も多いものの志望者も多く、競争も激しくなっています。

就職に有利な学歴・大学学部

人材業界では、総合職の新卒採用では大卒程度の学歴が求められ、一般事務職では専門学校や高卒でも可としているところが多いです。

就職にあたって特に有利な学部はありませんが、労働や人材教育に関心の高い社会系の学部や心理学部、教育学部から志望する人も多く見られます。

学部卒と大学院卒で募集内容や待遇に差がつくことはあまりありませんが、大手の中にはHRTech(人事に関する課題を解決するためのIT技術)の開発や提供を行っている企業もあり、理系の専門的な知識を持つ人材は特別な採用が行われることもあります。

また、企業の扱う人材の特性やサービスによって、技術に理解のある理系出身者が有利になることもあるため、企業の特性をよく把握することが大切です。

就職の志望動機で多いものは

人材業界への就職における志望動機では、「人が好きで人と深くコミュニケーションをとる仕事に携わりたい」といったものや「仕事を通して多くの人の就職に貢献したい」といったものが多く見られます。

「働く」ということにおいて問題が多くなっている中、求職者と企業をマッチングすることで社会貢献をしたいと考えている人も多くなっているようです。

人材業界は比較的人気の高い業界でもあるため、志望動機を考える際はただ「人が好き」「社会貢献がしたい」という理由では十分なアピールにならない可能性があります。

業界研究や企業研究をしっかり行い、志望企業が提供しているサービス分野とマッチした志望動機を具体的に考えることが大切です。

人材業界の転職状況

転職の状況

人材業界では中途採用も積極的に行われており、業界経験者はもちろん、他業界からも積極的に人材を受け入れる傾向がありますので、多くのチャンスがあります。

特に、業界特化型の人材会社では、業界や技術・製品に対する理解度の高さから業界経験者は優遇されることが多く、企業規模を問わず求人募集が見られます。

人材業界では成果報酬や裁量労働制など待遇面でもさまざまな制度を導入している企業も多く、求める働き方に応じた企業選びができることから、転職者にも人気が高いです。

転職の志望動機で多いものは

人材業界への転職の志望動機としては「前職の知識や経験を活かしたい」「自身が利用した経験から人材業界に興味を持つようになった」「成長している業界で働きたい」といったものが多く見られます。

転職の志望動機では、就職に関する本気度が求められるため、志望動機の説明の中で業界や企業、仕事への高い関心を示すことが大切です。

条件面とスキルがうまくマッチするなら、比較的転職しやすい業界と考えられます。

転職で募集が多い職種

転職では「営業職」や「キャリアアドバイザー」の職種での求人が多く、他職種の募集はそれほど多くありません。

営業職では主に企業の担当者と接することになり、キャリアアドバイザーは主に登録している人材と接する機会が多くなりますので、コミュニケーション能力が高い人材は高く評価されます。

これらは企業の提供サービスにおける重要な仕事を担う職種であるため、各企業では優秀な人材を集めようと常に意識しているため、定期的に求人募集が行われています。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

人材業界への転職では、業界経験者や職種の経験がある人が基本的に有利です。

しかし、業界未経験だとしても、企業が提供する人材サービスにおいて注力している業界の経験者や、カウンセラーや社会保険労務士などの資格保持者は高く評価されます。

人材業界では特にコミュニケーションスキルが求められるため、面接で非常に良い印象を与えることのできる人は比較的有利です。

また、海外展開を志向する企業では、外国語能力があるとチャンスが広がります。

人材業界の有名・人気企業紹介

リクルートホールディングス

1960年創業、1963年設立。売上高23,107億円、従業員数40,152人(連結2019年3月期)

新卒採用のリクナビ、中途採用のリクルートスタッフィングなどを持つ人材業界のリーディング企業で、現在は国内外で積極的なM&Aを行って事業領域を広げています。

リクルートホールディングス ホームページ

パーソルホールディングス

1973年創業、2008年設立。売上高9,258億円、従業員数33,940人(連結2019年3月期)

業界2位であるパーソルは、テンプスタッフやDODA、anといった知名度の高いサービスを有し、総合人材サービスを提供しながら海外進出に積極的に取り組んでいます。

パーソルホールディングス ホームページ

パソナグループ

1976年創業、2007年設立。売上高3,114億円、従業員数7,612人(連結2018年5月期)

パソナグループは人材派遣と共に福利厚生代行サービスが主力事業で、地方創生を成長戦略の中に積極的に取り組んでいるのが特徴です。

パソナグループ ホームページ

人材業界の現状と課題・今後の展望

競争環境

人材業界では企業間でのグローバルな人材獲得競争やワークスタイルへの変化への対応が課題で、先行した外資企業の参入も増えています。

そのため、大手企業は海外企業のM&Aに積極的で、国境を超えて多様な人材をストックし、マッチングできるようなビジネスモデルの構築に取り組んでいます。

また、中小企業では変化するノウハウへの対応が追いつかずに淘汰が進むと見られ、特に東京オリンピック後の景気動向によっては大きく影響が出る可能性があります。

最新の動向

人材業界ではグローバル人材のマッチングや、新しいワークスタイルや法対応のためのノウハウが求められており、研究が続けられています。

HRTechによるビデオ面接やAI面接は採用活動の自由度や効率性を高めると期待されており、採用・労務・教育などの人事業務を一括で管理するためのシステムも登場しています。

また、ビッグデータとAIを活用し、人材と企業のマッチング精度を高めるための研究もさかんで、参入企業も増えています。

業界としての将来性

国内市場では、深刻化する人手不足から単価向上は見込めるものの、すでに失業率が3%を下回る非常に低い水準であるため、成約数や売上の大きな伸びは期待できません。

そのため、人材業界では事業効率化が大きな課題で、HRTechが今後の成長を大きく左右すると見られています。

また、市場拡大のために、事業拡大の余地のある海外への進出やグローバル人材のマッチング事業の模索が続けられています。

人材業界は成長が続いているものの景気の影響が強いため、現在の世界的な景況感の低下には注意を払う必要があるでしょう。

職業カテゴリー