印刷業界(読了時間:11分52秒)

印刷業界とは

印刷業界とは、広く印刷やそれに伴う技術を利用した業務を担う業界のことをいいます。

印刷業界を支えるメイン産業は、今も昔も紙の印刷です。

書籍や雑誌、新聞の印刷や、企業が使用する宣伝材料の印刷などが主な製品です。

しかし、インターネットマーケティングの市場拡大に伴い、紙の書籍やチラシなどの媒体のニーズは急激に減少しています。

そのため、出版業界全体としても、紙への印刷と並びメインとなるビジネスの創出が必要となっています。

多くの企業では、これまで蓄積したノウハウを活かし、紙以外の素材への印刷や、印刷に付随する周辺業務の一括受注など、プロダクトとビジネスモデルの両面から新しい施策を検討・導入しています。

例えば、様々な場面で活用されているICカード。

カードへの印刷だけでなく、ICチップの埋め込みなど、特殊な技術が使用されています。

その他にも、建築材料や携帯電話の部品など、とても幅広い分野で印刷業界の技術が生かされています。

印刷業界とは、古くからある、歴史と技術のある業界でありつつ、全く新しいビジネスやサービスを創出する業界でもあるのです。

印刷業界の役割

身の回りを見渡してみると、何かしらの印刷がされているものであふれかえっていることがわかります。

書籍やチラシ、新聞などの紙媒体の製品ももちろんですが、それだけではありません。

例えば布へのプリントや、プラスチックのパッケージプリントなども印刷業界の企業が担っています。

つまり、今来ている服の柄や、おやつに食べたポテトチップスのパッケージなども、印刷業界での仕事を経て手元に届いているということです。

印刷業界の活躍があるからこそ、日常に彩りが添えられ、それぞれの商品は独自性や視覚的な魅力を実現することができているのです。

普段はなかなかその存在を意識することの少ない業界ではありますが、実は社会において重要な役割を占めているのです。

印刷業界の企業の種類とビジネスモデル

様々なプリントを担う印刷業界ですが、取り扱っている印刷の種類やビジネスモデルによって次のように分類することができます。

総合印刷会社

ここまで紹介したように、特定の分野の印刷に特化した企業に対し、印刷に関連する商品・サービスを横断的に取り扱う企業もあります。

それが、総合印刷会社と呼ばれる企業です。

総合印刷企業には、日本の印刷業界を牽引する大企業が含まれます。

今日の印刷市場においては、総合印刷会社である大日本印刷と凸版印刷株式会社が二大企業として知られています。

これらの企業の多くは、印刷だけでなく、既存の印刷技術を活かし、情報セキュリティや医療など、様々な分野でサービスやソリューションを提供しています。

出版物印刷

印刷業界の取り扱う業務の中で、書籍や雑誌など、出版物の印刷はメインとなる業務のひとつです。

書籍の印刷を担う企業の場合、本文だけでなく、カバーや表紙の印刷や製本など、書籍づくりに関わる工程のほぼすべてを担っている企業も多くあります。

出版社と深いつながりがあることが特徴で、大手出版社の場合、印刷会社がグループ企業であることもよくあります。

例えば、講談社の出版物の多くは、グループ企業である豊国印刷株式会社が請け負っています。

紙製品印刷

書籍以外にも、印刷されるものはたくさんあります。

企業のPRチラシやポスター、カタログ、あるいはオリジナルグッズなどです。

最近ではコンピュータを使用しての印刷技術が進んできており、小ロットでの製作も可能になってきています。

そのため、企業向けの製品だけでなく、小規模な店舗や、個人の顧客に対してオリジナルグッズの製作を請け負う業態もその市場を拡大してきています。

株式会社緑陽社などは、書籍印刷で培った印刷技術を活かして、個人向けの製品印刷を行っている先駆的企業のひとつです。

セキュリティ印刷

印刷された製品の中には、偽造防止など、セキュリティ対策が必要なものもあります。

例えば、被保険者証や各種身分証明書、あるいは商品券などの金券類が代表的なところです。

このようなセキュリティ対策が必要な商品の印刷を専門に手掛けている会社もあります。

代表的な企業として、昌栄印刷株式会社があります。

明治時代に有価証券専門の印刷会社として設立されており、その技術には深い信頼が寄せられています。

印刷業界の職種

印刷業界では、実際に印刷に関わる職種から、バックオフィスと呼ばれる事務系の職種まで、様々な職種の人が働いています。

ここでは、代表的な職種を紹介します。

技術職

印刷業界を支える大きな柱に、技術職の人々の存在があります。

技術職とは、実際に印刷機やその他の機械を動かし、印刷やその他の加工を行う職種のことです。

この職種がなければ商品が完成しない、名実ともに業界を支える重要な職種ということができます。

研究・開発職

新しい印刷技術や加工技術の研究・開発を行う部署も重要な役割の一つです。

また、最近では既存の印刷・加工技術を応用して、全く新しい分野の商品開発も行われています。

例えば、フローリングや壁紙といった建築材料のコーティングや、スマートフォンの電池の製造などにも、印刷技術が応用され、使用されています。

営業職

印刷業界の営業職は、発注を取ってくるだけが仕事ではありません。

印刷の体裁や色・デザインの指定、装丁にいたるまで、クライアントとなる企業の担当者と共に企画・開発に携わり、実際のプロジェクトのかじ取りをします。

実際のものづくりに最初から最後まで関わる、とても重要な職種なのです。

事務職

印刷業界にも、多くの業界と同じく採算部門を支えるバックオフィス業務が存在しています。

人事や経理、総務など、会社の運営になくてはならない部門を担っているのが、事務職の人々です。

また、印刷技術や周辺技術の特許や使用権など、法律関係を専門に扱う部署がある企業もあります。

印刷業界のやりがい・魅力

印刷業界とは、ものづくりの業界です。

企画として持ち込まれた原案が、自分の手を経て実際の書籍や商品などとして出来上がっていく工程は、とてもやりがいのある仕事です。

特に、本好きの人にとっては、書籍づくりに携わるということは大きな喜びとなるでしょう。

また、最近では印刷技術と周辺技術を活かし、紙への印刷以外にも様々なものづくりに参入しています。

交通系ICカードなどに代表されるICチップ内蔵のカードや、携帯電話の電池パックは、印刷業界の企業が国内最大シェアを占めているものもあります。

商品券などの偽造防止の技術など、他では真似のできない、最新技術を使った業務も多くあります。

大手印刷会社の中には、大手出版社と協力しながら、自社で電子書籍サイトを運営している会社もあります。

他にも、塗装や医療機器など、技術力を活かして、印刷業界の企業が活躍している分野は多岐に渡ります。

これほどまでに多角的にビジネスを展開している業界はなかなか類を見ません。

ものづくりだけでなく、最新の技術に触れて仕事をしたい人や、技術開発を行いたい人にとっても、大きなやりがいのある業界ということができます。

また、これからもどんどん新しい業態・サービスを創出していくことが求められています。

全く新しいビジネスモデルやサービスを作っていきたいという人にとっても大変魅力的な業界といえるでしょう。

印刷業界の雰囲気

紙に印刷するという印刷業界のメインの業務は古くから続いており、歴史ある企業が多く存在しています。

それと同時に、印刷業界は、技術を活かして最先端のビジネスを展開している業界でもあります。

印刷業界で働く人の中には、企業としての歴史と安定性に魅力を感じ、地道にこつこつと働くことを良しとしている人材も多くいます。

対して、新しい価値観を持ち、常に最先端の情報に気を配りながら働いている人もいます。

どの業界にも様々な価値観・働き方の人はいますが、印刷業界では特に、多様な人材に出会うことができるでしょう。

まじめで、伝統や慣習をしっかり守ることができる人材も、新しい技術や情報に敏感で好奇心旺盛な人材も、どちらのタイプもそれぞれに自分の良さを発揮できる分野があります。

一見全く反対に見える両タイプが、手掛ける製品や技術を共有し、協力しあってより良い製品を目指していく。

そんな多様な働き方ができる点も、印刷業界の特徴のひとつなのです。

印刷業界に就職するには

それでは、実際に印刷業界への就職状況はどのようなのでしょうか。

まずは、新卒採用に当たっての現状について紹介します。

就職の状況

大手印刷会社と呼ばれる企業の場合、多くは新卒一括採用をメインの採用活動としています。

採用人数は企業によって異なりますが、多くの場合、多数の同期と一緒に採用され、研修の後それぞれの部署に配属される、という流れが一般的です。

ちなみに、大学卒に限らず、高校や専門学校卒の新卒者に関しても採用している企業は多いです。

高校卒の場合、実際の印刷や製造業務に当たることが多く、営業や事務系に採用されることは稀です。

雇用形態も正社員の他、派遣社員や契約社員も多く、自分の都合やライフスタイルに合わせて多様な働き方を選択できるという面もあります。

就職に有利な学歴・大学学部

印刷業界への就職を希望する場合、特定の学部が特に有利になるということはあまりありません。

それよりも、これまでの学習歴や取り組み方、個人のパーソナリティの部分が重視される傾向にあるようです。

ただし、技術開発の分野においては、文系よりも理系出身者の方が、活躍している割合は多いようです。

物作りや技術開発に関わる分野を専攻していた学生は、他の学生より目立つことができると思われます。

開発以外の分野においては、それぞれの分野への適性が重要になります。

営業職であれば、コミュニケーション力や人当り、顧客のニーズを読み取る力などが重要となります。

事務職であれば、細かな作業でもミスなく確実にこなすことができる力が重視されるでしょう。

就職の志望動機で多いものは

印刷業界への志望動機としては、ものづくりに対する意欲と、印刷物に対する思いが述べれることが多いようです。

ものづくりに対する意欲というのは、自分の手で製品を作り出す楽しさについてです。

自分が携わって0から何かを作り出すこと、それを街中で目にするということは、大きな魅力です。

また、印刷業界には本好きの人も集まってきます。

ものづくりの楽しさに加え、それが自分の好きなものであればなおさら大きなやりがいを感じることができます。

加えて、前述のとおり、印刷業界は高い技術力を誇る業界であり、新しいビジネスを開拓している業界でもあります。

最先端の技術に触れて働きたい、技術を活かした新しいビジネスモデルの構築に魅力を感じるという点も、印刷業界を志望する強い動機になります。

印刷業界の転職状況

転職の状況

印刷業界の技術は特有のものが多く、業界内での転職も多くあります。

特に技術職・現場職では人材の入れ替わりも多く、既に技術を手にしていれば、それを活かした転職先を見つけることは難しくないと言えます。

一方、他業界からの転職も充分可能です。

これまで技術開発に携わってきた人材であれば、その実績を買われて採用されることもあります。

また、営業職や事務職に関しても、同様のスキル・実績があれば、採用にあたって評価されると考えられます。

転職の志望動機で多いものは

新卒採用の項でも紹介しましたが、印刷業界への志望動機で多いのは、ものづくりへの関心と、書籍が好き、という理由です。

転職の場合は、それに加え、自分のそれまでの実績や経験を活かすことができる、という点を加えることができるでしょう。

また、印刷業界の魅力はその技術とビジネスモデルの創出にもあります。

業界が携わる分野は大変多岐に渡ります。

しっかりと業界研究している人であれば、その多様性に魅力を感じたり、新しいビジネス創出にやりがいを感じて、という志望動機もあります。

転職で募集が多い職種

印刷業界の募集は、新卒採用を除けば、欠員が出た際に適宜募集する、という形式がほとんどです。

その中で、欠員が出やすい職種としては、実際のものづくりに関わる職種が挙げられます。

特に、実際に機械の操作をしたり、検品したりといった、現場で働く人材は出入りが多く、求人も一定数存在しています。

事務職や営業職の求人ももちろんありますが、技術職に比べると多くはないでしょう。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

転職の場合、それまでの経歴やスキルを活かして即戦力となることを期待されます。

印刷の場合、同様の業務に携わっていた経験が評価されることも多いでしょう。

また、印刷に関わる資格もあります。

DTPエキスパートや、印刷技能士・製版技能士・製本技能士といった資格です。

業界内の経験がない場合でも、技術開発に携わっていた経験がある場合、充分に評価されるスキルと言えます。

また、電子書籍やwebマーケティングの経験、新規ビジネス構築の経験なども、業界の特徴から言って評価されるポイントです。

印刷業界の有名・人気企業紹介

印刷業界の有名企業と言われて、ぱっと思いつかない人もいるかもしれません。

ですが、印刷業界には現代人の生活になくてはならない企業がたくさんあります。

ここでは代表的な3社を紹介します。

凸版印刷

印刷業界の2大企業のひとつです。

「情報コミュニケーション」「生活・産業」「エレクトロニクス」の3つを事業の柱としています。

様々な印刷商品や半導体などの電子部品などの他、インターネットを利用したコンテンツの提供まで自社で行っています。

凸版印刷

大日本印刷

印刷業界2大企業のもう一社です。

高い技術力を活かして、情報セキュリティやマネーレス決済に関わる技術開発を行っています。

また、紙書籍の製作だけでなく、自社で電子書籍サービスを運営するなど、新たなビジネスモデルの創出にも力を入れています。

大日本印刷

NISSHA株式会社

印刷に伴う技術開発で培った高い技術力を活かし、自動車関連商品やモバイル機器の部品、医療機器など、幅広い分野に製品を提供しています。

文化財をデジタルアーカイブするなど、最先端の技術で、文化や歴史を残していく取り組みも行っています。

NISSHA株式会社

印刷業界の現状と課題・今後の展望

競争環境

現状、印刷業界のシェアは大手2社で7割以上を占めているという状況です。

ですが、それ以外の企業もそれぞれに高い技術力と独自性を持っており、それぞれが競合しあいながら成長しています。

多くの企業で他分野展開をしていますから、それぞれの分野において、業界外にも競合企業は多数存在しています。

現在の高い技術力を維持・ブラッシュアップし、各分野における競争力を維持し続けることが、今後の発展において重要なポイントです。

最新の動向

印刷技術とその周辺技術は、驚くほど多彩な分野で活用されています。

例えば、様々なタイプが登場している非接触型ICカードですが、これらのカードを作るためには、型押しや箔押しなど、カード特有の印刷技術に加え、ICチップを埋め込むという特殊な技術が必要です。

印刷業界の企業は、高い技術力を活かして、ICカードづくりを手掛けています。

その他にも、キャッシュレス決済のセキュリティシステムや、医療機器の精密部品など、その技術は幅広い分野で活用されています。

業界としての将来性

紙への印刷はピーク時に比べると大きく売り上げが減少している分野ではあります。

しかし、紙への印刷のニーズがすぐになくなるということも考えにくく、一定の産業として存在し続けると考えられます。

それに加え、印刷技術で培った高い技術力と周辺技術を活かし、最先端産業においても印刷業界は存在感を見せています。

急速に変容を見せる社会生活と技術革新に大きく寄与している業界ですから、今後も良好な成長が予測されます。

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