非鉄金属業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
非鉄金属業界とは
非鉄金属業界は、鉄以外の金属を取り扱う業界です。
銅や亜鉛などのベースメタルや、アルミなどの軽金属、チランやクロムなどのレアメタル、それらを組み合わせて製造する合金や酸化物、金や銀などの貴金属など取り扱う金属は非常に多くの種類があります。
鉄だけを分けているのは生産量の規模が大きく異なるからで、特別な意味はありません。
非鉄金属はさまざまなメーカーに販売され、身の周りの家電やさまざまな製品として利用されています。
非鉄金属は石油などと同様に資源にあたるため、機械や自動車のような最終的な生産物の需要動向に大きく左右される性質があるため、常に景気動向や資源産出国の情勢に注意を払うことが必要です。
平成28年の総務省の経済センサスによれば、非鉄金属製造業の製造品出荷額は9兆6795億円となっており、前年比で2.7%の成長が見られます。
鉄鋼と比べて付加価値額の割合が高いため、高利益産業として成長が期待されています。
非鉄金属業界の役割
非鉄金属業界は、産業において資源・原料を扱います。
景気動向に合わせて、安定的に原料になる非鉄金属を供給することが求められ、不景気時には生産量をコントロールしながら好景気の際の需要にも対応できる体制を作らなければなりません。
非鉄金属は埋蔵量がさほど多くないため、リサイクルが盛んに行われている分野でもあり、たとえば世界の金の10%は日本国内で機械などに利用されているといわれています。
こうした都市鉱山から非鉄金属をリサイクルすることで、環境負荷を下げ資源を有効に活用することも求められています。
非鉄金属はさまざまな機能を持っており、機械の部品や建築資材としてだけではなく、化学や医療の分野などでもさまざまに利用されており、新たな用途の研究開発が進むことで多くの分野を推進させる可能性を秘めています。
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非鉄金属業界の企業の種類とビジネスモデル
大手企業は上流から下流へと展開しつつ海外をにらむ
非鉄金属業界では、原料となる鉱石を鉱山から採掘したり輸入を行い、そこから純度の高い金属を取り出す製錬という工程を経て、板や合金に加工して顧客に販売します。
大手企業では、海外鉱山の取得など上流工程に力を入れてきましたが、世界の非鉄金属需要の増加により、採掘可能な鉱山は高コストな地域しか残らなくなったため、条件の良い仕入れ先からの輸入に力を入れています。
また、国内需要に大きな成長が見込めない中で、より小口の部品への対応に取り組むとともに、成長余地のある新興国を中心とした海外展開に取り組んでいます。
住友電気工業や三菱マテリアル、JX金属などが大手企業として有名です。
中堅企業は特化した技術分野と下流への展開に活路
設備産業である非鉄金属業界では、いわゆる中小企業がほとんどなく、業界の中堅企業でもその規模は他産業と比べてずっと大きいです。
中堅企業では、扱う金属を絞り込んだり、電線用や医療用、機械の特定部品用など分野に特化された部分の研究開発に力を入れたりといった領域特化とともに、加工やリテール(小口)販売などの領域で強みを作ろうとしています。
下流への進出を大手も始めていることや、鉄鋼業から非鉄にも事業領域を拡大している企業も多くなっているため、技術開発力や品質で勝負することが必要です。
こうした企業には東邦亜鉛やタツタ電線、中外鉱業などがあります。
三大非鉄メジャーは多角化で総合資源メーカーへ
非鉄金属業界で、多国籍に拠点を持っている企業を非鉄メジャーと呼びますが、その中でもBHPビリトン、アングロ・アメリカン、リオ・ティントの3社は「三大非鉄メジャー」と呼ばれます。
これらは世界中でさまざまな金属資源の採掘・製錬・加工を行ってきましたが、炭鉱や石油、天然ガス、ウランなどのエネルギー源の採掘も行い、総合資源メーカーへと展開しています。
景気や産業の変化に左右されやすい非鉄業界ですが、扱う製品数を増やすことで需要の増減に強い企業体質を作るとともに、積極的にM&Aなどを進め、規模の経済による物流や加工・販売の効率化などを行っています。
非鉄金属業界の職種
非鉄金属業界では多くの職種の人が活躍しています。
営業
非鉄金属業界の営業職は、顧客に対して自社製品の提案を行うのが仕事です
最近は特にダウンストリーム(下流)に取り組む企業が増えており、自社の製品を多くの顧客に提供するためのリテール営業に力を入れています。
顧客の扱う製品の特徴を理解し、自社の製品のメリットを活かした提案を行ったり、顧客ニーズを持ち帰って技術開発に役立てるなど、聞く力が特に求められます。
研究開発
研究開発は、企業で研究して得られた知識や技術によって製品の開発を行う仕事です。
非鉄金属では、研究開発の幅が広いため、各企業は自社の強みを作るために企業の戦略に合わせた方向で研究開発に力を入れています。
新しい機能を持った材料の開発や、金属加工の技術の向上、また熱処理のための方法や設備の研究など多くの研究分野があり、知識のある理系出身者が主に働いています。
製造
原材料から製錬を行い、加工して製品を作る工程を製造といいます。
製造は生産ラインにおいて設備を操作するオペレーターや、製造物の品質テストなどを行いながら問題点を把握する品質管理など、より細かい職種に分類されます。
モニターを通して管理するだけでなく、機械の移動や点検などの作業や、生産ラインに入っての立ち仕事も多いため、体力も求められる職種です。
生産技術
生産技術は、企業の生産プロセスを管理する職種です。
目標の生産量を実現するための予算や材料調達、プロジェクトの期間を設計し、工場のラインの調整を行うなど生産に必要な環境を準備しより改善するための業務を行います。
効率よく、品質も高く、かつ安全に製品を生産するための仕組み作りを行う生産技術は、産業の足回りとしてコンプライアンスを求められる非鉄金属業界において特に大事な職種のひとつです。
非鉄金属業界のやりがい・魅力
社会のダイナミクスに触れられる
非鉄金属業界では、その仕事の中で多くの工業用製品を意識することになり、社会のニーズやその変化を感じ取ることができます。
また、原料の調達が世界の各地から行われ、世界中の景気や政治・経済の動向にも意識が向くようになり、社会が常に移り変わっていくさまを自社の製品を通して実感できます。
非鉄金属業界という枠を超えて、一人のビジネスパーソンとして社会への意識が高まり、成長できることを大きな魅力と感じている人は多いです。
労働組合がしっかりしていて厚待遇
非鉄金属業界では、労働組合がしっかりしている企業が多く、就業時間や給与、福利厚生の面で安定して良い待遇を期待できます。
非鉄金属業界は従業員への利益の還元率が高めで、給与も全産業の平均より高くなっています。
女性採用・活用に力を入れている企業も増えてきており、業界トップの住友電気工業は女性活躍推進企業が認定される「なでしこ銘柄」のひとつです。
職種によっては残業や休日出勤もありますが、労働環境に気を遣っており、有給休暇や代休も取りやすい企業が多いようです。
将来性への期待
非鉄金属業界は、国内では大きな技術革新がない限り市場が急速に拡大することはないと予想されていますが、典型的なBtoB企業であり事業に安定感があります。
また、海外には多くの市場があるため、多くの企業はグローバルな事業展開で成長を見込んでいます。
規模が製造や販売の効率に大きく影響する業界であるため経営統合などの動きは常にありますが、設備や従業員への影響は少なく、技術や知識をしっかり蓄えられる業界です。
非鉄金属業界の雰囲気
非鉄金属業界の企業は創業から長い年数が経過している企業も多く、古い体質が残っていると言われることもありましたが、大きく変わりつつあります。
スポーツ活動の援助や短期留学の支援、社内保育施設の整備など福利厚生に力を入れ、女性従業員や障がい者、外国人の採用を強化しながらダイバーシティ化を進めており、さまざまな人が安心して働ける環境作りが行われています。
長く働けることが前提になっているため、従業員は自己研鑽や周囲との関係づくりに積極的に取り組んでおり、それが競争力の源になる良い循環が生まれています。
取引の規模も大きく、また社会を支える製品を扱うことから、責任感が強く仕事に対して妥協しない姿勢の人が多いです。
海外との取引が増えていることや、外国人従業員の採用に積極的なこともあり、社内では英語もよく聞こえてきてグローバルな雰囲気が強まっています。
非鉄金属業界に就職するには
就職の状況
非鉄金属業界では、定期的に新卒採用が実施されています。
基本的に四大卒以上の学歴が求められており、修士や博士の卒業予定者は給与が高く設定されています。
現在、女性の採用に積極的に取り組んでいる企業が増えており、採用者の2割から3割は女性になっている傾向で、応募者の割合から考えると比率は高めです。
新卒採用では就活サイト経由で申し込むものや、リクルーターによる面談による採用枠、インターン経験者のみの採用枠などさまざまな方法が取られています。
研究開発などの技術職は理系の採用となっており、総合職では文系理系を問わず採用が行われているのが一般的です。
就職に有利な学歴・大学学部
総合職、技術職ともに四大卒が基本であり、専門学校卒や高卒の採用はほとんど見られません。
総合職では文系、理系を特に問いませんが、積極的に課題解決に取り組むための努力ができる人が望まれる傾向で、学生時代に何かの活動で課題解決に取り組んだ経験が必要です。
技術職では、職種で求められる分野によって、理学部系の学部や、機械や電子工学、素材などの分野の工学系学部が有利です。
高度な技術を扱うことになるため、技術職では大学院卒が多くなり、専門学校や高卒の募集はほとんど見られません。
リクルーターや研究室推薦の枠があるため、企業に大学の卒業生が多いなら就職のための選択肢も増え、可能性も広がります。
就職の志望動機で多いものは
就職の志望動機は、総合職では「スケールの大きな仕事に携われる」「産業を支える働きをしたい」など、海外や社会を意識したものが多く見られます。
技術職では「新しい技術を開発し社会に貢献したい」「自分が開発した製品が社会に広まってほしい」など、技術を通し社会への貢献をアピールするものが多いです。
非鉄金属は資源を採掘し、材料を作るメーカーですが、鉄鋼と比較するとよりソリューション(解決策)の色合いが強い事業ですので、ひとりよがりな内容にならないよう注意が必要です。
周囲の声やニーズを敏感に読み取り、それを製品を通したソリューションに活かす能力が伝わるようなアピールを目指しましょう。
非鉄金属業界の転職状況
転職の状況
非鉄金属業界では、多くの企業のホームページで中途採用のページはありますが、企業によって状況はさまざまで、ほとんど採用が止まっている企業もあれば多くの職種で募集している企業もあります。
即戦力人材が求められる中途採用では、特に技術職では高いスキルが求められ、募集要項に具体的なスキルが反映されていますので転職を目指す人は確認しておきましょう。
外国人採用や障がい者採用も行われており、企業のダイバーシティ化のために安定して募集枠が設けられているのも特徴です。
転職の志望動機で多いものは
転職の志望動機では「~分野の生産技術に携わった経験を活かしたい」「製品によって社会に貢献していることを実感できる企業だから」などの理由が多く見られ、「福利厚生が充実していて働きやすそうだと感じた」という理由も多くなっています。
転職者に対しても、業界未経験だとしても関連するスキルがある場合はしっかり評価してもらえる傾向で、採用後は研修や教育も手厚く行われ、企業の戦力として早期に独り立ちできるようになっています。
転職で募集が多い職種
転職の募集状況は企業やタイミングによってさまざまです。
ある企業では鉱山での設備管理に携わる人員の募集のみだったり、別の企業では法務や経理などの担当者やセキュリティ技術を持つIT技術者が募集されています。
研究開発分野や営業は比較的募集が多いですが、扱う製品によって必要なスキルや業界知識に違いがあるため自分にマッチしたものがないか確認が必要です。
職種により、本社以外の勤務地になることも多く、海外を含めさまざまな地域が考えられるのでよく検討しておきましょう。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
非鉄金属業界では、大学や過去のキャリアの中で製造や素材、化学などに関連する分野を扱っていた経験のある人は転職の際に評価が高くなります。
営業職では、自分が扱う製品を扱う業界に経験があると有利です。
また、総合職や技術職を問わず、海外との取引や、海外の論文やマニュアルを読む機会も多いため、英語力があることが望ましいです。
ネットワークインフラや通信機器に使う製品を扱ったり、業務効率化の必要性が高まっていることもあり、ITの技術や知識がある人も重宝されます。
非鉄金属業界の有名・人気企業紹介
住友電気工業
1911年設立。売上高3兆1,779億円、従業員数272,796名(連結・2019年3月期末)
自動車用ワイヤハーネスや光ファイバーなど特殊線材に強みがある業界のトップ企業です。
自動車、情報通信、エレクトロニクス、環境エネルギー、産業素材の5分野で国内外に事業展開をしています。
三菱マテリアル
1950年設立。売上高1兆6,629億円、従業員数26,959名(連結・2019年3月期末)
自動車、IT、リサイクルに強い企業で、高機能製品や加工分野の成長に特に注力しながら事業展開を行っています。
伸銅が業界トップ、セメントも国内有数のシェアを持っているなど、強みを持つ分野が多く、国内外に多くのグループ企業を持ちます。
JX金属
1905年創業、2002年設立。売上高1兆0,418億円、従業員数2,749名(単体・2019年3月末)
石油や石炭も含めた総合資源メーカーであるJXTGホールディングスの非鉄金属部門を担う企業で、資源開発から金属製錬、電材加工までを一貫して行い、リサイクルや産廃処理なども手がけます。
事業環境の変化に対応するための収益力の強化と、新規の事業開発に現在は注力しています。
非鉄金属業界の現状と課題・今後の展望
競争環境(国内・国外)
非鉄金属業界においては、さまざまな産業における製品ニーズに応える技術力がカギであり、各社は自社の得意分野での研究開発や提案を強化しています。
人類の歴史で鉱山開発は長く行われてきており、簡単に開発できる鉱山はほとんどなく、今後は効率よく資源を確保することが求められ、レアメタルなどの希少な原料ではリサイクル分野の競争が激しくなってきています。
海外企業はスケールメリットを強化する方向で、日本企業は主に技術力を高め高機能製品で高い付加価値を得る戦略が進められています。
最新の(技術の)動向
非鉄金属は技術動向もさまざまな分野に渡っています。
自動車内でのパワーや情報伝送を行うワイヤーハーネスは、今後自動車のIoT化が進むに連れて一層大事になると見られ、多くのメーカーがより高品質の製品作りを目指し研究を進めています
また、超電導は自然エネルギー発電の推進をはじめ多くの分野で革新を起こす技術として注目されていますが、実用化に向けた開発が進められています。
業界としての将来性
非鉄金属は自動車や電子機器、住宅向けなどの需要が多くあり、また海外市場は今後も大きくなること予想されるため、為替や原料価格など外部環境の影響はあるものの、業界は安定した成長が続くと見られます。
リサイクル・エネルギー分野への貢献、最先端分野への製品・技術関与が国内非鉄業界の主な戦略です。
これらは国内外で常に需要があるため、ある産業で技術革新が起こるほど、非鉄業界にも成長のチャンスが増えることになります。
海外進出では現地企業やメジャー企業との競争がありますが、技術的に世界でも戦えるメーカーが大手をはじめに多く、量より質で競争できる優位性を活かして成長を続けていくと考えられます。
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