海上保安大学校とは





海上保安大学校とは

海上保安大学校は国土交通省所管が設置する省庁大学校で、広島県呉市にあります。

学生の身分は海上保安庁職員であり、一般職の国家公務員です。

海上保安学校が海上保安庁の一般職員養成を目的としているのに対して、海上保安大学校は幹部職員の養成を目的としている点が異なります。

学生生活は全寮制となり、男子学生は「三ツ石寮」、女子学生は「麗女寮」で共同生活を送ります。

海上保安大学校を卒業すると学士の学位が授与され、卒業生は海上保安庁の三等海上保安正に任官することになります。

専攻科では3ヶ月間かけて世界一周の遠洋航海を経験するほか、巡視船艇をはじめとする海上保安庁の業務に携わり、幹部職員としての経験を積んでいきます。

海上保安大学校の学部・学科

海上保安大学校には一般の大学における学部・学科に相当する区分はありません。

1・2年次には共通科目として、哲学歴史学、憲法、経済学統計学物理学といった、大学における一般教養に相当する科目を学びます。

2年後期から航海・機関・情報通信の3つの専攻に分かれ、専門科目を学ぶことになります。

専攻 内容
第一群(航海)専攻 航海学・船体運動工学・海事法・船舶工学といった、航海士として必要とされる知識・技能を習得します。
第二群(機関)専攻 機械力学・製図・船舶設備工学といった、機関士として求められる知識・技能を習得します。
第三群(情報通信)専攻 情報工学に関する講義・実験を通じて、通信工学全般に関する知識・技能を習得します。

また、4年間を通じて訓練科目・実習科目があります。

訓練科目では、逮捕術、拳銃、武器、信号、潜水、救急安全法といった、海上保安官として必要な技能を中心に体得します。

実習科目では小型船舶の操縦、通信実技、国際通信実習などを行います。

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海上保安大学校の受験・入試科目

海上保安大学校の入試(採用試験)には第一次試験と第二次試験があります。

第一次試験は筆記試験で、学科試験と作文試験があります。

第二次試験では人物試験・身体検査・身体測定・体力検査が行われます。

いずれの試験も、海上保安官として必要な知力・体力があることを確認するためのものと言えます。

一次試験 <基礎能力試験>
公務員として必要な基礎的な能力(知能及び知識)についての筆記試験
・知能分野(文章理解、課題処理、数的処理、資料解釈)
・知識分野(自然科学、人文科学、社会科学)
<学科試験>
次の1~3についての筆記試験
1. 数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A、数学B(数列、ベクトルの分野に限る。)
2. 英語Ⅰ、英語Ⅱ
3. 次のイまたはロのうち1科目選択
イ、物理Ⅰ  
ロ、化学
<作文試験>
文章による表現力、課題に対する理解力などについての筆記試験
二次試験 <人物試験>
人柄、対人的能力などについての個別面接(参考として性格検査を実施)
<身体検査>
主として胸部疾患(胸部エックス線撮影を含む。)、血圧、尿その他一般内科系検査
<身体測定>
身長、体重、視力、色覚、聴力についての測定
<体力検査>
・上体起こし(膝を曲げ、あおむきに寝た姿勢で30秒間のうちに何回上体を起こすことができるかを検査します。男子21回以上、女子13回以上を基準とします。)
・反復横跳び(100cm間隔に引かれた3本のライン上で、20秒間のうちに何回サイドステップをすることができるかを検査します。男子44回以上、女子37回以上を基準とします。)
・鉄棒両手ぶら下がり(水平に設置された直径約2.8cmの鉄棒を両手で握り、両足を床から離してぶら下がり、10秒以上耐えることができるかを検査します。)

海上保安大学校の偏差値・難易度・倍率

海上保安大学校の偏差値は62で、いわゆる難関大学と同等の難易度です。

参考:マナビジョン

採用予定人数は約60名で、2019年度の倍率は6.6倍でした。

過去10年間の推移を見ると、採用試験採用倍率はおよそ6〜11倍の間となっています。

国立大学82校の平均倍率が4倍前後であることを踏まえると、やや高めの倍率と言えます。

偏差値と倍率から、海上保安大学校に合格するにはしっかりと対策を立て、学科試験の合格基準を満たすよう勉強しておく必要があることがわかります。

海上保安大学校の学費は? 給料は出る?

海上保安大学で学ぶ学生は一般職の国家公務員のため、学費を納入する必要はありません。

入学金、授業料、学生寮費は無料です。

制服、寝具なども貸与されますので、寮生活で必要な学費・生活費は教科書代や食費のみとなります。

また、学生には月額およそ14万円の給与が支給されるほか、ボーナスも年2回支給されます。

このように、給料を受け取りながら大学に通うことができるのが省庁大学校の特徴の1つです。

学費がかからず給料をもらえると聞くと一般の大学よりも恵まれていると感じるかもしれませんが、身分は学生ではなく国家公務員ですので、自分の都合で授業を欠席することはできません。

また、卒業後には海上保安官としての任務にあたることが前提となっていますので、学位だけを取得するために通える学校ではないことを認識しておく必要があります。

海上保安大学校の志望理由・面接

海上保安大学校の志望動機

海の安全を守る海上保安官の仕事は、責任が重く厳しい仕事であることは間違いありません。

海上保安大学校を志すことは、将来的に海上保安官の幹部クラスとして活躍していくことを意味しています。

そのため、海上保安大学校の志望動機では「なぜ海上保安官になりたいのか」「海上保安大学校を選んだ理由は何か」といった点が重視されます。

ハードな職務を遂行するためには、学生生活や訓練を必ずやり抜くという強い決意が求められます。

海上保安官の仕事をどれだけ理解しているか、必ず海上保安官になりたいという強い意思があるかどうかが重要になります。

海上保安官を目指したいと考えるようになったきっかけとなるエピソードを交えつつ、熱意が伝わる志望動機にすることが大切です。

海上保安大学校の志望動機の例文

「私は日本の漁場をはじめとする海の安全を守りたく、将来は航海士として活躍するために貴校を志望いたします。

私はイワシ漁がさかんな漁港の町で育ちました。

祖父も父親も漁師として働いてきましたが、近年になって外国のものと思われる不審船の報道を耳にすることが増え、漁場へ向かう父親が心配になることがあります。

日本は海に囲まれた国ですので、海の安全を守ることは国の安全を守ることにつながると考えています。

海の安全を守る航海士になるという夢を実現させるために、ハードな訓練にも決して弱音を吐くことなく着実に成長していきたいです。

地元の漁業の安全、さらには日本の海の安全を守るために、採用していただけましたら専門課程では航海課程を専攻したいと考えております。」

海上保安大学校の面接試験で聞かれること

海上保安大学校の面接では、志望動機はもちろんのこと、海上保安官の職務についてどの程度理解しているのかを確認する質問をされることがあります。

たとえば、海上自衛隊と海上保安官のちがいを聞かれた場合にも、しっかりと答えられるように準備しておく必要があります。

着校後は寮での共同生活を送ることになり、職務に就いてからも団体で行動することが多い仕事のため、協調性があるか、集団行動は得意であるか、といったことを確認されることもあります。

また、長期間にわたる乗船訓練が行われ、職務においても船舶に乗る機会の多い仕事ですので、船酔いは大丈夫かどうか、船に乗った経験はあるのか、といったことも聞かれる可能性があります。

海上保安大学校のオープンキャンパス

海上保安大学校のオープンキャンパスは、毎年6月に開催されています。

オープンキャンパスの内容としては、大学校長挨拶と大学校説明、受験対策および学校生活相談、在校生との意見交換です。

オープンキャンパスは学園祭(海神祭)と同時開催され、大学校の学生の様子や学校生活の雰囲気を知ることができます。

また、来校して参加する通常のオープンキャンパス以外にも、8月にはPCやスマートフォンから参加できるオンラインオープンキャンパスも開催されています。

遠方に在住でオープンキャンパスへの参加が難しい場合は、オンラインオープンキャンパスへの参加を検討してもいいでしょう。

海上保安大学校の雰囲気・生活

海上保安大学校では、協調性を育むことを目的として全寮制での集団生活を義務づけています。

1年生から4年生まで1人ずつで構成された自習室が生活の最小単位とされ、最上級生が部屋長となります。

自習室が複数集まると「班」と呼ばれ、整列時や訓練時は班が基本単位となります。

着校した新入生は、3・4年生からオリエンテーションと呼ばれる生活指導を受けます。

オリエンテーションは1週間ほど行われ、生活規則や海上保安体操、基本動作、校歌を覚えます。

これまでの高校生活とのギャップを感じる時期であり、とくにオリエンテーション期間中はハードは日々となります。

このように、海上保安大学校での生活は海上保安官としての任務の重さに耐えうる強靱な心身を形成するため、厳しい一面もあります。

一方で、海上保安官になるという共通の目標を持った仲間との絆はかけがえのないものとなるでしょう。

海上保安大学校での訓練は厳しい?

海上保安大学校の訓練は逮捕術や拳銃といった職務に直結する内容で行われます。

中には遠泳訓練のように体力が求められるハードな訓練もありますが、大半は体力的にそれほどきついものではありません。

ただし、訓練は実際の職務を想定して行われるものですので、教える側も教わる側も真剣そのものです。

訓練時には全体的にピリピリした雰囲気になることもありますが、職務の重要性を鑑みれば当然のことと言えます。

3・4年次になると、訓練以外に乗船実習が定期的に行われます。

練習船を実際に操縦する以外にも、実務と同様の動きが求められます。

学んだことを実践するための訓練として、乗船実習は実践的な経験を積むための絶好の機会となります。

海上保安大学の学園祭・海神祭とは

海上保安大学では、毎年6月に学園祭(学生祭)として「海神祭」を開催しています。

海神祭の期間中は巡視船やシミュレーションセンターが一般公開されるほか、洋上クルージングや救難実演、潜水実演、花火といったイベントが行われます。

海神祭の実行委員は学生が務め、当日までの準備や海神祭当日の運営まで、すべて学生が担います。

海上保安大学校の日ごろの訓練や活動の様子を多くの人に知ってもらう貴重な機会であり、海神祭は重要なイベントと言えます。

海上保安大学校の就職先・卒業後の進路

海上保安大学校を卒業後し専攻科を修了した後は、研修科国際業務課程へ進み海外での現地赴任のために必要な実務能力を習得します。

その後、初級幹部として海上保安庁の巡視船などに乗り込み、海上保安業務に従事します。

海上勤務だけでなく、海上保安行政の企画立案や各省庁との協議・調整を行う陸上勤務もあります。

適性によっては国際取締役官や国際機関での勤務、在外公館勤務、他省庁への出向を経験する人もいます。

海上保安大学校は海上保安官となるための省庁大学校ですので、このように卒業後は海上保安官として職務にあたることが前提となっています。

ただし、海上保安官は船舶への乗務以外にもさまざまな活躍の場があり、キャリアパスも多彩なものとなっています。

海上保安大学校でパイロットになれる?

本人の希望と適性を鑑みた上で、航空機のパイロットして教育を受けることも可能です。

航空機パイロットとなるための研修は防衛省委託研修という形で行われ、海上保安大学校卒業者に対しては約2年実施されます。

研修を修了後、海上保安業務のうち航空要員としてパイロットになることができます。

ただし、誰でも希望すればパイロットになれるわけではなく、希望者の中からとくに適性があると判断された者が選抜されます。

海上保安大学校で学べば必ずパイロットになる道が開けるとは限らない点に注意が必要です。

海上保安大学校と海上保安学校の違い

海上保安官となるには、海上保安大学校以外に海上保安学校を卒業する方法があります。

海上保安学校は京都府舞鶴市にあり、コースによって1年間または2年間の履修となります。

このほかにも、海上保安学校と海上保安大学校には下記の異なる点があります。

海上保安大学校 海上保安学校
採用試験の受験資格 高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して2年を経過していない者及び試験年度の3月までに高等学校又は中等教育学校を卒業する見込みの者、若しくは人事院がこれと同等の資格があると認める者 高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して5年(特別試験については、6年)を経過していない者及び試験年度の3月(特別試験については、9月)までに高等学校又は中等教育学校を卒業する見込みの者、若しくは人事院がこれと同等の資格があると認める者
卒業後 海上保安庁の幹部職員 海上保安庁の一般職員
修業年数 本科4年
専攻科6ヶ月
国際業務課程3ヶ月
船舶運航システム課程(1年)
航空課程(1年)
情報システム課程(2年)
管制課程(2年)海洋科学課程(1年)
学位 学士 なし
在学中の給与 月額約14万円 月額138,400円

海上保安大学校が省庁大学校であるのに対して、海上保安学校は訓練のための教育機関という位置づけです。

そのため、海上保安大学校は卒業すると大学卒業と同等の資格を得られるのに対して、海上保安学校を卒業し海上保安官になった場合、経歴上は高卒となります。

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