国立と私立の大学学費の違いは? 文系・理系ごとに解説

大学に進学すると、さまざまな学費を大学に納入することになります。

国立大学と私立大学では4年間で必要な学費に開きがあると聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

そこで、大学の学費の仕組みや納める時期、進学する大学や学部による学費の違いについて理解し、学費も考慮して進学先を検討できるようにしておきましょう。





大学の学費の仕組み

大学に入学してから卒業するまでにかかる費用は「学費」と呼ばれています。

一般的に「学費」と言う場合、4年間トータルでかかる費用という意味合いで使われることが多いと言えます。

では、具体的にどの時期にどういった費用が必要になるのか把握しているでしょうか?

まずは学費の内訳と納入する時期について確認しておきましょう。

学費の内訳は入学金+授業料+諸経費

大学の学費には、主に次の3つの項目があります。

《大学の学費》
・入学金
・授業料
・諸経費
・その他

入学金とは大学に入学する時点で納入する費用のことで、1年次のはじめに1回だけ支払います。

授業料は日々の授業を受けるために必要になる費用ですから、1〜4年次に毎年支払う必要がります。

このほか大学や学部によっては、大学の施設や設備を維持するための諸経費や、実験・実習にかかる費用が毎年必要になることがあります。

《学費の構成》

年次 入学金 授業料 諸経費など
1年次
2年次 -
3年次 -
4年次 -

つまり、大学ホームページなどに掲載されている学費一覧のうち、初年度に必要な学費には入学金が含まれており、2〜4年次に必要な学費は授業料と諸経費だけが入っていることになります。

進学を希望する大学で4年間に必要な学費を計算する場合、次の計算式で算出することができます。

4年間の学費=入学金+{(授業料+諸経費)×4}

ただし、大学・学部によっては年次によって実験や実習の内容や回数に変動があるなど、年次ごとに学費が異なる場合がありますので注意が必要です。

学費の納入は前後期の分納が一般的

前項の計算式にあてはめることで、4年間で必要な学費を計算することができます。

こうして算出した学費は一度に納めるのではなく、多くの大学では授業料を前後期の2回で分納することにしています。

したがって、各年次でそれぞれ必要な学費は一般的に次のようになります。

<学費の納入時期>
・1年前期:入学金+前期授業料+諸経費
・1年後期:後期授業料
・2〜4年前期:前期授業料+諸経費
・2〜4年後期:後期授業料

ただし、大学によっては毎年の授業料を年度のはじめに一括納入する必要がある場合もあれば、3回以上の分納を認めている場合もあります。

また、設備費や教材費、実験費などを前後期に振り分けている大学もありますので、学費を納入する時期については大学案内をよく確認しておきましょう。

国立大・私立大で入学時にかかる学費の違い

前項では学費の内訳についてまとめましたが、納入額が最も高くなるのが入学時となることに気づいたのではないでしょうか。

入学金に加え、前期授業料と年間の諸経費をまとめて納入するため、入学時に納める学費が4年間のうちで最も高くなるのです。

では、国立大と私立大では入学時にかかるお金にどのくらいの違いがあるのでしょうか。

国立大で入学時にかかるお金

国立大学の学費は標準額が示されており、大半の大学がこの基準に合わせて学費を設定しています。

<国立大学の入学時納入金>

入学金 282,000円
授業料 535,800円
施設設備費
合計 817,800円

一部の大学では施設設備費を徴収していることもありますので、どの国立大学も必ずこの学費となるとは限らないことに注意しましょう。

また、標準額は国立大学の学費の目安として定められているもののため、全ての国立大学が絶対に守らなくてはならないというものではありません。

実際、東京藝術大学は国立大学ですが、2019年度入学生から学費を20%値上げしています。

このように、国立大学といえど学費を年度ごとに見直すケースもないとは言い切れませんので、自分が入学する時期に学費がどうなるのか、大学の発表をしっかりと確認しておくようにしましょう。

私立大(文系)で入学時にかかるお金

私立大学においても、入学時に必要な学費の内訳は国立大学とほぼ同様です。

ただし、施設設備費など諸経費はどの私立大学でもほぼ確実にかかると考えて間違いないでしょう。

<私立大学(文系学部)の入学時納入金>

入学金 229,997円
授業料 785,581円
施設設備費 151,344円
合計 1,166,922円

文系学部の多くは大がかりな実験や実習を行う機会が少なく、学部によっては年間を通じてほぼ全てが座学の講義ということもめずらしくありません。

そのため、授業料・施設設備費ともに理系学部と比べて低く抑えられているケースがほとんどです。

ただし、授業料に関しては国立大学よりも高くなる傾向がありますので、結果的に文系学部であっても国立大学より入学時納入金が高くなっています。

私立大(理系)で入学時にかかるお金

私立大学の理系学部は、全体として文系学部よりも授業料・施設設備費が高くなります。

実験や実習が行われ、文系学部と比べて1人の教員が指導できる学生数が少なくなりやすいことから、授業料に関しても文系学部より高くなりやすいのです。

<私立大学(理系学部)の入学時納入金>

入学金 254,309円
授業料 1,105,616円
施設設備費 185,038円
合計 1,544,962円

なお、理系学部の中でも専攻する学部・学科によって入学時納入金に差があります。

一例として、歯学部では入学時に実習で必要なデンタルチェア(治療時に患者が座る椅子)の購入が必要な大学があり、これだけで数百万円単位の費用が必要になることもあります。

上に示した入学時納入金はあくまで理系学部全体の平均ですので、学部・学科によってはさらに大きな金額が入学時に必要になることもあると覚えておく必要があるでしょう。

参考:文部科学省「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果」

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国立大・私立大で在学中にかかる学費の違い

入学時にかかるお金が4年間の中で最も高額になりやすいことから、学費について調べる際は入学時納入金が注目されがちです。

しかし、大学4年間をトータルで見た場合、在学中にかかる学費を見ておくことも大切です。

毎年かかる授業料によって、4年間にかかる学費に大きく影響します。

そこで、国立大と私立大それぞれのケースで在学中にかかるお金を確認しておきましょう。

国立大で在学中にかかるお金

国立大学の学費は、基本的には国が定めている標準額をもとに計算することができます。

1年次に入学金と授業料を納入し、2〜4年次に授業料が毎年かかることになります。

《国立大学の学費》

授業料(年) 入学料 施設設備費 合計
入学年度 535,800円 282,000円 817,800円
2〜4年度 535,800円 535,800円
4年間 2,425,200円

参考:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」

標準額通りであれば、国立大学に4年間在学するとおよそ250万円の学費が必要になることが分かります。

ただし、このほかにも教科書や参考書を購入する必要があったり、大学や学部によっては入学時にノートPCの購入を推奨される場合も見られたりしますので、必ずしも標準額の学費の範囲内で収まるとは限らない点に注意が必要です。

私立大(文系)で在学中にかかるお金

私立大学の文系学部でかかる学費の内訳は、国立大学の項目と基本的には同じです。

ただし、私立大学では施設設備費がほぼ確実に必要になる点が国立大学との大きな違いです。

また、授業料が国立大学と比べて高くなる傾向があります。

そのため、4年間で必要な学費は国立大学のおよそ1.5倍になります。

<私立大学(文系)の学費>

授業料(年) 入学料 施設設備費 合計
入学年度 785,581円 229,997円 151,344円 1,166,922円
2〜4年度 785,581円 151,344円 936,925円
4年間 3,142,324円 229,997円 605,376円 3,977,697円

さらに、学部によっては上に示した以外の学費が必要になることもあります。

語学系や国際関係、異文化コミュニケーションといった分野を扱う学部では、海外語学研修や留学への参加が必須となっている場合もあるため、こうした費用も織り込んで4年間の学費を用意しておく必要があります。

また、経済学部など統計データを扱う学部では、理系学部と同様に授業でコンピューターを使う機会が多くなります。

このように文系でも実習がよく行われる学部もありますので、文系であっても学費が安いとは限らない点に注意が必要です。

私立大(理系)で在学中にかかるお金

私立大学の理系学部では、実験や実習で設備を頻繁に利用することや、学生1人あたりにつく指導者の人数が多くなりやすいことから、授業料や施設設備利用料が文系学部よりも高くなる傾向があります。

一般的に、私立大文系学部のさらに1.3〜1.4倍程度の学費が必要になると考えていいでしょう。

<私立大学(理系)の学費>

授業料(年) 入学料 施設設備費 合計
入学年度 1,105,616円 254,309円 185,038円 1,544,963円
2〜4年度 1,105,616円 - 185,038円 1,290,654円
4年間 4,422,464円 254,309円 740,152円 5,416,925円

参考:文部科学省「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果」

理系の学費に関しても、学部・学科や専攻する分野によって大きく差が生じることがあります。

たとえば、獣医学科やパイロット養成学科では卒業までに1,000万円以上必要なこともめずらしくありません。

また、医学部や薬学部のように6年制が基本となっている学部では、当然のことながら4年制の学部よりも学費は高くなり、卒業までに1,000万円以上かかるのは必至です。

このように、文系・理系の違いだけでなく、選ぶ学部・学科によって学費に違いがあることは知っておく必要があるでしょう。

参考:私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について

この記事のまとめ

近年では各大学がそれぞれ特徴を打ち出すために学部・学科を新設しており、卒業までにかかる学費が想像しにくいケースも出てきています。

そのため、「文系は理系よりも学費が安い」といった従来のイメージ通りにならないことも増えているため、実際にかかる学費を正確に把握しておく必要があります。

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