奨学金制度とは? 返済不要の給付型の条件は?

大学や短大、専門学校へ進学するにあたって、避けて通れないのが学費に関する問題です。

進学先では入学金をはじめ、授業料や施設設備費、諸経費といった各種の費用が必要になります。

こうした費用を準備することが難しい場合、奨学金制度を活用することで学費をまかなうことができます。

奨学金には「お金を借りる」というイメージがありますが、中には返済不要の給付型奨学金もあります。

奨学金制度の仕組みや給付型奨学金を受給する条件について確認しておきましょう。





奨学金制度の概要と奨学金の種類

奨学金とひとくちに言ってもさまざまな種類があります。

制度の仕組みや種類ごとの違いについて理解した上で、自分に合った奨学金を活用することが重要です。

まずは奨学金制度の概要と種類、返済不要の奨学金とはどのようなものなのか知っておきましょう。

奨学金制度の概要

奨学金とは、進学するにあたりまとまった学費を準備することが難しい場合に、その一部をまかなうための制度です。

学ぶ意欲があるにも関わらず、家庭の経済的な事情によって進学を断念せざるを得ない学生を減らすため、奨学金制度が設けられています。

奨学金は学びたい意欲のある学生を支援することを目的としていますので、奨学金を活用する上で大前提となるのは「進学する意欲」や「進学先で学び続ける意欲」を持っていることです。

そのため、奨学金の使途は大学や短大、専門学校といった教育機関に学費として納入する費用や、学生生活を送る上で必要な生活費に限定されています。

なお、学費をまかなうことを目的とした資金準備の方法として、奨学金のほかに教育ローンがあります。

奨学金は進学する学生自身の名義で受給するのに対して、教育ローンは学生の保護者が融資を受ける点が異なります。

奨学金の種類

奨学金を給付している団体には、国・地方自治体・民間団体・学校などがあります。

国の奨学金とは「日本学生支援機構(JASSO)」が運営する奨学金制度のことです。

地方自治体の奨学金は、都道府県や市町村がその地域に居住する学生を対象として支給する制度です。

民間団体の奨学金には、企業や金融機関が設立した財団法人が運営するものがあります。

また、大学や専門学校が独自に運営する奨学金もあります。

奨学金を受給するための基準や給付額は各運営団体によって異なりますが、共通しているのは返済が必要な「貸与型奨学金」と返済不要の「給付型奨学金」があるという点です。

返済不要の奨学金とは?

貸与型奨学金とは、在学中にかかる学費の一部を借り、卒業後に返済していく仕組みの奨学金です。

無利子のものと有利子のものがあり、有利子であっても教育ローンなどと比べて利息が低く設定されているのが特徴です。

ただし、貸与型である以上は「借金」ですので、卒業してから長い期間をかけて返済していく必要があることには変わり有りません。

これに対して、給付型奨学金は返済不要の奨学金です。

奨学金を受給する上で懸念事項となりやすい「将来の返済」を心配する必要がないことから、奨学金制度を活用したい多くの学生に大変人気があります。

一般的に、給付型奨学金は貸与型奨学金に比べて審査基準が厳しく、一定の条件を満たす学生に限り給付されます。

給付型奨学金にはどんなものがある?

奨学金制度を運営する団体によって、給付型奨学金を給付する基準や給付額は異なります。

審査基準となるのは、主に家庭の経済事情のほか、学業成績や学業に対する意欲です。

それぞれの団体の給付型奨学金がどのような制度になっているのか整理しておきます。

日本学生支援機構の給付型奨学金

日本学生支援機構では2017年より給付型奨学金の制度を設け、2020年度に進学する学生からその対象をさらに広げています。

対象となるのは、住民税非課税世帯およびこれに準ずる世帯の学生で、進学先で学ぶ意欲があることが条件となります。

支援内容としては、授業料・入学金の免除または減額と、給付型奨学金の支給になります。

給付額・減免額は、世帯年収や自宅・自宅外通学の違い、進学先などによって異なります。

給付型奨学金の支援年額上限と世帯収入の目安

年収の目安 区分 給付型奨学金 授業料減免
(上限) (上限)
〜270万円 第Ⅰ区分 約91万円 約70万円
〜300万円 第Ⅱ区分 約61万円 約47万円
〜380万円 第Ⅲ区分 約30万円 約23万円

給付型奨学金の支給月額(第Ⅰ区分の場合)

区分 自宅通学 自宅外通学
大学・短大
専門学校
国公立 29,200円 66,700円
私立 38,300円 75,800円

授業料等の免除・減額の上限額(年額)

進学先 国公立 私立
入学金 授業料 入学金 授業料
大学 約28万円 約54万円 約26万円 約70万円
短大 約17万円 約39万円 約25万円 約62万円
専門学校 約7万円 約17万円 約16万円 約59万円

参考:奨学金の制度(給付型)日本学生支援機構

民間団体の給付型奨学金

民間団体の中にも給付型奨学金を募集している団体があります。

一例として、「公益財団法人三菱UFJ信託奨学財団」では、次の要件を満たす学生に奨学金を給付しています。

大学生の場合、給付額は月額35,000円と定められています。

<要件>
・財団主催行事への出席を優先できる者。

・当財団の指定する大学で、財団指定の学部、研究科に在籍している正規学生であること。

・最短修業年限までの給費期間が1年以上見込まれる者。

・出願する年の4月1日現在、4年制大学第2学年以上、大学院修士課程または博士課程に在
学し、大学生は原則として満23歳以下、大学院生は満33歳以下であること。

・健康で、学業成績、人物ともに優れており、在学する学校長の推薦する者。

・将来、民間企業・官公庁・学校等に勤務して、産業・文化面で活動し社会に貢献しようと志
す者、またはこれらの活動に関連する学術の研究を志す者。

・学費の支弁が困難と認められる者。

・採用後、三菱UFJ信託銀行(本店)に本人が普通預金口座を開設できる者

参考:公益財団法人三菱UFJ信託奨学財団

民間の給付型奨学金は、大学等を通じて募集しているケースが多く、個人での申し込みは受け付けていないこともあります。

財団主催の行事等への参加や定期的に近況報告書を提出することを義務づけるなど、給付には独自のルールが設けられていることが多い点に注意が必要です。

大学・専門学校の給付型奨学金

大学・専門学校の中には、独自の給付型奨学金制度を用意している学校もあります。

一例として、早稲田大学独自の「大隈記念奨学金」は、入試での成績上位者や高校での学業成績がとくに優秀な学生に対し、1学年につき2名程度、年額40万円を給付しています。

このように、学校独自の給付型奨学金の多くは、学業面での能力や成績を重視する傾向があります。

中には「特待生」という名称の学校もあるなど、進学後に学業で成果をあげることや卒業後の活躍を見越した趣旨の奨学金になっているのが特徴です。

進学後に学業成績が不振であったり、学修意欲が認められないと判断されたりした場合、奨学金が打ち切りとなる場合もありますので、進学後もしっかりと学んでいく決意が求められます。

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給付型奨学金を受け取る条件

ここまで見てきたように、給付型奨学金は誰でも自由に受給できるわけではなく、各団体が定める要件を満たす学生に限り受け取ることができます。

給付型奨学金を受け取るための条件を理解し、自分が対象になるかどうか確認しておくことが大切です。

なお、貸与型奨学金の中には一定の条件を満たすことで実質的に返済を免除してもらえる制度も存在します。

給付型奨学金を受給する条件や貸与型奨学金の返済免除を適用してもらうための条件について解説します。

給付型奨学金給付の条件は主に経済的事情

一般的に給付型奨学金の給付条件は貸与型奨学金と比べて基準が厳しく定められています。

給付型奨学金が受給可能となるのは、主に家庭の経済的事情により進学が困難と認められる場合です。

中には学校独自の給付型奨学金のように、学業成績が重視されるものもありますが、上位ひと握りの優秀な学生に限られるなど、やはり基準は厳格に規定されていることがほとんどです。

そのため、はじめから給付型奨学金を受給することを前提に進学資金準備を計画するよりも、貸与型奨学金を利用または併用することを想定しておいたほうが現実的と言えます。

日本学生支援機構では、進学資金の準備計画に役立つ「進学資金シミュレーター」を提供しています。

参考:進学資金シミュレーター(日本学生支援機構)

給付型奨学金を受給基準に合致しているか確認できる「給付奨学金シミュレーション」を行うこともできますので、自分が受給基準を満たしているか確認しておくといいでしょう。

卒業後の条件を満たせば返済不要になる場合も

貸与型奨学金の中には、卒業後に一定の条件を満たすことで実質的に返済不要となるものもあります。

たとえば、医療系・福祉系の学校・学部に進学する場合、卒業後に地方自治体が指定する医療機関で就業することを条件に奨学金の返還を免除または支援してもらえることがあります。

また、地方自治体によってはUターンやIターン就職者を積極的に受け入れており、その地域で就職することを条件に奨学金の返還支援をしてもらえることがあります。

さらに、企業が優秀な人材確の確保や早期退職防止を目的として、奨学金の返済支援を独自に行っているケースも見られます。

こうした仕組みを活用することで、貸与型奨学金を利用した場合も卒業後の返済を一部または全額免除してもらえることがあります。

この記事のまとめ

給付型奨学金は卒業後の返済の心配をする必要がないため、多くの学生が給付を希望します。

ただし、貸与型奨学金と比べて給付の基準が厳しく、誰でも受給できるわけではないことを念頭に置く必要があります。

もし給付型奨学金の要件に合致しているのであれば、制度を活用することで学費の負担を大きく軽減することができます。

給付型奨学金の仕組みをきちんと理解して、適切に活用できるようにしましょう。

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