鉄道業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





鉄道業界とは

鉄道業界に属する企業では、移動手段としての鉄道の維持・運営をメイン事業として行なっています。

日本の鉄道業界は、主に「JR」と「私鉄」の2つに大別することができます。

「JR」はかつての「日本国営鉄道(国鉄)」が民営化して誕生した鉄道事業者であり、「北海道旅客鉄道・東日本旅客鉄道・東海旅客鉄道・西日本旅客鉄道・四国旅客鉄道・九州旅客鉄道・日本貨物鉄道」の7つの企業を有するグループの総称を表しています。

一方、「私鉄」は全国のさまざまな地域で事業を展開しており、代表的な存在としては「東京地下鉄」「東武鉄道」「近畿日本鉄道」などが挙げられます。

鉄道は人々の生活にとって欠かせない存在であり、社会インフラとして重要な役割を担っているといえるでしょう。

しかしながら、今後は少子高齢化によって若者が減ることで、通学や通勤での鉄道利用者が少なくなっていくことが懸念されています。

今後も鉄道の利用者を安定的に確保していくために、鉄道各社は沿線エリアに商業施設や保育所を設立するなど、生き残りをかけた事業戦略を実行しています。

鉄道業界の役割

鉄道は公共交通機関の一つであり、人々が通勤や通学といった当たり前の生活を行う上で、鉄道は正確・確実に運行されている必要があります。

そういった意味では鉄道業界の社会的な役割・責任は大きく、今後も人々の「移動」を支える社会インフラとして安定的な企業運営が求められるといえるでしょう。

また、それ以外には「沿線価値の向上」に関しても、鉄道業界が担うべき役割の一つとなっています。

具体例としては、「駅ナカ」の商業施設開発もその一つです。

駅構内が充実していることで利用者の利便性は大きく向上し、鉄道会社にとっても、駅ナカの商業施設を目当てに訪れるお客さまを新たに取り込むことができます。

さらに、駅ナカに加えて「駅周辺の土地開発」についても積極的な企業は多く、このような取り組みにより利用者にとって魅力的な環境を整えていくことで、結果的には各鉄道各社のブランド力の向上につながっているといえるでしょう。

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鉄道業界の企業の種類とビジネスモデル

JR

「JR」は以前までの「日本国営鉄道(国鉄)」が民営化して発足した鉄道事業者です。

「JR」は企業群の総称であり、具体的には「北海道旅客鉄道・東日本旅客鉄道・東海旅客鉄道・西日本旅客鉄道・四国旅客鉄道・九州旅客鉄道・日本貨物鉄道」の7つの企業がJRグループに含まれます。

それ以外にも、「JRバス」や「JRホテルグループ」などの関連会社をはじめ、数多くの鉄道事業以外の企業もグループ傘下に収めています。

私鉄(私有鉄道)

「私鉄」は全国のさまざまな地域で存在している民間の鉄道事業者です。

私鉄はその呼び名の通り、私企業のみによって運営が行われている鉄道会社のことです。

経営規模の大きい大手私鉄に該当する企業としては、「東京地下鉄」「東武鉄道」「近畿日本鉄道」などが挙げられます。

私鉄はJRと比べると「短距離輸送」を強みとし、一方で中長距離輸送ではJRがよく利用されていることから、「輸送距離の違い」という点でそれぞれの住み分けがされているといえるでしょう。

また、地域色を打ち出し事業展開をするエリアに密着した経営を行う点も、私鉄企業の特徴となっています。

第三セクター鉄道

「第三セクター鉄道」とは、民間企業と行政が協力して運営を行う鉄道事業者のことです。

例えば、東京都のりんかい線を運営する「東京臨海高速鉄道」も、東京都が90%以上を出資する第三セクター鉄道の一つです。

これ以外にも、元々はJRであった路線が第三セクター鉄道に移管された例は多く見られます。

第三セクター鉄道に移管される理由としては、収益性の悪化が原因で国だけでは運営が難しくなり、地方自治体が主導となって設立されるといった背景があります。

鉄道業界の職種

鉄道を安定的に運営してくために、鉄道会社ではさまざまな職種が必要とされています。

ここでは、鉄道業界の代表的な職種を4つ紹介していきます。

現業職

駅員や車掌電車運転士など、鉄道を利用するお客さまと直接関わる場所で働くのが「現業職」の仕事です。

鉄道会社の現業職は、まずは駅員からスタートし、数年間の業務経験を経て車掌や運転士にステップアップしていくのが一般的となっています。

実際に鉄道を利用するお客さまが最も目にする職種であるため、その鉄道会社の「顔」となる自覚を持って仕事にあたる必要があるといえます。

整備

整備は「技術職」とも呼ばれ、車両の保守・点検、線路や鉄道関連施設の点検・検査、信号通信設備の監視・指令などを行っています。

他の職種に比べて力仕事も多く大変な仕事ですが、安全に鉄道を維持・運営していくためには欠かせない存在です。

整備職の採用については、募集の時点で「土木系や電気・電子・情報系の専攻であること」といった応募条件を設定している企業がほとんどです。

開発・企画

鉄道を利用する人々の分析を行い、より快適なサービス提供につなげるための取り組みを行うのが開発・企画の仕事です。

また、それぞれの地域の特徴を踏まえ、観光やビジネスなど幅広い視点でいかに沿線価値を上げていくかを考えていくことも、開発・企画の大切な業務の一つといえます。

実際に開発を行う際には、会社内の各部署や外部企業との密な連携も求められる職種です。

営業・販売促進

営業・販売促進は、鉄道会社の魅力や特徴を世の中に知ってもらうための広報活動が主な仕事です。

その鉄道会社がどんなに便利なサービスを開発したとしても、それが効果的にPRされていなければ人々に認知されず、沿線価値の向上にはつながりません。

「どう宣伝すれば利用者の心に響くのか?」を考える必要があり、その意味ではクリエイティブさも求められる職種だといえるでしょう。

鉄道業界のやりがい・魅力

鉄道を中心に幅広い事業に関われる仕事

鉄道業界の各企業は、ただ鉄道に関連した事業だけを行っているわけではありません。

「非鉄道事業」も多く手がけており、具体的には百貨店やホテルなどの「小売・サービス業」、マンション開発などの「不動産事業」、IC乗車券と連動したクレジットカードなどの「金融事業」といったように、非常に幅広くサービスを展開しています。

とくに各地域を営業拠点とする私鉄においては、「魅力的な街づくり」をテーマに地域の特色を活かした独自事業も数多く行われています。

鉄道会社で働くことで、このような多様なビジネスに関われるチャンスがあり、「さまざまな仕事を通して成長していきたい」という人には魅力的な環境だといえるでしょう。

安定している業界

鉄道業界に属する企業は、その事業内容から「経営が安定している」という部分も魅力の一つです。

鉄道会社が安定している理由として、「鉄道事業への参入障壁が非常に高い」という点が挙げられます。

今後「鉄道事業に参入したい」と考える企業が出てきたとしても、新たに土地の買収や線路の建設、車両の調達などを行い、一から鉄道事業をはじめることは現実的には難しいといえるでしょう。

つまり、鉄道業界はすでに今存在している鉄道会社で市場が支配されている「寡占市場」であり、企業間の価格競争も起こりにくい状況となっています。

このように、新規に参入してくる企業との激しい競争が生じずに安定して企業運営が行える点は、鉄道会社の大きな強みといえます。

鉄道業界の雰囲気

鉄道業界は年功序列を重んじる傾向の企業が多く、全体的に堅実な雰囲気であることが特徴です。

この理由としては、鉄道業界への参入障壁が高いことから他業界と比べて競争が起こりづらいため、「一つ一つ着実に進めていく」といった経営方針を持つ企業が多いことが考えられます。

また、海外から見たときに、日本の鉄道は運行時間が非常に正確なことでも有名です。

この点についても、運行ルールを厳守し確実に仕事を進めていく従業員が多いからこそ、数分単位の遅れもなく正確に電車を動かすことができるといえるでしょう。

このように堅実さや正確さが求められる一方、人口減少のあおりを大きく受ける鉄道業界においては、今後は「変化」や「改革」といった要素も重要になってきます。

これから鉄道業界を目指す人は、「鉄道会社は今後どのような戦略をとっていくべきなのか」について自分の考えをしっかり持つことが大切であり、採用試験においてもその点はチェックされやすい項目といえそうです。

鉄道業界に就職するには

就職の状況

鉄道業界は「安定している」「年功序列で着実に給料が上がっていく」というイメージが強く、学生の就職先としても人気の高い業界です。

JR・私鉄各社のほとんどで、新卒の採用活動が毎年実施されています。

会社の中核を担う存在として幅広い事業に関わっていくような人材は「総合職」として採用されており、一般的には「大卒以上」の学歴が応募条件として求められています。

総合職以外については、「技術職(整備)」や「現業職」が新卒で募集の多い職種です。

鉄道業界の総合職は採用人数が少ないことから倍率が高くなる傾向があるため、その点も考慮した上でどの職種を受けるかを考えると良いでしょう。

就職に有利な学歴・大学学部

鉄道会社の総合職として入社を希望する場合は、大学を卒業していることが必須条件といえます。

一方、技術職や現業職については高卒の受け入れも積極的に行われています。

また、大学の学部や専攻については、応募する職種によって有利になるかどうかが変わってくる部分です。

総合職や現業職、事務系の職種であれば、「学部・学科不問」としている企業がほとんどであり、出身学部によって評価に差が出ることはありません。

ただし、技術職の場合は「土木系」「建築系」「電気・電子・情報系」などの専攻学科出身であることを応募条件としている場合が多くなります。

将来的に鉄道会社への就職を希望する人は、どの職種で働いていきたいのかをよく考えてから学部学科を選択するとよいでしょう。

就職の志望動機で多いものは

鉄道業界を受けるときの志望動機としては、「公共交通インフラを担う、社会的役割の大きさに魅力を感じた」という内容がよく見られます。

鉄道は人々の生活にとってなくてはならない存在であり、鉄道会社で働くことで社会インフラを支えることに貢献したいと考える人が多いようです。

また、単純に「子どもの頃から鉄道が好き」という理由で鉄道業界を受けている人も少なくありませんが、それだけでは志望動機としては不十分だといえるでしょう。

会社側の立場になって「自分を採用するメリット」を伝える必要がありますので、「自分がその仕事にどれだけ熱い気持ちを抱いているのか」という点よりも、「会社に入った後にどう貢献できるのか」を重点的に伝えるようにしていきましょう。

鉄道業界の転職状況

転職の状況

鉄道業界では、新卒者を対象とした採用のほか、多くの鉄道会社で中途採用の募集も行なっています。

とくに大手の鉄道会社では従業員数も多く、毎年一定数の定年退職者も出るため安定的に求人が出ている状況です。

ただし、中途採用では職種が限定されている場合が多く、とくに総合職採用については新卒のみで行なっている企業も少なくありません。

転職を考える場合には、求人サイトなどに加えて、各鉄道会社のホームページでも中途採用に関する情報をこまめにチェックしておくとよいでしょう。

転職の志望動機で多いものは

新卒の志望動機と同様に、「社会交通インフラの一翼を担いたい」といった内容がよく見られます。

また、技術系の職種を受ける場合には「これまでの職歴を鉄道業務でどう活かしていくか」という視点で志望動機を伝える人が多いです。

転職の志望動機を考える上で、これまでの経験を入社後どう活かしていくのかは非常に重要な部分ですが、それと併せて「他の鉄道会社と比べた時の強みは何か」といった内容も聞かれやすい質問となります。

鉄道業界の他の企業と比較し、どのような特徴や優位性を持っているのか、自分なりの考えをまとめておくことをおすすめします。

転職で募集が多い職種

中途採用でとくに募集が多いのは技術職、現業職、一般職などの職種です。

鉄道を安定的に運営していくためには、線路や鉄道関連施設の保守・検査などは必要不可欠な仕事であり、そこに多くの人材が必要とされています。

また、利用者に鉄道サービスを直接的に提供している駅員や車掌といった職種も多くの人手が必要な仕事であり、こちらも年間を通じて求人が出されている状況です。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

鉄道業界へ転職する場合、営業や事務、現業職に関しては同業界での業務経験は問われないケースが多いです。

アルバイト採用から正社員登用を行なっている企業も少なくないため、最初から正社員での転職が難しい場合はこのような方法を考えるのも一つでしょう。

一方、技術職については専門的な知識やスキルがあることが前提での募集となっています。

学歴については「学歴不問」で募集している企業も多いですが、こちらは職種によっても差がありますので注意してチェックするようにしてください。

鉄道業界の有名・人気企業紹介

東日本旅客鉄道(JR東日本)

1987年設立、連結売上高29,501億円、従業員数54,880名(2018年3月期)

以前までの「日本国有鉄道(国鉄)」から、鉄道事業を引き継いだJRグループの一つです。

東北地方、関東地方、甲信越地方を中心に鉄道路線を有しており、ホテル事業や駅ビル事業など、さまざまな関連事業も展開しています。

東日本旅客鉄道 ホームページ

東京地下鉄

2004年設立、売上高3,916億円、従業員数9,574名(2018年3月期)

「東京メトロ」の呼び名で知られる、東京都を中心に地下鉄を運営する鉄道会社です。

以前までは「帝都高速度交通営団(交通営団)」として政府により運営されていましたが、2004年に民営化され、民営化後は「大手私鉄」の一つとみなされています。

東京地下鉄 ホームページ

東武鉄道

1897年設立、売上高5,695億円、従業員数3,477名(2018年3月期)

関東の1都4県に、関東地方では最長の鉄道路線を有する大手私鉄の一つです。

東武鉄道を中心に多数の関連会社を持つ「東武グループ」を構成しており、2012年には「東京スカイツリー」を開業したことが大きな話題となりました。

東武鉄道 ホームページ

鉄道業界の現状と課題・今後の展望

競争環境(国内・国外)

今後訪れる日本の人口減少を見据え、鉄道業界各社で「事業の多角化」を目指す動きが活発化しています。

2018年には「東急電鉄」が渋谷駅南側に大型商業施設「渋谷ストリーム」を開業し、ビジネスの中心街である渋谷駅の機能をさらに高めることで、東急沿線の価値向上を狙う戦略を見せています。

これ以外にも多くの鉄道会社で事業の多角化が進められており、百貨店やホテルなどの小売・サービス業や、マンション開発などの不動産事業といった「非鉄道事業」の領域で、いかにブランド力を高めていけるかが焦点となりそうです。

また、鉄道業界の海外展開としては、「JR東海」や「JR東日本」が新幹線技術の輸出プロジェクトへ参画している事例などが挙げられ、今後も鉄道各社において海外市場の開拓が進められていくことが予想されています。

業界としての将来性

鉄道業界は、人や物が鉄道を使って移動を行う際の運賃によって収益を上げているビジネスモデルであることから、自社沿線上の人口推移が売り上げに大きく影響を及ぼします。

そのため、少子高齢化によって日本全体の人口が減少傾向にあることは他の業界以上に痛手を被る状況であり、これに加えて人口が首都圏に集まる「東京一極集中」の問題も、地方の鉄道会社の収益性を悪化させる大きな原因となっています。

この打開策として、政府主導で行われる「地方創生」により、地方の過疎化が今後どこまで食い止められていくかが鍵になるといえそうです。

それ以外では、日本の人口が減少する一方で「訪日外国人」の数は年々増加している点も、鉄道業界にとっては重要なトピックです。

訪日外国人は観光やショッピングを目的として鉄道を使う機会も多く、こういったインバウンド需要をうまく取り込むことで事業の拡大を図る企業も出てきています。

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