作詞家の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「作詞家」とは
楽曲の雰囲気や歌い手、コンセプトを理解しながら、世界観を表現できる歌詞を作る。
作詞家とは、曲に歌詞をつけていく仕事です。
作曲家からデモテープをもらい、クライアントの要望を踏まえながら、歌詞を考えます。
一つの作品を作る上では、作曲家と互いを意識し協力しあいながら仕事をすることが求められます。
デモテープは、アレンジされる前の曲であり、曲の最終的なテンポや楽曲の雰囲気などはわからないまま作業を進めることも珍しくありません。
ときには「コンペ」が作家事務所やレコード会社を通して行われ、依頼内容に応じて歌詞を作り、優秀な作詞家だけが選ばれるという形式の場合もあります。
基本的に作詞家はフリーランスで活動する人がほとんどですが、作詞家事務所に所属していたり音楽出版社と契約をしていたりする人もいます。
作詞家になるためには、音楽系の専門学校を卒業して業界に入る、作詞のコンテストなどで優勝する、などの方法があります。
この作詞家の収入のほとんどは印税です。
しかし、作詞家としてお金をもらえるようになるまで、他の仕事を兼用したりアルバイトで生活をしていたりする人がほとんどです。
「作詞家」の仕事紹介
作詞家の仕事内容
言葉を駆使して、曲に合う歌詞をつける仕事
さまざまな楽曲に歌詞を提供する
作詞家とは、曲に歌詞をつけていく仕事です。
大手プロダクションの有名アーティストの楽曲や歌謡曲、演歌など、さまざまな曲に歌詞を提供します。
作詞家は作曲家からデモテープをもらい、プロデューサーなどから要望を受けて、その曲のイメージやコンセプトに合う詞をつけていきます。
近年ではシンガーソングライターをはじめ、ミュージシャンが自ら作詞をすることも増えていますが、まだまだ作詞家の需要は多く、才能ある作詞家を大手レコード会社などがつねに探し求めている状態です。
歌詞をつくる際の流れ
楽曲を作る際には、歌詞を先に考える「メロ先」と、既に出来上がったメロディに歌詞をつける「曲先」があります。
近年では曲先が一般的で、作詞家はまず作曲家からデモテープをもらい、想像力をはたらかせて作詞を行います。
作詞家の仕事は比較的スピーディで、締め切りは一週間から3日程度が多く、短ければ当日という場合もあるため、この間に集中して仕事を行います。
また、ときには「コンペ」といったオーディションが作家事務所やレコード会社を通して行われます。
これは事務所側から出された依頼内容に応じて歌詞を作り、優秀な作詞家だけが選ばれるというパターンです。
どれだけ力を入れて作詞をしたとしても、採用されなければ収入につなげることができませんが、一度コンペに採用されると、継続的に依頼が来ることも多く、新たな仕事のチャンスにつなげることができます。
作詞家になるには
作詞家になる方法はいくつもある
さまざまな経歴の人が作詞家になっている
作詞家になるために決まった方法はありません。
実際、現在作詞家として活躍している人たちもさまざまな経歴の人がいます。
多いのは、音楽大学や音楽専門学校で学んで作詞家としてデビューを目指す方法や、レコード会社主催のコンテストに応募して作詞家の業界に足を踏み入れる方法などです。
また、自分自身でバンド活動や楽曲制作をしているなかで、発表の場を広げていき、レコード会社から声をかけてもらうといった方法もあります。
作詞家として活躍し続けるのは簡単なことではありません。
音楽的な知識を吸収し続けることはもちろん、さまざまな芸術作品に触れたり世の中の動きにも敏感になったり、日頃から感性や表現力を磨き続ける努力が欠かせません。
コンペで実力を試す
多くの場合、作詞家デビューは「コンペ」と呼ばれるオーディションを勝ち抜くことからはじまります。
まずアーティスト、その所属事務所、レコード会社などにより新曲の企画やコンセプトが決定し、それにそって作曲が行われます。
作詞を依頼するにあたって広く新しい才能を求めてコンペが行われることも多いです。
コンペの開催が決定すると、音楽出版社・作家事務所・音楽事務所などに情報がわたり、さらに登録している新人作詞家・作詞家志望者へとわたり、志望者は作詞を行い応募します。
最終的に選ばれるのは1作品だけであるため、コンペを勝ち抜くのは非常に厳しく、何十回もチャレンジしてやっと選ばれた、という人も少なくありません。
作詞家の学校・学費
音楽系の学校を出てもデビューできるとは限らない
作詞家になるのに資格は必要なく、学歴はまったく問われません。
あくまでも実力勝負の世界となっており、特別な学校に通わなくても作詞家になれるチャンスはあります。
ただし、音楽大学や音楽専門学校で音楽理論や作詞についての基礎知識や技術を身につけ、その後の音楽活動に生かそうとする人も多くいます。
また、作詞家にとって必要不可欠な文章力を学ぶことができる文学系のスクールでは、作詞をはじめ文筆業のスキルを身に付けることができます。
民間の作詞講座を受ける方法もあり、現役作詞家の添削を受けることができるなど、より実践に近いプログラムであることが多く、実践的なノウハウを学びたいという人に向いています。
作詞家の資格・試験の難易度
資格は必要ないがさまざまなスキルが必要
作詞をするために特別な資格は必要ありません
ただし、作詞の仕事は音楽とは切っても切れない関係であるため、邦楽、洋楽に限らずさまざまなジャンル、そして古い年代の曲から最新ヒット曲まで、幅広い音楽を聴くことが大切です。
音楽の知識を学ぶだけでなく、年代やジャンルごとの音楽文化に触れ、音楽的センスを磨くことが大切です。
また限られた文字数の中で自分が思うことを表現するためには、文章を書く能力が必要不可欠です。
小説や新聞などを読んだり、正しい日本語や表現方法を勉強したり、テレビや雑誌、インターネットなどで情報を収集しボキャブラリーを増やすことが重要です。
さらに、人として魅力のない人にはいい歌詞は書けないため、常にアンテナを張ってさまざまな新しい情報を自分のものにするという姿勢が大切です。
作詞家の給料・年収
作詞家の収入のほとんどは印税
人によって大きな差が出る
作詞家の収入のほとんどは印税で、歌詞を提供した楽曲の売上げに対して約1.5%といわれています。
つまり完全出来高制となるため、提供した楽曲の売上がなければ収入はありません。
一方、有名アーティストやアイドルなどに歌詞を提供し、ミリオンセラーとなれば相当な収入が期待できます。
多くの場合、音楽制作会社や音楽出版社などと契約を結び、仕事の発注を受け、売上に応じた印税を受け取りますが、委託契約のような形が多く、売上によって収入が決まるため決して安定した仕事とはいえません。
作詞の仕事のみで生計を立てるのは難しく、作詞以外にさまざまな仕事を手掛ける人も少ないようです。
印税以外の収入
一生作詞を手掛けた楽曲の印税のみで暮らしができる作詞家はごく一部です。
しかし、作詞家には印税以外にも収入を得る道はあります。
インディーズレーベルやプライベートレーベル、または個人で自費制作盤CDをつくる時に歌詞を提供する場合で、「買い取り」という形で歌詞を完全に売り渡してしまいます。
買い取りの金額は交渉しだいですが、即収入に直結するため、買い取りの方がいいという作詞家もいます。
また比較的売れている作詞家の場合、テレビやラジオに出て出演料を得たり、音楽系の専門学校や音楽教室、講演会などで作詞のノウハウを教え、副収入を得たりする場合もあります。
これらのギャランティーは人によって、また仕事の大きさによって大きく変動します。
作詞家の現状と将来性・今後の見通し
いつの時代も、実力ある作詞家のニーズは大きい
近年はミュージシャンやアーティスト自身が作詞・作曲を手がけることも増えているため、作詞家単体での仕事は以前に比べると減りつつあるといわれます。
ただし、ポップスやアニメソング、演歌などの分野ではまだまだ作詞家が活躍する機会も多く、実力ある人には多くの仕事が舞い込んでくるでしょう。
作詞家として活躍できるまでの道のりはとても険しいため、コツコツと努力を続け、少しずつ信用や実績を積み重ねる努力は不可欠といえます。
一方で、音楽業界全体の不況や配信サービスの普及により、ミリオンヒットのような大ヒットを連発する作詞家は現在ではほとんどいません。
こうした現状を踏まえ、近年では海外を視野に活動するアーティストや作詞家も増えてきており、今後は世界で活躍する作詞家も増えていくでしょう。
作詞家の就職先・活躍の場
コンペに合格してデビューとなるのが一般的
作詞家は、基本的に会社に就職をして働くわけではなく、多くの場合「コンペ」と呼ばれるオーディションを勝ち抜いて、ようやくデビューすることができます。
そのため、作詞家はコンペの情報を得たり、仕事をコンスタントに請け負ったりするために作家事務所・音楽事務所などに所属して働きます。
作家事務所・音楽事務所などでは、つねに人材発掘を行っており、事務所を通して作詞家デビューとなった場合は、その後の仕事も事務所を通して請けられるケースが多いようです。
ある程度の実力や経験、実績が認められればフリーランスになって、完全に個人で案件を請け負っていくことも可能です。
作詞家の1日
1日中、音楽や言葉について考えることも
作詞家は、つねに作詞について考えているといっても過言ではなく、仕事とプライベートの区別をつけにくい仕事といえるでしょう。
フリーランスで活動する人が多いため、自分が集中できる時間に合わせて作詞をする人が多いようです。
<ある作詞家の1日>
関連記事作詞家の1日のスケジュール・忙しさや生活についても解説
作詞家のやりがい、楽しさ
言葉を音にのせて、魅力的な作品を作り上げていく
作詞家のやりがいは、音の世界に言葉をのせ、音楽としてさらに魅力的な作品へと完成させていく過程そのものにあるといえるでしょう。
ときには「生みの苦しみ」を味わうこともありますが、苦労の末やっとCDが完成し、ジャケットや歌詞カードに自分の名前を発見したときには、えも言われぬ感動に包まれることは間違いありません。
自分が関わった曲が世の中に広まり、テレビや街中でふと耳にしたときにも、大きな達成感や充実感が得られます。
また、アーティストの歌いたいことや思いをいかに汲み取り、1つの曲にするかは作詞家の腕の見せ所です。
実際にアーティストが歌い演奏するとき、それはまさに歌に命が吹き込まれる瞬間であり、作詞家冥利につきる瞬間となるでしょう。
作詞家のつらいこと、大変なこと
考えても思うような言葉が出てこないことも
作詞家はその曲を歌うシンガーのイメージや発する言葉に合わせ、なおかつメロディーの文字数やリズムの制約がある中で、曲の全体の構成やサビの盛り上がりまで考えて歌詞を組み立てなければなりません。
さらに、映画やドラマの主題歌ならその内容、CMソングならその商品のイメージもプラスし、プロデューサーから季節感や細かいテーマなどが与えられた場合にはそのすべてのニーズに応える必要があります。
どれだけ頑張っても思うような歌詞が書けない、締め切り前になってもアイデアが思い浮かばないということはどんな作詞家にもあることです。
何度もコンペで落ち続けたり、クライアントからNGが出たりといったスランプに陥ると、精神的に追い詰められまずます書けなくなる悪循環に陥ってしまいます。
作詞家に向いている人・適性
好奇心旺盛で、音楽的な知識も身につけられる人
作詞家は言葉を扱う職業ですが、ただ単に文章を書くことが上手であればよいというわけではありません。
作詞は小説や論文と違い、シンガーが歌うことを想定した言葉の使い方や言い回しを用い、なおかつ曲の流れやサビの盛り上がりに合うインパクトのある歌詞をつけることが重要です。
音楽的な知識やセンスも持ち合わせている人は、この仕事の適性があるといえます。
また常に世の中の動きを敏感にキャッチするアンテナを持っている人は、作詞家としての適性があるといえるでしょう。
普段から世界のニュースやテレビ番組、雑誌などをこまめにチェックし、情報収集を欠かさないとともに、映画や芸術作品などにも触れて感性を磨くことが大切です。
作詞家志望動機・目指すきっかけ
音と言葉の両方が好きであること
作詞家を目指す人たちは、音楽が好きで、なおかつその詞の世界に深く浸かっていきたいという思いを持っていることが多いようです。
好きなアーティストの音楽を聴くときは必ず歌詞カードを読み込んだり、自分で考えたメロディーに自作の詞をのせたりといったことをしているうちに、作詞家になりたいという思いが募る人もいます。
自分が活動するバンドのために歌詞を書き、それが評判となったり、作曲家やレコード会社の関係者などの目にとまったりしたことで作詞家として本格的に活動する人も少なくありません。
作詞家になる人は、サウンドそのものと言葉の両方が好きという思いを持っている人が多いのが特徴です。
作詞家の雇用形態・働き方
フリーランスで活動するか、事務所に所属するか
作詞家の働き方は、大きく分けるとフリーランスで活動する人と、作家事務所に所属して働く人がいます。
作家事務所に所属して活動する場合も、経験や人気によって仕事量は左右されるため、安定した収入が得られるとは限りません。
いずれの場合でも案件に応じて在宅で作詞を行うことが多く、締め切りに間に合わせることさえできれば、時間の使い方は自由です。
駆け出しのころは時間の調整が難しく、自宅に缶詰状態のことが多くなりがちといわれますが、慣れてくれば作業も早くなり自分の時間を調整できるようになります。
なかにはコピーライターなどの仕事をしながら「兼業作詞家」として働いている人もいます。
作詞家の勤務時間・休日・生活
自分でスケジュールを調整しながら働く
作詞家として働く人たちの多くは、抱えている案件の締切に間に合うように、自分でスケジュール調整をしながら仕事を進めていきます。
一般的なサラリーマンのように、定時や勤務時間という概念がなく、締め切りに間に合わせれば時間の使い方は自由です。
音楽業界全体では夜型で働く人が多いため、自身も夜型生活をしている人も多いようです。
売れっ子作詞家になると、たくさんの仕事を同時進行でいくつも抱えていくため、年中忙しい状態が続くことになるでしょう。
激務な日々は大変なこともありますが、作詞家としては、忙しいということはそれだけ周りから必要とされていることであるため、幸せだといえるかもしれません。
作詞家の求人・就職状況・需要
音楽業界は下火だが、高度なスキルを持つ作詞家は需要がある
音楽業界は全体的に下火であり、レコード会社自体のCD収益も大幅に減っていることから、印税が収入である作詞家にとっては大きな打撃となっています。
しかし、配信のみの楽曲やインターネットでの単発ヒットを狙ったような仕事が増えてくる可能性は大きく、また違った角度から活躍ができるチャンスはあります。
近年は音楽ソフトが発達し、素人であっても多くの人が簡単に作詞や作曲ができるようになりました。
また動画配信サイトなどで気軽に作品を発表できるようになり、より高いレベルでの仕事ができる「プロとしての作詞家」の需要が高まっています。
素人とは一線を画す、高度なボキャブラリーや音楽知識を持つ作詞家が求められていくでしょう。
作詞家の転職状況・未経験採用
シンガーソングライターなどからの転職
近年ヒットソングとされる楽曲は、シンガーソングライターやバンドなど自分で作詞・作曲ができる人が多くなっています。
こうした傾向により、作詞家の出る幕は減っていく一方で、シンガーソングライターやバンドの経験者が、本格的に作詞家として転向する人も増えてきています。
音楽の世界を経験していることで、作詞の大切さを知り、音楽づくりのノウハウを身に付けていることから、転身は比較的容易だといえるでしょう。
また、近年は素人でも気軽に作品を発表できるようになってきています。
まったく作詞の勉強をしていなかったり、趣味として作詞を続けてきたりした人が、インターネット上などで実力を認められ、突然作詞家になるということも増えてくるでしょう。
作詞家のコンテンスト・オーディション
多くの詩を集め、そのなかから優秀な作品を選ぶ方法
作詞家としてデビューする方法として主流なのは、「コンペ」と呼ばれるオーディションを通過することです。
コンペの情報は、主に音楽出版社や作家事務所、音楽事務所に流されるため、まずはこうした事務所に所属することが必要です。
ただし、まったくの未経験から所属するのは難しいため、まずは趣味からでも詩を作ることからはじめ、作詞をする力をつけていきましょう。
作詞のコンペは、アーティストの次の新曲、または新曲候補の数曲を課題にして、作詞家志望の人たちがそれぞれイメージに合った歌詞をつけ、その中から優秀な作品が選ばれるしくみです。
ときには、新人の発掘のため広く周知され大々的に募集されることもあり、こうしたコンペで実績を作ってくことも大切でしょう。