林業者の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「林業者」とは

林業者の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

木材を生産し森林を守る仕事

林業は、木材を生産する仕事です。

私たちの生活に欠かせない紙や家具、建築物などは木材がなくては作ることができません。

林業はこうした木材を作り出すために、山林で木を伐採し、材木になった木を運び出します。

一方で、森林を維持するために、苗を植える植林や、雑草の除去など森林の手入れをすることも大切な仕事です。

木は苗木を植えてから収穫するまでに50~60年かかるといわれており、生育状況を見ながら枝打ちや間引きといった世話も欠かせません。

森林は、適切に管理しなければ土壌が流出してしまったり、雨水が流れ洪水の原因になってしまったりと災害につながる恐れがあります。

日本は国土の70%が森林といわれており、林業は木に関するプロフェッショナルとして森林環境を保全することも大切な役割となっています。

林業は重たい木材を扱うため重労働な仕事ですが、自然のなかで働く仕事であるため、自然環境や山林、森林が好きな人には向いているでしょう。

特別な資格が求められることはほとんどなく、木材の運搬をする際の大型の特殊車両免許があれば、就職に有利になります。

なお、キノコ栽培は国で「特用林産物」と定められており、林業に含まれています。

特用林産物とは木材以外に森林から生産されるキノコやタケノコ、木炭などのことを指し、農業と思われがちですが、林業に分類されています。

「林業者」の仕事紹介

林業者の仕事内容

木を伐採することと木を育てること

林業の仕事は、主に木を伐採して運ぶ仕事と木を育てる仕事とにわかれます。

木を伐採する仕事は、目的によって名前が異なります。

資材として出荷する樹木の伐採は「主伐」(しゅばつ)と呼ばれ、決められた区域の樹木をすべて切り取る「皆伐」と、一部の樹木や特定の樹木を伐採する「択伐」があります。

切られた樹木は一定の場所に集められ、適当な長さに切って木材にする「玉切り」を行い、集積地などに運ばれます。

木材にするために樹木を切るだけでなく、樹木の成長を促進するために木を切る「間伐」、育てたい木の邪魔になる木を切る「除伐」などがあります。

木を育てる仕事では、苗木を植えるために整地を行い、苗木を植え、雑草を刈り取ります。

整地は「地ごしらえ」といい、主伐を行ったあとにもう一度樹木を植えられるよう地面を整える、非常に重要な仕事です。

木がある程度大きくなってくると、枝同士が重なり成長を阻害するのを防ぐために枝を切り落とす「枝打ち」、樹木に絡まる植物を除去する「つる切り」などを行います。

そのほか、作業場所まで林道を開設したり、仕事で使う道具や機械をメンテナンスしたり、シカやイノシシなど山に住む動物への対策などを行うことも大切な仕事です。

林業と農業の大きな違いは生育に非常に時間がかかることで、「祖父が植えた木を孫が切る」と言われるほどです。

一般的には50~60年サイクルで伐採が行われますが、樹木の種類によっては生育に100~300年ほどかかることもあります。

林業者になるには

林業労働力確保支援センターで相談する

林業に従事したい場合、いきなり森林組合や林業会社に就職するのではなく、まずは森林の仕事に関する地域のガイダンスや研修に参加するのが一般的です。

林業が盛んな地域では、林業に関する情報提供を積極的にしており、ボランティアやアルバイトなども見つかることが多いです。

林業体験会や講習会なども行われていますので、こうした経験をしておくと、より林業の仕事がリアルにわかるでしょう。

その後林業への就職を希望する場合、各都道府県にある「林業労働力確保支援センター」で相談するのが一般的です。

ここでは求人情報の提供や就職の斡旋は行っていませんが、林業に関する詳しい情報や、就職の仕方を教えてくれます。

実際に就職活動をする際には、森林組合、林業会社などが中心となるでしょう。

近年は、一から林業をはじめたい人、未経験者の人でも必要な技術が学べるよう「緑の雇用」事業が行われています。

これは林野庁の補助事業であり、全国森林組合連合会が主体となっているものです。

林業に必要な技術を学んでもらうため、林業経営体に採用された人に対し、講習や研修を行うことでキャリアアップを支援するという制度です。

研修年次に応じて研修の内容をステップアップさせ、さまざまな技能を身につけられるよう体系的な研修プログラムが用意されています。

各都道府県や林業経営体によって状況が異なるため、こちらもまずは都道府県にある林業労働力確保支援センターに問い合わせてみるとよいでしょう。

林業者の学校・学費

林業について学べる各学校や林業大学校への進学が一般的

林業について学べる学校は全国にあり、その多くは林業が盛んな地域に用意されています。

とくに若者を中心とする新規就業者の確保や育成が重要視されており、森林・林業に関する高校や大学が各地に整備されています。

林業や環境について学べる高校や専門学校は多くありますが、林業を目指す人のなかで一般的なのは、林業大学校への進学です。

林業大学校は林業を担う人材の育成を目的として、都道府県の条例に基づき設置される林業者研修教育施設で、若手林業者の教育・研修機関として林業大学校等を新たに整備する動きが広がっています。

林野庁のホームページでは、林業技術研修教育機関が公開されているため、進学の際はこれを参考にするのもよいでしょう。

林業者の資格・試験の難易度

仕事をする上で取得していくことが多い

林業に関わる資格はさまざまあり、国家資格としては「技術士(森林部門)」があります。

技術士は国による資格認定制度で、実務経験が必要であるため、キャリアアップのために取得する人が大半です。

そのほか、「森林技術協会認定資格」として林業技士・森林情報士などがあります。

林業技士は森林・林業に関する専門的技術者の資格認定・登録制度で、今までに約13000名を超える有資格者が登録されています。

森林情報士は、空中写真などの情報の解析技術、GIS技術等を用いた森林計画などの事業分野に対応できる専門技術者を認定する資格です。

技能系の仕事としては、林業架線作業主任者・立木の伐木作業者(チェーンソー作業者)・木材加工用機械作業主任者などがあります。

とくにチェーンソーは個人で使用するのであれば特に制限はありませんが、業務でチェーンソーを使用する作業に従事する場合、「特別教育」を受けなくてはなりません。

こうした資格や研修は学生時代や就職前にあらかじめ取得しておく必要はなく、仕事をする上で徐々に取得していくケースが大半です。

このほか、普通運転免許証はもちろん、パワーショベルやブルドーザーなどの車両系建設機械の技能講習などを受けていると就職に有利となるでしょう。

林業では大型の建設機械を運転する機会が多いため、こうした車両を運転できれば、現場でも重宝されるでしょう。

林業者の給料・年収

年収350万円ほどがボリュームゾーン

林業全体の平均年収は、350万円前後だとされていますが、林業の年収は、従事している地域や就職先によって大きく変わります。

一般的には、世帯当たりの経営面積が広く、作業に関わるコストが低い地域は給料がいい傾向です。

さらに、地域で樹木をブランド化していたり、良質な樹木を高く売っていたりすれば、収入がそれだけ高くなり、年収も高くなります。

一般的なサラリーマンよりは少ない水準となっているところが多いですが、これは林業の市場規模がほかの業種に比べると少ないことによるものと考えられます。

日本の主要産業である自動車の市場規模は約70兆円ほどですが、林業の市場規模は5000億円ほどといわれており、林業のみで高収入を目指そうとしてもどうしても限界があるでしょう。

なお、林業は一般的なサラリーマンと同様の月給制のほかに、日給月給制、日給制をとっているところも多いです。

日給月給制は1日を計算単位とし、その支払いを毎月1回まとめて行う制度で、欠勤・遅刻・早退によって賃金が控除されるしくみです。

日給制は出勤した日数に対して給与が支給され、労働日数分が支給されるしくみです。

これは、林業は天候によって仕事が休みになってしまうことが多く、昔から日給月給制が採用されてきたことによります。

しかし近年は、新規林業従事者を確保していくために安定して給料を得られる月給制へ変わっていく傾向にあります。

林業者の現状と将来性・今後の見通し

林業のあり方にも変化が訪れている

林業全体では、高齢化が進み、林業に従事する人が大幅に減少しています。

林業を行っている地域に住む若者が都市部に流出することにより後継者が不足し、全国で林業従事者を集めるためにさまざまな努力がされています。

近年は若い世代を中心に林業に関心を持ち従事する人が増えてきていますが、長期的に安定して従事者を増やすためにはさらなる工夫が必要だといえるでしょう。

近年はただ木を伐採する、植えるというだけでなく、家族で伐採体験をする、自分で伐採した木で家具を作るなど付加価値をつけたサービスで人気を集めるところも増えてきています。

林業にも、農業と同様に第六次産業が参入してきており、需要と供給を効率よく最適化する動きが出てきています。

林業者の就職先・活躍の場

森林組合か民間の林業会社

林業者になりたい場合の就職先としては、全国にある森林組合か、民間の林業会社があげられます。

森林組合は森林所有者の協同組合で、組合員の所有林を管理する組織です。

主に、森林整備・販売・加工・指導部門などに分類され、民間の林業会社よりも森林の保全や育成に力を入れているところが多いです。

一方、民間の林業会社では、自ら森林を所有している会社と、伐採のみを受託している会社とにわかれます。

主に「主伐」を行っている会社が多く、森林組合から林業会社へ仕事を外注する場合もあります。

林業は独立をしたりフリーランスで働いたりする人は非常に少ないですが、民間の林業会社で経験を積み、独立するというケースもあります。

林業者の1日

作業は日中に行われる

森林では照明がないため、日が昇っているうちしか作業ができません。

また雨の日は作業が中止となり、休みになったり室内での事務仕事をしたりします。

8:30 現場に集合
きょうの作業を確認した後、それぞれの作業に移ります。
作業道を開設するため、木を切ったり道をならしたりします。
10:00 小休憩
体力仕事のため、午前・午後に15~20分ほど休憩を取ります。
12:00 休憩
お昼は現地でとるため、外食はなかなかできません。
13:00 作業再開
午後も同様に作業を開始します。
15:00 小休憩
16:30 作業終了・会社へ戻る
日が落ちるころになると作業を終了し、会社へ戻ります。
後片付けや機器のメンテナンスなども大切な仕事です。
18:00 退勤

林業者のやりがい、楽しさ

成果が目に見えやすい仕事

林業のやりがいのひとつは、仕事の成果が目に見え達成感を感じやすいところにあります。

自分の植えた苗木が成長し森林になっていくことを目で見ることができますし、伐採の時には大きな木を切りだした達成感を感じることができます。

林業に従事すると、研修を受け新しい知識を身に付けたり、資格を取得して新しい技術を身に付けたりすることも多いです。

自分の努力がすぐ仕事に直結することも、この仕事のやりがいにつながるでしょう。

また、雨の日は作業がないため自然のなかで体を動かせること、日中しか作業がないため残業がほとんどないこともこの仕事の魅力といえるでしょう。

林業者のつらいこと、大変なこと

自然を相手にするので危険も多い

林業は自然を相手にする仕事であるため、楽しさと同時に厳しい面もあります。

夏には直射日光に照らされながらの作業になりますし、冬は寒いなかで仕事をしなくてはなりません。

また、重たい木材を運んだり、チェーンソーなどの機器を扱ったりする上では危険が伴います。

林業の機械化、作業の自動化が進むにつれて、作業は効率的に行われるようになってきていますが、その分危険も増えているため十分に注意を払わなくてはなりません。

林業は「きつい・きたない・きけん」といわれいわゆる「3K職場」といわれることもあります。

確かに体力が必要な重労働の面はありますが、近年はこうしたイメージを払拭するためにさまざまな努力がなされています。

林業者に向いている人・適性

自然が好きでタフな人

林業に向いている人は、自然が好きな人です。

林業は主に山間部での仕事となるため、山や森林、自然が好きで、虫や動物なども抵抗がない人、樹木や自然を相手にするという強い使命感がある人が向いているでしょう。

仕事をする上では暑さ寒さにさらされたり、重たい木材や機器を扱ったりすることもあるため、肉体的にも精神的にもタフであることが大切です。

また近年は、林業にもITが取り入れられはじめており、ドローンや航空写真を利用したりする「スマート林業」をとりいれるところも増えてきています。

こうしたデジタルな分野にも興味を持ち、次々に新しいことにチャレンジしていきたいという人にも向いているでしょう。

林業者志望動機・目指すきっかけ

環境問題に関心を持つ人が多い

これまでは林業というと「自然の中で働きたい」「体を動かして働きたい」という人が中心でしたが、近年環境問題から林業に興味を持つ人が増えています。

二酸化炭素の問題や自然との共生、SDGs(持続可能な開発目標)などが世界的に注目を浴びる中で、環境に関する仕事がしたいと林業を志望する人は徐々に増えつつあります。

また、林業は日中の時間帯に働くためワークライフバランスがとりやすいことや林業が盛んな地域は自然が豊かなところが多いことから、子育てに適した環境で働きたいという人もいます。

近年は若年層の林業就業支援制度でもある「緑の雇用」などの制度もあり、林業に関心がある人たちにとってはチャンスとなっています。

林業者の雇用形態・働き方

非正規雇用は徐々に減少傾向

民間会社の調査によると、林業では、正規雇用者数が年々増加する一方、非正規雇用者数は減少傾向にあります。

年間就業日数が 200 日未満の非正規雇用者数は雇用者全体の24%ほどとされていますが、依然として全産業平均と比べると割合が高いため、雇用を安定させることが課題となっています。

林業への入職者数は例年3,000 人前後で推移しているものの、労働力の確保と育成が課題となっており、国を挙げて雇用を促進しようという流れになってきています。

就業先については、2006 年まで森林組合の割合が民間事業体よりも高くなっていましたが、2007 年以降は逆転し、現在は森林組合が約3割、民間事業体が7割ほどとなっています。

林業者の勤務時間・休日・生活

残業は少ないが休みは不定期になりやすい

林業の仕事は残業が少なく、働きやすい環境にあるといえます。

日が昇っている時間帯にしか作業ができないため、どうしても作業は日中に限られ、日が落ちると作業ができないため仕事を終了します。

この点ではワークライフバランスが取りやすい仕事であるといえますが、天候によりスケジュールが変わることも多く、休日を土日祝日と限定しているところは少なく、休みが自由にとれないところも多いです。

林業では人手不足や収入の不安定さ、災害リスクが高いといった働き方に関するさまざまな課題が指摘されています。

近年は林業に従事する人を増やすためにさまざまな努力がなされており、林業の働き方も徐々に変化しつつあるといってよいでしょう。

林業者の求人・就職状況・需要

若い世代の参入が増えてきている

林業は年々従事者が減ってきており、求人は非常に多く、毎年約3000人の新規就業者がいるといわれています。

国も「緑の雇用」事業を行い、講習や研修でキャリアアップをはかるなど積極的な雇用促進を行っており、2018年度には855人がこの制度を利用して林業をはじめました。

近年は女性を採用するところも増えてきており、全国に約3000人が林業に従事しているといわれています。

これは機械化やIT化によって力を必要としない現場が増えてきたことから、若い女性が参入しやすくなってきたことと考えられます。

林業従事者の高齢化により後継する若手が非常に求められているため、これから林業をはじめたいという人には大きなチャンスととらえてよいでしょう。

林業者の転職状況・未経験採用

他業種からの転職者も多い

林業に転職する人は比較的多く見られます。

ほかの仕事をしていたけれど、地元や自然の仕事に憧れて転職する人や、移住をきっかけに林業を始める人など、理由はさまざまです。

林業に転職する際に特別にもとめられる経歴や資格はないため、転職しやすいことも大きな理由でしょう。

ほかの仕事から林業へ転職する場合は、都道府県等で行われている林業のガイダンスや研修に参加するのが一般的です。

林業はほかの仕事と比べると働き方に大きな違いがあるため、理想と現実のギャップを埋めるためにも、ボランティアや実習などを通して実際に林業を体験してみるのがおすすめです。

林業への就業を支援してくれるところもあるため、まずは情報収集をしっかり行うことからはじめるとよいでしょう。

林業大学校とは

林業について専門に学べる機関

林業大学校とは、林業を担う人材の育成を目的としてつくられた林業者研修教育施設です。

現在6府県に設置されており、主に1~2年制で林業について専門的に学ぶため、就職率が非常に高いのが特徴です。

林業労働力確保支援センターと協力して就職をマッチングしたり、在学中からインターンシップを行ったりするなど、林業を志望する人には万全のサポート体制が整っています。

また、社会人でも短期間で学べる課程を用意するなど、林業に関係する幅広い層を受け入れる体制が整えているところがほとんどです。

2021年現在には、以下の6校があります。
・秋田県林業研究研修センター(愛称:秋田林業大学校)
・長野県林業大学校
・京都府立林業大学校
・みやざき林業大学校
・くまもと林業大学校
・高知県立林業大学校