仲居の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「仲居」とは
旅館で働き、お客さまのお迎えやお見送りをはじめ、あらゆるおもてなしを行う人。
仲居とは、旅館滞在中のお客さまに対し、「おもてなし」の心をもって質の高い接客サービスを提供する女性のことです。
かつての仲居とは、料亭なども含めた客商売の場で給仕・接待する女性を指していましたが、現代は旅館で働く人がほとんどです。
仲居には特別な学歴や資格は求められませんが、観光系の専門学校などに通い、サービスについて学ぶのもよいでしょう。
学校卒業後は、旅館の面接を直接受けるか、派遣会社に登録して仕事を紹介してもらい、働きはじめるのが一般的な流れです。
高収入を得るのはやや難しい職業ですが、格安で住める寮が用意されていたり、食事つきの住み込みで働けたりする勤務先もあります。
若い人の活躍はもちろん、美しい所作やマナー、ホスピタリティを身につければ年齢関係なく働くことができる仕事です。
「仲居」の仕事紹介
仲居の仕事内容
旅館に宿泊するお客さまに質の高い「おもてなし」を提供
仲居とは、旅館を利用する宿泊客に対して、部屋の準備や食事の配膳などの、さまざまな接客サービスを提供する人のことです。
お客さまのお出迎えからお見送りまで、旅館で快適な時間を過ごしてもらうための、質の高いおもてなしを提供します。
一人ひとりのお客さまに対する仲居の仕事は、旅館へ着いたお客さまを笑顔でお迎えし、荷物を部屋へ運ぶところからスタートします。
その後、館内の案内や避難経路の伝達、朝食・夕食の配膳、布団の準備まで、長旅や観光で疲れたお客さまが心地よく休める環境を整えます。
チェックアウト時も心を込めてお見送りをし、「幸せな時間だった、またここへ来たい」などと思っていただけるように努めます。
あらゆる場面でお客さまに気を配る
旅館を利用するお客さまの目的や思いはさまざまです。
なかには滞在中の過ごし方を決めていないお客さまもいるため、周辺の観光スポットや飲食店、地元の人だけが知る穴場の名店など、その土地に関するさまざまな情報を持っている必要があります。
旅館によってはタクシーの手配や売店の店員の役割、館内の清掃を仲居自らがおこなう場合もあります。
大きな旅館になればなるほど、大勢の従業員が働いていますが、仲居は接客のプロフェッショナルとして、常にお客さまに気を配ることが求められます。
仲居になるには
学歴や資格は必要ないが、あらゆる経験が生きる仕事
仲居になるにあたって、特別な学歴や資格は不要です。
仲居の仕事の流れやノウハウは、実際に現場で働きながら覚えることになります。
ただし、近年では大学や短大、専門学校を卒業してから仲居になる人も増えています。
観光系やホスピタリティ系の学部・コースに進学すれば、仲居として欠かせない「おもてなし」に関する知識やスキルを学べます。
また、仲居はさまざまなお客さまとコミュニケーションをとるため、教養や一般常識なども身につけておくに越したことはありません。
学校でさまざまな学びをし、豊かな人間性を養ってから仲居になるのもひとつの方法といえるでしょう。
仲居の就職先の探し方は?
仲居を目指す人は、余裕があれば「接客サービスマナー検定」や「サービス接遇検定」など、接客業に役立つ資格を取得しておくと、実際の現場で役立つでしょう。
仲居として働くには、仲居を募集する旅館に直接問い合わせて面接を受けるのが一般的です。
観光系の学校に通っていれば、学校に届いた求人情報をもとに、学校経由で応募できることもあります。
また、直接雇用にこだわらないのであれば、派遣会社に登録して仕事を紹介してもらうことが可能です。
仲居の学校・学費
どのような学校出身者でも仲居を目指すことは可能
仲居を目指すにあたって、必ず通わなくてはならない学校はありません。
学歴不問で応募できる旅館も多いため、早ければ10代後半でも仲居としてのキャリアをスタートできます。
ただ、仲居は高いレベルでの「おもてなし」や「接遇」のスキルが求められる仕事です。
サービスに関するいろはを学ぶために、観光系の専門学校や大学に進学しておくのもよいでしょう。
また、旅館には海外のお客さまが宿泊されることもあるため、学生時代に英語を中心とする語学力を高めておくのもプラスになります。
学生時代にさまざまな勉強をしておくこともよい選択といえるでしょう。
仲居の資格・試験の難易度
資格を得たいのなら接遇・サービス関連のものを最優先に
仲居として働くうえで、特別な資格が求められることは通常ありません。
仕事で求められる知識やスキルは、採用が決まってから現場で少しずつ覚えていくことが一般的です。
ただ、何かしらの資格を取得したいと考えるのであれば、接遇やサービス関連のものを検討することをおすすめします。
代表的な資格として「接客サービスマナー検定」や「サービス接遇検定」があり、学生時代に取得しておけば、採用面接を受ける際にアピールできるポイントのひとつになります。
また、外国人観光客が多い旅館では語学力も評価される可能性が高いため、TOEICや英検などの資格を取得しておくのもよいでしょう。
仲居の給料・年収
高収入は得づらいが、勤務する旅館によっても差がある
厚生労働省の令和2年度賃金構造基本統計調査によると、仲居の平均年収は、41.8歳で316万円ほどとなっています。
ただし、実際の給与額は旅館によって大きな差があり、有名観光地や高級旅館で勤務する場合は、平均を大きく上回ることもあります。
経験年数が増えるごとに多少の昇給も望めますが、なかなか大幅な収入アップとはいかないようです。
収入面を第一に考える人にとっては、あまり理想通りにはならないかもしれません。
仲居の待遇の特徴は?
仲居の待遇の特徴として、まかないや寮の提供があるケースが多いことが挙げられます。
住み込みで働く人もおり、その場合には生活費がほとんどかからないため、年収300万円程度でも苦しい生活ではないという声も聞かれます。
また、最近は昔に比べて減っていますが、お客さまから「心付け(チップ)」をもらえるケースもあります。
チップの扱いはさまざまで、本人が全額受け取れる旅館もあれば、会社の雑収入として計上するところ、あるいは完全にお断りするところもあります。
勤務先によっては、そうした臨時収入が期待できるのは、仲居ならではといえます。
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仲居の現状と将来性・今後の見通し
深刻な人材不足に悩む旅館は数多くある
現在、仲居は深刻な人手不足が進んでいるといわれます。
有名観光地ですら働き手は不足気味で、地方の静かな温泉地になると、まともに営業するのが難しいほど仲居が足りないと苦しんでいる旅館もあるのが実情です。
「仲居になりたい」と考える若者はそれなりにいるのですが、実際に働くと仕事の厳しさを感じて、早期に離職してしまう人も少なくありません。
こういった事情もあり、最近では旅館の直接雇用ではなく、派遣会社経由で人を確保している旅館も増えているようです。
日本の伝統文化ともいえる旅館で働く仲居の需要は、今後も安定していると考えられます。
できるだけ働きやすい環境を整備し、若手の仲居の定着率を上げようと努力している旅館も増えています。
これから仲居を目指す人には、チャンスが十分にあるといえるでしょう。
仲居の就職先・活躍の場
旅館やホテルなどの宿泊施設または料亭
仲居の主な就職先は、旅館やホテルなどの宿泊施設です。
宿泊施設に訪れたお客さまの出迎えからお見送りまで一貫して、質の高いおもてなしを提供します。
いわゆる「客室係」としての役割を担いますが、滞在中のあらゆる場面で、お客さまに満足していただけるように気配りをします。
高級旅館になるほど、お客さまの求めるサービスや接遇のレベルも高くなる傾向にあり、きめ細やかな対応をしなくてはなりません。
基本的には誰もが未経験からのスタートとなり、採用後に社内研修や先輩の指導を受けて、仲居としての心構えや所作を身につけていきます。
このほか、日本食を提供する料亭でも、質の高いおもてなしにこだわる店舗には専任の仲居が在籍しており、給仕やサービスを提供します。
仲居の1日
宿泊客の過ごし方に合わせた変則的な勤務をする
仲居の勤務体系は勤務先となる旅館によっても異なりますが、変則的なシフト勤務となることが多いです。
お客さまの動き(食事など)に合わせて仕事のスケジュールを組んで働きます。
拘束時間が長めで、間に長時間の休憩時間が入ることもあるなど、やや特殊な働き方になります。
ただ、仲居の多くは敷地内や隣接地にある寮から出勤しており、慣れればそこまで苦労しないでしょう。
仲居の1日の流れ
以下は、あるお客さまのお迎え(チェックイン)からお見送り(チェックアウト)までの1日の流れを簡単に示したものです。
関連記事仲居の一日の流れ・勤務時間や休日、たすき掛け勤務についても解説
仲居のやりがい、楽しさ
お客さまの旅に大きな印象を与えることができる
仲居は、旅館に滞在するあらゆるお客さまに対し、満足度の高いおもてなしを提供します。
旅館で過ごす時間はそれなりに長くなるため、お客さまにとっては、仲居の対応によって旅先の土地の印象が決まることもあります。
担当したお客さまから見送りの際に「ありがとう、楽しい滞在だった」と感謝の声をかけてもらえたときは、大きなやりがいを感じられるでしょう。
仲居の対応に満足し、また宿泊に来てくださるお客さまが増えれば、それほどうれしいことはありません。
また、仲居として働き続けるうちに自然と美しい所作や気品を備えることができるのも、この仕事の魅力のひとつといえます。
仲居のつらいこと、大変なこと
接客業ならではの肉体的・精神的な苦労
仲居の仕事は基本的に立ちっぱなしです。
客室へお客さまの荷物を運んだり、布団の上げ下ろし、食事の配膳をしたりなど、重いものを持つことも多いため、見た目の華やかさとは裏腹に体力が必要です。
また、旅館の客層は幅広く、老若男女問わずあらゆる層のお客さまをお世話することになります。
どのようなお客さまにも満足してもらえるように努めますが、それは簡単なことではありません。
同じような対応をしても、あるお客さまには好意的に受け取ってもらえたのに、別のお客さまには通用せずクレームの対象になるといった理不尽さを感じることもあるでしょう。
さまざまな経験をし、ときには苦い思いも味わいながら徐々に仲居としてのおもてなし力を高めていく「心の強さ」のようなものも必要です。
仲居に向いている人・適性
社交性があり、日本文化に関心がある
旅館に宿泊するお客さまの年代は、乳幼児から高齢者まで非常に幅広いものとなります。
その組み合わせも、親子や夫婦、カップル、友人、あるいは一人旅など、さまざまです。
仲居は、どのようなお客さまであっても、その人が旅館での時間を心地よく過ごせるように対応しなくてはなりません。
誰とでも笑顔で友好的に接することができ、会話を楽しめるような社交性のある人は、仲居に向いているといえます。
また、旅館の文化や仲居が提供するおもてなしは、日本古来より大切にされてきたものです。
日本の伝統文化に関心がある人、伝統を受け継いでいきたいという思いを持っている人は、仲居の仕事を心から楽しむことができるでしょう。
仲居志望動機・目指すきっかけ
旅館の雰囲気が好き、接客スキルを生かしたいなど
仲居の主な業務は「接客」です。
学生時代のアルバイトで接客業の楽しさを感じてきた人や、もともと人と接するのが好きだという人が、仲居を目指すケースが多いです。
旅館という非日常的な空間に魅了されて、その場所で働きたいと考える人もいますし、仲居の美しい所作や言葉遣いを身につけたいなどと考える人もいます。
また近年では、海外から日本を訪れる人が増えています。
語学力に自信がある人や、国際交流に関心がある人にとっても魅力的な職業だといえるでしょう。
仲居の雇用形態・働き方
正社員のほか、派遣社員やアルバイトの雇用も増えている
仲居は、旅館やホテルなどの宿泊施設に直接雇用されて働く形態が一般的です。
規模の大きな有名旅館では、新卒採用や、定期的な正社員募集をおこなっていることもあります。
正社員として採用されれば、給料は月額ベースで比較的安定しており、まかないや寮などの待遇も得られます。
ただし、業界全体として仲居の不足に悩んでいる旅館は増えており、最近では派遣会社経由で臨時的に仲居を雇うケースも目立ちます。
勤務日数などの融通が利きやすいアルバイトの募集も見られ、仲居の働き方は多様化しているといえるでしょう。
仲居の勤務時間・休日・生活
特殊な勤務体系をとる旅館もある
仲居の勤務時間は、やや変則的なものになることが多いです。
実働は1日8時間程度ですが、基本的には1組のお客様をチェックインからチェックアウトまで担当するため、「正午から翌日の正午まで」といったシフトが組まれることが多いです。
深夜の時間帯には長時間の休憩をはさみますが、不規則な勤務は避けられないでしょう。
このほか、仲居ならではの勤務体制の特徴として「中抜け」があります。
中抜けとは、たとえば6時に出勤し、10時から19時までを長時間の休憩として勤務から離れ、再度19時に出勤し、22時に退勤するというシフトのことをいいます。
どのような勤務体系をとっているかは旅館によって異なるため、事前によく確認しておくほうがよいでしょう。
また、宿泊業は土日祝日やお盆・お正月など、世間がお休みのときに最も忙しくなる業種です。
休日は平日、また観光のオフシーズンに当てられることが多くなり、不定期となります。
仲居の求人・就職状況・需要
人材不足により需要は高まっている
近年、多くの旅館が仲居不足に悩まされています。
その背景には、職業の選択肢が増えて仲居を目指す若者が減っていることや、政府のインバウンド政策などにより外国人の宿泊数が増加していることなどがあります。
仲居の求人は数多く見られるため、自分に合った条件を見つけられる可能性が高くなっています。
人材不足を解消するために、最近では仲居を派遣社員で補っている旅館も少なくありません。
正社員としての雇用を目指すのはもちろん、観光系の派遣会社に登録してフレキシブルに働くのも一つの選択となるでしょう。
仲居の転職状況・未経験採用
やる気と健康があれば、未経験でも歓迎される
仲居は、転職によってなる人も大勢います。
接客業経験者であれば即戦力として活躍できたり、給与面で優遇されたりする可能性はありますが、未経験者が門前払いになることはほとんどありません。
やる気があり、働くのに差し支えない健康状態であれば、仲居になれる可能性は十分にあるといえます。
ただし、お客さまに失礼のない対応をするためには、接客や礼儀作法の基礎を学ぶ期間が不可欠です。
未経験で仲居になる場合、はじめの数ヵ月は試用期間として先輩の補助業務をこなしながら、仲居の基本的な知識や技術を身に付けていくことが多いでしょう。
新人のうちはあまりよい給料が望めない場合が多いため、その点はしっかりと頭に入れて転職の計画を立てることをおすすめします。