起業家の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「起業家」とは
アイデアやスキルを生かして事業を始める人
起業家とは、自らのアイデアやスキルを元に事業を始める人のことです。
起業というと「会社をつくる」というイメージがありますが、会社を1から立ち上げる事業も、1人ですべてを賄う事業もどちらも同じ起業であり、事業の規模や種類は問いません。
近年は起業が手軽にできるようになったことから、経済の活性化を推進する存在として注目を集めている職業です。
英語では「Entrepreneur(アントレプレナー)」と呼ばれており、これまでにない革新的な事業をはじめたり、これから大きく成長が見込ためたりする事業は「スタートアップ」「ベンチャー企業」などとも呼ばれています。
起業の種類はさまざまで、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」など法人を設立する方法や、個人事業主として起業する方法、フランチャイズとして加盟店から権利をもらう方法などがあります。
起業家の仕事は、事業を起こすだけで終わりではありません。
起業後、1年たっても継続して行えている事業は全体の7割ほどといわれており、3割が廃業しています。
安定して事業が継続できるよう、販路を拡大するなどの工夫をして収入を安定させ、事業を継続させることが起業家の大切な役割であるといえます。
「起業家」の仕事紹介
起業家の仕事内容
実際の事業内容は人それぞれ
起業家の仕事内容は、起業をして事業を継続させていくことです。
起業のパターンは2つあり、もともと本業としていた仕事のアイデアやスキルを生かし、起業するものです。
長年会社で働いてきた経験を生かして独立したり、新しい会社を作ったりするケースで、事業に注力することができる一方、失敗すれば収入が立たれてしまう可能性もあります。
もう一つは、副業として起業するもので「プチ起業」ともいわれます。
主に会社員や主婦が行うものが多く、本業を持つことで一定の収入が確保されていますし、少額の利益でも構わないという人が多いため、比較的気軽に始められます。
起業の種類は実にさまざまで、主に以下のようなものがあります。
・個人で行うもの(雑貨の制作やアフェリエイト収入、アプリの開発、作家やライター、コンサルタント、投資、動画や画像の有料配信など)
・お店やグループをつくるもの(飲食店、雑貨店、ネイル・美容、オンラインサロンなど)
・スキルを生かすもの(ピアノや英語、書道などの幼児教室、各種カウンセリング、ファイナンシャルプランナーや整理収納アドバイザー、メイクレッスンやパーソナルカラー診断など)
・国家資格を生かすもの(公認会計士、税理士、弁護士、医師、保育士など)
そのほか、後継者がいないために事業をたたもうと考えている人に掛け合い、既存の会社を買収したり、販売権を得たりすることで事業を継承する形で起業する人もいます。
起業家になるには
起業するだけならだれにでもできる
起業家になるための道は人それぞれであり、一概に言えないところがあります。
起業家になること自体は誰でもできます。
かつては、株式会社を作る際には1000万円、有限会社を作る際には300万円以上の資本金が必要で、起業のハードルは非常に高いものでした。
しかし2006年に会社法が施工されたことにより、1円でも資本金があれば起業ができるようになりました。
税務署に開業届などの書類を提出すれば、誰でも会社を作ることができるようになったことで、多くの人が起業するようになり、起業家を志すようになりました。
ただし起業家の仕事は「企業をすること」自体ではなく、自ら会社を経営し事業を続けていくことにあるため、常に新しい商品やサービスを考え続けていくためには、さまざまな学びが必要です。
一般的には、経営学、商学、ビジネス学などを学び、一度企業に就職してノウハウを身に付けることで起業家を目指すという人が多いですが、必ずしも道はそれだけではありません。
企業はさまざまなジャンルで行うことができるため、自分が興味関心のあることや資格取得することもよいですし、経営や会計に関する勉強をしておくことも有利となるでしょう。
ただし、企業進うえで特別な資格や学歴は一切不要ですし、年齢や性別も関係ありません。
企業をして自分で事業を手掛けたいという気持ちさえあれば、誰もが目指せる職業であると考えていいでしょう。
起業家の学校・学費
特別な学びは不要
起業家に特別な学歴は不要で、高校生や大学生のうちから起業する人もいるほどです。
ただし、起業をするには自分自身のアイデアやスキルが必要ですし、事業を継続していく上では経営や会計の勉強も必要です。
学校に通い、さまざまな勉強をしたり経験をしたりすることは、決して起業にマイナスの要因にはなりません。
一方、社会人になってから起業をしたいという人のためには、起業セミナーや講座などが多く開かれています。
まったく知識がないところから起業を始める場合には、こうした機会を利用するのもよいでしょう。
近年ではとくに女性や主婦層に向けた起業セミナーが人気を集めています。
起業家の資格・試験の難易度
事業に関係する資格や試験は取得しておくと有利
起業家になるために特別な資格を取得する必要はありません。
ただし、どのような事業を行うかによって必要な資格や試験は変わります。
たとえば書道やピアノなどの講師をする場合には一定のレベルを証明するために資格があれば集客しやすいですし、飲食店を経営する際にも調理師やソムリエなどの資格があると役立ちます。
また、公認会計士やファイナンシャルプランナーなどといった資格を武器に1人で仕事をしているという人もいます。
内容によっては事業をする際に必ずしも資格が必要ではありませんが、差別化をはかり事業を継続していくためには、より高いスキルを証明する資格や試験結果があると有利でしょう。
起業家の給料・年収
数万円から数億円まで幅広い
起業家の収入は人それぞれで、数万円しか稼げないという人もいれば、億単位で収入を得ている人もいます。
日本政策金融公庫の調査によると、起業する際の経営者本人の年収が約480万円程度であるのに対し、起業後の年収は500万円程度と、わずかながら微増しています。
年収600万円以上が約3割(29.7%)にのぼる一方で、10万円未満が1割以上(12.3%)いるなど、起業したものの収入をほとんど得られていない状況にある人もいます。
さらに上場企業ともなれば、億単位の収入が得られることもあります。
起業家というと、成功して非常に高い収入を得ていると考えている人もいるかもしれませんが、起業すればそれだけ苦労も増えます。
起業をすると、労働時間は増加傾向にありますし、起業をしてすぐには収入が得られないことも多いです。
起業家は、基本的に成果に対して報酬という形で収入を得ているため、労働時間が増えたとしても成果をあげて売り上げをアップさせなくては、報酬はないのです。
事業が軌道に乗るまで数年かかったという人も多いですし、赤字が続いて借金をしたという人も少なくありません。
それでも企業の夢を忘れずに、努力を続けられた人だけが生き残っていける世界なのです。
起業は非常に伸びしろが多く、成功すればそれだけ収入は上がっていくものの、やり方を間違えれば損失になってしまう可能性があることも知っておきましょう。
起業家の現状と将来性・今後の見通し
自ら起業する人はまだまだ少ない
日本は諸外国と比べると起業家の数は非常に少なく、また起業を希望する人は潜在的にいるものの、実際に行動に移すのはその1/3~1/4程度しかいないといわれています。
これは、日本ではサラリーマンなどの会社勤めが長年根付いてきており、起業というリスクをとろうとする人が少ないこと、また起業やビジネスに関する学びや体験が少ないことと考えられています。
起業は事業次第では各業界でイノベーションを起こす可能性があり、成功すれば多くの雇用も生まれます。
近年はクラウドファンディングなどで気軽に資金が集められるようになり、個人や少人数で起業する人も増えてきていますが、働く人全体の割合から見るとまだまだ少なく、将来が期待されています。
起業家の就職先・活躍の場
起業した場所で働く
起業家は基本的に自分が起業したところで働いています。
個人事業主としてすべてをひとりで仕事を行っていることも珍しくありません。
法人の場合は戦略や経営計画を立てる経営者となる場合もありますが、自ら事業に関わり積極的に奔走するという人も多いです。
そのほか、会社員など違う仕事を持ちながら起業している人もおり、働き方はさまざまです。
一度、一般企業やIT企業、広告制作会社などに就職し、そのノウハウを生かすという人もいますが、必ずしもこうした分野で働いていなくても企業をすることはできます。
実際、学生のうちから起業家として活躍している人もいますし、主婦から起業家になったという人もいます。
起業家の1日
勤務場所や勤務時間は人それぞれ
起業家は事業内容に応じて業務に違いがあり、その1日のスケジュールもさまざまです。
勤務場所、勤務時間はそれぞれの裁量に任せられることも多く、仕事をする時間やその量も人によって大きく異なります。
ここでは複数の社員を抱える起業家を例にとって紹介します。
起業家のやりがい、楽しさ
自分の好きな仕事ができること
起業家のやりがいは、自分の好きな仕事を好きなだけできるところです。
起業家は、基本的に自分の好きな分野や自分のしたいことを事業として立ち上げます。
そのため多くの人が仕事自体にやりがいを感じており、起業したことで不満を持つという人はあまりいません。
労働時間が増えたり、給料が不安定だったとしても、自分自身が起こした事業で人々が喜んでくれたり、社会に影響を与えたりしている様子を見るのはとても嬉しいでしょう。
また、働き方や働く時間、場所なども自由に決められるため、サラリーマンのように通勤時間や勤務時間にしばられることなく、自由度の高い仕事ができることも満足感につながっているでしょう。
起業家のつらいこと、大変なこと
仕事量の多さや会社を維持するプレッシャー
起業家となった場合、労働時間が長くなる傾向にあり、さらに仕事のことが頭から離れないという人は非常に多いです。
とくに社員を抱える起業の場合は、純粋に経営や事業の問題だけでなく、社員の教育やコミュニケーションの問題など、さまざまな点にも目を向けなくてはなりません。
さらに会社を経営したり、一つの事業を継続して行ったりすることのプレッシャーは相当なものです。
起業家の収入は事業の売り上げにかかっているため、うまくいかなければ収入がないこともありますし、最悪の場合起業した会社をたたまなくてはなりません。
とくに経営がうまくいっていない場合はプライベートや休日でも仕事のことが頭から離れず、常にプレッシャーを感じてしまうという人も多いです。
起業家に向いている人・適性
数字に強く、フットワークの軽い人
起業家に向いている人は、数字に強い人です。
起業家は、事業を起こすためにさまざまな数字を扱います。
会社を経営する上では、会計や決算に関わるものだけでなく、売り上げの予想や成長率など、数学や会計の知識があれば大いに役立つでしょう。
数字に強いかどうかによって、融資先の確保や借金の返済計画を立てる際の選択肢も大きく変わります。
また、フットワークが軽く、ビジネスチャンスを自ら掴もうというチャレンジ精神のある人にも向いています。
事業を継続して行っていくには、守りに入るのではなく、常に攻めの姿勢で積極的に動こうという姿勢が重要で、誰よりも先に動きだせるフットワークの軽さは、起業家に必要な要素です。
起業家志望動機・目指すきっかけ
社会人になってから志す人が多い
中小企業庁の調べによると、起業を意識したものとしては「本・テレビ・インターネットなどからの起業家に関する情報」が一番多い割合です。
また、「正社員としての勤務経験」、「アルバイト・パート経験」がきっかけになったという人の割合も高くなっています。
何らかの仕事を経験した中で、起業に関心を持つきっかけがあったという人が多く、実際に多くの人が社会人を経てから起業をしています。
そのほか起業家を目指すきっかけとして多いものは、「経営に関する授業・セミナー」、「起業家などによる講演会や交流会への参加」、「企業・商店における職場体験・インターンシップ」などがあります。
起業家の雇用形態・働き方
事業内容によって働き方はさまざま
起業家の働く場所や働き方は、事業内容によって多種多様です。
個人事業主の場合は、自分で自由に働き方を決めることができますし、働く場所も自由です。
会社を起こして人の場合も、一般企業と同様に事務所やオフィス、店舗を構えてそこで働く人もいれば、自宅で一人黙々と作業をする人もいますし、地方や海外で働いている人もいます。
事業内容によって働く時間帯や時間も異なるため、一概に「こうしている」とは言い切れない部分が多く、イメージしづらいという人も多いでしょう。
自由度が高いため自分が理想とする働き方を実現することも可能な一方、仕事量が多く、プライベートとの境目がつけられないという人もいます。
起業家の勤務時間・休日・生活
自由度が高く自分の裁量で決められる
起業家は誰かに雇われているわけではないため、勤務時間や休日は自由に決めることができます。
そのため、好きな時に仕事をして好きな時に休むことができ、自由度の高い働き方をしたい人には非常に向いています。
ただし、必要な仕事をしなければ売り上げは上がっていきませんし、休みを多く設定すればそれだけ売り上げは下がってしまいます。
仕事をしていなくても常に事業のことを考えているという人も多く、プライベートとの線引きが難しいという一面もあります。
とくに自分ひとりだけで起業している場合は、生活のすべてにおいて仕事が関係してくるため、完全に切り分けることは難しい部分もあります。
女性の起業家
女性起業家も多く活躍している
起業は男性・女性の区別や年齢に関係なく誰でも行うことができます。
内閣府男女共同参画局「女性起業家を取り巻く現状について」という調査によると、女性は起業の形態として個人事業主を選ぶ人が多くなっています。
女性ならではの視点で行われるサービスや商品の提供は、同性からの支持も厚く、世の中の流行も女性がけん引していることが多いため、実際に起業し成功する人も多いです。
家事・育児・介護との両立という点でも、起業して自分の都合の良い働き方を整えたり、両立できるだけの仕事量にセーブしたりすることができます。
今後女性の起業が活発になることで、より新しい働き方が定着し、これまでにない事業を生み出す原動力となることが期待されます。