葬儀業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





葬儀業界とは

葬儀業界とは、「葬儀」を扱う業界です。

日本の葬儀業界には、葬祭専門事業を行っている大手企業から、地域密着の中小企業までたくさんの企業が存在しており、その数は4,000〜5,000社ともいわれています。

代表的な大手企業は、「燦(さん)ホールディングス」「ティア」「平安レイサービス」です。

葬儀、法要、葬儀会館の運営を始め、会社によっては葬儀のための料理の仕出し、清掃、遺産・遺品整理など関連事業も幅広く行っています。

業界全体の雰囲気として明るく派手なイメージはありませんが、悲しみの中にいる遺族に寄り添い、数日で葬儀を執り行う必要があるため、配慮やスキルが求められる究極のサービス業ともいわれる仕事です。

市場規模は2005年から増加傾向にあり、高齢化社会の影響で、今後も安定した堅調な成長が見込めます。

国立社会保障・人口問題研究所のデータでは、2040年まで死亡者数が増えると予想されていることも裏付けとなるでしょう。

しかし異業種からの参入の増加や、葬祭単価の低下の影響で、競争環境は激化すると予想されています。

葬儀業界の役割

葬儀業界の役割は、故人とのお別れをするための儀式である「葬儀」を行うサービスの提供です。

葬儀を提供するには、霊柩車・バス、生花業者の手配、仕出し、ギフト業社、火葬場、寺院関係と協力や連携をはかる必要があります。

葬儀の役割は、以下の5つにまとめることができます。

・亡くなった方をあの世に送り出す「宗教的な役割」
・残された家族、友人、知人が故人とお別れする「社会的な役割」
・葬儀を通じて遺族が悲しみを癒す「心理的な役割」
・葬儀で命の大切さを認識する「教育的な役割」
・ご遺体の処置をしお別れをする「物理的な役割」

この5つの役割が1つも欠けないように、遺族を支えながら数日間で儀式を執り行うことがミッションです。

悲しみにくれる遺族へ配慮も、着実に厳粛な葬儀を行うスキルや実行力も必要になります。

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葬儀業界の企業の種類とビジネスモデル

国内大手企業

葬儀業界の大手企業で代表となるのが、「燦ホールディングス」「ティア」「東京博善」「平安レイサービス」「サン・ライフ」などです。

こうした大手企業では、葬儀・法要、葬祭会館の運営から、スケールメリットを活かした周辺業務も行っています。

たとえば「燦ホールディングス」はグループ会社に清掃、料理の仕出し、生花販売などを持ち、関連企業で運営しているのが特徴です。

また「平安レイサービス」では葬祭事業だけでなく、遺言信託、遺産・遺品の整理などのトータルケアを、「サン・ライフ」ではブライダル事業や介護事業、自然葬、ペット葬など幅広いプランを提案しています。

大手企業ではグループ会社を持つスケールメリットを活かした、オリジナルのプランの提供が強みです。

中小企業

葬儀業界の企業のうち、90%以上は中小企業だといわれています。

実は葬祭業は、開業するのに国の許可や届け出が必要がないので、個人でも会社を立ち上げやすく、異業種やほかの業界から参入しやすいのです。

中小企業では関連企業と協力をしながら、葬儀を執り行う事業を行っています。

たとえば「三輪本店」や「グランドセレモニー」では、ご遺族に寄り添いながら、チームで葬儀を作りあげている企業です。

大企業の多くが分業制になりますが、中小企業では最初から最後まで担当者が遺族に寄り添ってくれること、大企業に比べて葬儀費用が低めに設定されている点が評価されています。

異業種からの参入

高齢化の影響で、さらに葬儀業界の需要が高まるという予想から、異業種からの新規参入企業も増えています。

たとえば「イオン」は、「イオンライフ」として不透明と言われている料金プランを明文化することで、2014年に事業展開を始めました。

量販店、ホテル、鉄道会社、ベンチャー企業などさまざまな企業が事業展開を進めています。

葬儀業界の職種

葬儀を執り行うには多くの人の力が必要になりますが、葬儀業界の職種は、一般的に知られていないことが多いです。

葬儀業界の仕事の中でも、代表的なものを見ていきましょう。

葬祭ディレクター

葬祭ディレクターは、ご遺族に寄り添いながら、1つの葬儀を行う際に関わるたくさんの業種の人たちを取りまとめる仕事です。

ご依頼を受けたら、ご遺族と相談しながら見積もりプランを提案するのと並行して、ご遺体の搬送や安置の手配、火葬場、葬儀場、僧侶などのスケジュールを組み、葬儀をプロデュースしていきます。

淡々とスケジュールをこなすのではなく、悲しみの中にあるご遺族への配慮も必要です。

また宗教や風習、香典返しのマナーなど、幅広い知識が求められますが、それだけ大きなやりがいを感じられる仕事でしょう。

葬儀司会

葬儀司会は、葬儀を滞りなく行うための司会進行役です。

企業によっては葬祭ディレクターが担当することもありますが、葬儀司会として専門スタッフが配属される場合もあります。

アナウンス技術はもちろん、宗教やマナー、各スタッフとの連携が求められる仕事です。

納棺師

納棺師はご遺体を洗い清め、生前の姿に戻すお仕事です。

亡くなられてからお通夜や葬儀が行われるまでに、数日間あくことが一般的なので、保存用のドライアイスでケアしたり、お化粧を施すこともあります。

映画「おくりびと」で本木雅弘さんが演じたことで、注目を集めました。

生花スタッフ

生花スタッフの仕事は、葬儀場に飾る花を手配し設営します。

小規模の葬儀では供花を作って飾ることが多く、大規模の場合は祭壇を花で作る「花祭壇」を作ることもあり、大掛かりで肉体的にもハードな仕事です。

花は季節の花や、故人が好きだった花などを選ぶので、アートやセンスも問われます。

主に生花部門がある葬儀会社か、セレモニー部門のある生花店に就職することで、携わることが可能です。

葬儀業界のやりがい・魅力

感謝の言葉にやりがいを感じられる

葬儀に関わる仕事は、人の死と向き合う大変な仕事です。

ご遺族が心置きなく故人をお見送りできるように、葬儀の準備を短時間で行い、儀式を滞りなく行うために裏方として働かなければいけません。

ときには真夜中に対応したり、残業もあったりと大変なこともあるでしょう。

しかしその分、ご遺族からの「ありがとう」の言葉に、大きなやりがいを感じる人が多いようです。

葬儀の知識や宗派、マナーなども勉強する必要があるので、経験を積むほど、幅広い知識やスキルが身につきます。

またご遺族の方と関わったり、一つの葬儀を作り上げるのにも多くの人との連携が必要な仕事になるので、たくさんの人に出会えることも仕事の魅力でしょう。

安定した需要があり将来性のある仕事

高齢化社会に伴い、葬儀の需要は高まっているため、今後も安定した仕事が見込めます。

葬儀業界には「男性」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、近年は性別に関わらず、女性も男性も活躍している業界です。

特に女性は、きめ細かい心配りや場を和ませる安心感を与えられることから評価が高く、子育てがひと段落してからも復職しやすいので、女性が働きやすい業界ともいわれています。

ただし働きやすさは、企業の規模によって給与や福利厚生、待遇面が大きく異なるようです。

たとえば残業代や夜勤手当、休日出勤の手当てをはじめ、ボーナス、福利厚生がしっかりと整えられている点に働きやすさを感じている人が多くいる一方、給与や待遇面が報われないと感じている人もいます。

入社前に、働いてからの1日のイメージ、給与面、待遇なども確認しておくとよいでしょう。

葬儀業界の雰囲気

葬儀業界は明るいイメージはないかもしれませんが、笑顔のない職場ではありません。

無事に葬儀が終わり、ご遺族が故人をお見送りできたあと、「ありがとう」と感謝されたときには笑顔が生まれ、温かい気持ちになれるでしょう。

ご遺族からの要望を聞くヒアリング能力、洞察力の高い人が多いようです。

厳かな葬儀で落ち着いて行動できる人、万が一のトラブルにも柔軟に対応できる判断力のある人が多いので、大人な雰囲気の中で仕事ができるでしょう。

また葬儀は一人で行うことができず、必ずたくさんの人の連携が必要になるので、多くの人と関わる機会があります。

人はいつどこで亡くなるのか予想ができないので、シフト制のお休みはあるものの、24時間365日体制の勤務です。

早朝や深夜勤務もあり、体力がある人も大事な素質になります。

葬儀業界に就職するには

就職の状況

葬儀業界は、毎年多くの葬儀業界の企業が、新卒採用を募集しています。

しかしながら、学生からの人気があまり集まらず、エントリーも少ない業界のようです。

採用は、葬儀を取り仕切る「葬祭ディレクター」をはじめ、生花を担当する「フローリスト」、経理総務などを担当する「事務」などが募集されています。

企業によってはお墓や終活にまつわる「営業職」の募集もあるので、企業ごとに細かく確認するとよいでしょう。

募集条件は一般的に、「高卒以上」や「学歴不問」の場合が多いです。

業界全体が堅調な成長を見せているので、今後も人材採用が大きく減少することは考えにくいでしょう。

就職に有利な学歴・大学学部

葬儀業界へ就職には、学歴不問の場合が多く、高校卒業以上であれば問題ないでしょう。

有利な大学や学部は、特にありません。

むしろ葬儀業界では高学歴なことよりも、ご遺族へのホスピタリティや、タフネスが評価される世界となるので、自己アピールに織り交ぜるとよいでしょう。

また入社後に目指せる資格には、「葬祭ディレクター」という資格があり、会社によっては資格手当てがつくこともあるので取得する人が多いようです。

資格取得には、2級は2年以上、1級は5年以上の葬祭実務経験が必要となります。

就職の志望動機で多いものは

葬儀業界への志望動機では、実際に葬儀屋さんにお世話になった自分の体験談を書く人が多いようです。

「家族が亡くなったときに対応してくださった葬儀屋さんの対応が、温かくて救われました」
「葬儀屋さんに助けてもらいながら無事葬儀ができ、この仕事に興味を持ちました」

など自身の経験を織り込むことで、説得力のある志望動機になるでしょう。

人の死に関わる仕事なので、デリケートな部分にも配慮した、立ち居振る舞いが求められるため、やる気に満ちた熱意ではなく、セレモニーにあう厳かな気持ちを伝えるとよいでしょう。

また葬儀会社では遺族への挨拶状などの文書作成が日常的に多いため、誤字脱字にも敏感です。

誤字脱字はもちろん、言葉使いに間違いがないかも注意する必要があります。

葬儀業界の転職状況

転職の状況

転職状況は、大企業から中小企業まで多くの募集がされています。

募集職種は「葬祭ディレクター」「セレモニースタッフ」の募集が多く、「経理事務」「一般事務」「調理」「納棺師」など、幅広い募集があり、基本的に学歴不問の会社が多いようです。

企業によっては、「マーケティング企画」「SE」の募集がされている企業もあります。

ほかの業界に比べて、異業種からの転職も積極的に受け入れてくれる業界といえるでしょう。

転職の志望動機で多いものは

志望動機で多いものは、葬儀で関わった自身の経験を織り交ぜる方が多いです。

「母が亡くなったことで地元に戻ってきましたが、葬儀のときにサポートしてくださった葬儀屋さんの存在が忘れられず、この仕事に興味を持ちました」

など経験談を加えることで、なぜこの業界に興味を持ったのか、葬儀業界を目指しているのかををきちんと伝えられます。

転職で募集が多い職種

転職で募集が多い職種は「葬祭ディレクター」「セレモニースタッフ」「納棺師」などです。

そのほか「事務」「調理」「生花スタッフ」「ドライバー」などの幅広い職種も募集されています。

企業や募集時期によっても異なるので、転職サイトなどを使って確認してみましょう。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

葬儀業界では未経験でも転職することが可能で、異業種からの応募も歓迎されやすい業界です。

業界内で転職する人も多く、葬祭ディレクターの資格があれば、他企業にも転職しやすいでしょう。

有能な葬祭ディレクターは、ヘッドハンティングされる場合もあるようです。

未経験の場合に評価されるスキルの一つは、ご遺族の気持ちに寄り添えるホスピタリティが必要になるので「接客経験」です。

またパソコンを使うことが多いため「事務経験」、葬儀はいずれかの宗派に則って行うため「宗教法人や団体の仕事」をしていた経験も、転職の際のアドバンテージになります。

たとえば「納棺師」は専門学校で納棺について学ぶこともできますが、入社後に研修を受けてノウハウを学ぶことが多いです。

また「セレモニースタッフ」は、若手よりも人生経験豊富な40、50代の方が歓迎されやすいといわれています。

葬儀業界の有名・人気企業紹介

燦ホールディングス株式会社

燦ホールディングス株式会社は、葬儀業界シェア最大手の企業で、首都圏、近畿、鳥取、島根に業務展開しています。

グループ会社のスケールメリットを活かして、葬儀に関する清掃、料理の仕出しまで関連企業で行なっているのが特徴です。

またライフスタイルの多様化に合わせて、社葬、お別れの会、家族葬、簡易型の低価格葬までさまざまなプランを提供しています。

燦ホールディングス株式会社 ホームページ

株式会社ティア

株式会社ティアは、葬儀業界2位のシェアを誇る企業です。

中部、関東、関西エリアに業務展開していて、年間15,000件の葬儀実績を持ちます。

予算や希望に合わせた柔軟な対応や、明朗な価格体系、「生前見積もり」が評価され、多くのメディアでも取り上げられています。

株式会社ティア ホームページ

東京博善

東京博善は葬儀業界第3位のシェアを誇る、東京都内に6つの斎場を持つ企業です。

式場ではなく火葬場を運営していて、お通夜、葬儀、告別式、七日法要まで行うことができる総合斎場として利用されています。

少人数のお別れ会から、大人数の規模まで対応可能で、東京の火葬場=東京博善というほど圧倒的なシェアを持ちます。

東京博善 ホームページ

葬儀業界の現状と課題・今後の展望

競争環境はさらに激化する見込み

葬儀業界は高齢化の影響で、葬儀の需要はこれからも増えていくことが予想されているため、市場は今後も堅調な成長が見込めるでしょう。

しかし許認可制度がないことから異業種からの参入がしやすい葬儀業界は、新規参入のチャンスといわれています。

そのため近年では異業種からの参入が多く、葬儀の需要は増えるものの、競争環境は今後も激化すると予想されているのです。

最新の動向

近年は厳格な儀式の意味をもつ葬儀を行うよりも、明確明瞭な料金表示、シンプルな葬儀スタイルが求められています。

それに伴い、大手企業だけでなく、地域密着型で多彩な葬儀を提案してくれる中小企業にも人気が集まり、葬儀のスタイルも多様化してきました。

また葬儀会社は表立った広告を打ち出しにくい性格がありますが、Webによる集客を確立するため、IT分野に力を入れている企業もあります。

業界としての将来性

業界としての将来性は、葬儀の需要の増加が予想されることから、安定しているでしょう。

しかし好調であっても売り上げは横ばいとなっていて、葬儀のシンプル化が「葬祭単価の低下」をもたらしていることが課題です。

堅調に見える葬儀業界ですが、需要の増加があっても増益に直結しないこと、異業種からの参入が増えていることから、競争激化は避けられないでしょう。

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