NPO法人とは? 給料が出るしくみは?企業との違いや設立方法も説明
NPO法人は全国に約5万ほどあり、公益性のある社会貢献活動を行っています。
この記事では、NPO法人と一般企業やNGO、ボランティアとの違いや平均年収など、NPO法人に関する情報を総合的にまとめています。
NPO法人とは
NPOとは「Non Profit Organization」の頭文字をとったもので、日本語では「非営利団体」と呼ばれます。
NPOには以下の要件があります。
- 民間であること
- 公益に資するサービスを提供すること
- 営利を目的としないこと
- 団体であること
上記4つを満たしたものがNPOと認められ、さらに、NPOの中でも「法人」として認められている団体を「NPO法人」と呼びます。
NPOの種類
NPOには、上の図の通り、所轄庁(都道府県や政令市)からの認証を得た「NPO法人」と、NPO法人の中でも基準を満たした「認定NPO法人」があります。
NPO法人として認証を得る方法は次の章で解説しています。
認定NPO法人になると、税金の優遇措置を受けることができます。
NPO法人を設立するには
「特定非営利活動促進法(いわゆるNPO法)」に基づき、法人格を取得したNPO団体を「NPO法人」といいます。
NPO法人の特定非営利活動として認められているのは以下の20個です。
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
NPO法人を設立するには、法律に定められてい書類を所轄庁(都道府県など)に提出して認証を得る必要があります。
認証を得るための基準は以下の通りです。
- 特定非営利活動を行うことを主たる目的とすること
- 営利を目的としないものであること
- 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと
- 役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下であること
- 宗教活動や政治活動を主たる目的とするものでないこと
- 特定の公職者(候補者を含む)又は政党を推薦、支持、反対することを目的とするものでないこと
- 暴力団又は暴力団、若しくはその構成員、若しくはその構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制の下にある団体でないこと
- 10人以上の社員を有するものであること
内閣府NPOホームページ「特定非営利活動(NPO法人)制度の概要」
NPOの多くは、法人格を持たない任意団体として活動しています。
実際、任意団体として長く活動し、さまざまな成果を挙げているNPOはたくさんあります。
一方、法人格を取得すると法的・社会的な位置づけが明確になるため、以下のようなメリットがあります。
- 法人名で不動産登記ができる
- 銀行口座を法人名で開設できる
- 社会的認知度や信用度が増す
ただし、法人の運営や活動について記載した事業報告書の提出をはじめ、外部に情報公開しなければならないなどの義務が発生します。
そのため、NPOの多くは団体の活動目的や規模などを考慮したうえで、法人になるか、それとも任意団体のままでいるかを決めているようです。
NPO法人を設立する方法については以下の記事にまとめています。
NPO法人と企業の違い
NPO法人と企業は、下の図の通り、得られた利益の分配方法に違いがあります。
NPOが非営利である一方、企業は営利組織です。
一般的な会社は、事業を行うことによって得た利益を、出資した株主に配当したり、従業員の給料にしたりします。
もちろん、ただ利益を追い求めるだけでなく「社会のために」というミッションを掲げて事業を展開する企業もたくさんありますが、実際には企業の場合、利益が上がる見込みのないサービスを提供することは難しいのが実情です。
一方、非営利団体であるNPOの場合は、企業では扱いにくいニーズに対応する活動を自発的に行いやすいという特徴があります。
このように話していくと、「非営利のNPOは、収益を上げない組織」と認識されることがありますが、これは誤解です。
NPOは、決して利益を出さないわけでも、無償で活動するわけでもありません。
NPOも、組織運営や事業を継続させるためには資金が必要となりますし、その団体で働く人に対して給料も支払っています。
そのため、日ごろから寄付を集めたり事業収入を得たりして利益を出す努力をしています。
しかし、そもそも非営利という言葉は、「上げた収益を構成員で分配しない」という意味を持っています。
つまり、企業の場合は得た利益を株主や役員に分配するのに対し、NPOで利益が出た場合には、それを次年度以降の特定非営利活動に係る事業にあてるということになります。
NPO法人とNGOとの違い
NPO法人とNGOそれぞれの特徴をまとめたものが、以下の図です。
NPO | NGO | |
正式名称 | Non Profit Organization(非営利団体) | Non Governmental Organization(非政府組織) |
対象 | 子どもの虐待・地域活性化等の国内の問題に取り組むことが多い | 貧困・紛争など国際的な問題に取り組むことが多い |
活動例 | ・学校に通えない子供向けフリースクール運営 ・貧困家庭への食事提供 ・地域の自然保護活動 | ・災害・紛争地域での支援 ・難民の保護活動 ・感染症の対策 |
NGOとは、「Non Governmental Organization」、日本語では「非政府組織」と訳されます。
政府とは異なる民間の立場で国際的な問題に取り組む団体を指します。
国際的に有名なNGO団体には「国境なき医師団」や「SAVE THE CHILDREN」などがあります。
NPO法人もNGOも非営利・非政府という立場である点は共通しています。
日本では、NPOは主に国内で活動をする比較的小さな組織のことを、NGOはグローバルな活動をする比較的大きな組織のこと、と呼び分けていることが多いです。
NGOとNPOの違いは?
NPO法人とボランティアとの違い
NPO法人とボランティアの特徴をまとめたのが、下の図です。
NPO活動 | ボランティア活動 | |
組織 | 組織(団体) | 個人 |
報酬 | 有給である場合が多い | 無報酬の場合が多い |
活動目的 | 社会的使命を達成することを第一とする | 自由性が高く、個人の自己実現としても行われる |
収益 | 組織運営、社会課題解決のために収益を得る | 原則としてなし |
NPOの活動は「非営利」ではありますが、職員には給与が支払われます。
NPO法人と一般的な法人(企業)との違いで述べた通り、NPOは利益を生んでも株主や働いている人に分配せず、次のNPO活動の資金にします。
一方、ボランティア活動は「無報酬」です。
収益を生むことを目的とせず、善意での活動になります。
その分、ボランティアは活動の幅が狭まりますが、個人単位で気軽に活動を始めることができます。
NPO活動とボランティア活動の違い
NPO法人の給料
NPO法人の給料は株式会社や公務員と比べて5割~7割程度といわれており、福利厚生や退職金などは、ほとんどないのが実情です。
ここからは、NPO法人の給料の平均と、給料がどこから出ているのかの仕組みについて解説します。
NPO法人の平均年収は260万円
- 平均年収:260万円
- 10~99人の企業の年収:336万円
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.139 NPO法人の活動と働き方に関する調査(団体調査・個人調査)」
上記によると、NPO法人で働く人の平均的な年収は260万円で、一般的な企業で働く人の年収336万円よりも低くなっています。
NPO法人では、大手企業のような収入を得ることは難しいかもしれませんが、「世の中のために役にたつことがしたい」という思いから、NPO法人を就職先の選択肢に入れる若者もいるようです。
NPO法人の給料はどこから出ている?
NPO法人は、「非営利」ということから、給料がどこから支払われるのか疑問に思う人もいます。
NPO法人の収入源は大きく分けて6つあります。
NPO法人の収入源として最も多いのが事業収入や地方自治体からの業務委託から得られる収入です。
NPO法人の活動で生み出された利益で自立した運営がなされているところも多く、こういったNPO法人は一般的な企業としくみはほとんど同じです。
このように、NPO法人で働く人の給料は、必ずしも寄付金などに頼っているわけではありません。
NPO法人の給料について詳しくは以下の記事をご覧ください。
20代で正社員への就職・転職
NPO法人に就職するには
この章では、NPO法人で働くにはどのような方法があるのかを解説していきます。
NPO法人に就職する方法は?新卒採用はある?
NPO法人は全国に約5万ありますが、そのほとんどがボランティアとして活動しており、代表の1名もしくは数名で活動している小規模な団体が多いです。
このようなNPO法人では、新規で人材を募集することは少ないです。
求人を出す可能性が高いのは、比較的規模が大きく、収益で事業を継続しているNPO法人です。
このようなNPO法人に就職するには、大きく分けて2つの方法があります。
- NPO法人のホームページで求人を探す
- 転職サイトや転職エージェントで求人を探す
NPO法人のホームページで求人を出してれば、直接応募することができます。
大手の転職エージェントであれば、事業として運営している比較的規模の大きなNPO法人を紹介してもらいやすいメリットもあります。
また、NPO法人の新卒採用は非常に少ないです。
NPO法人は資金的に余裕がなく、即戦力となる中途採用が一般的だからです。
新卒でNPO法人に入りたい人は、下記で述べるインターンでつながりを作ったり、SNSなどで募集を見つけたりするなどの工夫が必要です。
NPO法人に就職したい方は以下の記事も合わせて読むことをおすすめします。
NPO法人でインターンシップはできる?
NPO法人の中には、インターンを募集していることがあります。
インターンでは学生が学校と両立しながらNPO法人での仕事を実践的に学ぶことができ、就職活動の前にやりたい仕事を見つけることにもつながります。
将来、NPO法人で働いてみたい、社会貢献活動に興味があるという方は、まずはインターンで実際の仕事を体験してみると良いでしょう。
NPO法人でのインターンについては以下の記事もご覧ください。
「NPO法人とは」まとめ
NPO法人とは、「Non Profit Organization(非営利団体)」の中でも法人として認められている団体です。
NPO法人は国が定めた非営利活動を行いますが、事業活動を通して収益を上げているNPO法人も多いです。
一般の法人(企業)と異なり、NPO法人は得た利益を次の活動資金にします。
NPO法人の給料は一般企業よりも少ないことが多いですが、「社会に貢献したい」と考える人にとって大きなやりがいを感じられる仕事ができるでしょう。
30秒でわかる!転職サービス診断
-
20代・第二新卒・既卒の転職支援サービス:Re就活エージェント(PR)
-
未経験OK! IT・Web業界に特化:マイナビITエージェント(PR)