ネット広告業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説

ネット広告業界とは
ネット広告業界とは、ネット広告を提供するために、広告出稿元の企業と広告枠を持つ企業との間を結ぶ代理店や、そこに携わる映像制作などの外部協力会社などをいいます。
通常の広告では、広告元の企業はマスメディアと言われるテレビやラジオ、新聞、雑誌などに対して広告掲載を希望し、その間を取り次ぐのが代理店の役割でした。
しかしインターネットでは多くの広告枠の保有者がおり、広告の種類も多岐に渡っているため従来の広告会社とは別の枠組みで広告活動が行われています。
ネット広告代理店と呼ばれる企業からの広告の相談を受ける仕事や、メディアレップという広告枠を販売・あっせんする会社などが広告元と広告枠の提供企業を仲介することで多くのメディアの中から最適な広告を行います。
まだまだ若い業界であるため、働く人も若い人が多く、マスメディアからネットに情報収集の方法がシフトしてきていることもあって、今後も成長性の高い業界です。
ネット広告業界の役割
ネット広告業界の役割は適切なネット広告の提供にあります。
適切なネット広告とは、広告の目的としている成果を生み出すために、適切なターゲットに適切な方法(経路)かつ適切な手法で広告を行うことで、加えてそれが低コストで行われることです。
インターネット広告では、どういった層に対して広告を打つかをある程度絞り込むことができるため、同じ商品の広告でも年齢や性別が違えば異なる広告を打つことが可能です。
そのため、ネット広告業界では広告出稿元の考えをよく聞いて、その目的達成のために最適な方法を提案する力や、目的通りの反応を引き出す演出力も求められます。
人々の購買活動におけるSNSの影響も強まっていることから、SNSを利用した広告も含めて多様な方法と広告戦略を提供し、広告の専門部署を持たない企業でも上手に広告ができるようにサポートすることも大切です。
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ネット広告業界の企業の種類とビジネスモデル
大手企業
ネット広告業界の大手企業は、広告の企画・提案から、最適な広告枠を購入する「メディアレップサービス」までをグループ会社で一貫して提供しています。
反応の良い広告運用のノウハウを有するだけでなく、自社でもメディアサイトやゲーム事業を行うなど、インターネット広告と連動性がある事業を積極的に行いながら、海外進出を行って市場の拡大を目指しています。
ネット広告業界の大手企業は、サイバーエージェントやデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムなどがあります。
中堅企業
大手の中には提携企業や親会社に大手広告代理店を持つところが多いですが、中堅クラスの企業ではインターネット広告の始まった頃から参入している企業が多く、広告運用やクリエイティブの作成などインターネット広告の枠組みの中で強みを発揮しています。
広告の質を高めることや、コンサルティング、広告・ウェブマーケティングのためのツールやレポートの提供などに力を入れている企業が多いです。
セプテーニやオプトなどが有名です。
アフィリエイト関連企業
アフィリエイト広告としてバナー広告や動画広告を、個人や組織で運営しているブログなどに提供するのがアフィリエイトサービスです。
アフィリエイト関連企業はファンコミュニケーションズやインタースペースなどの有力企業を中心に統合が進んできています。
こうした企業では、集客力のあるサイトを持つアフィリエイターとの関係作りや、アフィリエイターや広告元企業が成果を出すために有効なレポートやコンサルティングを提供しています。
中小企業
ネット広告業界の中小企業は非常に多く、顧客向けの広告コンサルティングを行っている企業や、広告用の動画やバナーの作成などを主に手がけるクリエイティブ専門企業などそのタイプはさまざまです。
上記の大手企業や中堅企業の出身者が独立して創業し、所属していた企業の下請けや外部協力会社として仕事を受注するケースも多くなっています。
ネット広告業界の職種
ネット広告業界は業務範囲が広いため、多くの人が携わっています。
特に特徴的な職種について紹介します。
営業
ネット広告業界の営業職は、主に広告主の獲得のために活動します。
広告の提案や、自社の提供サービスの訴求、コンペでのプレゼンテーション、顧客ニーズを企画やクリエイティブに伝えたりといった業務を行います。
SEOやSEMのコンサルタントを兼務し、顧客のデジタルマーケティングに対してソリューションを提案する営業職も多くなっています。
企画
企画職はネット広告業界でも特に忙しい職種のひとつです。
営業が取ってきた案件に対して広告企画を考え、広告制作のチームを作ってマネジメントする所までをこなす場合も多く、納期やコンペの前は夜遅くまで業務に追われることも少なくありません。
広告の質を左右し、企業の競争力につながる職種だけにやりがいも大きい職種です。
クリエイティブ職
クリエイティブ職は、広告のデザインや動画撮影などを行うデザイナー職です。
デザインソフトを使った広告素材の作成がメインですが、時には自らカメラやビデオカメラを持って写真や動画の元素材をを撮影するなど質の高い制作物作りのために活動します。
広告枠の大きさや種類により、広告の訴求力や見せ方が変わってくるため、インターネット広告の種類についての理解も重要です。
エンジニア職
ネット広告は分析のためのデータを得やすく、そのデータ取得や効率的に集計・分析を行うシステムを運用して自社や顧客先で利用している企業も多いです。
また、広告配信を手がけたり、自社でメディアを運営している企業では、そのシステムの管理や新規の機能開発などを手がけるなど、エンジニア職は企業の事業によってさまざまな仕事があります。
ネット広告業界では、エンジニアに問われる技術はさまざまですが、いずれも提供するサービスの基礎を支える重要な職種です。
ネット広告業界のやりがい・魅力
業界と共に成長することができる
ネット広告の分野は、電通の「日本の広告費」2018年版ではインターネット広告費は1兆7,589億円となっており、毎年2桁以上の成長率で推移しています。
成長を続けるネット業界では規模が大きくなるだけでなく、広告手法や流行、広告枠の提供元における広告ロジックなどが刻々と変化しています。
こうした変化に対応する中で、インターネットや広告に関する知見や技術を磨き、自身も成長を実感することができる業界です。
残業になることも多いが、収入も比較的多く女性も働きやすい
インターネット業界では、職種を問わず残業も多く、かなり遅い時間まで働いている人も少なくありません。
短期間で成長できる一方で、体力的にハードに感じる時もあるかもしれません。
業界が成長を続けていることや、効率化を大切にしている企業が多いこともあって、一人あたりの年収は平均よりも高めになっています。
しかし、同じ広告を扱う事業でも、電通や博報堂といった総合広告代理店と比較するとその年収はさほど高くはありません。
インターネット広告は需要は高いものの単価が安いことが影響していると考えられます。
業界全体として若い人が多く、男女比もさほど差はないため、女性でも働きやすい業界です。
業界の将来性は安泰も、プレイヤーは減る可能性
インターネット業界はインターネットの影響力がより高まると予想され、需要は今後も安定すると見られます。
しかし企業単位で見れば、大手によるM&Aなども活発になり、広告の分析やシステムの提供に資本力と高度な技術とが求められるようになってきているため、中小企業を中心に企業数は減っていくと予想されます。
知識や技術に強みがある企業や個人はネット広告業界で生き残ることができますが、特別な強みがなければかなり厳しい状況といえるでしょう。
ネット広告業界の雰囲気
ネット広告業界は、先進的な風土の企業が多く、幹部社員を含め従業員は若い人が多くを占めるのが特徴的です。
また、オシャレで清潔なオフィス環境を備えた企業も多く、コミュニケーションが自然に促され、職場の中で余計なストレスを抱えないようにとの工夫が職場の随所に見られます。
仕事熱心でも遊び心のある人が多く、真剣なミーティングの中でも笑いが起こることも少なくありませんし、プロジェクトで多くのメンバーと関わるために、営業や企画を中心に社内のコミュニケーションが活発で明るい雰囲気があります。
エンジニア職やクリエイティブ職では、パソコンやスマホ、タブレットなどに向かって黙々と作業が行われますが、打ち合わせや休憩時間の時にはコミュニケーションも盛んに行われおり、メリハリのある仕事ぶりが見られます。
ネット広告業界に就職するには
就職の状況
ネット広告業界は、先進的な雰囲気と若い社員が活躍している様子から、学生からの人気が高い業界です。
ネット広告業界では、大手企業や中堅企業では定期的に新卒の採用を行っていますが、中小企業の多くは即戦力になる業界経験者を中心とした中途採用が主です。
ただし、規模が大きな会社ではなくとも、大手企業のグループ会社の場合は将来の企業の成長を見越して新卒採用も積極的に行っている場合があるため、チャンスは十分にあるといえます。
基本的に総合職は四大卒以上の学歴が求められることが多いですが、一般事務職やクリエイティブ職、エンジニア職については高卒や未経験者の採用も行われています。
就職に有利な学歴・大学学部
就職にあたっては、四大卒であればハードルになる問題はありません。
多くの職種では、専門学校や短大卒、高卒でも就職が可能です。
クリエイティブ職では特に専門学校でデザインを学んできた人、エンジニア職では情報工学系の学部や専門学校、高校の出身者が知識や技術の面で有利でしょう。
業界の特徴として、大手でもベンチャーのような気質があり、業務に関連する特別なスキルや実績があれば学歴を問わずに採用される可能性もあります。
もしも飛び抜けた才能がある分野があれば、それを武器に挑戦してみても良いでしょう。
ネット広告業界は人気が高いため競争率も高く、学歴よりも個人の能力や適性が重要視される傾向が強いです。
そのため、広告やインターネットについてよく学んでからチャレンジすることをおすすめします。
就職の志望動機で多いものは
ネット広告業界は成長している業界であることから、将来性に期待しての志望動機や、先進性や技術に関するものが多く見られます。
また、「広告を通して社会を変えたい」という志望動機も多く見られますが、「総合広告代理店でなくなぜネット広告なのか」という点についての考えが不十分な場合も多いので注意が必要です。
ネット広告業界では広告における環境の移り変わりも激しく、先進性が求められる傾向があるため、常に新しいことを学び挑戦する姿勢が大切です。
魅力的な業界であるだけに、企業の長所をとりあげて志望動機にしたくなりますが、自分との相性の良さを表すことを忘れないようにしましょう。
ネット広告業界の転職状況
転職の状況
ネット広告業界の転職にあたっては、営業職やバックオフィス業務、またエンジニア職、クリエイティブ職の募集が多くなっています。
大手では成長が続いているために人手が不足しているケースが多く、ある程度若い人であれば男女問わず未経験でも採用しています。
中途である程度の年齢になると専門性が問われますが、業界経験者や各職種で専門的な経歴や実績のある人であれば即戦力でかつ若い従業員のリーダーとしても期待され、高待遇で採用されることもあります。
転職の志望動機で多いものは
転職の志望動機としては「成長分野で働きたい」「将来性がある若い会社で能力や経験を活かしたい」といったものが、他業界の経験者で多く見られます。
同じ業界からの転職では「企業の事業内容やサービスに魅力を感じている」というケースが多く、企業の事業展開やサービスに興味を持っている人も多いです。
ネット広告業界は独特の雰囲気があるため、他業界からの転職者の場合はスキルだけでなく相性や適性も重要視されますので、企業の雰囲気を良く理解してから検討しましょう。
転職で募集が多い職種
転職市場では、営業職や事務職、総務職などのバックオフィス業務などが多く、エンジニア職やクリエイティブ職も大手では求人があります。
人材会社を通して紹介してもらえることも多く、派遣会社から紹介予定派遣で入社できる場合もあります。
企業サイトで中途採用を通年で出している企業もありますので、気になる企業があればまずは企業サイトで求人がないか探してみると良いでしょう。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
中途採用の場合、大手では未経験でも採用されることがありますが、中小企業だとかなり厳しい状況です。
特にクリエイティブの仕事はフリーランスの活用が増えているため、今後、正式な求人は減っていく可能性があります。
一方、高い専門性やチームのリーダー経験があればプラスに働く可能性があり、クリエイティブの責任者候補として採用されるかもしれません。
エンジニア職ではどの技術分野でも求められるスキルはやや高度で、特にサーバーやネットワークなどクラウドを含めたインフラ周りのスキルや、オープンソースを扱う知識があれば高く評価されます。
ネット広告業界の有名・人気企業紹介
サイバーエージェント
1998年創業、設立。連結売上高4,195億円、従業員数4,961名(連結・2018年9月期)
ネット広告業界のトップ企業で、ネット広告の他にもAmebaブログやAbemaTVといった独自のメディア事業、ゲーム事業などの育成に取り組んでいます。
近年は海外に子会社を作っており、広告ノウハウの海外展開や諸外国向けのノウハウ構築にも積極的です。
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム
1996年創業。2016年設立。連結売上高2,083億円、従業員数2,584名(連結・2018年6月末時点)
広告代理店大手の博報堂のグループ会社で、SEMで国内有数の実績を持つアイレップを傘下に持ち、インターネット広告からデジタルマーケティングまでトータルでサポートしています。
海外にも多くのグループ会社を持ち、連携してさまざまな媒体での広告を提供しています。
オプトホールディング
1994年創業。1995年設立。売上高872億円、従業員数1,627名(連結・2018年12月期)
インターネット広告事業を中心に行い、特に不動産・金融分野に強い特徴を持ちます。
インターネット広告にとどまらず、マーケティングのデジタルシフトや人材開発など、マーケティング全般をサポートする方向で事業展開を行っています。
ネット広告業界の現状と課題・今後の展望
競争環境(国内・国外)
国内ではネット広告市場が堅調に拡大していますが、ネット広告企業は大手が積極的にM&Aを仕掛けており、中小規模の企業が統合される傾向が見られます。
大手は広告代理店と協力し、オフラインの広告も可能な体制を作っており、クロスチャネル・オムニチャネルを意識した提案ができる体制で広告提案の幅を広げており、中堅以下の企業との差別化を行っています。
また、海外ではインターネットやスマホの普及が進む国がアジアを中心に多く、インターネットによる購買活動や広告の市場は参入余地が高いとして大手を中心に国内企業が参入を始めているところです。
最新の動向
広告効果の測定や分析を助けるシステムを提供している企業では、AIやビッグデータを利用してより精度を高める研究が引き続き行われています。
また、外部にシステムを提供している企業ではサービスのクラウド化が進められており、クラウドサービスの効率的な管理に向けた改善が行われています。
サービスの効率化や機能追加、新規事業のために、オープンソースやAPIなどを利用した新しいシステムの研究が行われ、企業の競争力につながっています。
業界としての将来性
国内のネット広告は順調に成長しているものの、今後はインターネット広告に関して新たな市場拡大を見込める領域が少なく、徐々に頭打ちになることが予想されます。
そのため、インターネット広告だけでなく多方面に事業を拡大する企業が大手を中心に増えている状況です。
海外ではインターネットやスマホなどの端末が普及が今後進む地域もまだまだ多く、進出することで新たな市場開拓が可能であるため、現地企業との競争に勝つことができれば市場を獲得して大きな成長を期待することも可能です。
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