IT業界(読了時間:13分5秒)

IT業界とは

IT(information technology)とは、日本語で「情報技術」を指します。

具体的には、銀行の金融システムや携帯会社の通信システムなど、コンピュータやネットワークを用いた「情報システム」や「情報サービス」がITとして扱われています。

また、スマホの登場により近年爆発的に普及した「インターネットサービス」や「Webサービス」も広くはITに含まれてきます。

そのようなITを用いてビジネスを行う業界が「IT業界」となります。

IT業界の歴史は意外にも古く、コンピュータの普及が始まった1970年代80年代にも、ITシステムをつくりあげるIT企業は存在していました。

そして1990年代後半~2000年前半の間に、コンピュータやインターネットの技術が目覚ましく進化し、IT業界もそれに伴い大きく成長していきます。

「IT」という言葉が世間一般に浸透したのも、ちょうどこの頃です。

その後、「ITバブル崩壊」などと危惧されたこともありましたが、IT業界は引き続き成長を続け、2010年以降も伸び調子が続いています。

今後は「ビッグデータ」「IoT」「人工知能」「ロボット」などの先端分野において、新たなITニーズも生まれるといわれています。

IT業界はまだまだ将来性が期待できる、伸び盛りの業界です。

IT業界の役割

私たちが普段スマホで使うWEBサービス、はたまた交通システムや通信システムといった巨大なインフラシステムまで、ITはさまざまな場所で活用されています。

ITを用いて、より便利でより快適な社会を造り上げていくことがIT業界の役割です。

しかしITは便利であると同時に、「データ漏洩」や「サイバー犯罪」などのリスクも生じます。

したがって、セキュリティ面を強化し、より安全なITを提供していくことも、IT業界に課せられる役割です。

あらゆるものがITネットワークで繋がろうとしているこれからの時代において、セキュリティ面はこれまで以上に重要視されていくでしょう。

IT業界の企業の種類とビジネスモデル

IT業界の一般的なビジネスモデル

IT業界では、SI(システムインテグレーション)と呼ばれるビジネスが行われています。

SIとは、クライアントとなる国・企業・団体などからITシステムの構築案件を受注し、システムエンジニアやプログラマーを動員してシステムを造り上げる、一種のコンサルティングビジネスです。

またSIとは別に、自社でソフトウェアやITサービスを開発し、コンシューマーに向け提供するビジネスモデルもあります。

いずれにおいても、一つのITシステムやITサービスを造るには沢山の人員と時間が必要となり、巨額のお金が動きます。

SI企業

SI企業の例としては、「NTTデータ」「日本ユニシス」「アクセンチュア」「日立ソリューションズ」などが挙げられます。

これらの企業は、クライアントからITシステムの構築案件を受注しシステムを造り上げる、SI(システムインテグレーション)を主事業としています。

建築業界のようなピラミッド構造が浸透しており、1次請けで受注するSI企業もあれば、2次請け3次請けで受注するSI企業もあります。

なお「NTTデータ」「日本ユニシス」といった大手企業は、1次請けとなることが多いです。

ソフトウェアメーカー

ソフトウェアメーカーの例としては、「Microsoft」「トレンドマイクロ」「日本オラクル」「オービック」などがあげられます。

これらの企業は、IT系ソフトウェアを自社で開発し販売する「メーカー」です。

たとえば日本オラクルは、データベース管理ソフトの「オラクルシリーズ」、トレンドマイクロはセキュリティ管理ソフトの「ウィルスバスターシリーズ」を開発し販売しています。

Web系企業

WEB系企業の例としては、「Google」「Yahoo!」「LINE」「DeNA」「サイバーエージェント」などがあげられます。

これらの企業は、主にインターネット・Web系の分野で事業を展開しているIT企業です。

たとえば最大手の「Google」は、インターネット広告やインターネットメディア運営に始まり、スマホに搭載される「Android」OSの開発、更にはITを使った自動運転技術の開発まで、幅広い事業を手掛けています。

IT業界の職種

ITシステムやITサービスを作るには、たくさんの人の力が必要になり、職種もさまざまなものが用意されています。

ここでは、IT業界の特有の職種のうち代表的なものを紹介します。

システムエンジニア

「システムエンジニア」は、ITシステムの要件定義・設計・構築・テストなどを行う職種です。

幅広いIT知識を活用し、「どのようなシステムにするか」を考えていきます。

システムを設計するには、周囲のプロジェクトメンバーと擦り合わせや意志疎通が必要不可欠になるため、技術的スキルだけでなくコミュニケーション力も問われる職種です。

プログラマー

「プログラマー」は、ITシステムに搭載するプログラムの要件定義・設計・プログラミング作業・テストなどを行う職種です。

メインとなるプログラミング作業には、プログラミングの知識だけでなくセンス的なものも求められるため、適性も問われる職種です。

またプログラマーにおいても、要件定義や設計の工程では、周囲のプロジェクトメンバーと擦り合わせが必要となるため、コミュニケーション力も求められてきます。

プロジェクトマネージャー

「プロジェクトマネージャー」は、開発プロジェクトや開発チームを纏め上げる、IT業界の管理職です。

プロジェクトのスケジュール管理・人員管理・コスト管理・課題管理などのマネジメント業務を行うこととなり、大きなプロジェクトであれば何百人ものエンジニアを纏めることもあります。

システムエンジニアやプログラマーとして現場経験を積んだベテランの社員が、プロジェクトマネージャーに任命されるのが一般的です。

IT営業

「IT営業」は、IT業界における営業職です。

ITシステムの新規案件の受注交渉、エンジニアの派遣交渉、自社ソフトウェアの販売営業などを行います。

基本的にはBtoBの法人営業となり、営業相手は同じIT業界の企業となるケースが多いです。

またIT営業の場合、営業スキルだけでなく、IT分野の技術的知識も必要になってきます。

IT業界のやりがい・魅力

高収入な業界である

IT業界は、大手企業であれば平均年収が1000万円を越える企業も多く、給料水準は高めです。

IT系の難易資格を取得すると「資格手当」として上乗せされ、プロジェクトマネージャーなどになると「役職手当」も上乗せされるため、努力次第で高収入を目指せます。

さらに良くも悪くも残業の多い業界のため、「残業手当」も収入として期待できます。

高収入を目指したい人にとっては、魅力的な業界といえるでしょう。

手に職のスキルが身に付く

IT業界で働くと、システム・ネットワーク・データーベース・セキュリティ・プログラミングなど、IT分野の幅広いスキルや知識が日に日に身に付いていきます。

IT業界は技術スキルが物をいう業界でもあるため、身に付けたスキルは財産となり、将来的にも役立ちます。

十分なスキルを身に付ければ、「大手企業や外資系企業から引き抜かれる」、「フリーランスとして活躍できる」、「定年後にもエンジニアとして再雇用される」など多彩な道も描けてきます。

そのような手に職のスキルが身に付くのもIT業界ならではの魅力です。

都会で働ける

IT企業の本社や事業所の多くは、東京・名古屋・大阪・福岡などの都心部に集中しています。

開発プロジェクトに常駐して働く場合も、プロジェクトルームは都心部に設けられることが多いです。

したがって、他の業界よりも都心で働く機会に恵まれています

新卒入社直後から都心勤務になることも多く、都会で働きたい若者にとってはうってつけな業界といえるでしょう。

IT業界の雰囲気

IT業界は「残業」が多いことでも有名な業界です。

特に納期前や障害発生時には残業が発生しやすく、職場によっては連日のように終電帰りが続くこともあります。

社会的に残業が問題視される中、以前から比べると改善されてきてはいるものの、それでもIT業界では「残業は当たり前」、「残業は致し方ないもの」という風潮がまだまだ残っています。

長時間の残業が原因で「うつ病」を患う社員も一定数いる業界であるため、残業については頭に入れておいた方がよいでしょう。

またIT業界では、システムエンジニアやプログラマーはもちろん、営業職などにおいても「論理的思考」が強く求められます。

常日頃から物事を論理的に考えられる人にとっては向いている業界といえます。

逆に直感的な考え方、非論的な考え方をする人にとっては少々不向きな業界といえるでしょう。

IT業界に就職するには

就職の状況

IT業界の多くの会社は、新卒者を対象とした定期採用を行っています。

大手であれば、毎年150人〜200人程度の新卒社員を採用しています。

新卒採用の場合、システムエンジニアやプログラマーを目指す「エンジニアコース」と、営業職や企画・マーケティング職を目指す「営業職コース」の大きく2コースで募集されることが多いです。

企業によっては「総合職」として募集をし、目指す職種に関しては、入社後に適性に合わせて決定されることもあります。

コンピュータやITが身近になった現代において、IT業界に興味をもつ若者は多く、理系学生文系学生両方から安定した人気があります。

しかしITニーズが増加しているのに対し、若者人口や学生人口そのものが減少傾向にあるため、なかなか若手社員が集まらず人手不足に陥っているIT企業も増えてきています。

特に中小のIT企業では人手不足が目立ってきています。

したがって、大手のみに拘らず中小企業も視野に入れれば、比較的就職しやすい業界といえるでしょう。

就職に有利な学歴・大学学部

大手IT企業の場合、学歴は4年制大卒以上としている会社が多いです。

中小IT企業の場合、短大卒や専門学校卒も含める会社が多く、中には高卒までを対象としている会社もあります。

IT業界の就職で有利になる学部は「情報技術」や「情報処理」系の学部です。

ただしIT業界では、入社時点においてはそこまで専門的な知識やスキルは重視していません。

特に新卒の場合、入社後に一から育成していくことを前提としていますので、出身学部はあまり関係なく人物重視で採用することが多いです。

実際に文系学部出身の新卒者や、ITやコンピュータと全く縁のなかった新卒者も、エンジニアとして活躍しています。

就職の志望動機で多いものは

IT業界への就職を目指す学生には、「ITに興味がある」という人が多いです。

たとえば「子供の頃からコンピュータやITに関心があり、仕事として専門的に関わりたいと思った」「ITに可能性を感じており、ITを用いて社会貢献したいと思った」などがあげられます。

すでに今の大学生は幼い頃よりコンピュータやITが身近になった世代であり、小学生中学生の頃よりIT業界を目指していたという人も増えてきています。

しかしITに興味があるというのも立派な志望動機であり、決して悪いわけではありませんが、それだけでは弱い部分もあります。

「その会社で仕事として何がしたいか」「将来どのようになりたいか」「どのように会社に貢献したいか」の部分まで掘り下げた上で伝えるのがよいでしょう。

IT業界の転職状況

IT業界では、新卒者を対象とした定期採用のほか、既卒者を対象とした「中途採用」も行われています。

IT業界は現在、増えるITニーズに対して人材が不足している状況です。

また離職率も少々高めの業界であり、退職していく新卒社員も一定数います。

したがって、新卒採用だけでなく中途採用からも不足した人材を積極的に集めています。

大手IT企業では経験やスキルが重視されますが、人手不足の深刻化している中小IT企業ではさほど経験は問われず、業界未経験の人材も積極的に募集しています。

またIT業界は転職に対して寛容的な業界であり、定年まで1社で働く社員の方が珍しい業界です。

中途入社の社員が過半数を占める会社も珍しくないため、中途入社であっても肩身が狭くなることは少ないでしょう。

転職の志望動機で多いものは

IT業界へ転職を目指す人には、「スキルを身に付けたい」といった人が多いです。

たとえば「これまでは営業職をしていたが、手に職となるスキルを身に付けたかった」、「将来性のあるIT分野で、長く活かせるスキルを身に付けたかった」などがあげられます。

特に異業種から転職を考える人の場合、そのような志望動機を抱いている人が多いです。

スキルを身に付けたいというのは志望動機として悪いわけではありませんが、それだけでは弱い部分もあります。

「あなたを採用することで採用先の企業にどのようなメリットがあるのか」の部分が転職では特に重要となりますので、その部分まで掘り下げた上で伝えるのがよいでしょう。

転職で募集が多い職種

IT業界の転職で募集の多い職種は「システムエンジニア」や「プログラマー」といったエンジニア職です。

お客さま先の会社や社外プロジェクトルームに常駐する「常駐システムエンジニア」や「常駐プログラマー」の求人は特に多く、積極的に募集されています。

一方で、自社で働く「社内システムエンジニア」や「社内プログラマー」は求人数が少なく、人気も高いため、狭き門になってきます。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

基本的には同業種の経歴があると有利になりやすいです。

既にIT業界での実務経験があり、教育が不要でそのまま現場入りできるような人材であれば、面接でも好感されるでしょう。

またIT業界では「コミュニケーション力」や「マネジメント力」も重視されます。

たとえ数人のチームであってもリーダー経験やマネジメント経験があると、より高評価を得やすいでしょう。

一方でIT業界は慢性的な人手不足を抱えています。

なかなか人の集まらない中小IT企業などですと、業界未経験の人や、パソコンすら触ったことのない人まで採用されることもあるようです。

IT業界の有名・人気企業紹介

NTTデータ

1988年創業。連結売上高2兆1,636億円、連結従業員数123,884名(2019年3月期末)、国内最大手のSI企業です。

SI(システムインテグレーション)が主事業となり、官庁系システム、通信システム、金融システムなど、あらゆる分野の大規模システムの構築を手掛けています。

NTT(日本電信電話)の子会社にあたり、NTTが株式の過半数を所有しています。

NTTデータ ホームページ

日本ユニシス

1958年創業。連結売上2,990億円、連結従業員数7,740名(2019年3月期末)、国内準大手の独立系SI企業です。

金融・製造・流通・運輸・官公庁・自治体などさまざまな分野のシステムインテグレーションを行っており、特に金融系においては、豊富な実績とノウハウをもっています。

クラウド、AI、ロボティクス、IoTといった先端分野のITソリューションも積極的に行っています。

日本ユニシス ホームページ

日立ソリューションズ

1970年創業。連結売上2,618億円、連結従業員数11,522名(2018年3月期末)、国内準大手のSI企業です。

日立グループの一角を担うSI企業であり、日立製作所100%出資の完全子会社となります。

おなじく日立製作所100%出資の「日立システムズ」と似た立ち位置の会社です。

「日立製作所」のIT事業部、日立ソリューションズ、日立システムズの3社が、日立のIT事業の中核を担っており、この3社で協力し大規模システムの構築を手掛けることが多いです。

日立ソリューションズ ホームページ

IT業界の現状と課題・今後の展望

インドや中国がIT大国に

近年、インドや中国のIT産業が急激に成長しており、IT大国と化しています。

特にインドの成長は著しく、「Microsoft」や「Google」といった巨大IT企業も拠点を構え、第2のシリコンバレーと化してきています。

今後はインドや中国のIT企業が国内に進出してくる恐れもあり、国内の優秀なエンジニアがインドや中国へ流出する恐れもあります。

国内IT企業にとっては脅威となる存在です。

先端IT技術でニーズが増える

今後は、「クラウドコンピューティング」「ビッグデータ」「IoT」「人工知能」「ロボット」といった先端IT技術が本格的に普及していくといわれています。

それに伴い、システムエンジニアやプログラマーにおいて、これまでとは違った新しい仕事が生まれるといわれています。

この分野に明るいエンジニア自体もまだまだ少ないため、それこそ経験のある人材は売り手市場となっています。

今後は経験のある優秀なエンジニアの奪い合いがよりエスカレートしていくでしょう。

業界としての将来性

「クラウドコンピューティング」、「ビッグデータ」といった先端IT技術の普及により、IT業界自体はまだまだ成長の余地があります。

しかし、大きな問題としてIT人材が不足しています。

ITニーズが増える一方でIT業界では慢性的な人手不足を抱えており、今後は少子化による若者人口の減少により、それがより深刻化する恐れがあります。

2030年には約59万人ものIT人材が不足するともいわれています。

同時にIT人材の高齢化も進んでおり、2030年まで上昇の一途を辿るとも推測されています。

IT業界は、ITシステムを造り上げる人材こそが生命線となる業界です。

いかに人材不足を解消し、かつ次世代の優秀な人材を育成できるかが、今後のIT業界の課題となってくるでしょう。

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