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バスガイド中村 香菜美さん
1987年9月20日生まれ。鹿児島県出身。高校卒業後、株式会社はとバスへ新卒入社。以来、バスガイド職として豊富な経験を積み、現在は後輩の指導にあたるトレーナーとしても活躍中。2015年3月現在、現職10年目。
座右の銘:十人十色
バスガイドを目指したきっかけを教えてください。
高校時代の修学旅行で、初めてバスガイドさんと一緒にバスの旅をしました。
その時の旅行は3泊4日。長野でスキー体験をしてから東京をバスで巡ったのですが、都心に入ると、ガイドさんが立ち並ぶビルの名前や概要をすべて説明してくれて、とてもビックリしたことを覚えています。
そのガイドさんは明るく、人気がある方でした。それまでも何となくバスガイドには興味を持っていたのですが、この時の経験をきっかけに、自分もバスガイドを目指したいなと本気で考えるようになりました。
それから、どのような流れではとバスへ入社されたのですか?
はとバスは、高校に届く求人情報を見て応募しました。
私は鹿児島県出身で、東京以外のバス会社の求人も多くありましたが、高校3年生の夏休みに従兄弟とはとバスに乗って、「この会社に入りたい!」という思いが強くなったんです。
翌月の9月に就職試験があり、面接と筆記試験を受けて合格。翌春、高校卒業後に入社しました。
入社試験はどのような内容でしたか?
試験の内容は、大きく分けて「筆記試験」と「面接」でした。筆記試験に関しては、主に歴史、地理、数学、一般常識が出題されました。
地理はバスガイドの仕事をするうえでも必要になるので、学校の勉強に加えて市販の就職試験対策向けの問題集を使い、力を入れて勉強しましたね。
入社後は、まず研修からスタートするのですよね。
はい、はとバスのバスガイドは、入社すると全員寮に入り、すぐに研修が始まります。
研修は「机上研修」「車上研修」に分かれており、最初の1週間程度は机上研修。
ここでは、お辞儀の仕方、発声練習、口の開き方、敬語の使い方、早口言葉などを学びます。
毎日宿題が出されて、分厚い教本の中から1日何ページ分も覚えなくてはなりません。
机上研修が終わると、次は3週間程度の車上研修がスタートします。こちらは、それまでに覚えた内容を実践で使えるようにする研修で、実際にバスに乗って東京の中心部を回りながら、教本は一切見ずに実際にガイドをします。
最終テストの日が決められているので、そこに合格することを目標に、みんなで研修を乗り越えていきます。
寮生活はいかがでしたか?
初めての寮生活でしたので、初めは少し緊張感がありました。社会人ではありながら、まだ高校生の気持ちも抜け切れていませんでしたしね(笑)
でも、入寮してから1ヵ月半程度で乗務が始まるので、とにかく勉強、勉強の日々。ホームシックになったり、悩む暇もないくらい忙しかったです。
私は高卒の同期と2人部屋でしたが、同期入社のメンバーには専門卒や短大卒のお姉さん方もいたので、人生の先輩としていろいろと教えてもらいながら、楽しく生活していました。
現在の仕事内容と、1日の主なスケジュールを教えてください。
都内の定期コースを日帰りで回る日もあれば、宿泊を伴うガイド業務をする日もあるので、日によってスケジュールは異なります。
私の場合、最も遠いところでは、北は山形、西は名古屋辺りまで乗務しています。
都内の定期コースを例に挙げると、7時に出勤し、掃除。8時に出庫点呼があり、1日の目標やコースを確認します。
そして9時に出発すると、皇居や二重橋を回り、浅草でお昼ご飯。午後は国会議事堂や東京タワーを展望し、17時半頃に解散、といった流れになっています。
定期コースといっても、半日のものもあれば7~8時間かけて回るものもあります。
郊外に出るときは5時に起きて6時に出勤し、東京駅に帰ってくるのは19時くらいになりますね。
土日は渋滞につかまると、日が変わってから着くこともあります。
休日は月にどれくらいあるのですか?
基本は月に7日です。
シフト制で、土日祝日はお客さまが多くいらっしゃいますから、平日休みが中心となります。
休日はどんな風にして過ごすのが好きですか?
よく友達同士でレンタカーを借りて、いろんなところに出かけています。プライベートだと、仕事でよく行っている場所でも違って見えますし、新たな発見もあるので、仕事に生かすことができるんです。
会社では、同期のメンバーとのつながりもあるのですか?
はい、同期とはずっと親しくしています。
当社では、満5年勤めると、6年目には会社からのプレゼントで同期と一緒に4泊6日でハワイに行けるんです。
そのほか、20歳のときには同期のバスガイドみんなで、会社が開いてくれる成人式に参加する機会もあります。はとバスの成人式の様子は、毎年テレビなどのニュースにも毎年取り上げられているんですよ。
また、研修もあります。都内近郊ばかりでなく、山形や新潟のような遠方も、同期と一緒にバスに乗って実地研修をします。
ですので、入社後時間が経っても同期のみんなで話す機会は多いですし、つながりも深いです。
バスガイドの仕事のやりがいは、どんなところにありますか?
これは、この仕事の難しいところでもあるのですが、私たちが日々接するお客さまは、年代も、職業も、価値観もさまざまです。
すべての方が、初めからバスガイドの話に興味を示してくれる方ばかりではありません。
でも、最初はあまり笑顔でなかった方でも、最後にバスから降りる時に「楽しかったです、ありがとう」と言ってくださると、頑張ったかいがあったなと思いますし、本当にこの仕事をしていて良かったと、大きなやりがいを感じます。
仕事で感動したエピソードがあれば教えてください。
これまで数えきれないくらいたくさんの感動を味わってきたので、とても一つには絞り切れません。
でも、最近とても印象に残る出来事がありました。
先日、福井県の中学2年生の修学旅行を担当したんです。生徒さんと過ごすのはたった5時間くらいでしたが、最後に生徒のみんなが「ガイドさんと運転手さんに」と言って、突然、校歌を歌ってくれて。その時は本当に胸がいっぱいになりました。
また、色紙をもらったこともあり、それは今も大切にしています。
バスガイドに向いているのは、どんな人だと思いますか?
一番は、人と話すのが好きな人ですね。
同時に、人を楽しませることが好きだったり、人のために何かしてあげたいと思う人じゃないと、なかなか務まらないと思います。
私は、お客さまを自分の家族のように思って、接するようにしています。
この仕事は覚えることが多いですし、日々さまざまな人と接する仕事なので、人が好きでなければ自分自身が苦しくなってしまうと思います。
でも、とにかく明るくて、人と一緒にいることで元気になれるような人であったら大丈夫。きっと前向きに取り組めると思います。
バスガイド仕事の魅力はどんなところにあると思いますか?
お客さまと一緒に景色を見て感動したり、その場の空気を楽しんだり…。そんな風にして、お客さまと「共感」できることは、この仕事の魅力だと思っています。
また、お客さまの生の言葉やリアルな感想を聞くことができたり、1日に何度も「ありがとう」と声をかけてもらえるのも、バスガイドならではですね。
あと、はとバスに関していえば、バスガイドの制服はとても人気があるんですよ。何年かに一度リニューアルして、トレンドを捉えたものになっています。
お客さまからもよく「制服かわいいね」と言っていただだけるので、そういうところでうれしくなることもありますね(笑)
結婚、出産後も働き続けているバスガイドの方はいらっしゃいますか?
はい、います。会社には産休・育休の制度があるので、出産を機に一度現場を離れたとしても復帰することができます。
育児などでフルタイムで働くのが難しい場合には、アルバイトとして都内のコースだけ乗務しているガイドもいます。
中村さんが、外国人のお客さまのガイドをすることもあるのでしょうか?
外国人のお客様に対しては、「通訳案内士」の国家資格を持った専門ガイドが担当します。ですから、私たちのような一般のバスガイドが、外国のお客さまにガイドをすることはありません。
ちなみに、最近ではお客さまにGPSがついたイヤホンをつけていただき、特定のスポットに到着すると、対応した言語でガイドが流れるような機器も導入されています。
これから先、バスガイドの仕事や業界はどう変化していくと思いますか?
やはり、2020年の東京五輪の影響は大きいと思います。
国内外問わず東京に訪れる人の数はますます増えると思いますし、現在でもすでに、富士山や箱根に行くと、外国の方の数の多さに圧倒します。
「外国の方のガイドはしない」といっても、はとバスの乗り場では、外国人観光客に話しかけられることもよくあります。
最近では、ちょっとした外国語での日常会話くらいは、できるようにならないといけないなと実感しています。
中村さんご自身の、今後の目標を教えてください!
私は2年前から、バスガイドをしながらトレーナーとして後輩ガイドの教育にも携わっています。
私自身、バスガイドの仕事が大好きで誇りを持っているので、後輩たちにもこの仕事の素晴らしさを伝え、お客さまに感動を与えられるようなガイドを多く育てられるようになりたいです。
最後に、バスガイドの仕事に興味を持っている方に向けて、メッセージをお願いします。
バスガイドは、1日1日がドラマみたいな仕事です。
同じ日は二度とやってきませんし、まったく同じ仕事もありません。お客さまから教わることも多く、仕事を頑張るうちに視野見聞が広がり、コミュニケーション能力がとても高くなります。
失敗したり、叱られて泣いたりすることもありますが、それよりも楽しいこと、うれしいこと、幸せなことのほうが倍以上。
いろんな人と出会って人を元気にしたり、みんなを楽しませたいと思う方は、ぜひ頑張ってこの仕事を目指してください。
(取材・文:石原 桃子)
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