海女の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「海女」とは
海辺で魚介や海藻を獲る仕事
海女とは、素潜りでサザエやアワビ、ウニ、カキなどの魚介類やわかめや昆布などを獲る仕事です。
従事するのは女性が多く、男性の場合は「海人」や「海士」と書きます。
海女に女性が多いのには、かつて男性が船で漁をしている最中に、海辺で魚介類を採集していたことによります。
縄文時代から潜水での漁が行われていたとの記録もあり、海辺の地域では代々潜水で魚介類を獲る技術が受け継がれてきました。
また、女性は男性に比べると皮下脂肪が多く、潜水しやすいという身体的なメリットもあります。
海女になるには漁業権が必要であるため、海女漁が行われている地域の漁業協同組合に所属しなくてはなりません。
そのためたいていの場合は地元に住む人々や、その地域で家族が漁業をしている人などがなる地域に根付いた仕事です。
まずは先輩海女について修業し、一年ほどで独り立ちできるといわれています。
漁はたいていの場合春から秋にかけて行われるため、漁に出られない日や冬場には海産物加工や養殖業・飲食業などを行う人が多いです。
近年はNHKの連続テレビ小説で注目を集めましたが、高齢化や後継者不足に悩む地域も多く、広く若い世代を受け入れるところも増えてきています。
「海女」の仕事紹介
海女の仕事内容
素潜りで魚介類を獲る仕事
海女は、海に潜って魚介類や海藻を獲るのが仕事です。
海女が捕るものは、時期や地域によって変わりますが、アワビやサザエといった貝類、テングサやワカメなどの海藻類、ウニや伊勢海老、ナマコなどを獲るところもあります。
ときには、素潜りはせずヒジキのような岩礁に生える海藻を採取することもあります。
海女は自由に漁ができるわけではなく、それぞれの魚介類は漁期が決められており、また漁期中でも海が荒れるなど危険が高い日には漁をすることができません。
主に春から秋にかけてが漁期とされており、冬場はほかの仕事をしている人も多いです。
海女の漁には、自分で泳いで漁場まで行き一人で漁をする「徒歩人(かちど)」と、男性とペアを組んで船に乗って漁場へ行き、男性が船を操縦しながら女性が潜水して漁をする「舟人(ふなど)」があります。
海女の潜水時間は50秒ほどといわれており、その間に見つけた獲物を手に持てるだけ持ち、水面や船にある桶に獲物を入れて、また潜水するという流れを繰り返します。
仕事を終えると、海岸にある「海女小屋」で休憩し、潜水で冷えた体を温め、それが終わると、海産物を漁業協同組合や漁業協同組合に売りに行き、お金に引き換えます。
海女という仕事は古来より行われてきたものですが、現在では日本と韓国の一部にしかない伝統的なものであり、2017年には「鳥羽・志摩の海女漁の技術」が国の重要無形民俗文化財に指定されました。
海女になるには
漁業協同組合や組合に加入し、海女の修業する
海女がいる地域に生まれ、家族などで代々海女の技術を受け継いでいる人もいますが、まったく他の地域から海女を目指す場合は、まずは移住が必要です。
日本では一般の人が勝手に漁をすることは禁じられており、海女になるためには漁業権が必要です。
漁業権を得るには、地域の漁業協同組合などに所属する必要があるため、まずはその地域で生活し、地域社会から認められなくてはなりません。
漁業権を得るには最低でも1年から数年その地域で生活することが必要であると考えた方がよいでしょう。
海女のいない地域から海女を目指すことは非常に難しいのが現状ですが、近年は海女の後継者不足により、さまざまな地域で海女を志す人を受け入れるプロジェクトが行われています。
地域おこし協力隊として移住し、海女や漁業の技術を学べるところや、海女体験を積極的に行い、移住者には就業を支援する取り組みをしているところもあります。
1から海女を目指す場合には、こうしたプロジェクトを利用するのもひとつの方法です。
海女という求人が出ることはほとんどないため、一般社団法人全国漁業就業者確保育成センターや海女が漁を行っている漁業協同組合などに問い合わせてみるのもよいでしょう。
実際に海女になるには、先輩について素潜りなどの技術や知識を学び、1年ほどの経験を積むと一人前と認められるようです。
なお、海女の仕事だけでは生計を立てることが難しいため、海女の仕事と並行しながら以外の仕事を探すという人も多いです。
海女の学校・学費
学歴が問われることはない
海女になるために特別な学歴は必要なく、年齢制限もありません。
かつては小学生の頃から素潜りの練習をはじめ、中学や高校卒業後すぐに海女になるという人もいましたが、近年では転職で海女になるという人も多く、学歴はさまざまです。
水産学、生物資源学、生物生産学などを勉強していると実際に仕事をする際には役立つこともあるでしょう。
近年、海女は観光資源という観点からも注目されているため、観光や地域おこしに関する勉強も大いに生かせると考えらえます。
ただし、実際に仕事を覚えるためには、現場に出て先輩海女から教えてもらう方法しかないため、海女として働きたいのであればできるだけ早いうちに動き始めるのがよいでしょう。
海女の資格・試験の難易度
漁業権を取得する必要がある
海女が漁を行う際に特別な資格は必要ありませんが、漁をするための「漁業権」が必要です。
日本では乱獲の防止や漁業をしている人の生活を守る観点から、一般の人が自由に漁をすることが禁じられています。
漁業権を取得するには、地域の漁業協同組合に加盟し、漁業に従事する意思を示す、その地域に定住する、売上の一部を支払う、といった取り決めにした側なくてはなりません。
家族が代々海女をしている、漁業を営んでいる場合などは比較的スムーズに加盟することができますが、移住したての新人が申し出てもすぐに受理されないことは非常に多いです。
まずはその地域の人たちや漁業関係者から信頼を得て、海女としてやっていくという強い意志を見せることが大切です。
海女の給料・年収
安定した収入を得られる人は少ない
海女の収入は個人の力量により大きな差があり、一日数千円にも満たない人もいれば、一日で10万円以上稼ぐ人もいます。
海女は知識や経験だけでなく、漁の技術やセンスも求められるため、ベテランであれば高額な収入を得られるというわけではなく、運やタイミングによるところも大きいです。
またどれだけ経験やスキルがあったとしても、その年の魚介類の生育状況や天候によっては収入が少ないということもあります。
魚介類などは自然の影響を受けやすく、収穫量にはどうしてもさが出てしまうため、収入には波があり、安定して稼ぐことができる海女はごく一部です。
こうした状況を受け、多くの海女は専業ではなく兼業で働くのが主流です。
かつては夫が漁師として船を出してペアを組んで漁をしたり、家族が営む漁業や水産加工業などで働いたり、夫が漁業関係者で主婦をしながら海女をするケースが大半でした。
近年では、旅館業や飲食業などとして漁でとった魚介類をふるまったり、地域おこし協力隊として自治体の仕事をしたりしながら海女を続けています。
なお海女の収入は、アワビやサザエなど高額な魚介類の漁獲量が減少傾向にあり、年々減ってきているといわれています。
これは、かつてアワビやサザエを大量に捕ったことで生態系に変化が訪れていること、漁が行われている漁場を取り巻く自然環境が変化していることなどによると考えられています。
海女の現状と将来性・今後の見通し
高齢化や後継者不足が問題
海女は古来より続く潜水というスタイルの漁を守り続けており、近年は国の重要無形民俗文化財に指定されるなど、日本の伝統文化としても知られています。
しかし、高齢化や後継者不足、生態系の変化による資源の減少などにより海女に従事する人は急激に減少しています。
海女になるには漁業権が必要になる、潜水の技術を身に付けるには時間がかかるなど、海女漁が行われている地域外部の人にとっては非常にハードルが高い仕事です。
しかし、NHKのドラマに海女が取り上げられてからは、海女をという職業にスポットが当たるようになり、志願者が増えました。
今では外部の人でも弟子として受け入れて育てる地域も増えてきており、若手の活躍が期待されています。
海女の就職先・活躍の場
就職して働くわけではない
海女は自分が収穫した魚介類を売って収入を得ており、ほとんど海女は自営業です。
海女として働く際には漁業権を得るために地元の漁業協同組合や漁業協同組合に所属しなくてはなりませんが、そこから給料が出ているわけではありません。
一般的な仕事のように安定して収入が得られる仕事ではなく、漁ができるシーズンが限られているため、ほかの仕事と兼業をしながら仕事を続けている人も多いです。
なお、海女は地域に根付いた職業であるため、海女を行っている地域に住み、その土地に住む同業者と関わっていく必要があります。
近年では「地域おこし協力隊」などとして移住し、海女として働くようになったという人もみられます。
海女の1日
潜る時間は人それぞれ
海女が漁に出る時間は人それぞれで、1時間から2時間程度という人もいれば、数時間潜るという人もいます。
乱獲防止のため長時間の漁を行わないという人が多く、一日の目標量に達したらそこで仕事を終えるという人が大半です。
海女のやりがい、楽しさ
努力した分だけ高い収入が得られる
海女のやりがいは、努力したらした分だけ高い収入が得られることです。
アワビやサザエ、イセエビなど高級な魚介類を手に入れることができれば、収入に大きく跳ね返るため、漁が行われる日は休まずに毎日働くという人も多いです。。
はじめのうちは潜ることが精いっぱいで、なかなか魚介類を獲れなかったという人も、短時間で桶一杯に魚介類が獲れたときには成長を感じるでしょう。
また、熟練の海女のなかには、後継者を一人前の海女に教育することにやりがいを感じるという人もいます。
海女は高齢化と後継者不足に悩まされており、代々続く海女の漁の仕方や技術などを次の世代へ受け継いでいくことも、大切な役割です。
海女のつらいこと、大変なこと
自然の厳しさを感じることも
海女の大変なところは自然の厳しさにさらされる機会が多いことです。
海女は同じ海に潜る一般的ダイバーと比べても非常に軽装であり、ウエットスーツを着用する人はあまりいませんし、酸素ボンベは使用しません。
ときには大型の魚やサメに遭遇することもありますし、急な時化(しけ)などで海が荒れて身の危険を感じることも少なくありませんが、基本的にすべて一人で対処しなくてはなりません。
また海が荒れたり天候が悪化したりといった日は漁に出られないため、漁のシーズンにこうした日が続くと収入が落ち込んでしまいます。
自然と向き合う仕事であるため、自然のすばらしさを感じる仕事でありながら、その厳しさを感じることも多いでしょう。
海女に向いている人・適性
海が好きで勉強熱心な人
海女に向いている人は、まず海が好きな人です。
海女として魚介類を獲るには、潜水の技術だけでなく、海に興味関心があり、海の中に住む生き物や海の周辺の環境など、さまざまなことを学ぶ意欲が必要です。
また、海に恐怖心がなく、泳ぎが得意なことも重要なポイントとなるでしょう。
さらに、海女として収入を上げるには、「たくさん獲るにはどこを狙えばいいのか」「どうすれば短時間で魚介類を獲れるか」というように自分の漁を振り返り研究することも大切です。
向上心や探求心があり、常に学び成長していこうという姿勢を持つ人は、この仕事を長くするのに向いているでしょう。
海女志望動機・目指すきっかけ
家族やメディアの影響が大きい
海女の志望理由として多いものは、家族や地域の人々が海女をしている様子を見ていて、海女を身近に感じていたからというものです。
海女はその地域に根差した人々がなることが多く、地域によっては高校生に海女の体験をさせるなどして、文化を継承させようと努力しているところもあります。
一方、まったく無関係の地域から移住して海女になる人もいますが、そうした人たちはNHKのドラマや「伊勢志摩サミット」などの情報をメディアで見るうち海女に興味を持ったという人が多くなっています。
特に近年は若い女性が海女になるためにほかの地域から移住するケースが増えてきており、こうしたモデルケースを見て「自分もやってみたい」と思う人が多いです。
海女の雇用形態・働き方
漁業などとの兼業が多い
海女は給料が支払われているわけではなく、自分で獲った魚介類の分だけ利益を得る個人事業主です。
ただし海女の仕事だけで生計を立てている人はほとんどいません。
これは海女の収入は不安定なこと、漁ができる期間が決められており、冬場は仕事がなくなってしまうことにより、たいていが他の漁法を使った漁業や水産加工業などとの兼業です。
なかには、地域おこし協力隊や観光協会の職員、自治体の職員、飲食業や旅館業などとして働きながら海女をしている人もいます。
なお、海女に定年はなく、高齢になっても体力さえあれば活躍できるため、なかには80代になっても現役で漁をしている人もいます。
海女の勤務時間・休日・生活
仕事をする時間は人それぞれ
海女の働く時間はひとそれぞれですが、たいていの場合は朝から海に潜り、午前中で仕事を終えます。
地域によっては、8時から11時までなど漁ができる時間帯が決まっていることもあります。
これは、資源を採りすぎないよう、海女同士や漁業協同組合などで決めているものです。
潜っている時間も人によって差があり、一日の目標量を獲ってしまうと仕事を終えてしまう人、時間いっぱいまで潜り多くの魚介類を獲るという人など人それぞれです。
これは、海女の仕事でより多くの収入を得ようという人と、副業や兼業であるためあくまで一定の収入が得られればいいと考える人の違いでもあります。
海女の求人・就職状況・需要
海女という求人が出ることは滅多にない
海女の求人はほぼなく、海女になりたければ海女漁が行われている地域に移住し、漁業権を取得する必要があります。
しかし、何のつてもないまま移住をしても受け入れてもらえるとは限りません。
まずは、全国漁業就業者確保育成センターや、地域の漁業組合などに問い合わせてみることからはじめるとよいでしょう。
また、海女漁が盛んな地域では、漁村留学生を募集したり、地域おこし協力隊として海女を目指したりする道を用意しているところもあります。
まったくコネクションがない場合は、こうしたことを利用して、海女の仕事について深く知ったり、漁村での暮らしに慣れたりしていくことが大切です。
海女の転職状況・未経験採用
転職も多いが求人はほぼない
もともと海女は地元に住む女性や、家族が漁業や水産加工業を営んでおり兼業として海女をしているという人が大半でした。
しかし近年は外部の地域から移住し、海女になるという人が増えてきています。
前職はさまざまですが、比較的多いものは地域おこし協力隊として地域に移住し、海女や漁業の知識や技術を学ぶというものです。
まれに全国漁業就業者確保育成センターや、全国の漁業協同組合などで人材を募集することもありますが、求人が出ることは非常に少ないです。
海女を目指すのであれば、自ら問い合わせたり体験会に参加したりするなど行動に移す必要があるでしょう。