デザイン工学とは? 大学で学ぶことや就職先は?
デザイン工学の概要・理念
工業製品や建築物、都市空間、情報といった対象について、デザイン性と機能性を追究していくのがデザイン工学です。
私たちの身の回りにある製品は、デザインが芸術的に優れているものが好まれる一方で、機能性や安全性、合理性が工学的な観点から十分に考慮されている必要があります。
また、目新しさや見た目の斬新さばかりを追究するのではなく、消費者のニーズに合致した製品や利便性を向上させる製品でなくてはなりません。
近年では3DCADや3Dプリンタといったツールが進歩していることも相まって、デザインの発想も自由度が高まりつつあります。
「こんな製品があったらいいのに」といったアイデアを具体的な製品として世の中に供給しやすくなっているのです。
また、消費者は製品の性能や便利さだけでなく、生活を変えていくようなストーリーや体験を求めるようになっており、デザインを科学的に分析し改良を加えていくプロセスにますます注目が集まっています。
デザイン工学は、まさにこうした時流に合った学問といえるでしょう。
デザイン工学で学ぶこと
デザイン工学が研究対象とする製品は実に幅広いものとなっています。
空間デザインや建築デザインの分野においては、建築物や景観をはじめ、人々の生活様式やその変遷を研究することを通じて、より便利で安全な社会を実現することを目指します。
ヒューマンインターフェースに関する研究分野も存在し、マルチメディアのデザインやその応用方法について研究します。
こうした研究は理論に留まらず、具体的な制作物を作った上で検証することも少なくありません。
そのため、工業製品などの材料や構造、力学といった知識は基礎的な素養として必須となります。
大学においても、数学や物理学の基礎をはじめ、製品デザインに必要な知識や技能を実習を交えて学んでいくことになります。
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デザイン工学の大学での授業科目の例
材料力学
工業製品などを構成する材料について、その性質や活用方法を学びます。
形状創製
材料を製品化する過程において、材料を加工し形状を作るための技能についてコンピュータシミュレーションなども駆使しながら研究します。
施設計画マネジメント
大規模な建造物や都市計画を進めるにあたり、全体の進め方や手順といった計画を管理する手法を習得します。
構造設計論
製品や建造物が長期間にわたる使用や自然環境、災害などに耐えうる剛性を維持するための構造や設計の手法について学びます。
都市環境デザイン
都市全体をデザインの観点で捉え、暮らしやすさや生活の質の向上を実現する方法について追究します。
デザイン工学のレポート・テーマの例
デザイン工学では、理論に留まらず「このようなものを作って検証した結果、○○が解消された」という具体的な結果が求められます。
レポートにおいても、実際の制作についての経過や検証結果を報告するものが多く見られます。
- 高齢者の着座・立ち上がりを補助する椅子
- 身体的負担を軽減する松葉杖
- 容器の形状と味覚の関係
- 太陽熱を利用した除湿・冷却システム
- 首都高速道路建設と周辺の商業分布への影響
デザイン工学と関連する学問
工業製品などを制作するにあたって、どのような材料を選定すべきであるのか、適切に判断する必要があります。
その際、材料工学の知識は欠かせないものとなりますので、非常に関連性の高い学問といえます。
研究対象が工業製品であれば機械工学が、建物などの建造物であれば建築学が、デジタルメディアであれば電子工学や情報工学が、それぞれ深い関わりを持っています。
また、どのようなものを対象としてデザイン工学を研究する場合でも、基礎的な知識として数学や物理学の知識は欠かせないものとなっています。
デザイン工学を学んで就職に有利な業界・仕事
今やあらゆる分野の製品にデザイン性と機能性の両面が求められていますので、非常に幅広い業界においてデザイン工学の知識を生かして活躍できる可能性があります。
職種としては、プロダクトデザイナーや家電デザイナー、家具デザイナー、インテリアデザイナー、カーデザイナーといった工業デザイン関連の仕事が挙げられます。
また、機能的なデザインという観点を持つ人材として、グラフィックデザイナーやゲームデザイナーといった道へ進むことも可能です。
他にも、都市環境や景観を専門に研究してきた人であれば、都市開発や環境設計などの分野で能力を発揮することも期待できるでしょう。
近年では製品デザインに用いるツールが個人でも購入・所有可能な価格帯となっていることから、独立して工業デザイナーとして活躍する道も選ぶことができます。
デザインそのものに関わる以外にも、商品の企画や開発担当者としてデザイン工学の知見を活かす方法もあります。
デザイン工学の知識は人生でどう役立つ?
私たちは日頃からデザインに囲まれて暮らしています。
何気なく使っている身の回りの家電製品なども、1つ1つが工学的に計算され、使い勝手や機能性とともにデザインに多くの工夫が込められていることも少なくありません。
さまざまな分野の製品が、より高い性能や利便性のみならず、これまでになかったデザインや生活スタイルを一変させるようなストーリー性によって付加価値を高めることが求められています。
デザイン工学を学ぶことによって、デザイン性と機能性の両面からアイデアを発案し、アイデアを具体的な形にするための技能を体得することができます。
こうした知見を持つことは、アイデアを形にするスピード感が求められる今後の社会において、大きなアドバンテージとなっていくことでしょう。
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