ホテル業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
ホテル業界とは
ホテル業界は、宿泊するための部屋や、ホテル内の飲食、エステフィットネスクラブ、結婚式場、温泉などの各種サービスを提供しています。
さまざまな種類のホテルがありますが、価格帯・立地・サービスなどで5種類に分類されているので、代表的なホテル名とともにまとめました。
・リゾートホテル:星野リゾート、湯快リゾートなど
・ビジネスホテル:アパホテル、ワシントンホテルなど
・エコノミーホテル:東横イン、ルートインなど
・シティホテル:帝国ホテル、ホテルニューオータニ、ホテルオークラなど
・アーバンリゾート:東京ディズニーランドホテルなど
さらにカプセルホテル、低価格なホステル、グランピングなど異業種からの事業展開も相次いでおり、時代のニーズに合わせて多様化しているのが現状です。
ホテルでの職種はフロント、客室係などのサービススタッフ、法人や団体向けに宿泊プランを提案する営業・販売促進、イベントやブライダルの企画などを行うサービス開発などがあります。
毎日たくさんのお客さまと接する機会があり、外国人観光客も増えていることから英語力を発揮できる職場です。
ホテル業界の役割
ホテル業界の主なホテルでは、宿泊できる部屋、ホテル内のレストラン、結婚式などの宴会などに関する事業を手がけています。
宿泊するお客さまをにフロントでお迎えするところからスタートし、清潔に整えた部屋を提供し、チェックインからチェックアウトまでを快適に過ごせるようなサービスを行っています。
ただしホテル業界は景気に左右されやすいため、市場のニーズを的確につかむことが必要です。
ローコストタイプのホテルでは、必要最低限のアメニティでいかに安く部屋が提供できるか、またハイクラスタイプのホテルでは、ここでしかできない体験やサービスがあるかが求められます。
最近ではヒルトンやアパホテルなどで、スマートフォンのアプリで事前チェックインサービスを取り入れるなど、消費者ニーズやトレンドに合わせたサービスも積極的に取り入れることが重視されています。
20代で正社員への就職・転職
ホテル業界の企業の種類とビジネスモデル
シティホテル
シティホテルとは有名一流ホテルに代表されるような、都市の繁華街にある大型ホテルのことです。
国内を代表するのは、帝国ホテル、ホテルニューオータニ、ホテルオークラなどがあげられます。
ホテル業界の特徴として、「御三家」といわれる上記の3つのホテルの売り上げを合わせても、全体の4%ほどにしかならず、ほかの業界のような業界のトップに君臨するような企業がいないことです。
そのためシティホテルを始め、リゾートホテル、ビジネスホテル、エコノミーホテルなどどのホテルもしのぎを削っているといえます。
シティホテルの料金はビジネスホテルなどに比べて高めの設定ですが、価格競争によってビジネスホテルと変わらない値段で泊まれる場合も増えてきました。
宿泊だけでなくホテル内にあるレストランやカフェ、バーなどの飲食、結婚式場などの宴会部門からの収益も大きな柱となっているため、スタッフも接客だけでなく、営業や企画などさまざまな職種があります。
ビジネスホテル
ビジネスホテルとは、都市の繁華街にある低料金で比較的小型のホテルのことです。
大手企業では、東横イン、ルートインジャパン、アパホテルのアパグループなどがチェーンホテルとして全国展開していて、続々と新規ホテルのオープンが進められています。
ターゲットは出張中のビジネスマンを想定していて、主な収入源は宿泊料です。
ビジネスホテルの利用者の目的は、体を休めることがメインで、高級ホテルのようにホテル滞在を楽しむことではありません。
そのため各社では寝心地のいい寝具やベッドを用意して投資する反面、不要なサービスは徹底的にカットするなどの工夫されています。
外資系企業
近年のホテル業界には、ザ・リッツカールトン、フォーシーズンズホテル、ザ・ペニンシュラ、グランドハイアットなどの大手外資系ホテルが多数参入しています。
日本には高級ホテルが少なく、富裕層をターゲットにすることが狙いです。
今後も都市部を中心に外資系ホテルのオープンが見込まれており、既存のホテルが淘汰されることも予想されています。
ホテル業界の職種
フロント
ホテルの顔として、フロントカウンターでお客さまのチェックイン、チェックアウト、会計、手続きなどを行う仕事です。
どんな方にも明るく対応するコミュニケーション力や、正しいマナー、言葉遣いが求められます。
ホテルによっては英語や中国語、予約管理システムを使いこなせるスキルが必要です。
コンシェルジュ
コンシェルジュはお客さまのさまざまな疑問や要望に対してお応えする業務です。
ホテル内の案内はもちろん、オススメの観光コースやタクシーの手配まで、幅広いリクエストに対応します。
専任スタッフか、フロント業務と兼任する場合がありますが、ホテルマンの中でも知識や経験など、高度なスキルが求められる仕事です。
客室係
ハウスキーピングともいわれる職種で、お客さまがチェックインするまでにベッドメイキングや客室の清掃、アメニティの補充などを行います。
直接接客はしないものの、作業効率の良さや細やかな気配りが求められる仕事です。
営業・促進
ホテルの商品となる「宿泊」「宴会」「料飲」を法人、団体、旅行代理店などに対して、提案、販売する業務です。
より多くの方にホテルを利用してもらうことで、大きな収益へとつなげます。
サービス・商品開発
景気に左右されやすいホテルだからこそ、時代のニーズに合わせたサービス・商品開発は欠かせません。
市場調査やマーケティングを行い、ホテルの宿泊プランやイベント、ブライダルプランなどの企画、立案を行い、商品化していきます。
ホテル業界のやりがい・魅力
やりがい
ホテル業界で働くやりがいや魅力は、お客さまにサービスすることで満足してもらえた経験です。
「人に喜んでもらいたい」という思いでホテル業界に入った人が多い分、フロント、ウェイターなどどの職種に配属になっても、お客さまの笑顔が自信につながります。
また普段生活しているだけでは出会えないような、たくさんの人と出会える楽しさも魅力の一つです。
子供からお年寄りまで、家族連れからエグゼクティブまでどんな方にも、気持ちよく接するコミュニケーション力が養われます。
中には半数以上が海外からのお客さまという場合もあり、語学力を活かせる人は満足度が高まるでしょう。
待遇・将来への期待
ホテル業界では「長時間勤務」と「休みの少なさ」から離職率が高く、人手不足が課題となっています。
ホテルは24時間稼働していて、ほとんどの職種がお客さまに合わせた勤務体系となるため、早朝からのシフトか、深夜までのシフトを組まれることが多いです。
また、せっかく福利厚生が整えられていても、「使う時間がない」「連休が取れない」という理由から活用できない状況もあり、「若いうちは働けるけれど、今後も続けていけるか不安を感じる」という理由から転職者があとをたちません。
さらに専門学校卒と大学卒の学歴による雇用形態の格差、待遇面での違いも存在し、キャリアアップが見込めない場合もあるといいます。
人手不足解消はホテル業界にとって必須事項となるため、待遇の見直しが急がれます。
ホテル業界の雰囲気
ホテル業界は、おもてなしをするのが好きな人が集まっています。
明るくコミュニケーション力があり、親切な人たちが多いので、よい雰囲気の中で仕事をすることができるでしょう。
またホテルには大勢のスタッフがいるため、各部門で協力して仕事をしなければいけません。
連携が悪いとお客さまのクレームにつながることもあるため、困ったことがあっても助け合うようなチームワークがあります。
シティホテルに代表するような大型ホテルでは、接客だけでなく、営業、企画などさまざまな職種に携わるチャンスがあります。
またホテルの特色によっても異なりますが、おもてなしをメインにしているホテルでは、海外のお客さまを始め、日常では出会えないような多くの方とコミュニケーションをとることが、刺激的な経験となるでしょう。
ホテル業界に就職するには
就職の状況
ホテル業界は、ドラマや映画の影響でホテルマン(ホテリエ)の仕事や、ホテルそのものに憧れて応募する人も多く、人気の業界です。
近年のホテルラッシュと、多くのホテルで人員不足が課題になっていることから、毎年社員数の10%ほどを採用しています。
ホテル業界の職種はホテルによって募集資格が異なりますが、「大卒以上」または「専門学校卒」が求められます。
合わせて海外からの宿泊客が増えていることから、英語、中国語などの語学力があるとアピールポイントとなるでしょう。
業界全体が成長しているため、採用が大きく減るとは考えにくく、ホテルのオープンとともに募集がかけられることが予想されます。
ただし大手ホテルや有名ホテルは人気があるため、倍率は低くはありません。
就職に有利な学歴・大学学部
ホテル業界の営業や企画などの職種に携わっていきたい方は「総合職」への応募となり、「大卒」「大学院卒」の学歴が求められます。
サービスを極めたい人は「専門職」となり、「専門学校卒」または「大卒」以上の学歴が必要です。
ホテルによっては、専門職は正社員ではなく契約社員からのスタートの場合があります。
就職には高学歴や特定の学部が有利になることはほとんどなく、むしろ第一印象やマナー、人柄、言葉遣いが重視される傾向にあるようです。
外国人観光客が見込まれることから、必須ではないものの、英語や中国語が話すことができる人は有利になるでしょう。
就職の志望動機で多いものは
ホテルや接客業のアルバイトを経験して、「お客さまを幸せにしたい」「最高の時間をおもてなししたい」という気持ちで応募したという志望動機が多いようです。
その中でも、「なぜこのホテルを選んだのか」「入社したら御社でこんな貢献ができる」というこのホテルならではのイメージが具体的に書かれている志望動機がアピールになるでしょう。
また志望ホテルでのアルバイト経験は即戦力としての評価につながり、有利になる場合もあるようです。
接客経験は必須ではありませんが、就職までの時間があれば、志望ホテルでアルバイトをしてみるのもいいかもしれません。
ホテル業界の転職状況
転職の状況
近年のホテル業界ではオープンラッシュが続いているため、業界内の転職も活発化しています。
職種やホテルにこだわらなければ、常時中途採用の募集も行われているようなのでチェックしてみましょう。
転職サイトだけでなく、公式サイトで募集がかけられている場合もあります。
ただし正社員ではなく、契約社員やアルバイトという雇用形態のこともあるので、確認してから応募することをおすすめします。
転職の志望動機で多いものは
アルバイトや前職での接客経験、営業経験を活かした志望動機が多いようです。
「未経験ですが自分の経験を活かせると思った」「コミュニケーション力を活かして貢献したい」と、ホテル業界以外での自分の経験を活かすことができます。
また「貴社だからこそできるサービスを提供していきたい」とホテルの特色をかけ合わせると、企業研究していることを伝えることも可能です。
離職率の高い業界だからこそ、「長く働きたい」という熱意もアピールポイントになるようです。
転職で募集が多い職種
中途採用では、ホテルのフロントスタッフを始め、企画・営業をする総合職、ホール、調理までさまざまな募集が行われています。
職種だけでみるとどの職種も募集されていますが、ホテルによってお客さまのターゲット層や、料金、サービス内容も異なりますので注意が必要です。
職種だけでなく、ホテルの特色も合わせて検討することをおすすめします。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
ホテル業界は各ホテルでのセミナーや研修があり、転職者でも仕事を覚えやすい環境が作られているため、業界未経験でも不利になりません。
ただ接客業の経験は、セールスポイントになるため転職時には必ずアピールしましょう。
また外国人観光客が増えていることから、必須ではないものの、英語や中国語などの語学力も求められます。
外資系のホテルでは、日本語と英語で履歴書と職務経歴書を用意することが必要になるので、語学力は必須と考えておきましょう。
ホテル業界の有名・人気企業紹介
西武HD
西武HDは、ホテル業界の売上高1位を誇る企業です。
「ザ・プリンス」「グランドプリンスホテル」「プリンスホテル」の3つのブランドを中心にホテル事業を展開しています。
首都圏ではシティホテル、北海道、箱根、軽井沢ではリゾートホテルを運営しています。
リゾートトラスト
ホテル業界売上高ランキングで2位に君臨するのが、リゾートトラストです。
全国47ヶ所とハワイ1ヶ所に、リゾートホテルやシティホテルなどを展開しています。
そのほかゴルフ場やメディカル、シニアレジデンスなど幅広い事業展開を行っている企業です。
帝国ホテル
日本の迎賓館として1890年にオープンし、120年以上の歴史を持つ老舗ホテルです。
東京、大阪、上高地にホテルを構え、ハワイの「ハレクラニ」と「ハレプナ ワイキキ」とも提携しています。
家族連れの利用だけでなく、国際交流やビジネスの場としても利用される格式高いホテルです。
ホテル業界の現状と課題・今後の展望
国内の競争環境
2020年の東京オリンピックに向けて、さらに外国人観光客が見込めることから、現在ホテル業界はオープンラッシュを迎えています。
観光客も増えることで、追い風を受けて成長を見込める業界ともいえるでしょう。
しかし外資系のホテルが日本に数多く参入していることから、さらに競争が激化し、国内の既存のホテルが淘汰されることも考えられます。
顧客のニーズに合わせたサービスの提供や、商品開発など、ホテルのビジネス戦略が求められています。
最新技術の動向
スマートフォンの普及により導入され始めたのが、便利なチェックインサービスです。
ヒルトンではアプリを使って、ホテルの客室が自分で選ぶことができたり、事前チェックイン、デジタルキーを使ってホテルの解錠までできるようになっています。
また大手のビジネホテルのアパホテルでは、アプリから予約し事前チェックインをすませると、QRコードを見せるだけでルームキーを受け取ることができる仕組みが取り入れられています。
最新技術の導入は広がりを見せているため、多くのホテルで同様のサービスが受けられるようになるでしょう。
業界としての将来性
ホテル業界は2020年の東京オリンピックに向けて外国人旅行客が急増していること、その後も認知度が高まったことで訪日外国人客が見込まれることから、今後も市場拡大が予想されます。
人材不足や新たなホテルのオープンで人員が必要になることから、求人も増え、勢いのある業界といえるでしょう。
一方で外資系企業や異業種からの参入が増え、国内での競争が激化していることから、ホテルならではのサービスの打ち出しや、安定した収益を得られるビジネスモデルを見い出すことが課題といえます。
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