プラント業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
プラント業界とは
「プラント」というのは、さまざまな機械・設備の集まった施設を指す言葉です。
たとえば代表的な「石油プラント」は、原油を使いガソリンや灯油などの石油製品をつくるプラントです。
石油プラント内には、製油設備・有害物質の排出設備・空調設備・運搬設備など、さまざまの機械や設備が用意されています。
そのように、さまざまな機械や設備が集まった施設をプラントと呼ばれます。
プラントには石油プラントの他にも、「LNG(液化天然ガス)プラント」「ごみ処理プラント」「水処理プラント」など色々な種類があります。
このようなプラントを建造している業界が、「プラント業界」です。
プラントは一つ作るのにも数千億円もの予算が掛かることもあり、高い技術力と多くの人員が必要となります。
プラント産業は欧米諸国が長い歴史をもちますが、日本でも第二次世界大戦以降に着々と成長し、今では国内の主要産業の一つとなっています。
プラント業界の役割
プラントは、私たちの社会を形作る重要なインフラの一つです。
プラントがなければ、ガソリンやガスなどは私たちの手元に届きませんし、ごみ処理や汚染水の処理もできません。
より品質の高いプラントでエネルギーを効率的に作り出し、社会を根底から支えるのがプラント業界の役割です。
またプラントを稼働させると、産業廃棄物やCO2が排出されます。
これは致し方ないことではありますが、プラントの品質や性能が上がれば、それらの排出を必要最低限に食い止めることもできます。
技術を追及し、よりエコロジーなプラントを開発することも、プラント業界のミッションとなります。
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プラント業界の企業の種類とビジネスモデル
プラント業界の一般的なビジネスモデル
プラント業界の主なお客さまは、石油会社(石油メジャー)や天然ガス会社など、資源系のメーカーです。
資源系のメーカーからプラント案件を受注し、プラントを建設することで利益を得ます。
これがプラント業界の一般的なビジネスモデルです。
またプラントは、建設後も保守・メンテナンス・改良などが必要となりますので、それらの対応で貰える利益も、プラント企業の大きな収入源となります。
総合重機メーカーのビジネスモデル
大手の総合重機メーカーの例としては、「三菱重工業」「川崎重工業」「IHI」などがあげられます。
この他にも、「東芝」「日立製作所」「三菱電機」など、総合重電メーカーもプランド事業を行っています。
これらはいわゆる「総合メーカー」であり、プラント事業も行っていますが、あくまで一つの事業に過ぎません。
この他にも、自動車・航空機・船・鉄道などさまざまな分野で、機械の開発や生産を手掛けています。
またこれらの企業は、多くの部門や関連会社をもち、会社規模や資本も莫大です。
さらには「三菱重工業」などは、バックに財閥の力もあります。
この手の総合メーカーは、そのような巨大なネットワークや莫大な資本を武器として、プラントビジネスを展開するケースが多いです。
専業プラント大手企業のビジネスモデル
大手の専業プラント企業の例としては、「日揮」「千代田化工建設」「東洋エンジニアリング」などがあげられます。
これらは、プラント事業を「専業」で行っている企業です。
大手の専業プラント企業は、専業としての長い歴史と技術力を持つため、プラントの企画・設計・調達・施工・保守管理までを、一社で幅広く手掛けます。
前述した「三菱重工業」や「川崎重工業」のような総合メーカーに比べると、会社全体の規模は小さくなりますが、プラント分野におけるシェアや売上は、総合メーカーに負けない実績を誇ります。
なお近年の新規プラントの案件は、特に新興国など海外が中心です。
このため大手の専業プラント企業では、海外展開にも力を注いでいます。
たとえば「日揮」ではこれまで80カ国以上でのプロジェクト遂行実績があります。
中小プラント企業のビジネスモデル
中小のプラント企業としては、「富士古河E&C」「ササクラ」「プラント・メンテナンス」などがあげられます。
中小のプラント企業では、プラントの設計、施工、メンテナンスなどを部分的に担当するケースが多いです。
ただし中小のプラント企業でも、得意分野を持っている会社などであれば、すべての工程を一括して請け負うケースもあります。
海外勢力について
海外の大手プラント企業としては、「GRUPO ACS(スペイン)」「HOCHTIEF AG(ドイツ)」「BECHTEL(アメリカ)」などがあげられます。
これらの企業は、プラント専業ではなく、あらゆる分野の建設を請け負うゼネコン(総合建設業者)でありますが、プラント分野にも力があり高いシェアを誇っています。
また昨今は、現代建設(韓国)、サムスン物産(韓国)など韓国系のゼネコン企業も、徐々にプラント分野で力を伸ばしています。
プラント業界の職種
一つのプラントを作り上げるにはたくさんの人の力が必要になり、職種もさまざまなものが用意されています。
ここでは、プラント業界の特有の職種のうち代表的なものを紹介します。
プラントエンジニア
「プラントエンジニア」は、プラント業界の技術職の総称です。
プラントに関する、企画・設計・研究・品質管理・保守など、技術関連のさまざまな仕事を担当します。
また、プラントエンジニアは大きく以下4タイプに分類されます。
・機械系プラントエンジニア
・化学系プラントエンジニア
・電気系プラントエンジニア
・土木系プラントエンジニア
この他も、解析エンジニア、情報ソフトウェアエンジニアなど、企業によっては複数のエンジニア職が用意されています。
プラントを作るには、プラント内に設置する機械を設計する「機械エンジニア」、プラントで生成する原料面を担当する「化学系エンジニア」など、あらゆる分野の専門家が必要となります。
もちろん一人のエンジニアでは対応できないため、各種エンジニア職にわけられ、各々の担当分野に注力していく形となります。
プロジェクトエンジニア
プラントの設計は、大勢のエンジニアがプロジェクトやチームを組んで進めていきます。
「プロジェクトエンジニア」は、それらプロジェクトをリーダーとして纏める職種です。
プロジェクトエンジニアの仕事は、プロジェクトのスケジュール管理・タスク管理・予算管理・人員管理などです。
その他、外部業者や他チームとの調整や交渉なども行います。
基本的には経験を積んだベテランのエンジニアが、プロジェクトエンジニアに任命されることが多いです。
施工管理
「施工管理」は、プラントを建設する際に、建設現場での管理や指揮を行う職種です。
プラント建設にあたっての工程管理・品質管理・安全管理などを行います。
施工管理の職種は現場に出向くことが多く、海外に長期間滞在することもあります。
なおプラントエンジニアが、施工管理の仕事を兼ねることもあります。
営業
「営業」は、プラントの受注活動や受注戦略、販売交渉などを行う職種です。
会社の顔としてお客さまとなるメーカーに出向き、交渉し新規の案件を受注してきます。
プラント業界の営業は、海外の顧客を相手にする機会も多いため、語学力が求められてきます。
また、プラントは大きな取引となりますので、お客さまからの高い信頼を得なければなりません。
プラント業界のやりがい・魅力
大きな仕事に関われる
プラント業界の仕事はとにかく規模が大きいです。
一つのプラントをつくるのに、何千億円という莫大なお金が動きます。
また、何十社もの会社が参加し、何百人何千人ものヒトがプラントの建設に関わります。
そのような規模の大きな仕事に関われるのが、プラント業界ならではの魅力です。
特に一次請けとなる大手企業に勤めると、その中心的なポジションで活躍することになりますので、より大きなやりがいを感じられるでしょう。
グローバルに活躍できる
プラントは海外に建設する案件が多く、プラント企業に勤めると海外で働く機会に恵まれます。
プラント業界では、とくに技術職が海外で働く機会が多いです。
大手であれば、入社からわずか数年で海外支社に赴任し、国外で設計などを行うこともあります。
「海外手当」など加算され、収入的にも恵まれることあります。
若いうちから世界を股にかけてグローバルに活躍したい人には、魅力的な業界といえるでしょう。
収入の高い業界である
プラント業界は、収入ベースが比較的高い業界です。
大手であれば、平均年収が1000万円に近い企業もあり、高収入が期待できます。
「福利厚生」や「教育制度」が充実している企業も多く、安定した地盤の環境で働くことができるでしょう。
ただし、大手と中小の待遇の差が大きい業界でもありますので、その点は頭に入れておく必要があります。
プラント業界の雰囲気
いまプラント業界では、30代後半〜40代の中堅層が不足している企業が多いです。
このため、新卒間もない若手であっても意見が通りやすく、また若手であっても濃い仕事を任させてもらえることもあります。
ただし、プラント業界では設立の古い老舗企業も多く、旧来の年功序列の文化が残っている会社もあります。
また、プラント業界は「残業」がやや多めの業界でもあります。
特に技術職ですと、納期間近などが忙しく、時期によっては長時間残業を迫られることもあります。
プラント業界に就職するには
就職の状況
プラント業界の多くの会社は、新卒者を対象とした定期採用を行っています。
大手であれば、毎年80人〜100人程度の新卒社員を採用しています。
新卒採用では、以下大きく2つのコースに分けられ、募集されることが多いです。
<技術職コース>
プラントエンジニアとして、企画、設計、研究、品質管理・保守などの技術系業務を行う(営業などを行う場合もある)
<事務職(総合職)コース>
営業、マーケティング企画、広報、総務、人事、法務など
プラント業界では、技術職の採用人数が多く、事務職はあまり採用されていません。
割合としては技術職5:事務職1が目安であり、技術職を50人採用している企業であれば事務職は10人程度しか採用していません。
とはいえ技術職を志望する理系の学生からは人気のある業界ですので、技術職の枠が多いからといっても簡単に採用されるとはいい切れません。
また大手ですと「インターンシップ」を実施している企業も多いです。
希望の企業により確実に採用されるためには、できればインターンシップにも参加しておきたいところです。
就職に有利な学歴・大学学部
大手のプラント企業の新卒採用では、技術職・事務職問わず、高専卒・4年制大学卒以上を対象としている会社が多いです。
大手の場合は「一般職募集」であっても高専卒・4年制大学卒以上としている企業が多く、高卒・専門学校卒・短大卒は対象から外されていることもあります。
技術職の場合は、基本的には理系の学部で専門分野を学んだ人を対象としています。
機械系プラントエンジニアを目指す人であれば「機械系学部」、土木系プラントエンジニアを目指す人であれば「建築学部」といったように、目指す分野と合った学部が有利になりやすいでしょう。
また技術職では「学校推薦制度」を導入しているケースも多く、学校からの推薦があればさらに採用で有利になることがあります。
事務職の場合は、全学部・全学科を対象としており、学部によって有利・不利が生じることは基本的にありません。
事務職の場合は、どちらかというと人物重視の採用となり、あなたのパーソナルな部分が会社にマッチしているかをチェックされます。
なおプラント業界では海外で働く機会が多いですので、「TOEIC」の点数、英会話力、留学経験なども評価の対象となることがあります。
就職の志望動機で多いものは
プラント業界への就職を目指す学生には、「インフラ面から社会貢献したい」という人が多いです。
たとえば「必要不可欠なインフラであるプラントを造ることで社会貢献したい」「プラントを通してエネルギー問題の改善を目指したい」「発展途上国の経済に貢献したい」などがあげられます。
社会貢献という目的が根底にあり、それを重要なインフラであるプラントを通じて実現したいと考える学生が多いようです。
その他、「語学力を活かし、海外で活躍したい」「プラント業界のスケールの大きさに惹かれた」などの志望理由もあります。
これらの理由も立派な志望動機であり、決して悪いわけではありませんが、それだけでは弱い部分もあります。
「その会社で仕事として何がしたいか」「将来どのようになりたいか」「どのように会社に貢献したいか」の部分まで掘り下げた上で伝えるのがよいでしょう。
プラント業界の転職状況
転職の状況
プラント業界では、新卒者を対象とした定期採用のほか、既卒者を対象とした「中途採用」も行われています。
プラント業界では今、30代後半〜40代の中堅プラントエンジニアが不足しています。
この世代はバブル崩壊後の不景気の煽りをダイレクトに受けたため、人数が少ないだけでなく技術継承も十分行われていない傾向があります。
したがって、経験豊富な30代後半〜40代の中堅層の人材は、プラント業界への転職において「売り手市場」となっています。
見合う経験やスキルがあれば、転職は決りやすく、また待遇的にも良いものが期待できるでしょう。
転職の志望動機で多いものは
プラント業界へ転職を目指す人には、「より自分の目的にマッチした環境で働きたい」という人が多いです。
たとえば「これまでプラントエンジニアとして働きながら〇〇分野の技術をより伸ばしたいと感じていた、御社にはその環境があると考えた」「より海外のプラント開発に携わりたいと希望しており、海外に強い御社に惹かれた」などです。
その他、「より待遇や福利厚生の整った会社を探していた」「プラントづくりに対する御社の情熱や考え方に惚れ込んだ」などもあります。
転職者の場合は、新卒よりもさらに具体的な目的をもって志望する人が多いです。
転職で募集が多い職種
プラント業界の転職で募集が多い職種は、技術職です。
30代後半~40代の中堅プラントエンジニアが不足していますので、各種プラントエンジニア職は積極的に募集されています。
また「プロジェクトエンジニア」などリーダー職も積極的に募集しています。
一方で「営業」や「人事」といった事務職の募集は、新卒同様に数は少なめです。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
プラント業界では、即戦力なる豊富な経験を求めています。
このため、同業他社でプラントエンジニアとして活躍していた経験が有利になります。
逆に、業界未経験の人、職種未経験の人の場合は、残念ながら採用される確率は低いといえるでしょう。
昨今の好景気により20代の若手層は積極的に新卒で採用していますので、あえて転職で未経験者を採用しようとするプラント企業は少ないのです。
プラント業界の有名・人気企業紹介
日揮
1928年創業。連結売上高7,229億円、連結従業員数7,841名(2018年3月期末)。国内最大手の専業プラント企業です。
石油・ガス・資源開発・石油精製・LNG・ガス処理など幅広い分野のプラントを手掛けています。
医療や原子力分野にも強みがあります。これまでに80か国以上、2万件以上のプラントプロジェクトの遂行実績があります。
千代田化工建設
1948年創業。連結売上高5,108億円、連結従業員数6,176名(2018年3月期末)。国内準大手の専業プラント企業です。
三菱石油の工事部門が独立した経緯をもち、わずか半世紀でプラント業界の大企業へ成長しました。
石油精製・石油化学・液化天然ガスなどの大型プラントを手掛けています。海外での実績も多数もっています。
東洋エンジニアリング
1961年創業。連結売上高3,356億円、連結従業員数4,085名(2018年3月期末)。
国内準大手の専業プラント企業です。日揮、千代田化工建設とともに「エンジニアリング御三家」と扱われます。
石油精製・石油化学・肥料製造などの大規模プラントを手掛けています。アジア・中東・欧州・ロシア・北米南米と世界各国に拠点をもち、グローバルに事業展開しています。
プラント業界の現状と課題・今後の展望
グローバルな競争が進むプラント業界
日本国内の新規プラント案件は頭打ちになっており、国内では今後、保守・メンテナンスが中心になっていくといわれています。
このためターゲットとなる市場は引き続き海外であり、特に新興国でのプラント建設競争が今後より進んでいくといわれております。
歴史の長い欧米や欧州のプラント企業、また近年は低コストを武器とした韓国や中国のプラント企業が勢力を伸ばしてきているため、これらとどう戦っていくかが今後の課題となります。
ITやAIの技術がより求められる
今後のプラント業界では、よりITやAIの最新技術が求められてきます。
・3次元CADなどのエンジニアリングITツール
・ITネットワークを用いた遠隔地へのハイクウォリティな運用・保守・メンテナンス
・AI(人工知能)を用いた、最適なプラント制御
など
プラント業界のIT化は2000年頃より進んではいますが、今後はこれまで以上に加速していくといわれています。
特にAI分野の新技術をいかに伸ばせるかが、今後の焦点となってくるでしょう。
業界としての将来性
プラント業界は2008年の「リーマンショック」前後は業績が落ち込んでいましたが、ここ最近は再び上昇が続いています。
背景には、「シェールガス」など新たな資源の開発が進んでいること、またエネルギー価格の値上げなどがあり、当面は伸びていく業界であるといわれています。
前述もしました通り、今後主なターゲットとなるのは国内市場ではなく海外市場です。
海外でのグローバルな競争をいかに勝ち抜けるかが、今後の焦点となってくるでしょう。
また、海外でのプラント建設には国際情勢も関係してきます。
国同士の関係が悪化するとプロジェクトが進まなくなるリスクもありますので、今後の国際情勢がどのようになっていくかも、日本のプラント業界の将来を左右するでしょう。
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