自動車部品業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
自動車部品業界とは
「自動車部品業界」とは、自動車そのものではなく、自動車に用いられる一つひとつの部品を製造する業界です。
自動車というのは、何万もの部品からなる製品です。
エンジンやトランスミッションに用いられる機械部品、車内のシートや内張に使われる繊維部品、センサーや照明といった電装部品など、自動車に用いられる部品は多岐にわたります。
また、カーナビゲーション・スマートエントリー・バックカメラのような、多くの部品からなるシステムも必要になります。
これらを、「トヨタ」や「日産」といった自動車メーカー(完成車メーカー)が、一社単独で作り上げることは困難です。
そのため、自動車部品を専門で作る業界があります。それが自動車部品業界です。
自動車部品業界の各会社がそれぞれの箇所の部品を作り、それらを自動車メーカーが束ねることで、自動車という一つの大きな製品が完成していきます。
自動車部品業界の役割
自動車部品会社の社会的役割は、より品質の高い部品を提供し、自動車の性能を底上げすることです。
たとえばエンジンや燃料系統に使われる部品の品質が高まれば、車のパワーだけでなく燃費性能も向上しますので、しいては環境問題の改善にもつながります。
また、車は一つ間違えば人の命を奪うものでありますので、自動車に用いられる部品一つひとつにも安全性が問われます。
より信頼性の高い部品を作り、安全なカーライフを世に提供することも自動車部品業界の役割です。
自動車部品業界はいってみれば縁の下の力持ち的な存在であり、自動車を形作る一つひとつの部品から、自動車社会のより良い発展を目指します。
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自動車部品業界の企業の種類とビジネスモデル
自動車部品業界の主なビジネス相手は、自動車メーカーです。
まず、自動車メーカーから部品製造の仕事を受注し、その後自社で部品の開発・製造を行います。
部品が完成したら自動車メーカーに納品し、自動車メーカーから対価を得て収益とします。
これが自動車部品業界での一般的なビジネスモデルです。
なお自動部品業界の会社は「メーカー系」、「独立系」の大きく2種類に分けられます。
両者でビジネスモデルが若干異なってきます。
メーカー系自動車部品会社のビジネスモデル
「メーカー系」の自動車部品会社の例をあげると、たとえばトヨタ系列であれば「デンソー」、「アイシン精機」、「「豊田合成」など。
日産系列であれば「ユニプレス」、「日産車体」、「ジヤトコ」などです。
メーカー系の自動車部品会社は、系列グループの自動車メーカーを主要な取引先としています。
たとえばトヨタ系列の自動車部品会社であれば、「プリウス」や「クラウン」などトヨタ車種の部品・システムを作ることが主な仕事となり、トヨタから対価を得ることでビジネスが成り立ちます。
買収や提携により、自動車メーカーの資本傘下に入っているケースも多めです。
独立系自動車部品会社のビジネスモデル
「独立系」の会社を例にあげると、「日本精工」、「スタンレー電気」、「曙ブレーキ工業」、「GSユアサ」、「アルプスアルパイン」など。
独立系の自動車部品会社は、取引先を一社に固定せず、国内外問わず幅広い自動車メーカーに対してビジネスを行っています。
たとえば「スタンレー電気」は、ヘッドライトやフォグランプなど、主に照明部品を作っている企業です。
トヨタ・日産・ホンダなど、国内数多くの自動車メーカーに対し照明部品を提供しており、取引先を一つに限定していません。
自動車部品以外のビジネスモデル
一部の自動車部品会社では、自動車部品以外のビジネスを展開している会社もあります。
たとえばトヨタ系列の「アイシン精機」は、パワートレイン部品・ブレーキ部品・車体部品など、幅広い自動車部品を手掛けている会社です。
しかし、その他にベッドやミシンなど、「住生活関連」の製品を自社製品として開発し、量販店などで市販しています。
このように自動車部品とは異なる分野の製品・サービスを展開しているケースもあります。
最近の自動車部品業界は、グローバル化の波も押し寄せ競争化が進んでおり、今後は自動車部品以外のビジネスを展開する会社がより増えていくともささやかれています。
自動車部品業界の職種
自動車部品を作り上げるにはたくさんの人の力が必要になり、職種もさまざまなものが用意されています。
ここでは、自動車部品業界の特有の職種のうち代表的なものを紹介します。
マーケティング・商品企画
「マーケティング・商品企画」は、これから新たに開発する自動車部品の企画を行う職種です。
自動車部品市場の調査・分析し、マーケットのニーズを把握した上で、今後自社ブランドとして開発していく新しい部品を企画していきます。
設計開発
「設計開発」は、技術エンジニアとして、開発プロジェクトの管理・設計書の作成・試作品の開発・開発した部品のテスト評価等の仕事を行う職種です。
社内でプロジェクトやチームを組み、周囲の人間と共同で進めていくのが基本です。
なお設計開発は技術系の職種となり、機械工学・材料工学など理系の専門知識が必要になるケースが多いです。
生産管理・生産技術
「生産管理・生産技術」は、工場で部品を生産(量産)する上での管理を行う職種です。
生産管理と生産技術の大まかな違いは次の通りです。
・生産管理:生産体制の立案・工場での人員管理・原料の発注管理など、文系よりの職種。
・生産技術:生産ラインで用いる機器の設計や改良など、理系よりの職種。
いずれの場合も共通するのは、工場でよりスムーズに部品が生産できるように働きかけていく仕事であるということです。
なお、生産管理・生産技術の職種は、自社の工場現場で働く機会が多いです。
工場作業員
「工場作業員」は、自社の工場で、製造機器の操作・部品の組み立て・検品を行う職種です。
細かな部品の組み立てや検品作業など、機械でオートメーション化できない部分を、工場作業員が人の手で行っていきます。
なお経験を積むと、前述した生産管理・生産技術の仕事を、工場作業員が行うこともあります。
自動車部品業界のやりがい・魅力
最前線でものづくりの喜びを味わえる
自動車産業は主要産業であり、高度な技術も求められるため、日本のものづくりの最前線です。
そのような環境の中で、自動車部品という形あるものを作れますので、ものづくりが好きな人にとっては大きな喜びが味わえるでしょう。
また自動車部品というのは、ドライバーの命を受け持つものでもあります。
そのような重要な品を世に提供しているというやりがいを、同時に感じることもできるでしょう。
グローバルに活躍できる魅力も
自動車部品がターゲットとする市場は、国内市場のみならず海外市場も含まれます。
大きな自動車部品会社であれば海外に支店や工場を構えており、将来的に「海外支社で設計開発や生産管理の仕事に携わる」、「海外自動車メーカー相手に営業を行う」などの機会もあるでしょう。
また、国内の自動車部品会社で培った経験は、海外の自動車部品会社でも活かせます。
日本のものづくりの技術は世界的にも評価が高いですので、将来的には海外の自動車部品会社へ転職できる可能性もあります。
安定した業界である
自動車部品というのは、自動車そのものがなくならない限り継続した需要があります。
したがって、自動車部品業界は浮き沈みの少ない安定した業界といえます。
ただし、昨今はEV(電気自動車)化の波などが押し寄せ、今後は従来のガソリン車部品が不要になる恐れもありますので、その点は頭に入れて置く必要があります。
自動車部品業界の雰囲気
自動車部品業界では、ベンチャー企業や新興企業などの若い企業が少なく、設立の古い老舗の企業が多めです。
取引相手となる自動車メーカーも老舗企業揃いですので、良くも悪くも業界全体に昔ながらの古い雰囲気が漂う部分があります。
また、ものづくりの業界ですので、エンジニア気質、職人気質の社員が割合としては多めです(ただし部署による)。
どちらかといえば、既に地盤のある枠組みの中で、こつこつとものづくりに励みたい方向けの業界といえます。
自動車部品業界に就職するには
就職の状況
自動車部品業界の多くの会社は、新卒者を対象とした定期採用を行っています。
大手であれば、毎年80人~100人程度の新卒社員を募集しています。
新卒採用では、以下大きく2つのコースに分けられ募集されることが多いです。
・技術職コース:設計開発・生産技術など
・事務職(総合職)コース:営業・生産管理・マーケティング企画・経理人事など
自動車部品業界は就職先として常に人気のある業界であり、特に理系の学生から人気があります。
有名大学の学生も多々応募してきますので、簡単に就職が決まる業界とはいえません。
また大手ですと「インターンシップ」を実施している企業も多いです。
希望の企業により確実に採用されるためには、できればインターンシップにも参加しておきたいところです。
就職に有利な学歴・大学学部
技術職の場合、募集学歴は高専もしくは4年制大学以上としている会社が多く、高卒・専門学校卒・短大卒では応募できないことがあります。
有利になるのは理系の学部であり、とくに「機械工学」や「電子工学」など工学系の学部が優遇されやすい傾向があります。
また技術職では、学校推薦制度を導入しているケースも多く、学校からの推薦があればさらに採用でプラスになることがあります。
続いて事務職(総合職)の場合、募集学歴は4年制大学以上としている会社が多いです。(ただし一般職(エリア総合職)であれば、高卒・専門学校卒・短大卒も含める会社もあります)。
事務職(総合職)の場合、有利になる学部・不利になる学部というのは基本的にありません。
学部よりも人物重視の採用となることが多く、あなた自身の魅力を伝えることが重要になります。
就職の志望動機で多いものは
自動車部品業界への就職を目指す学生には、「車が好き」という人が多いです。
たとえば「車いじりや自動車レースを見るのが好きで、車に関わる仕事がしたかった」、「幼い頃から車が好きで、日本のトップ産業である自動車産業にも関心があった」など。
車自体に興味があり、それが高じて自動車部品業界を志望する学生が割合としては多めです。
ただし、車が好きというのも立派な志望動機であり悪いわけではありませんが、それだけでは弱い部分もあります。
「その会社で仕事として何がしたいか」、「将来どのようになりたいか」、「どのように会社に貢献したいか」の部分まで掘り下げた上で伝えるのがよいでしょう。
自動車部品業界の転職状況
自動車部品会社では、新卒者を対象とした定期採用のほか、既卒者を対象とした「中途採用」も積極的に行われています。
中途採用が行われるタイミングは不定期ですが、大手であれば年間を通して常に企業ホームページで中途社員を募集していることもあります。
ただし新卒採用のように一度に何十人も募集することはなく、募集人数は1職種あたり若干名と少なめです。
また自動車部品会社は中途採用でも人気な業界であり、大手企業出身の経験・ポテンシャルの高い人も応募してきますので、新卒採用同様に簡単に就職が決まる業界とはいえません。
転職で募集が多い職種
自動車部品会社の中途採用で多い職種は、「設計開発」や「生産技術」といった技術職です。
さらに技術職の場合は「ステアリング部品の設計開発」、「駆動ユニットの設計開発」など、職種や仕事内容を狭く具体化して募集されることが多いです。
一方、「営業」や「マーケティング企画」といった事務職の募集は、技術職に比べると求人数は少なめです。
ただし、大手であれば事務職であっても通年で募集しているケースもあります。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
自動車部品業界は専門性の高い業界でもあるため、同じ自動車部品業界で働いていた人をターゲットとして採用募集するケースが多めです。
たとえば、設計開発であれば「これまでに他社の自動車部品会社で、同様の部品の設計開発を行っていた」、営業職であれば「これまでに自動車部品業界でBtoBの営業を行っていた」など。
とはいえ、新しい風を社内に取り入れようとする会社も昨今は増えてきています。
自動車部品業界以外であっても、活かせる職務経験があり、自社にプラスになると判断された人材であれば採用されるケースもあります。
ただし、業界未経験であり職種も全くかけ離れた異業種の人の場合は、採用されるのはやはり難しくなるでしょう。
自動車部品業界の有名・人気企業紹介
デンソー
1949年創業。連結売上高51,082億円、連結従業員数168,813名(2018年3月期末)。国内最大手の自動車部品会社でトヨタ系列です。
自動車用の電装部品(熱機器・電子機器・情報機器など)を中心に手掛けています。
前身はトヨタ自動車の開発部門ですが、現在はトヨタ以外の幅広い自動車メーカーに部品を提供しています。
アイシン精機
1965年創業。連結売上高39,089億円、連結従業員数114,478名(2018年3月期末)。
国内準大手のトヨタ系列の自動車部品会社であり、国内外に210社の連結子会社を持ちます。
パワートレイン部品・ブレーキ部品・車体部品など、幅広い自動車部品を手掛けています。
主要取引先はトヨタとなるが、昨今はホンダやプジョーなど他自動車メーカーにも部品を提供しています。
日本精工
1914年創業。連結売上高10,203億円、連結従業員数31,861名(2018年3月期末)。
国内準大手の自動車部品会社で、独立系であり、独立系自動車部品会社としては国内最大手です。
ベアリング部品やパワーステアリング部品に強みをもち、世界的にみてもトップクラスの市場占有率を誇ります。
また自動車に限らず、新幹線から電化製品まで幅広い分野にベアリング部品を供給。
その他にも、工作機器用の部品や半導体機器用の部品の製造も行っており、事業内容は多岐に渡っています。
自動車部品業界の現状と課題・今後の展望
競争化が進む自動車部品業界
これまでの自動車部品業界は、「系列」で縛られていた傾向がありました。
たとえばトヨタであれば、トヨタ系列の自動車部品会社に部品を発注するのが通例でした。
しかし昨今の自動車メーカーは、系列以外の自動車部品会社からも、部品を調達する動きをみせています。
また自動車部品会社側も、系列に縛られず幅広い自動車メーカー相手に部品を提供する動きが進んでいます。
さらには、国内海外の垣根も薄れ「国内の部品会社が海外自動車メーカーに部品を提供する」、「海外部品会社が国内の自動車メーカーに部品を提供する」といった動きも始まっています。
系列や国内海外の縛りが減り、グローバルに競争化が進んでいるのが、今の自動車部品業界です。
次世代に向け再編が進む
昨今の自動車部品業界では、同業他社同士の買収や合併が行われ、業界の「再編」が進でいます。
国内の「カルソニックカンセイ」がイタリアの自動車部品会社「マニエッティ・マレリ」を買収、フランスの「フォルシア」が日立系列の「クラリオン」を買収するなど、グローバルな再編も進んでいます。
業界再編の背景には、一つの理由として自動車の進化があります。
今後は「EV(電気自動車)」や「自動運転車」など、次世代の自動車が普及するといわれています。
次世代の自動車が普及した場合、従来の部品では対応できなくなる恐れがあり、また新規部品の開発にはこれまで以上に高度な技術力や資本力も求められてきます。
そのような時代の変化に適応するためにも、同業他社と手を組み、生き残りを図る自動車部品会社が増えてきています。
これが自動車部品業界の今であり、業界の再編は今後より進んでいくともいわれています。
業界としての将来性
自動車部品業界は日本国内の主要産業です。
今後も自動車そのものがなくならない限り、また取引先となる自動車メーカーがなくならない限り、存続する業界といえるでしょう。
ただし前述もしました通り、今後は次世代の自動車が普及し、クルマの概念自体が大きく変わっていく可能性が高いです。
「Google」などの海外巨大企業も、次世代自動車市場へ参入する動きをみせています。
そのような岐路に差し掛かっていますので、今後は自動車メーカー、自動車部品会社ともに新しい取り組みも必要となっていくでしょう。
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