映画業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





映画業界とは

映画業界とは、映画を制作し一般に公開するまでに関わる事業全体のことを指します。

事業は大きく「制作」「配給」「興行」の3つの部門に分類することができ、「製作」とはその名の通り映画作品の製作を行うことで、「配給」は映画作品を買い取り全国の映画館へと配ること、「興行」は映画館の運営のことをいいます。

映画業界では、この3つの部門全ての業務を自社やグループ会社内で行っている大手企業もあれば、それぞれの部門に特化した企業もあり、映画監督俳優、CG制作、編集、翻訳、買い付け、宣伝、劇場の運営管理などその職種も非常にバラエティ豊かであることが特徴です。

インターネットによる動画配信などの影響から一時は低迷状態が囁かれていた映画業界ですが、近年は3D映画の普及やシネマコンプレックスの拡大、ヒット作に恵まれたことなどから映画館への来場者数は増加傾向にあります。

国内においては、近年アニメ作品やテレビドラマや漫画を映画化したものなど、邦画が若い世代を中心に人気を集めており、日本の映画市場全体としては好調な状況が続いています。

映画業界の役割

文学、演劇、美術、音楽、建築など芸術のあらゆる要素が含まれる映画は、しばしば総合芸術とも呼ばれ、鑑賞することによって人々を精神的に豊かにするだけではなく、その時代に繁栄した文化や芸術などを後世へ伝えていく手段のひとつでもあります。

また、ドキュメンタリー映画によって知られざる真実を伝えたり、自国で製作された映画作品を海外で上映し、各国の文化を大衆へと発信することで国際間における相互理解を促進するなど、エンターテイメント以外の側面も多く含まれるものです。

さらに、ロケ地となった地域の新興や、関連する音楽作品や書籍、グッズの売上など、映画作品のヒットによる経済効果にも目を見張るものがあります。

このようなことからも、良質な映画作品を作り続けること、そしてその映画作品をより多くの人に届けることこそが映画業界の役割といえるでしょう。

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映画業界の企業の種類とビジネスモデル

製作会社

映画の企画、脚本づくりや選定、資金集め、俳優のキャスティング、スタッフの決定、撮影、編集など製作に関する業務を行う会社です。

業務によっては外部のスタッフに発注することもありますが、基本的には1本の映画につき企画から完成に至るまでの全てを1つの会社が行います。

国内では製作だけでなく配給、興行も行う「東宝」「東映」「松竹」の大手映画会社3社の他に、「日活」や「ギャガ」など独立系の製作会社が多数存在します。

海外では「パラマウント」や「ウォルト・ディズニー」「ワーナー・ブラザーズ」などが有名です。

配給会社

製作会社が作った映画を買い付け、その映画を全国にある映画館に配ったり、映画の宣伝や公開の調整を行う会社です。

海外映画の買い付けにおいては海外の映画製作会社から直接買い付けることもあれば、映画祭に参加して出品されている映画を買い付けることもあります。

国内では「東宝」「東映」「松竹」の大手映画会社3社に加え、「アスミック・エース エンタテインメント」「AMGエンタテインメント」などがあります。

海外では製作会社としても知られる「ユニバーサル」や「ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント」なども有名です。

興行会社

映画館を運営し、映画の上映を行う会社です。

具体的には映画館の清掃、チケットやグッズの販売といった現場での仕事以外に、上映日や上映期間などのスケジュールを決める仕事なども含まれます。

なお、興行会社が映画館の入場料として得た収入、いわゆる「興行収入」のうち40~70%を配給会社に支払う仕組みとなっています。

国内では「イオンシネマズ」や「ユナイテッド・シネマ」「TOHOシネマズ」などが大手興行会社として知られています。

映画業界の職種

映画業界では「製作」「配給」「興行」の各部門それぞれにさまざまな職種が存在します。

以下ではその中でも特に特徴的な職種についてご紹介します。

シナリオライター

日本語では脚本家を意味し、映画のストーリーを作成する仕事です。

企画の段階から担当するケースもあれば、プロデューサーなどによって立てられた企画をもとにストーリーを作成するケース、小説や漫画など既にあるものを映画向けに脚色するケースなどさまざまです。

単純にストーリーを考えるだけではなく、映画作品として売れるストーリーを考えなければならないため、時代のニーズを読み解く力なども求められます。

編集技師

映画の撮影ではストーリーに沿って撮影が行われているわけではなく、ロケ地や出演者のスケジュールの都合により、撮影の順序はさまざまです。

編集技師の仕事ではそのようにして撮影された膨大なカットの中から最も最適なものを選び、余韻やリズムなどの演出を考えながら、それぞれのカットをストーリーの順序に並べて繋ぎ合わせる作業を行います。

映画バイヤー

海外の映画の買い付けをする仕事で、配給会社に所属しています。

映画に関する情報を収集し、映画会社から直接買い付けたり、フィルムマーケットや映画祭に参加をして映画を上映するための権利やテレビで放映するための権利、DVDにするための権利などを買い付けます。

売れる映画を見つけるためのセンスや映画に関する知識、交渉力や語学力、マーケティング力などが求められる仕事です。

映画プロモーター(映画宣伝)

配給会社の宣伝部などに所属し、映画に関する宣伝戦略を考え、展開する仕事です。

予告編やポスター、記者会見や舞台挨拶、商品のタイアップといった各種プロモーション活動を組み合わせながら、さまざまなジャンルの映画の宣伝を行います。

プロモーションの展開次第では観客動員数を大幅にアップさせることも可能なため、多忙ながらも非常にやりがいのある仕事といえます。

映画業界のやりがい・魅力

さまざまな魅力があふれる刺激的な仕事

映画業界の仕事は多岐にわたるため、そのやりがいや魅力もさまざまです。

製作に関する仕事であれば、チーム一丸となって一つの作品を作り終えた時のやりがいや、公開された時の感動は何ものにも代えがたいものがあります。

また、配給に関わる仕事であれば、プロモーション活動を通して俳優や監督、マスコミ関係社など多くの人との出会いがあり、そこからたくさんの刺激を受けることも少なくありません。

さらに、興行に関する仕事では、映画によって多くの人が楽しんだり感動したりする現場に立ち会うことができ、自分もエンターテナーの一員である喜びを感じることができるでしょう。

待遇は大手と中小で大きな差がある

映画業界では、「東宝」「東映」「松竹」といった大手映画会社に勤務するか、中小規模の映画会社に勤務するかによって待遇に大きな差があります。

勤務地や年齢などによっても異なりますが、大手映画会社の場合は平均年収が800万円前後、中小規模の映画会社では平均年収400~500万円ほどともいわれています。

また、アルバイトからスタートし、経験を積みながらキャリアアップしていくケースも少なくないようです。

市場規模拡大のチャンスが常にある業界

映画業界ではヒット作が多く生まれれれば生まれるほど興行収入が増え、市場規模が拡大していくため、映画が作られている限りは常に市場拡大のチャンスがあるといえます。

例えば数々のヒット作を手がけた宮崎駿監督や、出演する映画が次々とヒットをするトム・クルーズのようなカリスマが登場すれば、市場が一気に拡大することも考えられるでしょう。

また、近年では体験型の映画館も増えており、ソフト面だけではなくハード面でもまだまだ市場拡大のチャンスが眠っている状態です。

映画業界の雰囲気

働く人の特徴としては、やはり基本的に「大の映画好き」で、映画について熱く語れるマインドを持った人が多い印象です。

しかし、映画業界では採用に関して学歴や学部をあまり重視しない傾向にあるため、経歴や考え方などさまざまな個性を持つ人が働いています。

かつては体育会系のイメージが強かった映画業界ですが、近年は特に体育会系というわけではないようです。

また、中小はもちろん大手の映画会社であっても社員数はそれほど多くないため、比較的アットホームな雰囲気で、製作、配給、興行それぞれの現場において、コミュニケーションを取る機会は多いようです。

さらに、製作の現場ではクリエイティブな要素の強い業務が多いものの、配給会社や興行会社においては映画という商品でいかに売上げを伸ばすかといったビジネス的要素の強い業務が多いでしょう。

映画業界に就職するには

就職の状況

映画は大人だけではなくアニメ映画や特撮映画など子どもの頃から親しみをもっている人も多く、映画業界は就職先として希望する人も多い人気の業界です。

しかしながら、大手映画会社であってもその社員数は数百名程度のため、新卒採用での採用人数も10~20名程度と少なく、就職難易度は非常に高いといえます。

また、大手映画会社に就職できたとしても、必ずしも映画製作や配給に関わる仕事に就けるとは限りません。

ただし、映画業界と一口に言ってもその分野は業種はさまざまですので、大手映画会社だけにこだわらず、中小の映像制作会社や興行会社の劇場スタッフなどに範囲を広げることで映画業界へ就職できる可能性を高くすることができるでしょう。

なお、映像制作会社に関しては即戦力を求める傾向にあるため、アルバイトやインターンから始め、経験を積みながら正社員にステップアップするというケースも多いようです。

就職に有利な学歴・大学学部

映画業界のうち、特に配給会社や興行会社の場合は、学部や学科によって選考に影響がでることはなく、文系出身者がやや多いものの、理系出身者でも就職は十分可能です。

ただし、大手映画会社に関しては大卒または大学院卒を条件としていることが多いようです。

また、映画が好きであったり、映画に関する知識があることや、業種によっては海外に出向くこともあるため、英語などの語学力があるとなお良いでしょう。

製作会社においては即戦力が求められるため、アルバイトや中途採用からの入社が多い傾向にありますが、カメラや音響など、専門的な仕事に就きたい場合には専門学校などでそれぞれの専門分野について学んでおくと実務に役立つでしょう。

就職の志望動機で多いものは

映画業界への就職を希望する人の志望動機としては「映画をより多くの人に観てもらいたい」「多くの人が観たいと思える映画を作りたい」「映画を通じて日本の文化を世界に発信したい」などといった理由が多いようです。

そして、映画業界を目指す人のほとんどは映画好きであるという共通点があります。

そのため、「どれくらい映画が好きか」を伝えるだけでは単純に憧れだけで志望していると取られる可能性もあり、アピールとしては弱くなってしまいます。

志望動機を考える際には、映画への想いを情熱を持って伝えると同時に、その想いをビジネスとしてどう展開していきたいかといった内容も盛り込むようにしましょう。

映画業界の転職状況

転職の状況

大手映画会社を含め、中途採用やアルバイト採用などから映画業界への転職は可能です。

ただし、映画配給会社に関しては新卒・中途ともに採用枠は極めて少なく、中途採用の場合は経験者であることが必須条件となるでしょう。

また、特定の職種に強いこだわりがなく、映画に関する仕事を希望するのであれば、新卒採用と同様に映像制作会社や劇場スタッフなど範囲を広げてみることもおすすめします。

転職の志望動機で多いものは

新卒採用の志望動機と同様に、やはり映画が好きであることに加え、「映画を通じて多くの人のを楽しませたい」「映画製作に関わりたいという夢が諦めきれない」といった理由が多いようです。

また、マスコミ業界で宣伝や広報に関わる仕事をしていて、映画の宣伝や広報に関わる仕事をしたいと考え、映画業界への転職を目指す人もいます。

映画業界では新卒採用の枠が少なく、即戦力になる人材が好まれる傾向もあるため、業界は違っても、映画業界で生かせる経験があればその経験も踏まえた志望動機を考えてみるとよいでしょう。

転職で募集が多い職種

新卒採用の場合は総合職での採用も多いですが、転職の場合には専門職の募集も多く、その種類は多岐にわたります。

製作の分野では、CGデザイナーや映像編集、翻訳、映画パンフレットの制作などがあり、配給の分野は、広報や宣伝企画、販促グッズなどの企画や営業、人事などの事務系職種ものもあります。

興行の分野では劇場スタッフやチケットの予約対応といった接客や販売系の職種が多いでしょう。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

中途採用の場合は学歴は不問としている募集が多く見られます。

製作系の職種では画像編集ソフトや映像編集ソフトの知識や使用経験があると実務に役立てられることが考えられますが、未経験者を歓迎する募集も見られます。

新卒時と同様に転職の場合も特別な資格は必要ないものの、映画が好きであることに加え、普通自動車免許の取得は最低限しておきたいところです。

映画業界の有名・人気企業紹介

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東宝

1932年設立。連結売上高2,335億4,800万円(2017年2月期)、連結従業員数3,032人(2016年2月時点)。

国内最大手の映画会社で、映画の製作・配給・興行以外に不動産や演劇などの事業も展開している。

興行成績上位作品には「千と千尋の神隠し」「君の名は」などがある。

東宝 ホームページ

東映

1949年設立。連結売上高889億(2014年2月期)、連結従業員数343人(2019年3月時点)。

映画の製作、配給、興行だけでなく、テレビ番組の製作なども数多く手掛ける。

興行成績上位作品には「ONE PIECE FILM」シリーズや「仮面ライダー」シリーズなどがある。

東映 ホームページ

松竹

1895年設立。連結売上高1,088億(2011年3月期)、連結従業員数540人(2019年2月時点)。

映画の製作、配給、興行のほか、演劇の制作や歌舞伎の興行も行う。

興行成績上位作品には「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや「男はつらいよ」シリーズなどがある。

松竹 ホームページ

映画業界業界の現状と課題・今後の展望

競争環境

邦画による興行収入が好調な国内では「東宝」「東映」「松竹」の大手映画会社3社が映画業界を牽引している状態です。

また、2013年以降国内のスクリーン数は増加傾向にあり、現在国内にあるスクリーンのうち8割以上はシネマコンプレックスによるものといわれています。

海外の映画業界においては生き残りをかけたM&Aが活発化しており、最近ではウォルト・ディズニー社による21世紀フォックス社の買収が話題となりました。

最新の動向

映画上映のデジタル化とともに、近年は多くの映画館で立体的な映像が楽しめる3D上映が行われていますが、最近ではその3D映像にさらに風や水しぶき、香りなどを加え、映画の世界をよりリアルに体験できるシステム「4DX」の導入が世界各国で進められています。

その他にも、あらゆる方向からサウンドを流すことで力強い音響を演出する「ドルビーアトモス」や、独自の座席構造や音響・映像技術による臨場感が楽しめる「IMAXシアター」など、体験型の劇場システムが続々と登場しています。

業界としての将来性

2018年に伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」が世界中で大ヒットしたことは記憶に新しいですが、映画業界においては、映画の需給が続く限り、今後もこのようなさまざまな種類のヒット作が登場する可能性は十分にあります。

また、次世代シアターが拡大・進化することにより今後映画館が「観る」コンテンツから「体感する」コンテンツに生まれ変わり、発展していくことも考えられます。

さらに、DVDやテレビ放映のみならず、今後はインターネット配信を利用したさまざまなコンテンツでの二次利用による更なるビジネスの展開にも期待ができるでしょう。

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