法科大学院とは

専門職大学院の1つに「法科大学院」があります。

弁護士裁判官など、いわゆる法曹を目指している人は一度は耳にしたことがあるでしょう。

法科大学院とはどのような機関なのか、学べる内容や通うメリット、入試や学費などについてまとめました。

法科大学院への進学を検討している人は、ぜひ参考にしてください。





法科大学院とは?どんなことを学べる?

将来、法曹として活躍したい人の多くが法科大学院に進学して学んでいます。

では、法科大学院とは具体的にどのようなことを学べる機関なのでしょうか。

大学の法学部を修了していない場合でも法科大学院に進学できるのか?法科大学院を修了しないと法律家になれないのか?といった疑問を持っている人もいることでしょう。

まずは法科大学院について基本的な事項を整理します。

法曹(法律家)を目指すための第一歩

法科大学院は法曹養成に特化した教育機関として、2004年より開校されました。

法曹を目指す人が主に司法試験合格のための知識を習得することを目的とした教育機関であり、ロースクールと呼ばれることもあります。

令和元年の司法試験では、全国の法科大学院から4,081名が受験し、このうち1,187名が合格しています。

参考:令和元年司法試験法科大学院等別合格者数等

同年の司法試験受験者数が4,466名、合格者が1,502名だったことを踏まえると、受験者の9割以上が法科大学院から受験していることが分かります。

このように、法科大学院は法曹を目指すための第一歩として位置づけられています。

法学未修者コースと法学既修者コースのちがい

法科大学院には法学未修者コースと法学既修者コースの2つがあります。

法学未修者コースでは、入学時点での法律学習の有無は問われません。

法科大学院入学後に法律を学んでいく人のためのコースとして設置されています。

法学未修者コースの修業年数は3年です。

一方、法学既修者コースでは入学前に法律について学んでいることが前提となっています。

そのため、入学試験においても法律科目試験が課され、法律の知識が問われます。

大学の法学部を卒業していない人であっても、学力の基準を満たせば法科大学院の既習者コースに入学することができます。

法学既修者コースの修業年数は2年です。

《法学未修者コースと法学既修者コースのちがい》

法学未修者コース 法学既修者コース
法律の知識 問われない 問われる
修業年数 3年 2年
大学の法学部卒業 卒業者も入学可能 卒業前でも入学可能

なお、2019年の大学入学者より、法学部に「法曹コース」が新設されています。

法曹コースとは司法試験合格に特化したコースで、大学の法学部を3年で早期卒業し、法科大学院の既習者コースに進むことができます。

法曹になるまでの時間的・経済的負担を軽減できるコースとして注目されています。

法科大学院に行かなくても法律家になれる?

司法試験合格者の中には、人数としては少数派ですが法科大学院から受験していない人もいます。

この中には、司法試験予備試験を受験して合格した人が含まれています。

予備試験とは法科大学院修了程度の知識・能力を問うための試験で、2011年より開始されました。

法律家になるには法科大学院を修了していることが原則とされていますが、経済的事情で法科大学院に通うことができないケースも考えられることから設置されました。

司法試験予備試験に合格すれば、法科大学院に行かなくても法律家になることができます。

ただし、司法試験の難易度と実際の合格率を鑑みると、大半の人が法科大学院を経由して法律家になっているのが実情です。

令和元年の司法試験予備試験受験者は7,750名、合格者は314名で、このうち大学以外から受験している人は1,236名です。

参考:令和元年司法試験予備試験受験状況(大学別・全体)

社会人や司法浪人生など、大学以外から司法試験予備試験を受験している人も一定数いることがうかがえます。

法科大学院に進学するメリット・デメリット

法科大学院に進学するメリット

法科大学院に通う最大のメリットは、修了すれば司法試験を確実に受験できることが挙げられます。

予備試験の合格率はおよそ4%程度と非常に低いことから、実質的に法科大学院を修了したほうが司法試験の受験資格をスムーズに得られることが分かります。

また、法科大学院では大学の法学部のような大人数の授業とは異なり、少人数で教員との双方向のやりとりが行われます。

他の学生の考えを知る機会があり、多くの気づきを得られることが法科大学院に通うメリットとして挙げられます。

法科大学院に進学するデメリット

法科大学院に進学するデメリットとして、学費が高額になりやすい点が挙げられます。

一般的な大学院と比べても、学費は高い部類に入ります。

大学4年間でかかる学費に加え、法科大学院でも学費を納入することになりますので、トータルで考えると経済的負担は相当な水準になります。

将来的に司法試験に合格し、法律家になって十分な収入を得るための先行投資として考えることもできますが、法科大学院に入ったからといって必ず法律家になれるとは限りません。

大学を卒業して就職した同期が収入を得ている中、学費の負担が発生し続けることはデメリットといえます。

法科大学院の入試と学費

法曹を目指すための入口ともいえる法科大学院ですが、入試や学費はどのようになっているのでしょうか。

法科大学院は専門職大学院の1つであり、進学するには入学試験に合格しなければなりません。

法科大学院入試で行われる入試の概要と、かかる学費の目安について理解しておきましょう。

法科大学院入試で行われる試験

法科大学院の法学既修者コースでは、法律基本7科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法)が出題されます。

一部の法科大学院では行政法や商法を出題しないケースも見られますが、一般的には法律基本7科目は必須となると考えていいでしょう。

したがって、法科大学院の既習者コースへの進学を目指すのであれば、大学の法学部在学中から法律基本7科目は徹底的に勉強しておく必要があります。

一方、法学未修者コースでは一般的な大学院と同様、面接や小論文といった人物中心の選抜が行われます。

一見すると未修者コースのほうが法科大学院へ入学しやすいように思えますが、法科大学院進学の目的が司法試験合格であることを踏まえると、入学後の負担は大きくなります。

法科大学院の学費

国立大学の法科大学院の学費

国立大学の法科大学院は入学金・授業料が一律で決まっており、どの法科大学院に進学しても学費は同じです。

《国立大学の法科大学院 学費(初年度)》

入学金 282,000円
授業料(年間) 804,000円
初年度納入金 1,086,000円

私立大学の法科大学院の学費

私立大学の法科大学院の場合、進学する大学院によって学費が異なります。

同じ大学から進学する際は入学金や施設設備費など、学費の一部が減免されることもあります。

《私立大学の法科大学院 学費(初年度)の一例》

慶應義塾大学 中央大学 同志社大学
入学金 100,000円 300,000円
※出身者は半額
280,000円
※出身者は半額
授業料(年間) 1,440,000円 1,400,000円 972,000円
その他費用 472,900円 300,000円 154,000円
初年度納入金 2,012,900円 2,000,000円 1,406,000円

法科大学院で奨学金は利用できる?

法科大学院においても一般的な大学院と同様、奨学金制度を利用することができます。

日本学生支援機構による奨学金の場合、無利子奨学金と有利子奨学金があります。

無利子奨学金は月50,000円または88,000円から選ぶことができ、返還期間は最長20年です。

成績優秀者に対する返還免除制度あり、返還額の全額または半額を免除されることがあります。

有利子奨学金は月額5万円〜22万円を選択することができます。

一般的な奨学金は月額5万円〜15万円ですが、法科大学院の学費が高額になりやすいことを加味して19万円・22万円を選択することができるようになっています。

このほか、各法科大学院が独自に設ける奨学金制度もあります。

経済的な理由で法科大学院への進学を迷っている人は、奨学金制度の活用を検討しておくといいでしょう。

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法科大学院に進学する際の注意点

法科大学院に進学する人の大半は、将来は法曹として活躍したいという強い決意を持っているはずです。

しかしながら、司法試験は国内の資格試験の中でも最難関レベルといわれています。

法科大学院に進学する際には、将来を見据えてしっかりと見通しを立てておく必要があります。

法科大学院に進学する際の注意点について確認しておきましょう。

法科大学院入学はゴールではなくスタート地点

法科大学院には、法曹を目指すという志を同じくする人が集まり、共に切磋琢磨していきます。

司法試験合格に向けて勉強に集中する環境としては適していますが、流れに乗っていけば自然と合格へと近づいていけるほど甘くはありません。

法科大学院を修了後、5年間のうちに合計3回まで司法試験を受験することができます。

別の言い方をすると、法科大学院を修了したからといって司法試験に合格できる保証はなく、何度も受験して不合格になり続けることも十分あり得ます。

実際、令和元年の司法試験合格者の平均年齢は28.9歳で、最高年齢は65歳という結果になっています。

このように、法科大学院入学は決してゴールではなく、司法試験合格に向けてのスタート地点であることを肝に銘じ、勉強に邁進しなくてはなりません。

法科大学院修了者の司法試験合格率は決して高くない

令和元年の司法試験では、法科大学院からの受験者4,081名のうち合格者は1,187名であり、合格率はおよそ29%でした。

たとえ法科大学院を修了しても、司法試験に合格できる人はそのうちの3割にも満たないことを十分に理解しておく必要があります。

出願者 4,537名
受験予定者 4,506名
受験者 4,081名
短答式試験の合格に
必要な成績を得た者
2,906名
最終合格者 1,187名

参考:令和元年司法試験法科大学院等別合格者数等

司法試験では短答式試験の得点が合格水準に達していた場合のみ、短答式試験と論文式試験の成績を総合して合否が判定されます。

上の結果から、論文式試験で不合格となった人が相当数いることが確認できます。

とくに論文試験に関しては、法科大学院の修了者も苦戦していることを念頭に置き、自分で十分な対策を講じて司法試験にのぞむ必要があります。

この記事のまとめ

法曹を目指す人にとって、法科大学院は司法試験の受験資格を得る上で重要な位置づけとなるのは間違いありません。

ただし、法科大学院に通ったからといって必ず法曹になれるわけではない点に注意が必要です。

法科大学院への入学は法曹を目指すためのスタート地点に立つことであり、ゴールではないことをしっかりと理解しておきましょう。

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