税関職員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「税関職員」とは
全国の空港や港で、輸出入貨物の審査・検査や手荷物の検査、不正薬物の密輸取締等を行う。
税関職員とは、日本各地の税関にて、税に関する申告の受付、輸入や輸出に関する書類のチェック、品物の検査などを行う国家公務員です。
日本から品物を海外に輸出するとき、また、海外から日本へ輸入するときに、関税や消費税などがきちんと払われているかをチェックして輸入や輸出の許可を出します。
また、麻薬や覚せい剤、銃などが不正に国内に持ち込まれないように水際で取り締まる役割も果たしています。
こうした税関職員の仕事は、凶悪犯罪やテロ行為を未然に防ぐことにもつながります。
税関職員として働くには、人事院が行う「国家公務員採用総合職試験」を受験し、財務省に採用される必要があります。
特別な資格は必要ないものの、採用試験の応募者は多く、競争倍率は高くなっています。
グローバル化が進む社会において税関職員の活躍にはますます期待が高まっており、強い使命感をもった熱意ある人材が求められています。
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「税関職員」の仕事紹介
税関職員の仕事内容
税関で輸出入を監視したり、税率のチェックなどを行う
税関職員とは、日本各地の税関にて、税に関する申告の受付、輸入や輸出に関する書類のチェック、品物の検査などを行う国家公務員です。
グローバル化が進む現代社会では、日本は世界中の国々と品物の売買を行っています。
また、たくさんの人が海外旅行に出かけるようになり、日本から物品を持ち出したり、現地で自由に買い物をして持ち帰ったりしています。
このような数々の品物に対して、法にもとづいて税金がきちんと支払われるように監視するのが税関職員の役割です。
また、輸出入を扱う企業である「通関業者」が申告する税率が正しいかどうかをチェックするのも重要な仕事内容の一部です。
麻薬など違法物の取り締まりにも力を入れる
税関職員は、麻薬や覚せい剤、銃などが不正に国内に持ち込まれないように水際で取り締まる役割も果たしています。
麻薬探知犬とともに、違法物の取り締まりにあたる税関職員は「ハンドラー」とも呼ばれます。
密輸事犯の大口化や多様化が問題視されている現代社会において、税関職員の仕事は、凶悪犯罪やテロ行為を未然に防ぐことにもつながります
税関職員になるには
国家公務員試験を受験して採用を目指す
税関職員になるには、まず「国家公務員採用総合職試験」もしくは「国家公務員採用一般職試験」のいずれかを受験する必要があります。
総合職試験を突破して内定を得た人はいわゆる「キャリア」と呼ばれ、将来の幹部候補として活躍しますが、総合職で税関に配属される人は毎年10名に満たず、非常に狭き門となっています。
現場で働く職員のほとんどは、一般職試験のルートで採用された人たちです。
試験合格後に各本関で実施される採用面接を受け、それにパスすると税関職員として採用されます。
高卒からでも税関職員を目指せる
国家公務員試験の総合職の大卒程度試験と、一般職の受験資格は「21歳以上30歳未満の者」と定められており、この年齢の範囲であれば受験が可能です。
また、一般職試験(高卒者試験)は、高卒もしくは中等教育学校卒の学歴ですぐに受験することができるものとなっています。
業務上必要な知識やスキルは採用後の研修によって学べるため、受験の時点で必要とされる資格などはありません。
まずは採用試験合格のための対策を十分にとっておくことが重要です。
関連記事税関職員になるには? 難易度・必要な資格・高卒でもなれる?
税関職員の学校・学費
総合職試験は難関大学の学生が有利に
国家公務員採用試験は、試験区分によって求められる学歴が異なります。
税関職員は「総合職試験」と「一般職試験」の両方から採用されていますが、総合職試験を受けるには「大卒以上」の学歴が必要です。
学部・学科は問われませんが、総合職には官僚を目指す東京大学や京都大学などの超一流大学の学生が多数集まるため、並大抵の学歴では合格は困難です。
税関職員としての採用人数も10名程度と非常に少なく、狭き門となっています。
一般職試験は幅広い学歴から応募できる
もう一つの一般職試験は複数の区分で実施されており、必要な学歴が異なります。
「大卒程度」試験は四年制大学、短大、高専卒のいずれか、そして「高卒程度」は高卒または中等教育学校卒の学歴があれば受験可能です。
試験科目は「試験の区分」で選ぶことができるため、文系・理系問わずにチャレンジしやすい試験となっています。
門戸は広く開かれていますが、国家公務員という安定した地位が得られることもあって税関職員の人気は非常に高く、競争は熾烈です。
税関職員の資格・試験の難易度
長い努力が必要になる難関
国家公務員試験の難易度は非常に高いことで知られています。
ハイレベルな総合職試験はもちろんですが、一般職試験も相当な難関で、合格のために必要な勉強時間は1000~1500時間といわれています。
国家公務員として基礎的な幅広い能力が問われる筆記試験の結果のみならず、面接による人間性も重視されます。
十分な試験対策をしておかないと、なかなか合格は難しいでしょう。
なお、税関職員は空港や港で勤務し、外国人との関わりも多いため、世界的に通用する「英語力」を身につけておくことが推奨されます。
学生時代にはとくに英語の勉強に力をいれておくとよいでしょう。
税関職員の給料・年収
国家公務員の給与に準ずる
税関職員の給料は、国家公務員の給与規定に基づいて支給されます。
総合職と一般職では給与に違いがあり、幹部を目指していく総合職の人のほうが高めの水準となっています。
ただし、税関職員の大半は一般職として採用されています。
その場合の年収は、20代だと400万円台ですが、30代からは約420万円〜540万円、40代になると約490万円〜680万円、50代では約610万円〜730万円と、年齢とともに確実にアップします。
基本的には年功序列の色が濃い給与体系となっていますが、仕事で成果を出して出世していくことでも給料の上がり幅は大きくなります。
国家公務員としての手厚い福利厚生も
国家公務員である税関職員は、福利厚生も充実しています。
異動もある仕事ですが、住居に関しては手当がつくほか、希望すれば公務員宿舎の利用も可能です。
もちろん他の国家公務員と同様、各種休暇制度や年に2回のボーナスの支給、社会保険や退職金制度なども揃っています。
近年では育児関連のサポート制度もますます充実しており、男女問わず、長く仕事と家庭を両立させて働ける環境が整ってきています。
関連記事税関職員の年収はいくら? 給料や空港税関についても詳しく解説
税関職員の現状と将来性・今後の見通し
国際化とともに税関職員の重要性は増していく
税関職員は、税制や貿易に関する知識、高い語学力などが必要となる非常に専門性の高い仕事です。
国家公務員であるため、景気に左右されることなく安定した働き方と収入が見込めます。
また、有給休暇や育児休業などの制度も整っているため、女性にとっても働きやすい職業として今後も人気を集めるでしょう。
世界経済の国際化が進み、人やモノの往来が活発化している昨今、密輸入や脱税などを水際で食い止めるため、税関職員の働きはますます重要になってくると考えられています。
一方で、以前よりも税関職員の業務内容は複雑化しており、また多忙になっているといわれることも多いため、厳しい状況に直面しても、熱意をもって職務を遂行できる志のある人材が求められています。
税関職員の就職先・活躍の場
主要な活躍の場となる税関は全国各地にある
税関職員の主要な勤務先は、財務省の地方支分部局にあたる「税関」です。
「本関」と呼ばれる大きな税関は、函館・東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・門司税関・長崎・沖縄地区の9ヵ所にあります。
各税関には、人事や広報などを担当する総務部、入国審査などを行う監視部、貨物検査を行う業務部、企業を調べる調査部の4部署があり、税関職員はいずれかの部署で働きます。
さらに、各税関には支署、出張所、監視署もあり、これらもあわせると、日本全国に約200ほどの活躍の場があります。
国家公務員である税関職員は、基本的に数年単位での異動を繰り返しますが、総合職採用の職員が全国転勤である一方、一般職採用の職員は、いずれかの本関が管轄するエリア内に限って異動を命じられます。
税関職員の1日
日勤勤務と当直勤務がある
税関職員の働き方は、大きく分けると「日勤勤務」と「当直勤務」があります。
「通関審査」や「事後調査」などにあたる職員は、一般的に8:30〜17:15の税関の開庁時間に合わせた日勤となります。
一方「空港旅具」や「海港取締」を担当する職員の場合には、24時間体制の空港や港で働くために特徴も含まれます。
ここでは、通関審査を行う税関職員の1日を紹介します。
税関職員のやりがい、楽しさ
日本の安全を守る社会的意義の高さ
税関職員は、国の玄関口である空港や港で、不審者や違法物が入ってくるのを食い止める、文字通り「関所」としての役割を担っています。
税関職員の日常業務は書類審査などコツコツとした地味なものが多いですし、規則に沿って確実に業務を遂行することが重視されるため、決して華やかだったり目立だったりする職業ではありません。
しかし、日本の安全を守る仕事の社会的意義は大きく、やりがいを感じながら働くことができるでしょう。
また、日本にいながらにして外国語を使ったり、外国人との関わる機会が多い仕事であるため、語学の得意な人は自分の能力を生かしやすいことも魅力です。
税関職員のつらいこと、大変なこと
不正を見逃さないために常に緊張感を保つ
税関職員は、業務を通じて「不正を見逃さないこと」を役割とするため、勤務中は気を抜けるときがありません。
もし入国審査で怪しい海外渡航者を見れば、麻薬や覚せい剤を所持していないか疑い、湾内や港で不審船を見れば、密輸業者ではないかと疑わなければなりません。
普通の人々のなかに紛れ込んだ、ほんの一握りの犯罪者を見つけるために、非常に高い緊張感を保ち続ける必要があります。
このため、精神をすり減らしやすい大変な仕事といえます。
また、入国者や出国者は24時間365日いつでもいるために、多くの職場では早朝や深夜、年中無休で不規則なシフトを組んで働かなくてはならないのも大変な一面です。
税関職員に向いている人・適性
事務仕事を苦手にせず、集中力のある人
税関職員は、膨大な量の輸出入申告書の処理や、大量の海外渡航者の入国・出国審査をしなければなりません。
それらを限られた時間内に滞りなく処理するためには、高い事務処理能力が必要になります。
税関職員には、書類作成など地道でコツコツとした作業、デスクワークが得意な人が向いているでしょう。
また、忙しい業務のなかにあっても、ほんの些細な違和感や不審な点に気付けるだけの注意力や観察力を維持できなければ、犯罪を未然に防ぐことは困難です。
集中力があり、緊張感を抱えながらも実力を発揮できるような、ストレス耐性が強いことも重要です。
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税関職員志望動機・目指すきっかけ
正義感が強く、治安を守りたいという人が多い
税関職員を志望するのは「社会悪を取り締まりたい」と考えるような、正義感の強い人が多いようです。
グローバル化が急速な勢いで進展している現代では、犯罪も国際化する傾向が強まっています。
こうしたなか、税関職員は日本の平和を守るために自身の語学力や海外経験を生かせる稀有な職業です。
警察官とはまた違った角度で、治安維持に貢献することができるのが魅力といえいます。
なお、税関職員になるための国家公務員試験を突破した後には、採用面接において志望動機が必ず問われるため、自身の熱意をうまく伝えられるよう、きちんと準備しておきましょう。
関連記事税関職員の志望動機と例文・面接で気をつけるべきことは?
税関職員の雇用形態・働き方
女性が活躍しやすい環境
税関職員は、財務省の税関に所属する国家公務員です。
通常の国家公務員採用試験をパスして採用された人の場合、正規雇用の職員として勤務できます。
税関職員は「犯罪を食い止める」という責任の重さから、精神的に厳しい仕事であることは確かでしょう。
しかし、体力が問われたり長時間の移動が必要になったりすることはまずないため、女性でも活躍しやすい職業といえます。
もちろん男女によって待遇に差がつくことはありませんし、出産育児に関する福利厚生制度も充実しているため、近年は女性の税関職員が増えています。
国際的に活躍したいけれども、私生活とのバランスも取りたいと考える女性にとって、税関職員は非常に有力な職業の一つとなるでしょう。
税関職員の勤務時間・休日・生活
部署によっては不規則な生活となる
税関職員の勤務時間は、他の公務員と同様1日8時間程度に定められています。
ただし空港や港が1日中稼働している関係上、配属される部署によっては不規則な勤務体系となります。
空港などで荷物検査や入国審査をする場合や、輸出入する船を監視する業務の場合には、毎日24時間を交代で働くシフト制勤務となり、早朝の勤務や当直が入ることもあります。
休日についても、必ずしも土日祝日になるとは限りません。
海外渡航者はお盆休みや年末年始に増える傾向にあるため、世間一般の会社員と同じように、まとまった休暇を取得することは難しい場合があります。
ただ、国家公務員としての休暇制度は充実しており、ワークライフバランスを重視した働き方がしやすくなっています。
税関職員の求人・就職状況・需要
求人数は決して多いとはいえない
税関職員は、国家公務員の「総合職」と「一般職」のどちらかで採用されます。
総合職として採用される税関職員はきわめて少なく、毎年3~8人程度の採用しかありません。
一方、一般職については全国にある本関ごとの採用となり、それぞれ大卒程度区分で20人前後、高卒程度区分で15人前後となる場合が多いです。
近年は外国人観光客が急増している影響で職員一人あたりの業務量は増加傾向にあるため、採用人数は徐々に増加傾向にあります。
しかし、日本の厳しい財政事情を勘案すれば採用人数が大幅に増えることは想定しにくく、それでいて応募者の数は非常に多いことから、今後も厳しい競争が続くと考えられます。
税関職員の転職状況・未経験採用
社会人から税関職員になる道もある
転職希望者が受験することが想定される国家公務員一般職採用試験では、学歴要件のほか「30歳未満」という年齢制限が設けられています。
それらをクリアしていれば、民間企業に勤めている場合などであっても受験は可能です。
ただ、大学や予備校などで集中的に対策を積んだ新卒の学生と同じ採用枠のなかで競うことになるため、勉強に充てられる時間が限られる社会人は、やや不利になりやすいといえます。
なお、民間企業や官公庁などで、大卒以上の場合は7年、高卒・短大卒の場合は11年以上の勤務経験があれば「選考採用試験(係長級)」の試験を受けて税関職員を目指すことも可能です。
社会人が受けられる国家公務員試験はいくつかあるため、それぞれの受験資格をよく確認しておきましょう。
税関職員の総合職と一般職の違い
採用ルートや期待されるキャリアに違いがある
税関職員は、採用された試験の種類により「総合職」と「一般職」の2種類の人がいます。
総合職は、いわゆる「キャリア組」といわれるもので、「国家公務員採用総合職試験」から採用され、将来は幹部を目指していきます。
一方、一般職の職員は「国家公務員採用一般職試験」から採用され、現場のエキスパートとして税関を中心に活躍します。
総合職のほうが給与水準が高いですが、出世競争は非常に厳しいものとなります。
税務業務の経験を生かして海外勤務や他省庁への出向をする機会もあります。
ただし、税関職員の大半は一般職の職員であり、こちらの場合は各地の税関において経験を積みながら、中堅幹部を目指していきます。
高卒から税関職員になるには
高卒の学歴で税関職員として働く人も多い
税関職員は、高卒からでも目指すことができます。
高卒の人は「国家公務員採用一般職試験(高卒者試験)」を受けるのが一般的です。
こちらの試験の受験資格は「高等学校または中等教育学校を卒業した人」となっているため、高卒の学歴でも問題なく試験を受けられます。
ただし、高校や中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して2年を経過した場合には、この試験の受験資格がなくなってしまうため注意が必要です。
高卒から一般職試験で採用された場合も、一般職採用の大卒者と同じように各地の税関で勤務します。
初任給は大卒よりも多少低めに設定されていますが、その後、業務経験を積んで昇任していけば収入はアップしますし、一定の役職に就くことも可能です。