ボカロPの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「ボカロP」とは
ボーカロイドを駆使して楽曲を作るプロデューサー
ボカロP(ボカロピー)は、最近の若者にとっては憧れの職業のひとつともいわれています。
しかし、まだまだ新しい職業なだけに、その仕事内容がよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
ここでは、ボカロPの歴史や仕事、有名なボカロPについてご紹介します。
まず、「ボカロ」というのは音声合成ソフトであるVOCALOID(ボーカロイド)のこと、「P」というのはプロデューサーのことです。
一般的には、ボーカロイドを使って楽曲を制作したり発表したりする音楽家のことをボカロPと呼びます。
もともとボーカロイドはヤマハが開発した音声合成技術です。
2000年頃からこうしたテクノロジーを使った楽曲制作が注目されるようになり、インターネットの動画投稿サイトに作品が続々と投稿されるようになりました。
メロディーと歌詞を入力することで歌声を合成することができるので、生身の人間である歌手がいなくても楽曲を完成させることができます。
芸能界でアイドルや歌手をプロデュースする音楽プロデューサーに比べると、ボカロPはメディアへの露出も少なく、仕事内容が見えにくいかもしれません。
しかし、ボカロPの作る楽曲のなかでも人気のある曲は圧倒的な再生回数を誇り、広告収入も莫大なものになります。
最近では、ボカロPを経てシンガーソングライターや音楽グループで活躍している人もたくさんいます。
老若男女に人気のある米津玄師さんや、YOASOBIのAyaseさんが有名です。
これからもボカロPは幅広い活躍が期待されています。
「ボカロP」の仕事紹介
ボカロPの仕事内容
ソフトを使って楽曲を制作して投稿する
ボカロPの仕事は、自分のセンスやアイディアを駆使しながら新たな楽曲を生み出すことです。
ただし、一般的な音楽プロデューサーのように特定の歌手やアイドルをプロデュースするわけではありません。
パソコンと楽曲制作ソフトを使って音楽を作り、ボーカロイドというソフトを使ってデジタル技術で歌声にする。
それをインターネットの動画投稿サイトに投稿して多くの人に自分の曲を聴いてもらうのが仕事になります。
それでは、具体的な仕事の流れを見てみましょう。
まず、曲を考えるときはタイトルやコンセプトを決めるところから始めます。
「元気が出るような応援歌」「失恋の悲しみを語る歌」「ファンタジーの世界観で描く歌」など。
自分のなかにある漠然としたイメージを形にします。
テーマを決めたら次は作曲と作詞です。
この作業に関しては、どちらを先にするかはボカロPによってさまざまです。
楽器経験者の場合はメロディー先行で作る、歌手経験者の場合は歌詞先行で作る、など個人のキャリアによっても異なるのでしょう。
作曲と作詞で大まかな曲の形ができたら、パソコンを使ってDAWといわれる楽曲制作ソフトで音楽を作ります。
オーケストラの指揮者になったような気持ちで、「ここはピアノの和音」「ここは打楽器のリズム」とさまざまな音色を打ち込むこともあります。
全体の音楽ができたら、それぞれの音量を上げ下げしたり音色にエコーなどの効果をかけたりしてバランスを調整します。
楽曲ができたらいよいよボーカロイドのソフトを使って音声技術で歌わせます。
自分のイメージ通りになっているか、ヘッドフォンやスピーカーを通して丁寧にチェックすることが大切です。
こうして無事に完成したら、インターネットに投稿して反響を待ちます。
固定のファンがついていれば、新曲を発表するたびにリアクションをもらうことができるでしょう。
ボカロPになるには
名曲を生み出してネットの注目を集める
昔は、音楽プロデューサーというのは、専門的な音楽の勉強をした人しか就くことのできない職業でした。
音大を出ていたり、歌手やミュージシャンとしての経験があったり、音楽業界で働いていたりしなければ、簡単になれるものではなかったのです。
しかし、ボーカロイドによる楽曲制作や動画投稿サイトが世の中に広まってから、一般人が音楽の仕事に参入するハードルが下がっています。
学歴も職歴も関係ない。
楽器の経験も歌手としてのスキルもいらない。
年齢や性別も関係ない。
名曲や神曲と呼ばれるような楽曲を生み出して、インターネット上で大きな注目を集めれば誰でもボカロPとして活躍できる時代になったのです。
ですから、ボカロPになりたいのであれば、学歴や資格にこだわる必要はないでしょう。
ただし、楽譜も読めない、コードネームもわからない、耳にする音の音程も判別できない、という状態で楽曲が制作できるほど甘くはありません。
このあたりは、音楽の専門学校に行ったり、独学で楽典を学んだりして、自分で知識とスキルをつける必要があります。
ボカロPを目指す人のなかには、専門学校のクリエイターコースや音大の編曲コースで学ぶ人もいます。
こうした経験は必須ではありませんが、音楽の仕事をするのであれば必ず役に立つでしょう。
この他には、ヒットしている楽曲をたくさん聞いて曲の構成を勉強すること。
楽曲制作をコツコツ続けてたくさん投稿することが、夢への近道になります。
ボカロPの給料・年収
ヒット曲が出れば高収入に
ボカロPとして活動している人の収入は、個人によって大きな差があります。
学業や仕事の合間にあくまでも趣味としてやっている人も多い業界なので、平均年収を出すことは難しいのが現状です。
確実にいえるのは、結果がすべての厳しい世界だということです。
時給で給料がもらえるわけではなく、ボーナスや福利厚生もありません。
ヒット曲がない場合、収入がゼロということは決して珍しくないのです。
むしろ楽曲を制作するために必要なパソコンやソフト、モニターやスピーカーなどの機材の購入費を考えれば、赤字ということもあります。
ボカロPだけでは収入が不安定なので、バンドマンや歌手、アレンジャーとして音楽業界で仕事をしながら楽曲制作するというケースも少なくありません。
もちろん、ボカロPのなかには、この仕事だけで生計をたてている人もいます。
一部の有名ボカロPはヒット曲を何曲も持っており、インターネットでは「歌ってみた」動画がたくさんあふれています。
カラオケで歌われれば印税が入りますし、小説家や映画化などの展開があればさらに収入は増えます。
才能がある人にとっては、年収1000万以上を稼ぐことは決して難しくありません。
芸能人やミュージシャンのように「売れれば高収入」「売れなければ収入はゼロ」という世界です。
本業としてやっていきたいのであれば、覚悟を持って飛び込むことが大切でしょう。
ボカロPの現状と将来性・今後の見通し
新たな活動の場が広がるボカロP
ボーカロイドを使った作曲が世間に広がり始めたのは、2007年頃のことです。
「初音ミク」という名前やキャラクターの姿を目にしたことがある人は多いでしょう。
当時は、どんなに人気のあるボカロ曲であっても、インターネットの世界でのヒット曲でしかありませんでした。
しかし、時代の移り変わりとともに、その風潮は変わり始めています。
今やボカロ曲がカラオケの上位にランクインすることは当たり前。
人気のボカロ曲の世界観を小説化や映画化したりすることも増えてきています。
ボカロPを経てシンガーソングライターとして活躍する米津玄師さんのような人も、これからもっと増えてくるかもしれません。
ボカロPは、まだまだ可能性に満ちた仕事といえるでしょう。
ボカロPの1日
楽曲制作と音楽活動を両立することも
ボカロPとして活動している人は、音楽の仕事だけで生計を立てている人と、副業や趣味の人がいます。
ここでは、バンド活動をしながら楽曲制作をしているボカロPの一日のスケジュールをご紹介します。
ボカロPのやりがい、楽しさ
音楽的なセンスを生かして活躍
ボカロPの仕事の面白さは、自分の音楽的なセンスやアイディアをフルに発揮することができるところです。
ボーカロイドのような技術が誕生する前は、楽曲を作りたいと思っていても、ミュージシャンや歌手がいなければ演奏することができませんでした。
才能はあるものの、頭のなかのイメージを楽曲という形にできないままという人もたくさんいたのです。
しかし今では、最新技術を使うことでたった一人で楽曲を作って歌として配信することが可能です。
音楽が好き、作曲に興味がある、エンターテインメントの世界に携わりたい。
そんな人にとって、ボカロPは自分の可能性を無限に広げていくことができる仕事となるでしょう。
ボカロPのつらいこと、大変なこと
反響がなければ仕事もなくなる
ボカロPは、若者にとっての憧れの職業のひとつです。
音大や音楽の専門学校で学んだことがある人。
歌手やミュージシャン、作曲家としての経験がある人。
アニメやゲームなどのエンタメの世界が好きな人。
性別や年齢を問わず、楽曲を制作してインターネット上で発表しながら夢を追う人はたくさんいます。
しかし、実際にプロのボカロPとして生計を立てていける人はほとんどいないのが現状です。
多くの人が、自分の楽曲にほとんど反響がないという厳しい経験をすることになります。
ボカロPとして活躍するのは想像以上に狭き門なので、生半可な覚悟ではやっていけないことは間違いないでしょう。
ボカロPに向いている人・適性
音楽的な才能があり、流行を生み出すセンスがある人
ボカロPとして活躍するためには、どのような適性が必要なのでしょうか。
まず、何よりも求められるのは音楽的な才能です。
子どもの頃から耳がよくて絶対音感がある。
ピアノやギターなど楽器を演奏することができる。
歌詞やメロディーを考えるのが得意である。
そんな特技がある人は、ボカロPとしての適性があるといえるでしょう。
さらに、こうした特技に加えて、ボカロPだからこそ求められるものもあります。
ボカロPの楽曲を聞くのは、主に10代から20代までの若者になります。
今の世の中で、若い世代の心を掴むためにはどんな音楽がよいのか。
常に自分の頭で考え、新たな流行を生み出していくセンスと感性が必要不可欠でしょう。
ボカロP志望動機・目指すきっかけ
自分のペースで楽曲を作りたい
ボカロPを目指す人は、もともと音楽が大好きな人が多いようです。
バンドで楽器をやっていた、歌うことが得意、ハモリやアレンジを考えるのが好き、ボカロPの楽曲をよく聞いている。
そのうちに「自分も作曲してみたい」と思うようになり、楽曲制作ソフトやボーカロイドを使って挑戦するうちにボカロPの面白さを知る。
そんな人は決して少なくありません。
昔に比べると、今の時代は、一般人が作曲をして自分の曲を多くの人に聞いてもらうハードルが圧倒的に下がっています。
軽い気持ちで「やってみたい」と思うことから始めてみるのもよいでしょう。
ただし、プロとして生計を立てていけるのはほんの一握りの人だという厳しい現実は知っておきましょう。
ボカロPの雇用形態・働き方
幅広い活動をする人も
ボカロPとして働いている人は、会社員ではなく個人事業主として働いていることが多いのが特徴です。
楽曲の企画、制作、発表はもちろんのこと、SNSを使ったファンとの交流。
権利関係の処理、業界関係者からのお問い合わせにも対応します。
もちろん、個人事業主ですから経費を計算して確定申告をしなければいけません。
まさに、一人で音楽事務所を経営するようなものです。
安定した収入を得ることは難しいですが、ヒット曲が出れば高収入を得ることも可能です。
ボカロPのなかには、楽曲制作だけではなく音楽家としても活動している人がいます。
この場合、バンドに参加して演奏したり、歌手としてライブ活動をしたときの収入も増えることになります。
個人によって、働き方や収入は実にさまざまなのです。
ボカロPの転職状況・未経験採用
学歴も職歴も関係なく転職できる
ボカロPは、誰でも転職で挑戦することができる仕事です。
学歴や資格は必要ありませんし、職歴も関係ありません。
「一度は音楽業界を諦めたけど、やっぱり夢を追いたい」という会社員が転職を目指すこともあります。
パソコンやソフト、モニターやスピーカーなどの機材も簡単に揃えることができます。
もちろん、だからといって転職して簡単に収入を得られるほど甘い世界ではありません。
コツコツと楽曲制作を続けてインターネットに投稿し、まずは多くの人に聞いてもらう機会を作る必要があります。
一曲でもヒット曲が出ればファンがついてくれる可能性が高いので、そこまでは粘ることが大切です。
転職を目指すのであれば、売れるまでの間の生活をどうするかという問題と向き合い、しっかり考えておきましょう。
ボカロPになるのに必要な機材・ソフト
DAW(作曲ソフト)とボーカロイドが必須
ボカロPを目指すためには、どのような機材が必要なのでしょうか。
ここでは、最低限揃えておいたほうがよい機材についてご紹介します。
まず必要なのはパソコンです。
デスクトップ型でもノート型でもかまいませんし、MacでもWindowsでもかまいません。
最新型である必要もありません。
ただし、容量が大きく速度が速いもののほうがラクなことは間違いないでしょう。
楽曲制作は集中力が命なので、ストレスなく作業ができる環境を整えておくことが大切なのです。
USBで接続する機材もあるのでUSBポートがあるほうが便利です。
また、音のチェックをするために、オーディオインターフェイス、モニター、スピーカー、ヘッドフォンあたりは必ず揃えましょう。
さらにボカロPにとって何よりも重要なのが、楽曲をパソコンで作るためのDAWソフトです。
これはいわゆる楽曲制作ソフトのことで、楽器ごとに音を打ち込んだり編集したりすることができます。
DAWはフリーソフトから高価格帯のものまでさまざまなメーカーから商品が出ています。
時代の流れに合わせて続々と発売されているので、「DAW」で検索して最新のものを探すのがおすすめです。
これでパソコン上で作曲ができるようになるわけですが、これだけではボカロ曲は完成しません。
作った曲をデジタル技術で歌わせるために、ボーカロイドなどのソフトを使う必要があります。
ボーカロイドのソフトは公式HPから購入することができるので、パソコンの動作環境を確認したうえで購入するとよいでしょう。