ダンスを辞めようと思った瞬間と踊り続ける秘訣
自分なんかがプロになるのは無理なのか、そう諦めかけた練習生時代。
そしてプロになってからは怪我との格闘など、決して平坦ではなかった今までのキャリア。
それでも今、プロのダンサーとして活動を続けられる理由について。
もう辞めようかなと立ち止まった日
まだプロになる前で、舞踊団の研究生という立場だった頃。
踊りの基礎から礼儀まで厳しく指導される日々。
皆ができることが一人だけできない。
いくら練習してもできず、怒られてばかりの日々。
努力が足りないのか、センスがないのか、それとも気持ちの問題なのか?
毎日反省して練習に励むも、舞踊団の先輩たちとの壁は大きく、いつまでたっても追いつけそうな気配がありませんでした。
毎日スタジオに通ってはダメ出しをされるうちに、いつしか本来の踊る楽しさを忘れて、怒られないためにはどうしたらいいのかと消極的な気持ちになってしまいました。
精神的にも追い詰められて、自分は才能がないのかと落ち込みました。
スタジオからの帰り道、公園でしばらく佇みながら頭に浮かんだのは、全く世界は違うけどやはり会社員を辞めて夢を追いかけて海外へ渡った友人の顔でした。
気がついたら彼に謝っていました。
ごめん、これ以上夢を追い続けられないかも…そのまましばらく動けませんでした。
もう少しで諦めるところでしたが、ギリギリ踏みとどまってなんとか前へ進めたのは、応援してくれる仲間の顔、そしてどうしてもプロになりたいという気持ちでした。
本気でダンサーになりたいのか!?
結局5年ほどいた舞踊団を辞めて、新しい先生に習うことにしました。
舞踊団員になれるまでは辛抱して頑張ろうと思ってきましたが、煮詰まって出口がみえなくなってしまったので、思い切って環境を変える時だと決断しました。
結果的にそれが転機となり、踊り始めた頃のモチベーションも取り戻して、数年後にコンクールでも賞を取りました。
プロとしてキャリアが花開き始めました。
舞踊団時代を否定するわけではありません。
実際そこで基礎をみっちり仕込んだ結果、別の先生に習った時に一気に成長することができました。
プロ野球やサッカーでも、監督が変わると急に輝く選手がいます。
一つの組織でうまくいかないからと諦める前に、環境を変えてみることは一つの選択肢かと思います。
また、どこまで本気でダンサーになりたいのか試されていたのだと思います。
その程度で諦めてしまう想いなのか。
実際、「プロになりたい!」という気持ちを強く持っていなかったら、辞めていたでしょう
怪我で引退危機?
プロで活動を始めてからは、今度は怪我で引退の危機に直面しました。
公演本番前のリハーサルで膝を痛めてしまい、階段が降りられなくなりました。
原因がわからず、かつ長い時間かけて準備してきた公演だったので、なんとか冷やしたりして乗り切りました。
しかし公演が終わってから病院へ行き、精密検査の結果を見て愕然としました。
半月板の損傷と言われ、レントゲンでくっきり線が見えました。
よくサッカー選手の怪我としてニュースで見ますが、まさか自分がなるとは思ってもいませんでした。
「引退」の二文字が頭をよぎり、目の前が真っ暗になりました。
歩くのさえ困難で、踊るどころではなかったので、その後の公演予定を全部キャンセルしました。
手術を受けても根本的原因を解消しないとまた繰り返す可能性が高いので、いろいろ治療法を探した結果、ダンサーの治療に精通する整体の先生を紹介してもらい治療してもらうと同時に体のメンテナンスのためにピラティスも始めました。
私が踊っているダンス、フラメンコは激しく足を踏むので、膝を痛めやすいのですが、軸がしっかり使えていないから膝に余計な負荷がかかっていました。
踊り続ける秘訣
手術をしても、そのままの体の使い方をしたらまたいつ再発するかわかりません。
その意味で、時間はかかりますが自分の体としっかり向き合い、むしろ怪我そする前よりもしっかりと体幹を身につけ、理にかなった体の使い方を身につけたことで、怪我をする前よりも、体をうまく使えるようになりました。まさに怪我の功名、でした。
いまでも100%完治してはいませんが、体に少しくらい爆弾を抱えている方が、体を常にケアしようという意識が働くので、かえって良いのかもしれません。
若い時はパワーと勢いで突っ走れますが、それでは必ず限界がきますので、私としては良いタイミングで自分を見つめ直す機会になったと、今ではむしろ感謝しています。
心技体と言いますが、やはり踊りもどれが欠けてもうまくいきません。
日々の練習に加えて、体と心のメンテナンスが、長期的に活動するための秘訣かと思います。