新規ホテル立ち上げ時の仕事とは? ホテル開発の仕事を紹介
ホテリエ貞吉です。現在、40代後半でサラリーマンをしております。
おそらくこちらの文章を読んでくださる方はホテル業界に興味がある、もしくはホテル業界への就職を決めたという方がほとんどのはずです。
ホテルに就職をしたら、フロントやレストランのウェイターなど接客の場面で活躍をしたいという方が多いのでしょうか?
一方でホテルは不動産業の側面もあり、接客ではなくホテルの建物の管理や新規ホテルの開発といったホテルと不動産に関わる仕事に就きたいと考えていらっしゃる方もいるはずです。
今回はホテルと不動産の中から、新規ホテルの開発に関わる仕事を紹介します。
私がどのようにしてホテルの開発の仕事に辿り着いたのか。
私がホテル開発の仕事に辿り着くきっかけは、入社3年目に不動産に関わる仕事をしたことです。
私は大学卒業後にホテルに入社。
東京都内のラグジュアリーホテルに配属され、宴会サービス(宴会場のウェイター)を最初に担当しておりました。
ホテルの入社説明会や入社後のオリエンテーションなどで、入社2~3年目(当時)の先輩社員が壇上に出て、ご自身のお仕事の話をされるのですが、いずれの方も接客の現場か営業や一般管理部門(人事や経理)でご活躍されている方ばかり。
ホテル開発をされている方は皆無でした。
私自身、ホテルの不動産に関わる仕事があるとも思っておらず、話を聞いた当時も現場でウェイターをした後は、入社前からやりたいと思っていたウェディングプランナーや宴会場の営業の仕事をしたいと思っていました。
しかし、入社後2年間現場の仕事をした後に異動したのは、本社の経営企画室。
国内で20ほどあるホテルチェーンの本社部門での仕事でした。
本社と聞くと、華やかな意味での「すごいところ」と想像しがちですが、実際は会社自体が経営再建の最中。
営業を継続するホテル、営業を終えるホテルの仕分けがされ、景気の良い時代に購入していた遊休地の売却などの経営方針が固められ、私は遊休地の売却を担当することになりました。
憧れの本社で勤務ができる喜びも束の間、ホテルの営業、接客とはほど遠く、想定すらしていなかった不動産の仕事。
当時はお客様に関わる仕事をしたいという思いを抱きながら目の前の仕事を必死にしていました。
ホテル開発はどのような仕事をするのか。
そして遊休地の売却の仕事を2年ほどした後に、異動したのが店舗開発部という新規ホテルの出店に関わる部署でした。
新規ホテルの開業までは大きく分けると下記のようなプロセスを経ます。
1.ホテルの立地評価
ホテルの建設予定(開業予定)地の人口、産業、観光動向、同エリアのホテル動向を鑑み、また法令などの規制を考慮しながらホテルのスペック(延べ床面積、客室数、レストラン数等)がどれくらいであればホテルとしての利益をかくほできるかを計算していきます。
2.ホテル運営会社の選定と契約締結
上記の1とほぼ同時期に行われるのが、ホテル運営会社の選定。
ホテル建設の主体となるデベロッパー(不動産開発会社)、ゼネコン(建設会社)がいくつかのホテル会社に打診をし、ホテルのブランド、スペック、収入費用を算出します。
デベロッパーやゼネコンは建設予定の土地にホテルのブランドがマッチするのか、またブランドを決めたとしてもホテルとしての利益が出るのかを検証します。
極端な例ですが、地方の人口10万人程度の都市に世界的に有名な5つ星ホテルを建設したとしても、それにマッチするお客様は少ない為利益が出ない可能性が高いですよね。
そんな検証をし、デベロッパーやゼネコンがホテル会社と合意に至った場合、お互いの利益の取り分をどうするのかを話し合い、契約を締結します。
3.ホテル開業までの実務
そして基本的な契約を交わした後に開業までの実務に入ります。
ここからさらに具体的にホテルの全体的な客室数、お部屋タイプ別の部屋数(シングル、ツイン、ダブル等)、ホテル内のレストラン数、提供する食事内容、席数、宴会場の有無や宴会場でウェディング営業をするのかどうか、またその計画に対してホテルの工事スケジュールの確認や建物のオーナーとの調整、そして開業が近くなるとスタッフ募集、採用、トレーニングなども仕事の中に入ります。
ホテル開発の仕事をするにはどのようなステップを踏むと良いか。
では、ホテル開発の仕事にたどりつくためにはどのようなステップを踏めばよいでしょうか?
筆者の経験上、「ホテルのマネジメント(支配人以上の管理職、経営層を目指して仕事をする」ことが一番だと思っています。
というのも、ホテルの設計にしてであってもホテルの営業を知っていなければ、お客様にも喜ばれ、従業員が効率的に使えるホテルはできないからです。
また、当然ながらホテルの収支も理解していないとそもそも利益が出せるのかどうか、どれくらい利益を出せるのかも判断できません。
それらの知識、経験をベースとして不動産の知識があればさらに業務を容易に勧めることができます。
コロナ禍ではありますが、街にホテルが1つ増えると景色も変わり、心が躍りますよね。この記事を通してそんな素敵な仕事に携わる方が増えれば、筆者の望外の喜びです。
(参考文献)『ホテルの創り方』(村上実、池村友浩著・クロスメディアパブリッシング)