ホテルの経理部門はどんな仕事? 経理と財務の業務を詳しく紹介
ホテリエ貞吉です。現在、40代後半でサラリーマンをしております。
2021年もあとわずか。2022年を迎えたら就職活動を迎える大学3年生もいらっしゃるでしょう。
おそらくこちらの文章を読んでくださる方はホテル業界に興味がある、もしくはホテル業界への就職を決めたという方がほとんどのはずです。
もし、ホテル業界で仕事ができるとしたらどのような仕事をされたいでしょうか?
コンシェルジュで多くのお客様におもてなしをしたい、ウェディングプランナーになり幸せな場面のお手伝いをしたいと夢が膨らんでいらっしゃるでしょう。
また、将来的には総支配人(ホテルの運営のトップの役職を指します)になり、ホテルのかじ取りをしたいと考えているかと思います。
特に総支配人など組織のトップに立つにあたり必要になってくるのが経営の知識。
とりわけホテルの業績を把握するうえでは経理の知識を知ることはマスト事項です。
今回は経営に密接な部署のひとつであるホテルの経理でのお仕事をまとめていきます。
一般的な会社では経理はどんな仕事をするのか?
ホテルの経理の前に、経理がどんなお仕事なのかをまとめていきます。
経理は『①おさめととのえること。②会計に関する事務。また、その処理。』(広辞苑webより抜粋)という意味です。
業務上近いものとして財務もありますが、財務は『財政に関する事務。
財の管理・運営についての事務。』(広辞苑webより抜粋)と言うのが辞書の上での意味です。
簡単に言うと、
・経理はお金の流れを帳簿に付けて管理すること
・財務は入金(収入が入ること等)から出金(物品の購入やお給料の支払等)までのお金の把握し、滞りなくお金を手にして、滞りなく取引先に支払をする
のがお仕事になります。
ご自身が仮にコンビニエンスストアの店長さんだと想像されてみてください。
毎日お客さんが商品を購入されるはずです。
1日10万円、全て現金精算で売上があったとすると10万円の売上があったと帳簿を書くことが経理のお仕事、お客様からいただいた10万円を一時的に保管(銀行に預金する等)して、仕入れた商品の支払いや従業員へのお給料などの支払の手配するのが財務のお仕事になります。
厳密に言うと経理と財務は業務が分かれ、一般的な大企業だと部署も別であることが多いですが、今回は経理と財務の両者の仕事を一緒に紹介していきます。
ホテルの経理の役割分担はどうなっているのか?
ここからはホテルの経理の役割分担とそれぞれの業務を紹介します。
一般的にホテルの経理は売上監査担当(インカムオーディター)、買掛担当、売掛担当、出納担当に分かれます。
売上監査担当(インカムオーディター)
売上監査担当は日々のホテルの売上をチェックするのが主な仕事になります。
例えば多機能なシティホテルの場合、宿泊、レストラン、宴会のそれぞれの部門にシステムを持ちます。
ホテルで宿泊されたことがある方は、チェックインの時にフロントのスタッフが何かパソコンで情報入力している姿を見たことがあると思います。
フロントスタッフが入力しているのがホテル管理システム(Property Management System)で、チェックイン、チェックアウトなど接客に必要な機能の他に宿泊部門での売上を集計する機能も有してします。
実際には、フロントの夜勤スタッフが稼働率、客室単価、マッサージや冷蔵庫などの宿泊に付随する売上をチェックしたのちにホテル管理システムの日次更新に入ります。
そして翌朝、ホテル管理システムから経理のシステムにデータが取り込まれ、経理の売上監査担当が内容をチェックしています。
売掛担当
「売掛」とは、「掛取引によって商品を販売した場合に将来代金を受領する権利」を言います(Wikipediaより)。
具体的なもので言うとクレジットカード精算、楽天トラベルやじゃらんなどの宿泊予約サイトで事前決済(宿泊予約時にサイト上でクレジットカード精算すること)、JTBなどの旅行代理店の窓口で宿泊券を発券した場合などを指しています。
お客様である私たちが精算する時、最終的に銀行口座から引き落とされるのは、利用してから1ヶ月〜2ヶ月位先ですね。
ホテルも同じで、現金以外で精算したものは1ヶ月〜2ヶ月先にホテルに入金されます。
実際には前日の売上の伝票(お客様に発行したレシートのホテル控え)とホテルの経理システム上の売上金額との照合、クレジットカード会社や旅行代理店からホテルに入金された時にホテルが把握している入金予定額と一致するかどうかを照合します。
また、旅行代理店ならばホテルへの送客手数料、クレジットカード会社ならば決済の手数料がかかりホテルが負担をしています。
入金時にそれらの手数料も正しく処理されているのかも照合しています。
買掛担当
「買掛」とは、「掛け取引によって商品を購入した場合に将来代金を支払う義務」を言います(Wikipediaより)。
ホテル営業をするために、宿泊であれば客室のシャンプー、リンスなどのアメニティ、レストランや宴会場の食材やペーパーナプキンなど多くのアイテムを購入しています。
しかし、購入したアイテム全てをその場で現金で支払っている訳ではなく、納品した取引先から請求書をいただき後日ホテルの銀行口座から振り込むことで支払いをしています。
後日支払いするものの取りまとめをし支払の手続きをするのが買掛担当の仕事になります。
具体的には、ホテルの各部署から集まる請求書を取りまとめ、取引先ごとの支払金額を確定させ、一定期日に支払いをしています。
出納担当
こちらはホテルによっては、「小口現金担当」とも呼ばれています。
セールスマンの営業時の電車代、事務所の文房具などの購入など少額の現金で精算する場合は出納担当が伝票を取りまとめて精算をしています。
その他
その他にも購買担当(ホテルの食材、客室のシャンプーなどのアメニティの購入の担当)、給与計算担当(国内系のホテル会社だと人事の部署が計算するケースが多い)、IT(ホテル全体のシステム管理、外資系のホテル会社だと経理部門の一部に属するケースが多い)などがあります。
ホテルでの接客を紹介しているサイト、紹介記事は多いのですが、一般管理部門(人事、経理等)の仕事の内容が紹介されているケースは少ないのが現状です。
今回の記事が、ホテルの一般管理部門で働きたい方にも参考になれば幸いです。
(参考文献)『ホテル・ビジネス・ブック』(仲谷秀一+杉原淳子+森重喜三雄著・中央経済社)