僧侶(住職・坊さん)の衣装・服にはどんな意味がある?
仏前で着るのが「法衣」や「袈裟」
僧侶が仏前で着用している衣服を、「法衣(ほうえ)」や「袈裟(けさ)」といいます。
「袈裟」は僧侶が着用する布状の衣装のこと、そして「法衣」は袈裟の下に身につける衣を指すため、この2つは別ものです。
多くの人が両方合わせて「袈裟」と呼んでしまうなど混同しやすいですが、法衣と袈裟を合わせて僧侶の衣装となります。
ここからは、法衣や袈裟の特徴や意味合いについて詳しく見ていきましょう。
法衣の種類と色の意味
法衣は「正装用」と「略装用」の2種類
法衣には「正装用」と「略装用」の2種類があり、正装用の法衣は、主に葬儀や法事などの儀式や年中行事などの際に着用します。
略装用の法衣は普段の勤行(ごんぎょう)などで着用し、宗派によって形も呼び名もそれぞれです。
この2つの大きな違いは袖の大きさで、略装用の袖が普通の着物並みの寸法であるのに対して、正装用は手がすっぽり隠れるほど広く大きなものになっています。
また正装用の袖のひだは、略装用に比べてとても多いのも特徴のひとつです。
近年では、略装用の法衣として洋服に近いものを着用している宗派もあります。
法衣は色で階級がわかる
正装用の法衣は、宗派による形の差はほとんどありませんが、どの宗派においても僧侶の階級である「僧階」や「僧位」によって色分けされています。
つまり法衣の色を見れば、その僧侶の階級がわかってしまうのです。
緋色(ひいろ)を最高位とすることを除いては、僧階と色使いの関係は各宗派の任意となっています。
ちなみに正装用は僧階によって色が分かれますが、略装用は黒一色しかありません。
普段の勤行の際は、略装用法衣を着用していることがほとんどなので、お寺で見かける僧侶は黒の法衣姿であることが多いはずです。
袈裟(けさ)の種類と意味
袈裟とエコの意外な関係
お釈迦さまの着用していた袈裟は、サンスクリット語の「カシャーヤ」が語源で、汚物を拭ったようなボロボロの布をつぎはぎして作ったようなものであったといわれています。
このことから、糞を拭う布で作られたという意味で「糞掃衣(ふんぞうえ)」とも呼ばれました。
あまり聞こえのよい言葉ではありませんが、僧侶の原点は質素倹約です。
人が捨てていらなくなった布を生かすことは、仏法の世界において大変尊い営みであるため、現在さかんに叫ばれる「エコ」や「リサイクル」の始まりであるともいえるでしょう。
袈裟の意味
かつてつぎはぎして作られた名残から、現在の日本の袈裟は新品の布を小さくし、わざわざつぎはぎをして作られています。
小さな布を縦に縫い合わせたものを「条」と呼び、これを横に縫い合わせて袈裟を作りますが、条の数が多いほど正装用に使われることが多いです。
袈裟はインドの習慣から不浄とされる左肩を隠し、相手に敬意を表すよう右肩を出して着用されます。
僧侶の普段着
清掃などの日常の雑務の際には、作務衣(さむえ)と呼ばれる上着ともんぺを着用しています。
上下が分かれているため、大変動きやすい作りで、僧侶ではない一般の人でも好んで着用している人がいるようです。
また山岳修行の際に着用する「鈴懸(すずかけ)」と呼ばれる衣服も、上着と袴に分かれています。