自然保護官の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「自然保護官」とは
環境省の職員として、国立公園の管理や野生鳥獣の保護など、各種自然環境業務に従事する。
自然保護官とは、国の機関である環境省の職員として、さまざまな自然環境業務に関わる仕事をする国家公務員のことをいいます。
別名では「レンジャー」とも呼ばれます。
具体的な仕事内容は、国立公園の管理や外来種対策、野生鳥獣の保護、ペット動物の愛護、エコツーリズムといった自然とのふれあいの推進等の業務など多岐にわたります。
自然保護官になるには、まず国家公務員採用試験に合格し、自然系技官として環境省へ入る必要があります。
試験区分にもよるものの試験の難易度は高めで、採用人数もあまり多くありません。
自然保護官になってからは、各地域の自然環境事務所などで勤務するのが一般的です。
各地域特有の自然にたくさん触れることができ、国立公園などの最前線で自然保護という重要な任務にあたる仕事です。
「自然保護官」の仕事紹介
自然保護官の仕事内容
国家公務員として自然環境や野生生物を保護する
自然保護官とは、環境省の職員(国家公務員)として、さまざまな自然環境業務に関わる仕事をする人のことを指します。
具体的な仕事内容は、国立公園の管理や外来種対策、野生鳥獣の保護、ペット動物の愛護、エコツーリズムのような自然とのふれあいの推進等の業務など、多岐にわたります。
アメリカの「パークレンジャー」という職業に沿って、日本では「レンジャー」呼ばれることもあります。
法律やルールに基づき、日本国内の自然環境や野生生物を保護・管理していくことが、自然保護官の大きな役割です。
地域の人たちと連携して働くことも
各地に配属された自然保護官は、その地域特有の自然環境を守りながら、それを将来にわたって活用していける仕組みづくりに力を注ぎます。
また、地域の関係者と連携して、地域活性化や自然を守る取り組みをおこなっていくこともあります。
「自然保護」という観点から、国を代表して幅広い仕事に携わっていきます。
自然保護官になるには
国家公務員採用試験を受けて環境省へ入る
環境省の職員である自然保護官になるには、「国家公務員採用試験」を受験し、合格する必要があります。
環境省の職員には「総合職」と「一般職」があり、さらに「事務系」「理工系」「自然系」の3つに分かれています。
このうち総合職と一般職の自然系職員として採用され、自然保護官に任命されることで、自然保護官として働けます。
自然保護官は、国家公務員採用試験の森林・自然環境区分に加え、化学・生物・薬学区分からも採用される可能性があります。(総合職の場合)
大学で自然環境保全分野の農学や林業政策・環境政策などを専攻すると、自然保護官としての基礎的な知識を身につけることができるでしょう。
環境省の官庁訪問もある
国家公務員採用試験では、採用までのステップとして「官庁訪問」が行われます。
官庁訪問では、受験者は志望する各府省に訪問して業務説明や面接を受け、業務に対する意欲や適性を判断されます。
自然保護官の採用人数は例年、数名~15名程度と非常に少ないため、官庁訪問の対策も十分に行っておく必要があります。
自然保護官の学校・学費
大学で自然環境や林学・農学などを学ぶのが一般的
自然保護官を目指す場合、大学の理工系学部に進み、自然環境保全や林学・農学・環境政策などを専攻しておくとよいでしょう。
国家公務員採用試験は難易度が高く、とくに総合職を志望するとなると、ハイレベルなライバルとの競争に勝って内定を得なくてはなりません。
大学で専門知識を身につけながら、国家公務員採用試験の受験勉強や対策をしておく必要があります。
また、学生のうちにパークボランティアや自然保護関連のアルバイトを経験しておけば、自然保護官の仕事をより深く理解することができるでしょう。
自然保護官の資格・試験の難易度
国家公務員試験の難易度は高め
自然保護官になるには、まず国家公務員採用試験(総合職もしくは一般職)に合格し、自然系技官として環境省へ入省する必要があります。
自然保護官は、総合職の試験では「森林・自然環境」と「化学・生物・薬学」の区分で、一般職では「林学」「農学」「土木」「農業農村工学」「建築」の区分で採用されます。
国家公務員総合職試験(大卒程度)の場合、区分にもよりますが倍率は5倍から20倍程度になることが多く、難易度は高めです。
採用人数は決して多くない
環境省の採用人数は決して多くありません。
とくに自然保護官として採用される人となると、少なければ数名、多くても20名以下ということがほとんどです。
年度によって採用人数にバラつきがあるのが実情です。
国家公務員試験は優秀な学生も多く受験するため、在学中にきちんと勉強し、国家公務員試験に向けて十分な準備と志望動機を固めておくことが大切です。
自然保護官の給料・年収
国家公務員としての給料が支給される
自然保護官の給料は、国家公務員の給与体系に準じたものとなります。
初任給は採用区分や配属地域によって20万円~22万円程度からのスタートとなりますが、その後は年齢や勤続年数などが上がるにしたがって確実な昇給が望めます。
他の公務員と同様、基本的に年功序列であるため、経験年数が増えるほど収入はアップします。
しかし、民間企業のように、いきなり飛びぬけて高収入を得るのは難しく、平均年収は500万円~600万円ほどとされています。
待遇は他の国家公務員と同様に充実
自然保護官の給与以外の待遇としては、扶養手当、住居手当、通勤手当などの諸手当、また年に2回のボーナスも国家公務員として規定されている内容が適用されます。
日本各地への転勤の可能性があるなど大変な面もありますが、多様な業務を経験してキャリアアップも目指せます。
定年まで安定した働き方ができるといえるでしょう。
自然保護官の現状と将来性・今後の見通し
日本の自然環境を未来へつなげる重要な役割を担う
自然保護官は、環境省の職員として、日本各地の指定された国立公園で自然保護活動を行うなど重要な役割を担います。
自然保護官はそこまで人数が多いわけではありませんが、「環境」が世界中で重要なテーマとして議論されている現在、自然保護官への期待が高まっていることは確かです。
なお、近年は訪日外国人の誘致に結び付けることなどを目的に、環境省では自然保護官の人数を増やす方針で動いています。
見えないところでの自然保護活動のみならず、一般市民向けに自然とのふれあいイベントの開催を行う機会も増えており、それらを企画・実行する自然保護官のさらなる活躍が期待されます。
自然保護官になる道は決して楽なものではないですが、将来性は十分にある仕事だといえるでしょう。
自然保護官の就職先・活躍の場
各地域の自然環境事務所などで働く人が多い
自然保護官は環境省の職員(総合職もしくは一般職)として、霞ヶ関にある本省で働きます。
それ以外にも、各地方にある環境事務所や、その下部組織である自然環境事務所、自然保護官事務所などに配属となるケースもあります。
このような事務所は全国に十数ヵ所あり、2~3年のスパンで転勤となる人が多いとされています。
他の国家公務員と同じように、転勤は必ずあるものとして考えておく必要があります。
自然保護官は基本的に調査・分析などのオフィスワークとなりますが、必要に応じて現場調査や現場巡視へ出ることもあり、各地の自然を存分に感じられるでしょう。
また、他の行政機関や海外へ出向する業務もあります。
自然保護官の1日
幅広い業務を効率よくこなしていく
自然保護官は、関係各所との連絡・調整、書類作成など、デスクワークをする時間が多くあります。
一方、外に出て自然保護のための美化活動や、住民とのふれあいを行ったりすることもあります。
ここでは、地方の環境事務所で働く自然保護官のある1日を紹介します。
自然保護官のやりがい、楽しさ
重要なテーマに最前線で取り組んでいけること
自然保護官のやりがいは、「自然環境の保護」という地球規模の大きなテーマに対して、時間をかけて取り組んでいけることだといえるでしょう。
決して人数が多くない自然保護官には、国の自然を守り、後世に残していく重要な使命が課せられています。
自然保護の最前線で働いている誇りをもつことができるでしょう。
また、この仕事では各地域特有の自然にたくさん触れることができるため、自然が好きな人にとっては非常に魅力的だと感じられます。
各分野の専門家たちと連携をとる機会も多いため、自分の視野を広げながら人生を豊かにしていくことができるはずです。
自然保護官のつらいこと、大変なこと
細かな調整事や事務作業も多い
自然保護官は、おもな配属先となる自然環境事務所などで忙しく働いています。
「自然」というキーワードからアクティブな姿がイメージされがちですが、実際にはデスクワークも多いです。
たとえば国立公園内の建設許可に関する書類チェックや調査、食害対策や自然とのふれあいイベントの企画会議、自然再生事業の計画など、やらなくてはならないことが山積みで、関係各所との細かな調整事なども数多くあります。
日によっては終日事務所にこもってのデスクワークとなることもあり、人によっては、思っている以上に頭を使う仕事だと苦労を感じることがあるかもしれません。
ただ、どの業務も自然保護のために必要なものですし、ときには外に出て働くこともあるため、常に広い視野をもって仕事に向き合うことが大切です。
自然保護官に向いている人・適性
自然を守るために熱心に働ける人
自然保護官に向いているのは、自然が好きなことはもちろんですが、「自然を守るために働きたい」と心から思える人です。
日本の国立公園は法律によって守られており、その法律に基づく管理をするのが自然保護官の使命ともいえます。
自然保護官というと、どうしても自然の中でアクティブに動き回る姿がイメージされがちですが、日常業務では資料作成や調査・分析などデスクワークをする時間も多いです。
関係各所との調整など頭を悩ませる業務も多々あり、「自然と触れ合えて楽しそう」という軽い気持ちだけでは、なかなか続けるのが難しいかもしれません。
国家公務員という国の職員として、自然保護や環境保全のために自分が力を尽くしていきたいと思えるかどうかが、この仕事を続けるうえでは需要な要素となってきます。
自然保護官志望動機・目指すきっかけ
自然やアウトドアが好きで、自然保護に関心がある
自然保護官を目指す人の多くが、もともと自然やアウトドアに親しみの気持ちを抱いています。
「自然と関わる仕事がしたい」と考えてさまざまな職業を調べていくなかで、自然保護官という存在を知ったことが、目指すきっかけになっているケースが多いようです。
また、国家公務員という責任ある立場であることに魅力を感じている人もいます。
自然に触れ合う自然保護官にとって、自然を大切に思う心は非常に大事です。
しかし志望動機を考える際には、ただ「自然が好き」というだけでなく、環境省の役割をよく理解したうえで、自分がどのように自然保護に関わっていきたいのか、何を目指しているのかを、より大きな視点で考えていくことが重要になるといえるでしょう。
自然保護官の雇用形態・働き方
国家公務員としての使命を持って働く
自然保護官の身分は、環境省の職員であり、国家公務員です。
また、採用された国家公務員採用試験の種類によって、総合職の職員と一般職の職員に分かれます。
仕事をするうえでのルールや給与・待遇なども、国家公務員として定められているものに準じます。
民間とは異なり、業績の変動による大幅な給与カットやリストラの可能性は非常に低く、安定した雇用環境の下に働くことができるといえるでしょう。
しかし国家公務員には転勤もあり、人によっては2年ほどの短いサイクルで全国各地の転勤を繰り返すことになります。
また、国民の代表として「日本の自然を守る」という強い責任感や使命感が求められます。
自然保護官の勤務時間・休日・生活
転勤によって生活パターンが変わることも
自然保護官の勤務時間や休日は、配属先や担当業務によって若干の違いがありますが、基本的には他の国家公務員と同じ内容です。
8時から17時頃にかけての勤務となることが多いですが、事務作業が多く残っている日などは残業も発生します。
休日は基本的には土日を休みとする週休2日制で、国家公務員としての各種休暇・休業制度(年次休暇、育児休業、病気休暇、特別休暇など)も適用されます。
ただ、自然保護官は転勤があり、配属先や勤務地によって勤務スタイルが若干変動する可能性があります。
転勤のたびに、その地域に合わせた生活リズムをつくっていく必要があるでしょう。
自然保護官の求人・就職状況・需要
需要はあるものの採用人数は決して多くない
自然保護官になるには、国家公務員採用試験(総合職もしくは一般職)を受けて環境省に採用され、自然系技官として任命される必要があります。
そのため、一般企業への就職活動とは異なる準備をしなくてはなりません。
環境省における自然保護官としての採用は決して多いわけではなく、新規で自然保護官になるのは毎年若干名から、多くても10名~20名ほどです。
定年などで退職する職員もいるため、確実な需要はあるものの、定員を超えて採用されることはまずありません。
なるためのハードルはやや高いと考えて準備をしておくことが重要です。
自然保護官の転職状況・未経験採用
年齢制限に注意しながら転職を目指すことは可能
自然保護官は、大学などから新卒で目指す人が多くいますが、すでに別の仕事をしている人が自然保護官への転職を目指すことも可能です。
ただし、この仕事に就くには新卒者と同様、国家公務員として環境省に採用されなくてはなりません。
国家公務員試験の総合職、一般職(大卒)の年齢上限は30歳未満となっています。
年齢以外の学歴や職歴の要件で有利不利になることはありませんが、転職を考えている人はできるだけ早めに準備することをおすすめします。
また職務経験が重視されないとはいえ、採用試験の官庁訪問(面接)においては、なぜ転職を希望するのかを強く問われると考えて準備しておきましょう。