オプトメトリストの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「オプトメトリスト」とは

オプトメトリストの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「視る力」に問題のある患者さんにトレーニングを行い、視力アップを促す目の専門職。

オプトメトリストは、「視る力」に問題のある患者さんの視力をアップするために、さまざまなサポートを行う仕事です。

「目が健康で疾患がないか」を重視して治療を行う眼科医とは異なり、薬や手術に頼らず、独自のトレーニング方法などで患者さんの訓練を行ったり、生活習慣のアドバイスをしたりします。

勤務先は眼鏡・コンタクトレンズ専門店やメーカー、眼科病院が主となりますが、日本ではまだ公的な資格がないため、専門職としてのオプトメトリストの歴史が長いアメリカなどの大学院で学び、知識を深める人もいます。

IT化による視力低下に悩む人が増加する現代ですが、さらにはスポーツ選手に必要とされる視力を高める訓練、さまざまな障害のある方の視力の問題など、オプトメトリストがスキルを生かせる場面は多岐にわたり、今後の活躍の場のさらなる広がりが期待されます。

「オプトメトリスト」の仕事紹介

オプトメトリストの仕事内容

さまざまな手法により視力改善を目指す

オプトメトリストは、薬や手術に頼らずに患者の視力を上げるためのサポートを行う仕事であり、アメリカなど欧米諸国では専門職として認知されている職業です。

眼鏡やコンタクトレンズなど視力矯正具の販売店やメーカーに所属し、矯正具の処方をする機会が多いため、医学的、光学的な知識も必須となります。

「目そのものに疾患がなく、正常か」を重視して治療を行う眼科医に対し、オプトメトリストは目以外の場所に原因があることも想定し、生活習慣に関するアドバイスをすることもあります。

視能訓練士はおもに眼科医の診療を補助する立場であることに対し、オプトメトリストは眼鏡店などで働くことが多い職種です。

また視能訓練士は国家資格ですが、オプトメトリストは2018年現在では認定資格となっています。

オプトメトリストが用いる手法は多岐にわたり、「ビジョンセラピー」や「ビジョントレーニング」と呼ばれる方法で目の訓練をする技術も持ちあわせています。

オプトメトリストになるには

オプトメトリストの認定資格を得る

オプトメトリストになるためには、オプトメトリスト認定試験を受け、合格することが必要です。

オプトメトリスト認定試験の受験資格を得るためには、4年制以上のオプトメトリーカリキュラムを有する専門学校で所定の単位を取得することが必要です。

現在、日本オプトメトリック協会でカリキュラム認定されている専門学校は1校しかありません。

また、日本眼鏡技術者協会認定の眼鏡学校を卒業すると、「認定眼鏡士」という、国内ではオプトメトリストに準ずる認定試験を受けることができます。

認定眼鏡士には、S級、SS級、SSS級とあり、眼鏡学校卒業者はまずS級認定眼鏡士に登録申請をすることができます。

さらに、SS級認定眼鏡士の試験に合格すると、SS級認定眼鏡士の認定を受けることができます。

SSS級認定眼鏡士合格者は、オプトメトリスト認定試験を受ける際、すでに合格している科目は免除されます。

現在、SS級認定眼鏡士が「眼鏡技能士」という国家資格への移行を目指している関係で、SSS級認定眼鏡士の資格試験は行われていません。

オプトメトリストの学校・学費

認定の眼鏡学校で学ぶ

オプトメトリストになるためにはいくつかの方法があり、実務経験を積み、SSS級認定眼鏡士の認定を取得してからオプトメトリストになる人もいるため、かかる学費はさまざまです。

しかし「見ること」に関する医学的な知識や、眼鏡の屈折補正、光学の知識などを体系的に学ぶには、協会認定の眼鏡学校に進むのがもっともよい手段であるといえます。

眼鏡学校に入学するためには高校卒業と同等の学歴が必要ですが、眼鏡学校を卒業し、SS級眼鏡士の認定を受けることにより、近い将来国家資格への移行が期待されます。

ただし、「オプトメトリスト」ではなく「眼鏡技能士」という国家資格名となり、オプトメトリストの資格に関しては不透明な部分が多いのも確かです。

オプトメトリストの資格・試験の難易度

かなりの知識量と技能が必要とされる

現在、S級眼鏡士は事実上廃止のような扱いとなっており、SS級・SSS級の眼鏡士資格が中心となっているようです。

SS級眼鏡士認定試験に関しては、眼鏡学校を卒業したばかりでも、しっかり勉強していれば合格できるものですが、SSS級となると合格者は毎年数名とかなりの少数になります。

SSS級眼鏡士認定試験の受験者数がさほど多くないことにも起因するとは思いますが、実務経験に加え、相当量の勉学も必要であるといえるでしょう。

しかし、SSS級認定眼鏡士の合格者でも、JOA主催のオプトメトリスト認定試験ではさらに受験が必要な科目があり、相当の専門知識が必要であるといえるでしょう。

オプトメトリストの給料・年収

上級認定資格の取得により昇給の可能性

オプトメトリストの給料は、眼鏡・コンタクトレンズ専門店に就職した場合、月給20万円〜25万円程度のことが多いようです。

眼鏡・コンタクトレンズのメーカーに就職する場合も初任給は同程度ですが、昇給や福利厚生などの待遇は、メーカー勤務の方がよい傾向にあります。

研究職では、研究成果いかんにより、役職や年収が変わってきます。

いずれの場合も、オプトメトリストは高度な知識を有する資格であるため、今後の資格制度の変化によっては年収アップの可能性もあります。

独立開業する場合は「視力回復センター」などを開設し、目の使い方の訓練などに携わることが多いです。

オプトメトリストの現状と将来性・今後の見通し

IT発展とともに活躍の場は増加

ITの発展などにより、現在、日本の眼鏡人口は約7,500万人に上り、人口の60%を占める割合であることから、何らかの視力矯正具を必要としています。

視力の低下が、パソコンなどの長時間の使用や間違った目の使い方が原因であることも多く、オプトメトリストの仕事が注目されています。

携帯ゲームなどの普及により近視発症の低年齢化も問題視されており、学校教育の中での視力教育など、オプトメトリストの活躍の舞台は、今後ますます広くなると考えられます。

さらには、スポーツ選手が必要とされる視力を高める訓練、さまざまな障害のある人の視力の問題など、オプトメトリストが係わる仕事の範囲は多岐にわたっています。

オプトメトリストの就職先・活躍の場

眼鏡・コンタクトレンズの製造販売会社

オプトメトリストの多くが就職するのは、眼鏡やコンタクトレンズの製造会社や販売会社です。

製造業では、目に関する医療的知識や光学の知識を活かし、新たな製品の開発に携わったり、営業販売などを担当します。

販売業では、店舗に出勤し、お客さんの希望や悩みを聞き、一人ひとりにふさわしい商品を紹介し、販売したり、目や眼鏡などに関するアドバイスなども行います。

それ以外に、眼科医院で働くオプトメトリストもおり、患者さんの診療補助や視力検査などを担当します。

オプトメトリストの1日

視力矯正や目の健康に広くたずさわる

オプトメトリストは、フレーム選択のアドバイスや目の検査、レンズの選定などさまざまな業務を行います。

ここでは、眼鏡店に勤務しているオプトメトリストの1日を見てみましょう。

<眼鏡店勤務のオプトメトリストのスケジュール>

09:50 出勤
開店時間に合わせ、清掃や準備をします。

10:00 開店
お客さんへのアドバイスや視力検査、屈折補正検査、レンズの選定や、眼鏡の補正・加工など、多岐にわたる業務を行います。

12:00 休憩
交代で休憩をとります。

13:00 接客・眼鏡の加工など
フレーム選定に関するアドバイスや、レンズの選び方のアドバイスなどを通してお客さんとコミュニケーションを取ることは多いです。

17:00 休憩
午後の休憩を交代でとります。

17:30 接客・眼鏡の加工受付・引き渡しなど
新しく加工した眼鏡の引き渡し、眼鏡のレンズ交換、新規作成の受付などを行います。

22:00 閉店
お客さんが途絶えたところで店を閉め、清掃・片付けをして業務を終了します。

オプトメトリストのやりがい、楽しさ

人々の見る力の維持向上に貢献できる

オプトメトリストは目の健康を維持向上したり、その人に最適な視力矯正具を見つけだすことができます。

さまざまな要望に応えつつ、その人の視力の状態なども考慮に入れて選び出したものが気に入ってもらえたときにはやりがいを感じるでしょう。

さらに、普段のパソコンやテレビを見る際の姿勢や時間についてや、目を休めたり、見る力を維持するためのさまざまな手法をお伝えすることで、人々の見る力を守ることに貢献できます。

ものを見るというのは生活の大半を占める行為であり、その機能維持に一役買うことができるのも、オプトメトリストの魅力のひとつです。

オプトメトリストのつらいこと、大変なこと

できることに限界がある

オプトメトリストは目の健康維持や向上には欠かせない人材ですが、それでもできないことがあります。

それは目の疾患の治療です。

網膜剝離などで視力を失いかけている場合は、眼科医による手術が必要となり、オプトメトリストだけでは対応しきれません。

また、糖尿病などの全身疾患によって視力をすでに失ってしまった人に対しては、眼科医もオプトメトリストもお手上げといわざるをえません。

そのような人に出会ったときはオプトメトリストとしてつらい気持ちになるでしょうが、その気持ちをばねに、より一層の努力をして、目の健康維持についての啓蒙を続けなければいけません。

オプトメトリストに向いている人・適性

多角的思考力、判断力を持つ人

オプトメトリストは「目の健康」を通して、「視る力」を回復させる仕事なので、目に対する興味は必須です。

医師ではないので治療は行いませんが、オプトメトリストの守備範囲は広く、目の使い方や生活習慣のチェックから、視力矯正具などの処方にまで及びます。

そのため多角的に問題を把握し、さらに問題を生活習慣レベルにまで落とし込む統合的思考力も必要となるでしょう。

また、視力の低下は糖尿病や高血圧、脳腫瘍などの病気が原因であることもあり、そのような際には迅速に医師と連携する判断力も必要です。

オプトメトリスト志望動機・目指すきっかけ

眼鏡人口の大幅な増加による

視力に問題の出る年齢が若年化している昨今では、若いころから眼鏡に親しむ人も増えており、アクセサリー感覚でいくつかの眼鏡をつけ替えることも珍しくありません。

眼鏡のフレームやレンズの色、薄さなど、デザイン性から眼鏡に興味を持ち、眼鏡店で働くことを目指してオプトメトリストになることを志す人もいます。

それ以外では、何らかの疾患によったり、生まれつき視力が低く、眼鏡が必須である生活を通して目の健康を守る重要性を感じ、オプトメトリストとなる人もいます。

オプトメトリストの雇用形態・働き方

正社員またはパート・アルバイト

オプトメトリストの働き方には、正社員やパート勤務などの雇用形態があります。

眼鏡販売店の正社員の場合、閉店時刻にもよりますが、開店〜夕刻までの早番と、午後〜閉店までの遅番のシフト制であることが多いようです。

また、昇給や賞与があり、福利厚生を受けることもできます。

パート勤務の場合、週に30時間以内でも勤務可能で、勤務する曜日など応相談の求人などがあり、育児の間でも比較的働きやすい環境であるといえるでしょう。

オプトメトリストの勤務時間・休日・生活

勤務先によってかなり差がある

メーカー等に勤務する場合は、勤務時間や休日は定められているため、比較的規則正しい生活ができます。

眼鏡・コンタクトレンズの専門店であれば、遅番・早番などシフト制で勤務することが多く、休日出勤もありますが、その分平日に休暇を取ることができます。

いずれも残業は比較的少なく、出張なども少ない安定した職種であるため、育児がひと段落した頃になれば比較的働きやすいでしょう。

研究職の場合は、勤務時間の定めを問わず、深夜まで研究を続けることがあり、生活は不規則になりやすいです。

オプトメトリストの求人・就職状況・需要

さまざまな場所で需要が増えている

オプトメトリストには、眼鏡・コンタクトレンズ販売店やメーカー、眼科医院、医療機器メーカー、研究職など、さまざまな就職先があります。

スマートフォンやPCの普及とともに近視人口が急増していることにより、特に眼鏡・コンタクトレンズのメーカーや販売店での求人が多くなっており、引く手あまたの状況です。

また、日本ではまだ限られていますが、ビジョンセラピーを主体として視力の回復を促す治療院もあり、そのような場所で視力回復トレーニングを行う道もあります。

オプトメトリストの転職状況・未経験採用

上級眼鏡士資格や実務経験があると有利

昨今では眼鏡店の店舗数が増加しているため、オプトメトリストの転職はさほど難しいものではありませんが、実務経験の長さやSSS級眼鏡士などの資格があると、さらに重宝されます。

同様に、未経験採用・新卒採用の場も多くありますが、SS級眼鏡士の認定を受けることにより採用に有利であり、実務上も役に立つでしょう。

2018年現在、眼鏡士はまだ日本に入ってきて歴史が浅く人数も少ないため、技能継承の点などからも、50歳まで正社員として採用するところもあり、中途採用にも有利といえます。