音楽講師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「音楽講師」とは
楽器の演奏や歌唱などを指導する専門講師
音楽講師は、楽器の演奏や歌唱など、音楽の知識や技術を教える仕事です。
主に民間のピアノ教室や楽器演奏教室などで働き、中学校や高校の教員として音楽を教える場合とは区別されるのが一般的です。
指導内容は幼児向けのスクールから、音楽大学の受験向け教室、社会人の趣味のサークルなど年齢層や指導レベルはさまざまです。
ピアノやバイオリン、フルート、ギターといった楽器の演奏だけでなく、声楽やボイストレーニングといった歌唱に関わるものなど、専門はさまざまで、おのおのが得意分野をもって指導にあたります。
就職先としてはピアノ教室や楽器演奏教室がありますが、個人で教室を開業している場合と、楽器メーカーなどが経営している教室で働く場合の2種類にわかれます。
収入は主に生徒からの月謝やレッスン代で賄われており、音楽講師としてのレベルが上がれば上がるほど収入も上がっていき、より高度なレッスンをすることになります。
さまざまな音楽に対する知識と演奏(または歌唱)技術があるだけでなく、生徒に適切な教え方ができるよう指導力も求められる仕事です。
また場合によってはクラシックだけでなくポピュラー音楽も教えるため、幅広い音楽に精通している必要があります。
「音楽講師」の仕事紹介
音楽講師の仕事内容
生徒に合った指導法で楽器演奏や歌唱を教える
音楽講師は、ピアノやバイオリン、フルート、ギターといった楽器を自分で演奏したいという人や、ボイストレーニングや声楽などを通して歌が上手くなりたいという人に対し、知識や技術を教える仕事です。
音楽教室は多くの場合年齢や目的、習熟度などによってコース分けされており、それぞれのレベルやニーズに合わせて指導することが必要です。
幼児向け教室では複数人でのグループレッスンが多く、遊びを交えながら音楽の基礎や楽器演奏、歌うことの楽しさを指導します。
学生向けになると、それぞれ専門の楽器を個人レッスンで本格的に指導するようになり、社会人向けのコースでは、趣味として楽しみたい人のためにレベルに合わせた指導をします。
専門とする楽器や歌唱のほかに、楽譜の読み方や音楽の歴史的背景、曲想までさまざまな指導をします。
とくに幼少期では指導の仕方がその後に大きく影響することも多いため、音楽の楽しさを教えつつも、音の聞き取りをする「聴音」やリズムのとり方などといった基礎をしっかりと教えます。
こうした講師としてのレッスン業務だけではなく、レッスンのないときには、生徒を募集するために営業や広報を行ったり、教室の運営に関わる事務作業を行ったりすることもあります。
なお、中学校や高校で音楽を教える人は「教員」として扱われ、音楽講師とは区別されることが多いですが、なかには吹奏楽や歌唱などを学校で指導する音楽講師もいます。
音楽講師になるには
音楽大学を卒業するなど一定のスキルが必要
音楽講師になるには、まず一定レベルの音楽の知識や楽器演奏、歌唱のスキルを身に付けなくてはなりません。
こうしたことを身に付けるためには、まず音楽大学や音楽の専門学校などを卒業して音楽の基礎を身に付ける必要があります。
音楽大学には、指導者養成コースがある場合もありますし、それ以外のコースでも自分自身が専門とする楽器や歌唱を極めていれば、指導者レベルの技術を身に付けることができるでしょう。
一方で、技術さえあればとくに資格や学歴は必要なく、誰でも音楽講師になれるチャンスはあります。
とはいえ、有名な音楽大学を卒業していたり、音楽コンクールで入賞していたりすれば、より採用する側からも信頼感をもってもらえますし、生徒も集まりやすいでしょう。
実際に音楽講師として働き始めるには、音楽教室への就職を目指すのが一般的です。
楽器メーカーなどが経営している企業の講師の場合は、各団体が独自に講師の採用試験やレベルチェックなどを行っており、これを突破すれば講師として働き始めることができます。
また、自身で開業し教室を運営することもできますが、新卒でいきなり教室を開く人はほとんどおらず、たいていはこうした民間の教室で経験を積んでから独立しています。
その他の方法としては、大学在学中に良い成績を残し、学校に来ている講師のアシスタントになったり、講師の仕事を紹介してもらったりして、徐々に独り立ちしていくという道もあります。
音楽講師の学校・学費
音楽大学や音楽の専門学校
音楽講師になるためには、音楽大学卒業程度の知識と技術が必要だといわれます。
音楽大学は、音楽の専門課程がある大学のことで、音楽の知識や演奏方法だけでなく、作曲や音楽史など、さまざまなことを学びます。
指揮、声楽、鍵盤楽器、弦楽器、管楽器、打楽器などさまざまな専攻があり、自分自身の極めたいものを専門的に学びます。
日本では国立大学法人が運営する音楽大学は東京藝術大学のみで、公立大学としては、愛知県立芸術大学・京都市立芸術大学・沖縄県立芸術大学の三大学があります。
そのほか、全国には音楽を学べる大学や専門学校が多くありますが、その多くは受験の際に既に一定のレベルを求められるため、中学や高校のうちからしっかりと準備をしておく必要があるでしょう。
音楽講師の資格・試験の難易度
資格よりも経歴や経験が重要視される
音楽講師になるために特別な資格は必要なく、音楽大学卒という経歴や、プレーヤー・歌手としての経験の方が重要視されます。
誤解されがちですが、学校で働く場合でなければ、音楽の教員免許は不要です。
ただし、民間のスクールや音楽教室で働く場合は、各自が独自の検定や資格などを設けており、それに合格しなくては講師として活動できない場合もあるため、注意が必要です。
また特別な資格は必要なくても、講師になる際には研修や養成課程などで指導法を学ばなくてはならないところも多いです。
音楽講師に関連する資格としては、「ヤマハ音楽能力検定」「生涯学習音楽指導員」「音楽検定」などがありますが、これらは活動していく中で実力を試すために取得するという人が多いです。
音楽講師の給料・年収
指導人数やレベルによって違いが出る
音楽講師は、多くが業務委託契約のため、月給制ではありません。
受け持つレッスン数や生徒の人数、自身の講師としての力量を鑑みて料金が設定されますが、時給であれば1200円〜1600円ほどが相場のようです。
また教える生徒数によって収入は大幅に変動し、月給数万円〜25万円と大きく開きがあります。
音楽講師の収入源は生徒からの月謝やレッスン料ですが、企業と契約している場合は教室側に4~6割ほどがとられてしまいます。
たとえば月収1万円で生徒を30人抱えていても、最終的に手元に残るのは12万円〜18万円しかありません。
月謝が高く、担当する生徒が多ければそれだけ給料が増えますが、企業と契約をしている場合は生徒数やレッスン数、月謝を自由に設定できないため、大幅に給料を増やすことはできません。
生徒の人数やレッスン数が減ってしまえばそれだけ給料が減ってしまうため、毎月決まった給料が支払われるとは限らず、不安定な生活をしている人も多いです。
一方、個人で教室を開業する場合は、生徒の人数と月謝により収入が決まりますが、個人教室で生徒を集めるには大変な苦労があります。
多くの場合は近隣に住んでいる生徒が中心ですし、教室のために貸室などを借りればそれだけ経費がかかってしまいます。
また多くの音楽講師はマンツーマンでの指導であるため、講師が指導できる生徒の人数には限界があり、収入を劇的に増やすのは難しい現状があります。
音楽講師の現状と将来性・今後の見通し
他の講師との差別化をはかっていく
音楽教室は、近年習い事の種類が多様化するにつれて、ほかの習い事との競争が激化しています。
また少子高齢化や不景気もあり、必ずしも安定した需要があるとはいえません。
ただし、音楽に親しみたい、楽器や歌を習いたいという人は少なくなく、どれだけ需要を掘り起こし、ほかの講師と差別化を図るかがポイントとなってくるでしょう。
近年では、SNSや動画投稿サイトなどを利用して指導法を広く教えたり、対面ではなくインターネット上で指導したりするなど、さまざまな工夫をして生徒を増やそうと考える人が増えてきています。
自分自身の技術や力量を示したり、個性をアピールしたりすることで「この講師に習いたい」と思わせることも重要になってくるでしょう。
音楽講師の1日
生徒が集中する夕方から夜にかけて働く
音楽講師のスケジュールは、受け持つレッスンの時間帯に左右されます。
学生や社会人を多く教えている場合は夕方から夜間にかけて、反対に主婦や高齢者層がメインであれば午前中やお昼過ぎに仕事が集中します。
ここでは民間の音楽教室で指導をしている講師の例を紹介します。
音楽講師のやりがい、楽しさ
音楽の楽しさを伝えられる
音楽講師のやりがいは、音楽経験がなかった人に音楽を好きになってもらえることです。
これまで楽器や歌に触れてこなかった人が、「音楽は楽しい」「もっとできるようになりたい」といってくれると、大きな喜びを感じます。
とくに音楽は成長が目に見えるものであるため、今までできなかった曲が演奏できるようになったり、これまで出なかった音域の声が出るようになったりするなど、努力が結果になるところも大きな魅力です。
また音楽のレッスンは、基本的にマンツーマンで、指導しているうちに長い付き合いとなることも多いです。
音楽の指導を通して、人間として成長していく様子が見られたり、講師と生徒の枠を超えて家族のように付き合えたりすることもやりがいのひとつでしょう。
音楽講師のつらいこと、大変なこと
一人一人に合った指導を考える必要がある
音楽講師の大変なところは、生徒一人一人に合った指導法を考えなくてはならないところです。
音楽教室に通う目的は、趣味として楽しみたいから、プロとして活躍したいからなど、人によってさまざまです。
同じことを教えるにしても、技量や理解度が違えば全く教え方を変えなくてはなりませんし、何度同じことを教えてもうまくいかない人もいるため、その人それぞれに合わせて指導を行います。
それでもほかのレッスンに移ってしまったり、教室を辞めてしまったりする生徒が出れば、自分の力量不足を痛感することもあるでしょう。
また生徒のモチベーションを維持して長く続けてもらうには、生徒との信頼関係も必要で、音楽の知識やスキルだけではなく、人間としての魅力に左右されるところも大変なところです。
音楽講師に向いている人・適性
楽器や歌がうまいだけでなく指導力がある人
音楽講師に向いているは、演奏や歌唱などの技術の高さはもちろんですが、生徒に対する指導力がある人です。
音楽に限りませんが、どんなに素晴らしいプレイができたとしても、それを上手に指導できるとは限りません。
音楽を習いに来る人は年齢も目的もさまざまで、こうした人たちを一人ひとり指導していくには、指導力はもちろん、コミュニケーション能力や人間的な魅力などが求められるでしょう。
また、幼児の指導を行う場合にはグループレッスンが多いため、しっかりと生徒を観察し、丁寧な指導を心がけなくてはなりません。
そのため集中力が高く、細かいところに気が付きやすい人に向いているといえます。
音楽講師志望動機・目指すきっかけ
講師から指導を受けた経験のある人が大半
音楽講師になるきっかけとして多いものは、自分自身が音楽教室に通っていたり、講師から指導を受けたりしたという経験です。
音楽講師になる人は幼いころから楽器や歌を学んでいたり、親が音楽好きだったりと身近に音楽を感じながら生活していた人ばかりです。
こうした人たちが知識やスキルを身に付け「音楽を教える側に回りたい」と考えるようになるのが一般的です。
また、音楽大学在学中に講師からアシスタントを頼まれたり、幼児の指導に関わったりして自分でプレーヤーとして演奏するよりも人に指導する方が向いていると感じ、転向する人もいます。
なかにはプロを目指して自分自身も研鑽を続けながら、音楽講師として働いている人もいます。
音楽講師の雇用形態・働き方
業務委託契約や時給制が多い
多くの音楽教室では、講師は社員ではなく業務委託契約や時給での契約となります。
レッスンをした人数や回数、時間によって給与が発生しますが、雇用契約ではないため給与の保証はなく、保険など福利厚生は適用されないことが多いです。
新人のうちは企業と契約を結び講師として経験を積む場合が多いですが、契約の内容や条件はしっかりと確認しておく必要があるでしょう。
一方、自分自身で開業し教室を運営している場合は個人事業主となります。
教室の運営に行う事務処理や手続きなどはすべて自分で行わなくてはならないため、経営のスキルも求められます。
音楽講師の勤務時間・休日・生活
指導する生徒によって異なる
音楽講師の勤務時間は、どのような生徒を教えるかによって違いがあります。
たとえば小学生〜高校生の生徒が中心であれば夕方から夜間がメインの勤務時間となります。
一方で主婦や高齢者の生徒が多ければ、午前中やお昼前後にレッスンが集中します。
休日については、あらかじめレッスンのない日を設定したり、企業から休みの日を指定されたりしますが、比較的調整はしやすいといえます。
また自分で教室を開いているのであれば、生徒と相談の上時間や休日を自由に設定できます。
土日はしっかりと休むという人もいますが、土日をメインにレッスンしているという教室もあり、働き方や勤務時間は講師の考え方によってさまざまです。
音楽講師の求人・就職状況・需要
時代を問わず一定のニーズがある
音楽講師の需要は時代を問わず一定数あり、とくに全国展開しているような大手の音楽教室は地域を問わず募集があります。
ただし独自の検定や資格の取得が求められたり、講師になってから研修を受けなくてはならなかったりというデメリットもあります。
地域によっては教室の開講がないというところもあるため、どこで働きたいのか、講師の募集はあるかなどをあらかじめ調べて置く必要があるでしょう。
一方、自分自身で教室を開く人も非常に多いですが、開業の段階ではその地域にどの程度需要があるかは未知の部分があります。
近隣の音楽教室などをしっかりと調べ、どの程度の生徒が見込めるかをしっかりと考えなくては、開業しても収入が得られない場合もあります。
音楽講師の転職状況・未経験採用
転職も多い職業
音楽講師は、転職でなる人も多い職業です。
もともと楽器を演奏したり歌を歌ったりするプレーヤーとして活躍していた人が講師となる場合もありますし、生徒として習ううちに上達し、今度は教える側に回るという場合もあります。
音楽講師に特別な年齢制限はないため、年齢を重ねてから好きなことをやりたいと転職する人も少なくありません。
一方で、音楽講師は収入が不安定であることなどから、転職して違う職業になる人も多いです。
やりがいを持ち長く働く人が居る一方で、数年で退職してしまうという人もいるため、長く働きたいという場合は自分の道についてしっかりと考えておく必要があるでしょう。