能楽師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「能楽師」とは

能楽師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

日本の伝統芸能である「能」と「狂言」を演じ、伝統を継承する。

能楽師は、能楽協会会員として室町時代から続く日本の伝統芸能のひとつである「能」と「狂言」を演じる人のことをいい、「能役者」と呼ばれることもあります。

能楽師になるために必要な資格はありませんが、基本的には何代も続く能楽師の家に生まれた人が幼少時から訓練を受け、その伝統を継承しています。

もし家元以外の人が能楽師を目指す場合には、国立能楽堂の研修生となって6年間研修を受ける必要があります。

能楽師の収入は、弟子からの月謝、舞台の出演料、テレビ等のメディアに露出した際のギャラとなり、人によって大きな差が出るようです。

能楽は世界に誇る日本の文化のひとつですが年配のファンが多く、新たな顧客を獲得すべく試行錯誤が重ねられています。

これから能楽師を目指す人にはチャンスといえるかもしれません。

「能楽師」の仕事紹介

能楽師の仕事内容

能楽師は能役者とも呼ばれ、能楽協会会員として室町時代から続く日本の伝統芸能のひとつである能と狂言を職業として演じています。

舞台に出演するだけではなくアマチュアのお弟子さんたちに技術や知識を教授するのも重要な仕事です。

能楽は舞と謡(声楽)、囃子(和楽器の演奏)からなる演劇です。能楽師は能面をつけて役を演じるシテ方(主役)とワキ方(脇役)、狂言方、囃子方に分かれており、シテ方には観世流、金春流など5つ、ワキ方には高安流など3つ、狂言方は2つ、囃子方は14の流派があり、それぞれに特徴があります。

人気のある能楽師はテレビや雑誌などのメディアに出る機会も多くなります。

また日本の伝統芸能でありながら、多くの日本人が触れる機会のない能楽の魅力を国内外で広くアピールしていくことも大切な仕事となっています。

能楽師になるには

能楽師になるために必要な資格はなく、基本的には何代も続く能楽師の家に生まれた者が幼少時から訓練を受け、その伝統を継承しています。

最終的に職業として能楽を行っていくことを決断した場合、所属する流派の宗家に内弟子として数年間住み込んで修行し、初期訓練の仕上げを行います。

実力を認められた後に推薦を受け、能楽協会会員となってはじめてプロの能楽師を名乗ることが許されるのです。

家元以外の人が能楽師を目指す場合は国立能楽堂の研修生となって6年間研修を受ける必要があります。

ただし研修生となるには、中学生以上25歳未満といった条件があるので注意が必要です。

能楽師の給料・年収

能楽師の収入は、弟子からの月謝、舞台の出演料、テレビ等のメディアに露出した際のギャラであり、その大半を月謝が占めています。

弟子一人につき、稽古は月1~3回で8,000円~15,000円の月謝が支払われます。

有名な人になると50人以上の弟子を抱えていたりする場合もあるので結構な収入になるようです。

実入りが多そうに思える舞台の観劇料は他の出演者の給料、装束、面、小道具の購入にあてられるため、意外にも黒字にならないことが多いとされています。

能楽師は装束や小道具の購入など出費も多く、一握りの大スターを除いて手取りで考えるとあまり高給取りとはいえないケースが少なくありません。

能楽師の現状と将来性・今後の見通し

歌舞伎や人形浄瑠璃文楽などとともに、ユネスコの無形文化遺産に選ばれる能楽は世界に誇れる日本の文化です。

しかし、専門用語が多く、予習なしでは内容が理解しづらいことから、とっつきづらく、日本人であっても一度も見たことがないという人がほとんどでしょう。

実際、鑑賞者の高齢化が深刻で、固定客が大半を占める状況です。

これを打開する方法として、注目が集まっているのがタブレットの導入です。観客は配布されたタブレットの画面を見ながら公演を鑑賞します。

タブレットにはシーンに合わせた解説が配信されるシステムになっているのでで、内容が理解しやすいというメリットがあり、新たな鑑賞スタイルとして期待されています。

タブレットの導入により新たなファン層の獲得、とくに若年者の中に能楽に興味を持つ人が出てくる可能性が高まります。

また英語や中国語といった外国語での配信も可能なため、外国人観光客に能楽の魅力を伝えることも可能になります。

伝統を重んじる能楽界ですが新たな顧客を獲得すべく、試行錯誤を重ねており、将来的には一つの演目を数日にわたって催すことも検討しています。

これにより多くの能楽師に活躍のチャンスが与えられることになるため、これから能楽師を目指す人にとっても明るい展望であると考えることができるでしょう。

能楽師に向いている人・適性

もちろん舞台上では台本を見ることは許されないので記憶力のある人はその能力を大いに発揮することができます。

歌舞伎や現代劇のように1回の公演が数日間続くのではなく、毎日違う演目を上演しているので切り替えの早いことも能楽師の適性であるといえます。

同じ演目であっても演者によって上演時間の長さが大きく異なるほど、表現の個性が如実に表れるのが能楽の醍醐味です。

プロの能楽師として舞台に立つ以上、生涯能楽を愛し、研究し、自己の鍛錬に励むことではじめてその人ならではの味が出るため飽くなき探究心は必要不可欠であるといえます。

また上下関係のはっきりした世界なので言葉遣いや礼儀に厳しいため、それに対応できないとやっていくのは難しいかもしれません。

能楽師の勤務時間・休日・生活

能楽師は仕事の依頼があれば全国を飛び回って舞台に出演しています。

1回の演目は曲によって長さがまちまちであり、15分程度で終わるものもあれば2時間半にも及ぶものもあります。同じ曲でも演じる人によって20分前後の誤差が出てきます。

本番前の稽古は2、3度ほどになりますが表現の確認等は1ヶ月以上前からじっくり行っています。

舞台の時は開演の時間前には楽屋入りするのでかなり早くに起床することもあります。

能楽の公演はお客さんの入る祝祭日に催されることが圧倒的に多いので、休日は平日にとることになります。

家族や他の職業の友人などと休みが合わず苦労している能楽師が多いのが現状です。

公演がない日は自身が抱える弟子の稽古や自分の稽古に時間をあてているため、忙しい時は2ヶ月休みがないということもあるようです。

稽古の日はある程度時間の融通が聞くため朝は比較的時間がとれます。

いずれにしても一般的な会社員とは大いに異なる生活パターンになることを理解しておきましょう。

能楽師の求人・就職状況・需要

ほとんどの能楽師はフリーランスの個人事業主です。したがって着替えや道具の準備などの裏方作業も自分で行う必要があります。

その代わり能楽師どうしのつながりが強固であり、密に交流することで公演を成功させています。

狂言方、ワキ方はプロダクションのように窓口を持っており、依頼に応じて一座を組んで出演します。シテ方、囃子方は全くの個人経営です。

すべての能楽師が能楽協会に所属していますが協会は個々の公演の面倒は見てくれません。

共演者や劇場側との交渉、チケットの手配などは大抵シテ方が請け負います。したがってシテ方にはマネジメントやプロデュースといった多面的な能力が要求されます。

能楽師の舞台の出演依頼は契約書を交わしたりせずまったくの信頼関係で成り立っています。

依頼はたいてい1年前、場合によっては2年後の約束をすることも珍しくありません。