JASRAC職員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「JASRAC職員」とは
音楽を「創る人」と「使う人」の橋渡しをするスペシャリスト
日本に住んでいる人であれば、JASRACの名前を聞いたことがあるという人は多いでしょう。
しかし、その実態や仕事内容はイメージできないという人もいるのではないでしょうか。
JASRACというのは、一般社団法人である日本音楽著作権協会のことです。
音楽を創る人から著作権を預かり、その音楽を使用する人から使用料を預かって、創る人に支払う。
簡単にいうと、それがJASRACの使命です。
たとえばミュージシャンが曲を作ったとき、テレビでその曲のCDを流すことがあります。
出版社が曲を楽譜にして販売することもありますし、カラオケボックスでは多くの人が歌うこともあります。
このようなとき、曲を作ったミュージシャンに相応の対価が支払うことで、彼らの音楽活動を支えているのです。
JASRACの歴史は、 1939年の設立からスタートしています。
本部のほかに全国14の支部があり、2021年4月1日現在は、512名(男性322名、女性190名)の職員が働いています。
主な仕事としては、楽曲の利用者からの利用申込の受付、許諾証の発行、著作物使用料の徴収業務があります。
近年ではファイル共有ソフトの悪用やカラオケでの無断利用なども急増しているため、こうした違反者への法的措置も大切な仕事のひとつです。
決して目立つ仕事ではありませんが、日本の音楽業界の権利や利益を守るため、地道なサポートをしています。
「JASRAC職員」の仕事紹介
JASRAC職員の仕事内容
総合職としてさまざまな業務を担当
JASRACの職員の仕事は、音楽を創る人と使う人の橋渡しをすることです。
職員は、大きく分けると4つのジャンルに分かれて仕事をしています。
ここでは、それぞれの仕事内容についてご紹介しましょう。
まずひとつめは、音楽を使う人と関わる仕事です。
「支部」「送信部」「複製部」「演奏部」「調査部」があり、利用者の対応をする部署となっています。
コンサートやカラオケ、テレビの放送などで音楽が利用される場合に、主催者やカラオケ店の経営者、放送局から利用申請を受け付けます。
その後、許諾証を発行をし、著作物使用料の徴収するまでの一連の作業を担当しています。
ふたつめは、音楽を創る人と関わる仕事です。
「会務部」「資料部」などがあり、作曲家や作詞家のサポートをします。
具体的には、著作権の管理委託契約手続きを行ったり、作品や権利者のデータベースを作成したりします。
音楽家の活動を支えるために、なくてはならない部署ともいえるでしょう。
みっつめは、音楽を創る人と使う人をつなぐ仕事です。
「分配部」「権利情報整備部」があり、音楽の利用者から預かった使用料を権利者に分配しています。
最後に、JASRACを支える仕事があります。
「広報部」「国際部」「総務部」「企画部」「経理部」などがあり、組織全体の運営をサポートしています。
JASRACの職員は総合職として採用されているので、入社後に上記のどこかの部署に配属されることになります。
異動もあるので、将来的にはさまざまな部署で経験を積むことが可能です。
JASRAC職員になるには
大学で学び新卒採用にチャレンジ
JASRACの職員になるには、どうすればよいのでしょうか。
まず、新卒採用の前提条件としては、四年制の大学あるいは大学院の学歴が必須とされています。
将来的にJASRACへの就職を考えるのであれば、専門学校や短期大学ではなく四年制の大学に進学しておくことが大切です。
学部や学科に関しては特に決まりはないため、文系でも理系でもかまいません。
法律や音楽に関する知識やスキルも、入社の時点ではなくても問題ないようです。
海外の著作権団体と関わる業務もあるので、語学に関するスキルがあると役に立ちます。
JASRACの気になる採用人数ですが、新卒採用では例年15人前後を採用しているようです。
組織全体としても500人ほどしかおらず、採用が狭き門であることがよくわかるのではないでしょうか。
職員は総合職として採用されるので、入社の時点では配属される部署は決まっていません。
音楽著作物の利用に係るライセンス業務及び著作物使用料の徴収業務する「業務部門」。
音楽作品・権利者・分配等の各データ管理業務をする「管理部門」。
人事・経理・企画・広報などを担当する「総務部門」。
採用後はこうしたそれぞれの部署に分かれて仕事をすることになります。
基本的には適性や希望を考慮しながら、さまざまな部署を異動してスキルを磨くことになります。
採用試験の時点でやりたい仕事を尋ねられることもあるので、事前に考えておくとよいでしょう。
試験の概要としては、エントリーシートを提出し、合格した人は面接に進むことができます。
面接は「一次面接」「二次面接」「三次面接」「最終面接」と回数が多いのが特徴です。
しっかり自己PRできるよう、万全な対策をして臨みましょう。
JASRAC職員の学校・学費
学部や学校はどこでもOK
JASRACの新卒採用は、四年制大学または大学院を卒業(修了)予定であることが前提です。
「音楽系の大学や学部の出身者のほうが就職に有利なのではないか」と考える人もいるでしょう。
あるいは「法学部の出身のほうが有利なのではないか」と考える人もいるかもしれません。
しかし、JASRACの新卒採用HPには、採用にあたっては学校や学部は特に関係ないと記されています。
あくまでも一人一人の能力や適性、人としての魅力で判断するそうです。
著作権を扱う以上は法律の知識が必要となりますが、これは入社後の研修や仕事の中で身に付けることができます。
また、音楽活動の有無やスキル、知識なども問わないと明記されています。
四年制の大卒であれば、学校や学部に関係なくチャレンジできるということは、大きな魅力といえるでしょう。
JASRAC職員の資格・試験の難易度
法律の資格は必要なし
JASRACで働く職員は、音楽の著作権を取り扱うため、法律に関する知識が必要になります。
こうしたことから「入社するためには専門の資格が必要なのではないか」と考える人もいるでしょう。
「ビジネス著作権検定」や「知的財産管理技能検定」、「弁理士」などの資格です。
しかし実際は、入社の時点でこのような資格が求められるわけではありません。
必要な知識は研修や職務を通して身につけることができるので、資格がなくても問題はないようです。
一方で、JASRACの職員は、仕事を通して世界各国の著作権団体と関わることがあります。
英語はもちろんのこと、それ以外の外国語も話せると役に立つことは間違いありません。
学生のうちに語学の資格を取得しておくのがおススメです。
JASRAC職員の給料・年収
安定傾向で福利厚生も充実
JASRACの職員の給料は、どのくらいなのでしょうか。
ここでは月給や福利厚生についてご紹介します。
まず、初任給についてです。
初任給は、職員の学歴によって異なります。
JASRACの新卒採用の募集要項によると、2020年度の大学卒の初任給は20万2430円です。
内訳は、基本給18万1130円+住宅手当1万3700円+社会保険手当7600円となっています。
さらに大学院の修士了の場合、初任給は月給22万1670円です。
内訳は、基本給20万370円+住宅手当1万3700円+社会保険手当7600円となっています。
年収は公開されていませんが、初任給を参考にすると一般企業と同じくらいの金額と考えられるのではないでしょうか。
社会保険手当は5月から支給されるそうです。
また、一般企業と同じように実績に応じた賞与(ボーナス)も支払われます。
ボーナスは年に2回、6月と12月の支給です。
基本的には年に一度、4月に昇給します。
さらに、通勤交通費や扶養家族手当など、各種の手当てもあります。
財形貯蓄や慶弔見舞金、借上社宅など、福利厚生も充実しているようです。
大手企業と比べると特別に給料が高いというわけではありませんが、賞与や昇給、手当など待遇は恵まれています。
歴史や実績、そして知名度のある一般社団法人であるだけに、給料に関しては安定していると考えてよいでしょう。
景気に大きく左右されにくい仕事内容であることも特徴のひとつです。
育児休業や介護休業などの制度もあるので、安心して働ける環境だといえるのではないでしょうか。
JASRAC職員の現状と将来性・今後の見通し
時代の変化についていくことが大切
現代社会ではダウンロードやストリーミングで音楽を聴く若者が圧倒的に増えてきています。
このようなインターネットを利用した音楽鑑賞は、私たちにさまざまな楽しみを与えてくれます。
その一方で、他人の曲を勝手にアップロードする人や音楽ファイルを違法に共有する人が増えているのも事実です。
「音楽にも著作権がある」とか「楽曲に対価が支払われるべき」という認識を、改めて広めていかなければならない世の中ともいえるでしょう。
変わりゆく時代のなかで、JASRACのシステムや活動内容も柔軟に変化させていかなければいけません。
難しい仕事であるのは当然のこととして、そのぶん社会への貢献も大きくなります。
チャレンジ精神のある人にとって、十分にやりがいのある仕事となるでしょう。
JASRAC職員の1日
先方の営業時間に合わせたスケジュール
JASRAC職員は、さまざまな部署に分かれて仕事をしています。
ここでは、飲食店やカラオケなどで音楽を使用する事業者の対応を担当している職員のスケジュールをご紹介します。
JASRAC職員のやりがい、楽しさ
音楽の文化を守るために
JASRACで働いている職員は、日本の音楽文化を守るという信念を持って活動しています。
作曲家や作詞家が曲を作ったとき、そこにライセンスが発生して使用料が支払われるようになる。
その仕組みが、音楽活動をする人の権利や生活を守っているからです。
楽曲を使用する人も、使用料を支払う手続きをすることで、安心して音楽を楽しむことができます。
JASRACの仕事は決して目立つものではなく、どちらかというと地道な業務が多いのが特徴です。
しかし、こうした地道な業務の積み重ねが、音楽を創る人と使う人の双方を支えているのです。
ときには作曲家から「ありがとう」と感謝されることもあります。
そんなときに、この仕事をしてきてよかったと思うことができるのです。
JASRAC職員のつらいこと、大変なこと
著作権を理解してもらえないことも
JASRACの職員にとって大変なのは、音楽の著作権を理解してもらえない事業者もいるということです。
カラオケボックスで楽曲を使ったり、飲食店で音楽を流したりするのであれば、本来は楽曲の使用料が発生します。
しかし、事業者のなかには「なんで自分がそんなもの払わないといけないんだ」と反発する人もいるのです。
残念ながら理解が得られない場合は、何度も電話をしたり店舗に足を運んだりして交渉することになります。
そしてそれでもどうしても理解を得られない場合、裁判になることもあるのです。
自分が担当している案件が上手く進まないときは、職員にとって非常に苦しい瞬間です。
粘り強く交渉する力やストレスに負けないタフさが求められる仕事といえるでしょう。
JASRAC職員に向いている人・適性
音楽を愛し、法律を重視する人
JASRACの仕事に向いているのはどんな人でしょうか。
まず、音楽の著作権を取り扱う仕事である以上、音楽に対する愛情やリスペクトの気持ちがあることが大前提です。
知識や楽器経験はマストではありませんが、音楽が好きな人のほうが向いています。
業務によっては作曲家や作詞家と関わることもあるので、彼らの思いを尊重して向き合えることも求められます。
次に、法律を大切にする姿勢があることも大切です。
仕事では、多くの人と関わることになります。
楽曲を使用する事業者に対して、著作権の大切さや意義を説いて使用料を預かることもあります。
正義感があり、まじめで、法律を遵守できる人が適任です。
もうひとつ。
仕事では粘り強く交渉しなければいけない局面もあるので、コツコツ努力できる人のほうが向いているでしょう。
JASRAC職員志望動機・目指すきっかけ
音楽を創る人と使う人を支える仕事がしたい
JASRACの仕事は、音楽を創る作曲家や作詞家と、楽曲を楽しむ人たちを支える仕事です。
もともと音楽に興味があり「音楽業界を支える仕事がしたい」と考える人が、JASRACへの就職を目指すケースは多くあります。
作曲家や作詞家と直接関わることができる仕事もあるので、やりがいを感じやすいのでしょう。
また、「法律に関する仕事がしたい」という志望動機で入社する人もいます。
大学の法学部で学んでいた人が、その知識を生かせる仕事としてJASRACを選ぶのです。
弁護士や弁理士のような専門職ではありませんが、JASRAC職員も専門性の高い職業であることは間違いありません。
特に知的財産権や著作権に興味がある人であれば、自分の専門知識を十分に生かすことができるでしょう。
JASRAC職員の雇用形態・働き方
総合職の職員として雇用
JASRACで働いている人たちは、総合職の職員として採用されています。
「音楽の著作権を守る専門性が高い仕事」ということもあり、JASRAC職員は正規雇用が基本です。
職員は全体で500人ほどで、新卒採用としては毎年15名ほどが入社しています。
中途採用に関してはJASRACのHPに情報がないので、入社を目指すのであれば新卒採用を狙うのがよいでしょう。
入社する場合、総合職なので「業務部門」「管理部門」「総務部門」のいずれかの部門に配属されます。
JASRAC本部は東京の渋谷区にありますが、全国の主要都市に14の支部があります。
正規雇用の職員として働く以上、全国転勤の可能性があるので、理解した上で入社しましょう。
JASRAC職員の勤務時間・休日・生活
部門によって勤務時間が決まる
音楽の著作権を守るJASRACには、さまざまな仕事があります。
音楽を創る作曲家や作詞家と関わる仕事もあれば、音楽を使う事業者と関わる仕事もあります。
どの仕事を担当するかによって、勤務時間や生活のリズムが左右されると考えておきましょう。
たとえば、カラオケボックスやジャズバーのような飲食店に、楽曲の使用料の交渉をする仕事の場合。
お店が開店するのは昼からということも多いので、必然的にJASRAC職員も時間帯を合わせることになります。
朝10時頃にゆっくり出勤して、昼から電話でアポイントを取り、夜になって直接お店に足を運ぶ、というケースもあります。
こうした仕事をする場合は夜型の生活になるので、体調を壊さないよう配慮しながら働くことが大切です。
JASRAC職員の求人・就職状況・需要
新卒採用は狭き門で有名
JASRACの職員になるためには、新卒の採用試験に合格する必要があります。
しかし、新卒の試験は非常に倍率が高いことで知られています。
総合職の採用数は、例年15人ほどしかいません。
四年制大学あるいは大学院の卒業生しか応募できないため、必然的に高学歴の学生が多く応募してきます。
年度によって多少の差はあるもののハードルは高いことは間違いないので、しっかり準備をして臨みましょう。
特に面接試験は「一次」「二次」「三次」「最終」と回数が多いことで有名です。
志望動機や自己アピールはもちろんのこと、JASRACの歴史や活動の意義なども自分の言葉で語れるようにしておきましょう。
なお、総合職は東京本部での採用になりますが、本部と支部を転勤しながらキャリアを積むことになります。
2021年5月現在は、地方支部での採用予定はありません。
JASRAC職員の転職状況・未経験採用
転職には期待できない業界
今は全く別の仕事をしているものの「いずれJASRACに転職したい」と考えている人もいるかもしれません。
未経験者でも熱意や適性があれば転職することは可能なのでしょうか?
結論からいうと、転職に関しては厳しいと考えておいたほうがよいでしょう。
JASRACは音楽の著作権を取り扱うという専門性の高い仕事をしています。
そのため、15名ほどの新卒社員に入社後に研修を受けさせ、法律の知識や音楽業界の事情について教育します。
その後も本部や支部を異動しながら、時間をかけて知識やスキルを磨いていくのです。
採用情報に関するHPにも、中途採用やキャリア採用自体の情報がありません。
JASRACの職員を目指すのであれば、新卒採用に応募できるタイミングでチャンスを掴みとることが大切です。