医療事務と調剤薬局事務の違い
医療事務と調剤薬局事務の勤務先・仕事内容の違い
医療事務と調剤薬局事務は、どちらも医療系の事務職という点で共通しています。
しかし、細かく見ていくと、その仕事内容や役割には違いがあります。
まずは働く場所や仕事内容などの違いから見ていきましょう。
働く場所の違い
医療事務が働くのは、病院やクリニックといった医療施設です。
町の個人病院から大きな総合病院まで施設の規模はまちまちですが、大きな病院では複数の医療事務スタッフが分業して仕事をしており、そこに訪れる患者さんと接します。
一方、調剤事務は調剤薬局に勤務します。
調剤薬局には、近隣の病院やクリニックなど、さまざまな診療科で診察や治療を受けた患者さんが訪れます。
最近は大手チェーンのドラッグストアの中に調剤薬局が併設されている店舗も増えており、買い物がてらに調剤薬局へ訪れる人もいます。
病院よりもさまざまな患者さんと接することが多いです。
仕事内容の違い
医療事務は、医療施設でおもに患者さんの受付窓口や会計業務、レセプト作成業務に携わります。
レセプト作成では、さまざまな症状を抱えた患者さんの診療内容や治療内容が書かれたカルテをもとに、あらかじめ設定されている点数を計算して、患者さんの会計や保険請求額を出していきます。
調剤薬局事務も、その中心業務はレセプト作成です。
患者さんの処方箋を預かり、処方箋の内容を基に患者さんの会計と保険請求額を計算します。
必要な知識の違い
医療事務のレセプト作成では、診察、検査、投薬、レントゲンなど、一つひとつの処置や行為に対して別の点数が設定されています。
また、入院と外来とでも計算方法が違い、診療科によってさまざまな処置があるため、覚えるべきことは多いです。
一方、調剤薬局事務の場合は、医療事務のなかでも調剤と投薬に関する部分の知識が求められます。
医療事務に比べるとだいぶ範囲は狭いため、資格の取得も比較的容易とされています。
20代で正社員への就職・転職
医療事務と調剤薬局事務のなるための方法の違い
医療事務、調剤薬局事務のいずれも、就職する際に必ず必要となる資格や学歴はありません。
ただし、どちらの事務にも欠かせない「レセプト作成」には専門的な知識が必要となるため、関連する資格を持っていると、就職や転職の際に有利になる可能性が高いです。
医療事務に就職するには、病院や診療所などの求人を探して応募するのが一般的です。
医療系・ビジネス系の専門学校に通って医療事務を目指す場合は、医療機関とのつながりを持つ学校の就職課を積極的に利用しましょう。
調剤薬局事務の資格を取得する場合は、通信講座などを受講するほか、独学でもハードルはそれほど高くありません。
また、就職の際は、調剤薬局事務の実務経験があれば優遇されますが、未経験でも採用される可能性は十分にあります。
医療事務の求人数のほうが多く見つかりますが、より経験が重視される傾向にあるので、就職のしやすさはあまり変わらないでしょう。
医療事務と調剤薬局事務の資格・必要なスキルの違い
医療事務や調剤薬局事務の仕事には、特別な資格を持っていなくても就くことができます。
ただし、一般事務とは違い、業務にあたり医療や調剤に関する専門知識が求められるほか、診療報酬や調剤報酬の計算をおこなう「レセプト作成」のスキルが必要となります。
そのため、実務経験があり、これらのスキルの証明となる資格を持っていると、就職や転職の際に有利となる可能性が高くなります。
医療事務の場合は、「医療事務技能審査試験」や「診療報酬請求事務能力認定試験」などの民間資格を目指す人が多いです。
調剤薬局事務の知識を問う資格には、「調剤事務管理士技能認定試験」や「調剤報酬請求事務技能認定」がおすすめです。
医療事務が、診察や治療、入院や検査といった幅広い医療行為を扱う一方で、調剤薬局事務は薬剤の分野のみが対象となるため、資格の難易度は医療事務のほうが高いといわれています。
いずれの資格も、スクールや講座、専門学校などを利用して合格を目指す人が多いですが、とくに調剤薬局事務の場合は、独学で取得することも可能です。
20代で正社員への就職・転職
医療事務と調剤薬局事務の学校・学費の違い
医療事務や調剤薬局事務になるために必ず通わなくてはならない学校はありません。
いずれの仕事に就く場合も学歴はあまり問われませんが、大学病院などの大きな病院や、大手薬局チェーンなどでは、大卒以上を条件として募集するところもあります。
医療事務・調剤薬局事務ともに未経験でも就ける職業ですが、医療や薬剤の専門知識やレセプト作成のスキルがあると、就職するとき有利にはたらきます。
そのため、医療系の専門学校に通ったり通信講座やスクールを利用したりして、医療事務・調剤薬局事務にかかわる専門知識の習得や、資格の取得を目指す人も多いです。
医療事務や調剤薬局事務の資格を目指すスクールや通信講座であれば、安いもので2〜3万円、資格によっては5〜10万円程度の費用が必要です。
医療系の専門学校に進学する場合の学費は、年間70〜120万円程度が相場です。
医療事務と調剤薬局事務の給料・待遇の違い
医療事務・調剤薬局事務いずれの場合も、勤務先の規模によって給与の額が異なるため一概には言えませんが、一般的には医療事務の給与のほうがやや高いようです。
医療事務の正社員として勤務する場合の平均年収は300〜400万円程度だといわれる一方で、調剤薬局事務の場合は年収300万円前後が平均となっています。
どちらの職業でも専門的なスキルを要する「レセプト業務」をおこなうことになりますが、医療事務と調剤薬局事務では扱う内容の幅に差があります。
より幅広い医療行為を扱う医療事務の給与のほうが、薬剤のみを扱う調剤薬局事務よりも高くなる傾向にあります。
待遇に関しては大きな差はなく、いずれの職業の場合も勤務先の大小によって休暇の取りやすさや福利厚生の充実度は異なるでしょう。
医療事務と調剤薬局事務はどっちがおすすめ?
医療事務と調剤薬局事務はいずれも医療に関する職業なので、どちらを目指すか迷う人もいるでしょう。
2つの職業の大きな違いは、働く場所と扱う内容にあります。
医療事務は病院などの医療機関が勤務場所となり、調剤薬局事務は調剤薬局やドラッグストアで働くことになります。
医療事務の場合、受付から会計、患者さんの対応、介護助手、レセプト作成まで業務が幅広く、専門スキルが必要となるレセプト作成に関しても、診察や検査、手術、入院など、扱う報酬は多岐に渡ります。
一方で、調剤薬局事務は、受付や会計、レセプト作成がメインの仕事となり、レセプトを作成する際には調剤報酬のみを扱います。
そのため、医療全体の知識やスキルを身につけたい人には医療事務が、薬の調剤に特化した事務のスペシャリストを目指す人には調剤薬局事務が向いているといえます。