造船業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説

(読了時間:13分22秒)

造船業界とは

造船業界とは、文字通り「船を造る」業界です。

コンテナ船・原油タンカー・旅客船・海軍の巡視船など、さまざまな大型船を造り上げます。

手漕ぎボードやモーターボートといった小型船を造ることも広くは造船に含まれますが、一般的には「船室のある大型船」、「海上輸送をおこなう大型船」など、大型船を造る業界が造船業界として扱われます。

造船業界では、大型船の設計を行い、「造船ドック」などの大規模な施設で一から船を組み立てていきます。

それには何百人何千人ものヒトの力が必要であり、一つの船を造るには多大な労力が掛かります。

日本の造船産業の歴史は古く、江戸時代幕末、黒船来航の頃より始まったといわれています。

明治時代より本格的に造船産業がはじまり、戦後の高度成長期には「造船業は日本のお家芸」と呼ばれるまでに成長しました。

今現在も、世界の造船は中国・韓国・日本が独占しており、この3国が圧倒的なシェアを誇ります。

日本は近年、中国・韓国に抜かれ世界トップ3位の座に転落してしまいましたが、それでも世界有数の造船国であることには違いありません。

造船業界の役割

造船業界は、「海運業界」と密接な関係があります。

造船業界が大型船を造っているからこそ、自動車やガソリンなどさまざまな物資の「海運」が成り立ちます。

より高性能で安全な船を造り、日本の海運、そして世界の海運を足元から支えることが、造船業界の役割です。

特に四方を海で囲まれた日本において海運は必要不可欠な産業であり、そのゆくえを担っているのも造船業界です。

また、大型船の運航には莫大な燃料を使います。

大型船の出す排気ガスなどが大気汚染の原因にもなっており、今後は船舶燃料に対しての「環境規制」が進んでいく予定です。

より地球に優しい、低燃費でエコロジーな船を造ることも、今後の造船業界の役割でありミッションとなります。

造船業界の企業の種類とビジネスモデル

造船業界の一般的なビジネスモデル

造船業界の主なお客さまは、海運会社です(その他、海上自衛隊や大富豪などもあります)。

最終的に船を所有する企業や人を、「船主」と呼びます。

船主から造船案件を受注し、船を造り納品することで、利益を得ます。

これが造船業界での一般的なビジネスモデルです。

造船は「オーダメイド」が基本であり、形は似ていても全く同じ船というのはほとんどありません。

なお造船は、受注から完成まで1〜5年間の長い時間が掛かります。

その間に材料価格の高騰や下落が起ると、利益に大きく影響を及ぼすこともあります。

総合重工業メーカーのビジネスモデル

総合重工業メーカーの例としては、「三菱重工」、「川崎重工」、「三井造船」、「日立造船」などがあげられます。

これらはいわゆる総合メーカーであり、造船だけでなく自動車・航空機・環境プラントなどさまざまな分野で、機械の生産や開発を手掛けています。

造船も手掛けていますが、あくまで一つの事業に過ぎません。

またこれらの重工業メーカーは巨大な地盤やネットワークを持つため、グループ企業内で造船ビジネスを行うケースが多いです。

大手造船企業のビジネスモデル

大手の造船企業の例としては、「今治造船」「ジャパンマリンユナイテッド(JMU)」「大島造船所」などが挙げられます。

これらは、「専業」で造船を行っている大手企業であり、国内外で高いシェアを誇ります。

大型コンテナ船や大型タンカーなどさまざまな船舶を手掛けており、船の受注・設計・建造までのすべてを自社単独で請け負っています。

中小造船企業のビジネスモデル

中小の造船企業の例としては、「尾道造船」「北日本造船」「神田造船所」などが挙げられます。

ビジネスモデル自体は大手とさほど変わらず、造船案件を受注し、自社で船を造っています。

ただし中小の造船企業の場合は「フェリーや漁船など専門分野に特化する」、「中規模サイズの船をターゲットとする」などのスタイルで、大手と差別化しているケースが多いです。

海外の大手造船企業

海外の大手造船企業としては「現代重工業(韓国)」「大宇造船海洋(韓国)」「サムスン重工業(韓国)」「上海外高橋造船(中国)」などが挙げられます。

これらの中韓メーカーは、日本よりも品質は劣るものの、価格の安い船を造るため、80年代以降急速にシェアを伸ばしました。

近年は、「安さより質」に戻りつつもありますが、それでも中韓メーカーは日本よりも大きなシェアを獲得しているのが現状です。

造船業界の職種

一つの船を作り上げるにはたくさんの人の力が必要になり、職種もさまざまなものが用意されています。

ここでは、造船業界の特有の職種のうち代表的なものを紹介します。

設計

「設計」は、どのような船を造っていくかを考案する職種です。

「基本設計」では、船の全体像や重要部分を設計し、「詳細設計」では、船体各部の細かな仕様を設計していきます。

設計次第で船の安全性すら左右されますので、あらゆる分野の高度な知識が必要となります。

もちろんそれを一人で行うのではなく、各分野の設計者が集まり協力して、一つの船を造り上げていきます。

設計の仕事は、工学系の知識が必要になりますので、理系学部出身の人が活躍することが多いです。

生産

「生産」は、設計書をもとに、実際に船を造り上げていく仕事です。

鋼材の加工(ブロック造り)・組み立て・ブロック搭載・塗装・浸水・試運転など、生産には多くの工程があります。

船の生産には長い時間が掛かり、沢山の作業員が生産に関わります。

新卒入社の社員の場合、将来的に生産現場の管理や指揮を任されることも多いため、それらたくさんの作業員をまとめていく力も求められます。

なお生産の職種は、「造船ドック」など海沿いの造船施設で働くことが多いです。

営業

「営業」は、自社を売り込み、造船の新規案件を受注していく職種です。

造船業界の営業の場合、技術部門と連携して船の概要をまとめた「仕様書」を準備し、お客さまとなる船主に売り込みます。

船は一艘で100憶円を越えることもありますので、大きな取引となります。

船主から受注を獲得するためには、自社の各部門と連携力や、高い交渉力も問われてきます。

また海外の船主を相手にすることもありますので、語学力も問われてきます。

調達

「調達」は、これから造る船に使う、材料や機材を手配する職種です。

鋼材・パイプ・塗料といった材料から、エンジンや航海機器といった機材まで、船を造るには何万個もの「モノ」が必要となります。

これらの購入先の選定や、価格調整、納期管理などを行うのが「調達」の仕事です。

扱う材料や機材の質も、船の仕上がりに影響しますので、調達の仕事も造船において重要になります。

造船業界のやりがい・魅力

船という巨大な乗り物を造れる

大手の造船企業であれば、何千台ものクルマを運ぶ大型自動車運搬船や、何千人もの旅行客を乗せる大型豪華客船を造ることもあります。

ビルよりも大きな船を造ることもあり、そのスケールは他の乗り物と比になりません。

そのような巨大でかたちある代物を造ることができますので、ものづくりが好きな人にとっては、大きなやりがいとなるでしょう。

自分の手掛けた船が完成した暁には、この上ない感動が味わえます。

たくさんの人と協力して造り上げる

造船業界では、何百人何千人とたくさんの人の力を集結し、一つの船を造り上げます。

各部署各部門との連携も必要不可欠であり、お互いが協力し多くの人と関わりながら、一つの船を造り上げます。

このため、チームプレイが好きな人、皆で協力して一つのモノを造り上げたい人にとっては、魅力的な業界といえるでしょう。

安定した環境で働ける

造船企業は、長い歴史をもつ老舗企業が多いです。

給料も安定しており、住宅手当・家族手当・財形貯蓄・退職金制度など、福利厚生面も充実した企業が多いです。

社員一人ひとりを大切にしている会社も多いですので、安定した地盤で船造りに取り組むことができます。

また、造船企業の事業所や造船所は、海沿いの地方に建てられているケースが多いです。

職種にもよりますが、海の近くで勤務できることが多いため、仕事帰りにマリンスポーツなどを楽しめたりもします。

海が好きな人にとっても、魅力的な業界といえるでしょう。

造船業界の雰囲気

造船業界は男性社員が多め

造船業界は、男性社員の割合が多く、女性社員は全体の1割程度です。

また技術職が主体の業界ですので、理系出身の人や、職人気質の人が多めです。

このため「男性の多い環境に慣れている」、「その方が過ごしやすい」といった人であれば、向いている業界といえるかもしれません。

とはいえ最近は女性社員も少しずつ増えてきています。

50代のベテラン層が少ない

造船業界は50代のベテラン社員が少なく、特に最近はその傾向が顕著に表れています。

一方で20代の若手社員、30代~40代の中堅層の社員は多めです。

これから新卒で入社する人であっても、年齢や世代の近い社員と一緒に働ける環境があります。

造船業界に就職するには

就職の状況

造船業界の多くの会社は、新卒者を対象とした定期採用を行っています。

大手であれば、毎年30人〜70人程度の新卒社員を採用しています。

「三菱重工」など総合重工業メーカーであれば100人以上の大人数を採用していますが、総合メーカーとなるため造船に関われるとは限りません。

新卒採用では、以下大きく2つのコースに分けられ募集されることが多いです。

<技術職コース>
船の設計、開発、生産など

<事務職(総合職)コース>
営業、調達、総務、人事、マーケティング企画、経理財務など

造船業界はどちらかというと技術者が主体の業界ですので、技術職の採用枠が多めです。

造船企業の本社や事業所は地方にあるケースも多いため、「Uターン就職」も歓迎しています。

また大手ですと「インターンシップ」や「工場見学」を実施している企業も多いです。

希望の企業により確実に採用されるためには、できればインターンシップにも参加しておきたいところです。

就職に有利な学歴・大学学部

大手の造船企業の新卒採用では、技術職、事務職問わず、高専卒・4年制大学卒以上を対象としている会社が多いです。

なお一般職や一部の生産職は、高卒・専門学校卒・短大卒も対象に含める会社もあります。

技術職の場合は、機械系、電気・電子系、情報工学系、建築・土木系などの学部出身の学生が歓迎されやすいです。

また技術職では「学校推薦制度」を導入しているケースも多く、学校からの推薦があればさらに採用で有利になることがあります。

事務職の場合は、特に学部や学科で有利・不利というのはありません。

事務職の場合は、どちらかというと人物重視の採用となり、あなたのパーソナルな部分が会社にマッチしているかをチェックされます。

造船業界では海外相手に仕事をする機会も多いですので、技術職・事務職問わず、「英語力」が有利になることが多いです。

「英語の筆記試験」を選考中に行う企業もありますので、英語力は磨いておきましょう。

就職の志望動機で多いものは

造船業界への就職を目指す学生には、「ものづくりがしたい」という人が多いです。

「小さい頃から船に憧れ、学校でもそれに関する勉強をしていた」「スケールの大きいものを造りたい」「社会の役に立つものを造りたい」などです。

その他、「世界相手にグローバルに活躍したい」、「インターンや説明会で船造りの情熱に惚れ込んだ」などの理由も多いです。

これらの理由も立派な志望動機であり、決して悪いわけではありませんが、それだけでは弱い部分もあります。

「その会社で仕事として何がしたいか」「将来どのようになりたいか」「どのように会社に貢献したいか」の部分まで掘り下げた上で伝えるのがよいでしょう。

日本造船工業会 造船業界就職ハンドブック

造船業界の転職状況

転職の状況

造船業界では、新卒者を対象とした定期採用のほか、既卒者を対象とした「中途採用」も行われています。

ただし、求人数はさほど多くありません。

というのも造船業界では20代~40代の割合が多く、この年齢層は人が足りているからです。

しかも毎年新卒採用は積極的に行っていますので、20代~40代が転職するにはそれ相応の経験やスキルが要求されるでしょう。

一方で50代のベテラン層が不足していますので、経験のある50代の人であれば人手不足ということで採用されることもあるでしょう。

また60代以上の層も、優秀な方は「再雇用」の形で積極的に募集しています。

転職の志望動機で多いものは

造船業界へ転職を目指す人には、「経験を活かしたい」という人が多いです。

たとえば「別の造船企業で積んだ経験を、御社の環境で活かしたい」「新しい分野の船造りに挑戦したい」「より技術力やシェアのある環境で働きたい」などです。

特に技術職の場合、そのように考えて志望する人が多い傾向があります。

転職で募集が多い職種

造船業界の転職で募集が多い職種は、技術職です。

特に「設計」職の募集が多く、他社で経験を積んだ優秀な技術者を募集しています。

一方で「営業」や「人事」といった事務職の募集は、新卒同様に数は少なめです。

なお、「溶接」や「塗装」といった、いわゆる現場の作業者は不足しており、こちらは積極的に募集されています。

現場の作業者不足は深刻であり、近年は外国人労働者の手も借りています。

溶接や塗装の経験がある人であれば、比較的採用されやすいでしょう。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

船を造るには、専門的で高度な知識、経験が必要となります。

一から学ぶには長い時間と教育コストが掛かりますので、中途社員にそこまでを行ってくれる企業は少ないです。

よって造船業界の中途採用では、即戦力となる知識や経験を既に身に付けている人が有利です。

たとえば設計職であれば、「すでに船の設計のやり方は知っている」、「同業他社で経験を積んでおり、自社にはない技術まで知っている」、そのような人が有利になるでしょう。

逆に、業界未経験の人、職種未経験の人の場合は、残念ながら採用される確率は低いといえるでしょう。

造船業界の有名・人気企業紹介

今治造船

1942年創業。連結売上高3,592億円、連結従業員数1,622名(2017年)。国内最大手の専業造船企業です。

新造船の建造量は2003年から13年連続で国内首位をキープ、世界的にも高いシェアを持ちます。

コンテナ船からカーフェリーまで幅広い造船を手掛けています。国内には10の造船所をもち、年間90隻以上の船舶を造っています。

今治造船 ホームページ

ジャパン マリンユナイテッド

2013年創業。連結売上高2,861億円、連結従業員数6,068名(2018年3月)。国内準大手の専業造船企業です。

日本の造船を担ってきた「ユニバーサル造船株式会社」と「株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド」が合併し発足した会社です。

タンカー・コンテナ船・カーフェリーから、艦艇・巡視船・官公庁船・特殊船まで幅広く手掛けています。

また培った技術を活かしての「海洋・エンジニアリング事業」や、洋上風力発電システムの開発なども行っています。

ジャパン マリンユナイテッド ホームページ

大島造船所

1973年創業。連結売上高1,159億円、連結従業員数1,344名(2018年3月)。国内準大手の専業造船企業です。

大手ながら、ばら積み貨物船(バルクキャリア)に一点特化した造船事業を行っており、この分野では世界トップクラスのシェアを誇っています。

年間40隻以上のばら積み貨物船を造っています。その他、橋梁・浮桟橋・水門などの鋼構造物の製造や、農産事業なども併せて行っています。

大島造船所 ホームページ

造船業界の現状と課題・今後の展望

強大なシェアを持つ中国、韓国メーカー

かつて日本は、造船において世界トップクラスのシェアを獲得していました。

しかし近年、中韓メーカーが安さを武器に急速に成長し、今では日本はトップ3の座に落ち込んでいます。

また中韓メーカーのバックには国があり、国策として造船に支援している強さもあります。

これら中韓メーカーとの競争に勝ち抜くため、日本の造船企業の再編が進んでいます。

2013年には「ユニバーサル造船株式会社」と「株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド」の大手2社が合併し「ジャパン マリンユナイテッド」を設立しました。

その他にも、大手各社の合併や資本提携の動きが進んでいます。

引き続き、中国、韓国の2大勢力とどのように戦っていくかが焦点となってくるでしょう。

人手不足の深刻化とIT技術

造船業界では、溶接や塗装などを行う現場の作業者が不足しています。

東南アジアの「外国人労働者」にも頼らざるを得ないのが現状であり、少子高齢化により今後はさらに人手不足が深刻化されるともいわれています。

今後、人手不足の対策として注目されているのが、IT、AI、ロボットなどです。

これらの最新のテクノロジーを用いて、いかに製造作業を効率化できるかも焦点となってきます。

業界としての将来性

造船業界は、海運が衰退し船そのものが不要にならない限り、存続する業界です。

また近年は、トランプ政権やアベノミクスがもたらした円安により、リーマンショック後の不況から復活する流れがありました。

しかし、今後はいくつかのリスクが迫っています

・円高に進むリスク(円高になると海外への船の輸出を行う造船業界にとってリスクとなる)
・これまでの円安期に船を大量納入したことによる「船あまり」
・船の出す排気ガスに対しての環境規制の強化

さらに造船業界は、景気変動の影響を受けやすい業界ですので、今後の世の中の流れ次第では、厳しい状況に突入する恐れもあります。

とはいえ、造船業界はこれまでも何度も好況と不況を経験し、その度に乗り越えてきた経緯がありますので、仮に不況に陥っても、簡単に倒れる業界ではないでしょう。

国土交通省 海事局 造船市場の現状

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