運送業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





運送業界とは

運送業界に属する企業では、おもに荷物の「輸送」「荷役」「管理」などの事業を行っています。

多くの人は、「運送業界」と聞くと実際にモノを運ぶ「輸送」を一番にイメージしますが、一つのモノが動く背景にはとてもたくさんの人たちが関わっているのです。

国内で代表的な運送業界の企業は「日本通運」「日本郵政」「ヤマトホールディングス」などがあります。

企業によっても取り扱っている荷物が大きく異なります。

大きなモノを運ぶのに特化した運送会社もあれば、個人から個人に小さなモノを運ぶ「宅配」を得意とする会社もあります。

ネット通販の利用者が増えている近年では、とくに宅配事業を取り扱う運送会社の動向が注目を浴びています。

このような会社においては、他社との価格競争の視点だけでなく「大手ネットショッピングサイトとどう協調していくか」という部分も問われているといえるでしょう。

また、トラック輸送における「ドライバーの人手不足」も避けられない問題です。

少子高齢化社会で若い人材の採用が難しい中、運送業界各社は効率的な運送システムの確立を急ぐ必要があるといえそうです。

運送業界の役割

物流が止まってしまうと、日本経済は大きな打撃を受けてしまいます。

災害時には物流がストップしたことによりスーパーやコンビニなどに商品が並ばなくなり、人々の生活に大きな影響を及ぼすという事態も実際に起きています。

それだけ物流は人々の生活を支え、経済を成長させていく上で欠かせない存在です。

さらに、ただモノを運ぶだけでなく「どうやって運ぶか」を考えることも、運送会社の大切な役割です。

同じモノでも「陸路」で運ぶのか、「海路」や「空路」で運ぶのかによっても違う結果が生み出されるでしょう。

指定された荷物を目的地まで効率よく、迅速に運ぶために運送業界では日々新しいサービスが開発されており、あらゆるモノがスムーズに流れるようになれば、それだけ経済の活性化につながります。

以上のように、運送業界は日本経済を根底から支えていることから「経済の血液」とも呼ばれています。

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運送業界の企業の種類とビジネスモデル

国内大手企業

国内大手企業としては「日本通運」「日本郵政」「ヤマトホールディングス」などが挙げられます。

「日本通運」は国内最大手の運送会社であり、災害対策基本法で「指定公共機関」とされているなど、災害時の物流を担う役割も果たしています。

個人向けのサービスでも引越し事業などを手がけていますが、どちらかというと法人向けのサービスに力を入れている企業といえるでしょう。

「日本郵政」と「ヤマトホールディングス」については、個人向けの宅配サービスを充実させて大きく成長してきた企業となります。

国内中堅企業

国内で中堅の運送会社では「SGホールディングス」「セイノーホールディングス」などの企業があります。

「SGホールディングス」は「佐川急便」を子会社に持ち、宅配便市場ではヤマトホールディングスに次ぐ国内2位のシェアを誇ります。

「セイノーホールディングス」は「西濃運輸」を子会社に持ち、こちらも宅配便事業に強みを持つ企業です。

それ以外にも数多くの企業が運送業界には存在していますが、大手企業と比べると「取り扱うサービスが一つに絞られている」といった傾向が見られます。

宅配便の他には法人向けのサービスに特化させたり、運ぶために特殊な技術を必要とするものをメインに取り扱っている会社もあります。

外資系企業

運送業界には「FedEx(アメリカ)」や「DHL(ドイツ)」といった外資系の企業も存在します。

「FedEx」は世界最大手のアメリカの運送会社で、日本以外にも200以上の国と地域で事業を展開させています。

陸・海・空のすべての運送手段を手がけており、自社ブランドの貨物航空機も所有しています。

「DHL」はドイツの運送会社であり、こちらも世界を代表する大手物流企業です。

航空機を主体とした宅配サービスを展開しており、世界初の国際宅配便を手がける会社としても知られています。

運送業界の職種

運送サービスを安定的に運営していくために、運送業界ではさまざまな職種が必要とされています。

ここでは、運送業界の代表的な職種を4つ紹介していきます。

SD(セールスドライバー)

「SD」は「セールスドライバー」または「サービスドライバー」の略で、トラックなどを使って宅配便を届けることがおもな仕事になります。

SDは運送業界の仕事として最もイメージがつきやすい職種であり、「お客さまとの距離が近い」ことも特徴の一つです。

荷物の受け渡しの際に「ありがとう」と言ってもらえる瞬間もあり、やりがいを感じられる場面も多いでしょう。

まさに運送会社の表舞台で働ける職種といえます。

管理

荷物が滞りなく運送・配送できるように、それらを管理する仕事も運送業界ではとても重要です。

「輸送中の荷物がどこにあるか」などの追跡を行ったり、「荷物の温度」などの状態を記録する必要もあります。

さらに、スムーズな物流のためには「どの場所に、どのトラックが待機しているのか」といった情報も常に把握していなければなりません。

このように、運送業界における「管理」の仕事は、物流全体を情報面で支える役割を担っています。

法人営業

大口顧客になりやすい法人に対する営業活動も、運送会社の利益に直結する大切な業務です。

「対企業向けのサービス」の拡充を狙う企業も出ている中で、「法人営業」の重要性はさらに増しているといえるでしょう。

単純に営業活動を行うだけではなく、顧客に対して配送ルートや輸送方法などを説明し、荷物の最適な運送手段を提案することも法人営業の仕事です。

荷役

A地点からB地点まで荷物を運ぶ際、荷物は地点間に用意された、いくつかの拠点を通過しています。

それらの各拠点で荷物の積み下ろしを行う「荷役」の仕事は、拠点まで荷物を運んできた輸送機関(トラックや船など)から別の輸送機関に載せかえたり、保管する仕事を担います。

輸出入の際に必要な「通関手続き」についても荷役が行う業務です。

運送業界のやりがい・魅力

日本社会を根底から支える仕事

物流が止まれば同時に日本経済も止まってしまうため、経済活性化に運送業界は欠かせない存在です。

運送業界は経済を支え、また人々の生活を支えている重要な柱であり、そこに携わることは大きなやりがいにつながります。

その社会的な存在意義の高さから、お客さまから感謝の言葉をかけられる瞬間も多いのが運送業界の特徴です。

とくに宅配業務にたずさわる「SD」などの職種は、荷物の受け渡しの際に直接感謝されることもあり、その点は仕事の喜びにつながるといえるでしょう。

体力的に大変な業務も少なくありませんが、笑顔で「ありがとう」と言われることでやる気を出し、それを日々の仕事のモチベーションとしている方も多いようです。

世の中の「モノの流れ」が学べる仕事

一般的に「宅配サービス」がイメージされやすい運送業界ですが、運送会社が運ぶ荷物には「食料品」「家具」「車両」などあらゆる種類があり、送る相手も個人から法人までさまざまです。

このような物流の現場に携わることで、「世の中のモノの流れ」を肌感覚で知ることができるのは、運送業界で働く大きなメリットといえるでしょう。

モノの流れは経済活動の根幹の部分であり、そこに対する知見を深めることが可能です。

今後も市場の伸びが期待できる業界

近年「インターネットショッピング」は急速に普及してきており、幅広い年齢層でインターネットで買い物を楽しむ人が増えています。

それに伴い、国内の宅配事業が急成長している状況です。

今後もこの宅配市場は堅調に伸びていくことが予想されており、運送業界の役割もより一層重要なものになっていくと考えられるでしょう。

運送業界の雰囲気

運送業界の仕事は、「荷物に直接触れる仕事」と「運送事業を裏側で支える仕事」に大きく分けられます。

「荷物に直接触れる仕事」は力仕事が必要になる場面も多く、体力に自信のある人にはとくに向いている仕事といえるでしょう。

また、最近は「荷物の小型化・軽量化」が進んでいることや、IT技術の導入により作業自体が効率化されていることから、女性でも働きやすい環境が整いつつあります。

一方、荷物に直接触れることがない「裏側で支える仕事」については、チーム単位で一つの物事を進めていく場面も少なくありません。

そのため、他の人と協力して仕事を進めていける「コミュニケーションスキル」や「調整力」などが求められる仕事です。

このように、同じ運送業界でも仕事内容によって求められる能力は変わってきます。

自分の強みや特徴をよく理解し、それが活かせる職種を選ぶことが大切です。

運送業界に就職するには

就職の状況

「物流業界」に対する学生の人気は高いですが、その中でも募集が集まりやすいのは「空輸」や「鉄道」などの業界であり、運送業界は学生が殺到するような状況にはありません。

そのため、大手・中小といった企業の規模に関わらず、新卒採用については一年を通して実施している企業が多く見られます。

学生が集まりにくい理由としては、運送業界に対する「仕事がきつい」「労働時間が長い」といったイメージが定着してしまっていることが考えられるでしょう。

ただし、この点に関しては各企業ごとでも大きく異なる部分であり、十分な企業研究を行い見極めることが重要になります。

政府の「働き方改革」の取り組みなどの影響もあり、各運送会社においても「社員の働きやすさ向上」に取り組む企業は増えてきている状況です。

就職に有利な学歴・大学学部

大手の運送会社の「総合職」として幅広く専門的な業務に携わっていきたいのであれば、基本的に「大卒」の学歴は必須といえます。

ただし、運送会社の仕事の中でも「SD」の職種は人手が足りていない企業も多く、こちらは高卒でも受け入れをしているケースが多く見られます。

また、運送会社への就職で有利な学部・学科に関しては、ほとんどの運送会社で「学部・学科不問」で求人を出しています。

そのため、どの学科の出身者であっても選考に有利・不利はありませんが、ドライバーとして働く場合は「普通自動車免所」は最低限取っておきたい資格だといえるでしょう。

就職の志望動機で多いものは

運送業界を受けるときの志望動機として多いのは、「モノを運ぶ、人々の生活に欠かせない役割を担っている点に魅力を感じた」という内容です。

また、学生時代に部活などをやっていた場合は「体を動かす仕事がしたい」という志望理由もよく見られます。

運送会社の志望動機を考える上では、「希望する職種によっても仕事内容が大きく異なる」という点に注意が必要です。

実際に荷物を運ぶ「SD」として働くのか、もしくは「法人営業」として働くのかによっても求められるスキルは変わってきます。

「どの運送会社を受けるのか」という視点も大切ですが、「自分の強みを活かせる職種はどれか」という部分もよく考えて、説得力のある志望動機を作っていきましょう。

運送業界の転職状況

転職の状況

運送業界では、定期的に行われる新卒採用のほか、多くの運送会社で中途採用の募集も行われています。

とくに「SD」の職種が足りていない企業が全体的に多く、新卒採用と同様に中途採用でも積極的に募集をかけられている状況です。

入社後のミスマッチを防ぐために、一部の企業では入社前にドライバーとトラックに同乗し、荷物の配達や端末操作などの仕事を経験してもらう試みも実施されています。

一方、「総合職」や「管理職」などの事務系の職種についての求人はあまり出回っておらず、新卒のみで採用活動を行なっている企業も少なくありません。

転職の志望動機で多いものは

転職の志望動機としては、「物流を支えることで社会貢献をしていきたい」といった理由で志望する人が多いようです。

また、ドライバーの職種を受ける場合には「車の運転が好き」「トラック運転手に憧れていた」という志望理由で受ける人もいます。

このように、運送会社の仕事に対して「やりがい」を持って働けるかどうかは、面接官にとっては「仕事が長く続けられるのかどうか」のものさしにもなります。

仕事内容を事前によく調べ、自分が「どの部分にやりがいを感じられるのか」という視点で内容を考えていくとよいでしょう。

転職で募集が多い職種

中途採用でとくに募集が多いのは、実際に荷物を運ぶ「SD」の職種です。

慢性的にドライバー不足に悩まされている企業も少なくない状況で、SD職については随時募集をかけているケースが多く見られます。

採用区分は正社員での採用やアルバイト採用などさまざまで、「午後から出勤」といった柔軟な働き方に対応している企業も出てきています。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

運送業界へ転職する場合、同じ運送業界や物流業界での業務経験は問われないケースがほとんどです。

ただし、業務の中で積み荷や仕分けなどの力仕事が発生する職種の場合には、「健康状態に問題がないか」「体力に自信はあるか」といった部分は問われる可能性が高いでしょう。

また、中途採用の場合は「SE(システムエンジニア)」など専門的な仕事の募集が出されているケースもあり、このような場合は該当する業務経験やスキルが必要になります。

運送業界の有名・人気企業紹介

日本通運

1872年創業、1937年設立。連結売上高21,385億円、連結従業員数71,525名(2019年3月期)

東京都港区に本社を構える、運送業界最大手の総合物流企業です。

「日通で運べない物はない」と言われるほど、あらゆるジャンルの荷物を運ぶことが可能です。

日本通運 ホームページ

日本郵政

1871年創業、2007年設立。連結売上高127,750億円、連結従業員数245,922名(2019年3月期)

公共企業体の「日本郵政公社」が前身で、2005年の「郵政民営化法案」によって発足した企業です。

2015年には傘下の「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命保険」とともに、東証一部に上場しています。

日本郵政 ホームページ

ヤマトホールディングス

1919年創業、2005年設立。連結売上高16,253億円、連結従業員数225,125名(2019年3月期)

宅配便で広く普及している「宅急便」を取り扱う、大手運送会社です。

これまで「個人向けサービス」が主力でしたが、「法人向けサービス」にも積極的に事業を展開しています。

ヤマトホールディングス ホームページ

運送業界の現状と課題・今後の展望

国内の競争環境

ネット通販の流行を受けて、「宅配サービス」の市場は短期間で急成長を見せています。

現在は通販事業者だけでなく、さまざまな企業が「宅配ビジネス」に乗り出している状況です。

それに伴い、今後も宅配サービスに力を入れる運送会社は増えていくことが予想できるでしょう。

また、運送業界へ新規参入する企業の増加などを背景に、競合他社との価格競争も起こっています。

消費者としては価格が安くなることはメリットですが、会社としては今後サービス内容と自社利益とのバランスをとっていかなければなりません。

さらに大手ネットショッピングサイトからの圧力も、サービス料の低価格化につながっています。

このような価格低下圧力に対して、大手ネットショッピングサイトと運送会社がどう協調していけるかが注目されています。

業界としての将来性

運送業界は人によっては働きにくい業界でもあります。

長時間の運転や荷下ろしなどで体力を消耗するので、体調を崩してしまう人も少なくありません。

しかし、これらの問題は「自動運転技術の進歩」によって改善されるともいわれています。

自動運転技術が運送業界でも当たり前に使われるようになれば、運送業にたずさわる人の負担が軽減されてより効率的に荷物を運搬することができるでしょう。

とくに、日本は少子高齢化の問題を抱えているため、若い人材を一定数確保することは運送業界に限らず難しい状況です。

自動運転技術だけでなく、「ドローン配送」に関する準備も大手企業を中心に着々と進められています。

今後もIT技術の活用はさらに加速していくことが予想されているため、運送業界への就職を考えている方は最新の情報をキャッチアップしていくことが大切です。

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